コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:エヌット

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大分遅くなりました。


踊る会議、決まらない結論、進む暗躍

 思えば、私の人生が大きく動き出したのは、エリア11の総督だったクロヴィス(お兄様)の死からだった。

 兄の死に伴う心労でガブリエラ皇后(お母様)が倒れ、代わりにエリア13の公務を行っていた私はある日、事故を装った嚮団によって拉致された。心を病んだお母様は、無事だろうか?

 連れてこられた先にいたのは、私と同じかもっと幼い年頃でありながら周囲からは『嚮主』と呼ばれている少年。彼によって『ギアス』という超常の力を無理矢理与えられた。そんな私が目覚めたギアス能力は、彼等にとって予想外の代物だったらしい。それからは、遺跡のような場所でよく分からない様々な実験が繰り返される日々だった。芸術や考古学に詳しかったクロヴィス(お兄様)だったなら理解できたのかもしれない。

 そんな辛く苦しい日々が続いたある日、ブリタニアが確保している他の遺跡同士を繋ぐ実験中に、私のギアスが暴走を起こした。その結果、気が付いた時にはどういう訳かE.U.のパリ郊外に私だけ転移していたのだ。周辺に嚮団の研究者の身に着けていたものが散乱しており、恐ろしくなって思わずその場から逃げ出した私は……現地の犯罪シンジゲートにあっけなく捕まり囚われの身となってしまった。一緒に囚われていた他の子供たち、見た目から恐らくはイレヴンかその血縁者と共に悲惨な末路を迎えると私は一度は諦観していたが、運命というものはそんな簡単な結末を認めないらしい。

 

 ──最悪。こいつら、女子供ならば見境無しって訳?

 

 ノースリーブのフード付きシャツとホットパンツという無防備としか言いようがない装いのイレヴンの女性が、他のイレヴンと共に犯罪シンジゲートの拠点に乗り込み、手に握る刃物──後に本人から聞いた話では祖父から譲り受けた『ウチガタナ』というものらしい──で構成員をばっさばっさと斬り伏せていったのだ。

 

 ──アヤノ! そっちはどうだ!

 ──こっちは終わったよ、リョウ。それで、この子どうする? 大方、興味本位かなんかでアンダーグラウンド(こんな場所)を訪れて囚われていた子だろうけど。

 ──どうするってなぁ。放っておくわけにはいかねえだろ。

 

 これが、私とリョウたちとの初めての出会いだった。

 最初から快く迎え入れられたわけではないけれども、助けてくれた人たちに恩を返したくて、なにより帰る場所などもうない私の居場所が欲しくて、私はリョウたちの所に居候させてもらった。

 ギアスが暴走してから左目に浮かびっぱなしの紋様を子供たちに揶揄われたり、これまでの人生ではメイドに任せていた家事をこなすのは大変だったけれども、少し前まで嚮団から実験動物同然の扱いだった私にとって、本当に久しぶりに()()として扱って貰えた事はとても嬉しかった。

 不自由は沢山あったけれども満ち足りた生活。そんな日々は、リョウたちのグループと敵対する犯罪シンジゲートとの間で起こった抗争によって、脆くも崩れ去る事となった。

 恐らくは祖国(神聖ブリタニア帝国)から横流しされたのであろうナイトメア(グラスゴー)まで持ち出しての犯罪シンジゲート側の襲撃で、一緒に暮らしていた皆が沢山殺された。

 その時見回りに出ていたリョウや、応戦していたアヤノ、ユキヤ、シンジたちも生き延びているかはわからないまま、他の子どもたちと一緒に地下道から逃げるように押し込められて……ほかの子と散り散りになった私は別の犯罪シンジゲートに捕捉されてしまった。

 

 ──急げ! 管理局が感づいた以上、此処はもう潮時だ。とっととこの世界から撤収するぞ!

 ──取引の弾を発見できたのは幸運だったな。確かドクターが躍起になって探してたガキだろ?

 ──ああ、イレヴンのガキ共とのドンパチでかなり被害を受けているらしい。人質に使うんだとよ。

 ──どんな能力か詳しい事は分からねえが、魔眼系の希少技能(レアスキル)を持ってるらしい。迂闊に視線を合わせるんじゃねえぞ。

 

 リョウ達が生きている。絶体絶命としか言いようがない状況の私だったけど、その言葉を支えに諦める事はしなかった。彼らが口にした魔眼というのは、恐らくギアスの事だろう。自分もどんな能力なのかよく分かっていないけど、相手も同じならばはったりの道具として使うことができた。

 そうやって何度かは危ないところを切り抜けて逃げる事はできたけど、やがて廃ビルの屋上へと追い詰められていく。

 

 ──捕まってリョウ達に迷惑をかけるくらいなら……。

 

 そう決心して屋上から跳び降りようとしたその時、運命は私に味方した。バチバチと放電音が聞こえたと思ったら、私を負って屋上まで上がってきた人たちが次々と倒れ伏したのだ。

 

 ──大丈夫? 怪我はない?

 

 呆然とする私に声をかけてきたのは、黒い制服にマントを羽織った、私と同じツインテールの金髪と正反対の赤い瞳の女性。少女と大人の女性の狭間にいる様な健康的な魅力に溢れた彼女が、呆然とする私の前に空から降り立って手を差し伸べる。

 それが、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官とライラ・ラ・ブリタニアこと私の出会いだった。

 

 ____________________

 

 

 パリの中央、セーヌを一望にするチュイルリー宮殿では、ナルヴァ帰還祝賀パーティが大々的に開かれていた。

 シャンデリアはキラキラと絢爛に輝き、オーケストラの生演奏が続き、着飾った紳士淑女たちが会話を続けている。

 一見すると戦勝パーティと勘違いしてしまいそうになるが、実態はE.U.軍の敗走からの撤退が上手く行ったことを”祝う”体裁で、参加者の我欲を満たすための商談の席なのだ。

 

(ユーロピアの人達は、多くが致命的に危機感が欠落している。本来ならこんなパーティを開くよりもどうやって神聖ブリタニア帝国に立ち向かうかを考えるべきなのに)

 

 ワルシャワで入国手続きを無事に済ませ、パリを訪れたマーヤ一行。パリに到着した矢先に祝賀パーティに急遽参加することになったクラリスの付き添いで共に参加したマーヤは、チャリティーイベントの時と同じ蒼のドレスを着ている。大人しくしていれば、初見では深窓の令嬢の様に見えるだろう。必要に応じてパーティに参加することもあったクラリスも、ここまで我欲に振り切った商談の席となっている今回のパーティには、思う所があるようだ。

 他の四人はパーティには参加していない。C.C.とマオはフェイト執務官と合流するために、カレンと卜部は出自の都合でトラブルを避けるために辞退したからだ。

 

「はぁ、あまり声を掛けられない壁の方にいよう。……あれは?」

 

 声を掛けられては我欲をむき出しにした商談や自慢話を何度も聞かされて気疲れを起こしたマーヤは、一休みしようと目立たない壁際へと向かう。すると、そこにはこの会場には似つかわしくないE.U.軍の軍装姿をした少年少女の姿が。

 1人は壁にもたれた姿勢で戦術書を読んでいる金髪碧眼の少女。あれはギベールの『戦術一般論』だろうか? 依然、ルルーシュから戦術の基礎を学ぶために借りた中にも同じものがあったから覚えている。パーティのドレスコードを無視したその姿と周囲との交流を露骨に拒絶する態度に、このパーティに思う所は多々あれども場の空気に合わせて取り繕っているマーヤは内心ムッとする。

 そしてもう一人の少年は──、

 

「あの……ひょっとして、wZERO部隊の日向アキト少尉でしょうか?」

「あんたは?」

「申し遅れました。私はマーヤ。合衆国日本からユーロピアへの救援として派遣された部隊に所属する、マーヤ・百目木・ディゼルです。この度はワルシャワ近郊でグラスゴーの部隊に襲撃され応戦していた卜部さんへの援護に感謝します」

 

 卜部が接触したユーロピアの新型KMFのパイロットを見かけて、マーヤは声をかける。

 

「貴方が日向()()が話していた、黒の騎士団の方ですね。私はレイラ。wZERO部隊の指揮官レイラ・マルカル中佐です。以後、お見知りおきを」

「はい、宜しくお願いします。それにしても、あれから昇進したのですね。おめでとうございます、日向中尉」

 

 レイラからの軍礼に対して、マーヤも同様に返礼する。

 

「マルカル中佐は、今回のパーティの護衛任務の途中なのでしょうか?」

「いえ。スポンサーの機嫌を取るために仕方なくですね。本当は今回の戦訓の反映や補給物資の手配など、やるべきことは山積みなのですが……」

「大変ですね。『パーティもまた形の異なる戦場だ。身に着けている装いや所作一つで結果が大きく変わることも珍しくないから気を抜くことはできない』とゼロも話していました」

「言われていますよ、マルカル中佐」

 

 パーティに意味を見出していないレイラの態度に、マーヤはつい嫌味を言ってしまってから内心しまったと後悔する。幸か不幸か、そこにアキトが重ねた皮肉に、レイラは内心むっとしながらも反論はしない。こちらもパーティ会場に軍装で参加する事が非礼であることは理解しているからだ。

 

「む……。確かに軽率でした。スマイラス将軍からも、似たようなことを注意されていましたので、以降は気を付けます」

「こちらこそ、パーティの席で説教じみた事を言ってしまい、申し訳ありませんでした」

 

 一連の会話でうっすらとだが分かった事もある。マーヤという少女は、ゼロもといルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと単純な上司部下の関係ではないという事だ。かといってゼロに対して崇拝や信仰といった神格化をしている様子もない。おそらくは、黒の騎士団が表舞台に立つ前から個人的に近しい関係だったのかもしれない。

 そのような人物を救援部隊に組み込んで向わせるという事は、思惑はどうあれ少なくとも合衆国日本はE.U.を安易に見捨てるつもりはないという意図があるだろう。この情報だけでも、気乗りしないこのパーティに参加した価値があるというものだ。

 そこまで考えていたところで、

 

「レイラ! レイラ・マルカル!」

 

 レイラには聞きなれた、自分の名前を気安く呼ぶ声がした。

 でっぷりと肥えた青年と、対照的にほっそりと痩せた青年。二人とも、彼女の血の繋がりはない兄たちである。ドレスコードを守りつつ身に着けている者はすべてが一級品の二人は、いかにも善人というのを感じさせる優しい眼差しだ。

 

「お久しぶりです、ダニエルお兄様、ステファンお兄様」

「本当に久しぶりだよ。もう一年ぶりになるかな、君に会うのも」

「来ているなら連絡してほしかったな。そうしたら、君のためにこのパーティで着るドレスも用意してあげられたのに」

 

 2人の言葉に、咎め立てる気配はない。妹を気遣っているのがよくわかる。しかし、レイラにとっては彼等は悪人ではないが住む世界が違うのだと再認識してしまう。二人の兄が善意で用立ててくれるといった一流品のドレスも、その予算があれば今後の作戦遂行のため必要な武器弾薬などの物資をどれだけ調達できるだろうかと頭の片隅で考えてしまう。

 

「軍服は私の正装です。……とはいえ、場の空気に即しない格好で来たことは謝罪します」

「その口調も相変わらずだねぇ。家族なのだからそんなに堅くなくてもいいのに」

「それで、こちらのお嬢さんはどなたかな?」

 

 レイラの反応にステファンは苦笑いし、ダニエルはマーヤについて尋ねる。

 

「初めまして。私はマーヤ。ユーロピア共和国連合への援軍として、合衆国日本から派遣された黒の騎士団の部隊に所属する、マーヤ・百目木・ディゼルと言います。この度は義母のクラリス・ガーフィールド社長と共にビアン・ナシオ・コンツェルン主催のパーティにご厚意で参加させていただけた事を嬉しく思います」

 

 マーヤはダニエルとステファンに向き直り、ドレススカートの裾を摘まんで一礼する。道中の旅の中で必要になる機会があるかもという事で、クラリスに教えてもらった事がさっそく活きている。

 

「合衆国日本というと、確か少し前にブリタニアから独立宣言を行ったという話を聞いたよ」

「はい。ユーロピアでは日本独立の報が未だに伝わっていない地域もありますが、覚えていてくれて光栄です」

「レイラとも仲良くしてくれているようだし、これからも彼女をよろしくね」

「分かりました」

 

 レイラの兄たちと和やかに会話が進むと思ったその時、

 

「これはこれは、麗しの妹君じゃないか」

 

 肌も露な女性多とを両手に抱き、流行の最先端と言えば聞こえはいいがドレスコードやマナーを無視した燕尾服を身に着けた長髪の青年の言葉が遮る。

 

「ヨアン……お兄様」

 

 そう呟いたレイラの方を見ると、表情は硬く、微かにだが生理的嫌悪と恐怖の感情が見て取れた。ダニエルとステファンの二人と比べて、ヨアンと呼ばれた兄との仲はあまり良くないのかもしれない。

 それから起きた出来事は、正直に言うと周囲に吹聴したくない事だ。酒に酔ったヨアンが兄二人の静止を無視して聴衆の面前で婚約者であるレイラを見下す様に侮辱し始めたのだ。酒によって理性が緩んでいるからだろうが日本人に対する露骨な差別意識を隠すこともなく、私の事も妾にしようなどと言ってきたのは虫唾が走った。

 あのまま続いていたなら、日向中尉が先に行動を起こしていなければ、目の前の甘ったれた男の頬を引っ叩いていたかもしれない。そう考えれば、日向中尉にジュースを掛けられて激昂したヨアンがそのまま怪我することなく返り討ちにあって逃げ出したのは、合衆国日本とE.U.の関係がこじれる可能性を結果的にだけれども摘んでくれたと言える。

 一悶着あったがダニエルとステファンに一言謝罪を口にしてから宴の中心から離れてバルコニーのテーブルに座った私たち。中庭の凱旋門が見える情景は、E.U.にとってフランスの栄光を表しているのだろう。

 そこで私とレイラは、互いの境遇を言葉にしたのだ。

 私はブリタニア人の母と日本人の父が両親のハーフで、日本と神聖ブリタニア帝国の戦争で両親を神聖ブリタニア軍に殺された事。そのことがショックで過去の記憶が思い出せない事。さすがにCの世界で知ったこの世界がループしていることなどは言えなかったけれども、私が神聖ブリタニア帝国と戦う理由は話したと思う。

 一方のレイラも、生まれこそユーロピアだけれども両親は神聖ブリタニア帝国から亡命した貴族で、幼い頃に両親をテロで喪ってからは、貴族の血統を欲した巨大コンツェルンの主であるマルカル家に引き取られた事を口にした。

 そう考えると、私とレイラは似通っている部分があるのかもしれない。

 そしてレイラの独白を聞いた日向中尉の冷笑的な表情から紡がれた言葉、

 

「血統や財産を比べ合うなんて、全くくだらない。でも、司令が嫌なのなら……消してあげましょうか、その世界を」

 

 悪魔の誘いのような笑みを浮かべている彼に、私は底知れない何かを感じるのだった。

 

 

 ____________________

 

 

 合衆国日本から派遣されたE.U.への救援部隊。ユーロブリタニアの警戒網を潜り抜けて来訪した彼等に対して、四十人委員会を筆頭とした議会はどのように対応するかで分かれ会議は荒れていた。

 

「──。ですから、合衆国日本を名乗る勢力から提供された戦力を積極的に活用し、ブリタニアによって不当に占領された我らがE.U.の国土を取り戻すべきなのです! それこそが! 攻勢に出てきている二つのブリタニアの勢いを止める最良の策ではないか!」

 

 声を荒げているのは、祖国をブリタニアによって占領された議員の一人だ。無人機の本格導入が進んでいるとはいえ、猫の手を借りてでも祖国を取り戻したいという意欲は強い。何より、次の選挙までに祖国を取り戻せないと落選する可能性が高いという危機感がある。

 

「私としては、ユーロピアが正式に承認していない他所の武装勢力からの戦力提供を受けるべきではないと考える。先の議会における法案成立で無人機の本格導入が進み、戦力的にも受ける必要性そのものが無いのだからな」

 

 それに対して反論するのは、無人KMFの開発製造を担当する軍需産業の一つから多大な献金を受けている議員の一人だ。彼からすれば、無人機が軍に納入されるほど自分に懐に入るマージンが増えるのだから、水を差されたくない。

 

「そもそも、イレヴンは敵性外国人ではありませんか? ならば、E.U.の法に則って奴らをテロリストとして拘束し、KMFを含めた所有物を全て没収するべきでしょう。余罪を追及するべきでしょうなぁ?」

 

 そこに口を出すのは、かつての日本が神聖ブリタニア帝国に占領された際、日本人を敵性外国人と扱う事に積極的だった議員だ。彼が献金を受けている企業群は、かつて日本との多大な貿易赤字を抱えており、日本人を敵性外国人と認定する事で日系企業の接収を含めて債務を帳消しにし、恩を売った経緯がある。何より、イレヴンという自分達よりも下の存在がいるという安心感を奪われる危機感が強い。

 

「そのような事をして、合衆国日本まで敵に回すつもりか!? かの勢力はブリタニアからの独立を果たすだけの力を備えている! これを利用しない手はないでしょうに!」

「何を異なことを。そもそも合衆国日本を標榜するイレヴンをまとめている黒の騎士団とやらのリーダーはブリタニア人、それも皇族ではないか。あれはブリタニア内部の派閥争いに基づいた内戦に過ぎない」

「その派閥争いを利用して、ブリタニアに対抗するべきだと言っているのだ!」

 

 相手と意見をすり合わせる事など考えず、自らの利権のために好き勝手な言葉の応酬が続く。

 E.U.側の不義理による過去の悔恨を水に流す好機と捉え、正式に合衆国日本と同盟を結ぶべきだという意見は、余りにも少数。

 結局、今回の会議では結論が出る事はなく、翌日以降の会議に持ち越される事となった。

 

 ____________________

 

 

 大荒れの議会から数日後、E.U.における最大の工業地帯であるドイツ。その中でも特に活発なルール工業地帯にあるKMF開発工場に、二人の四十人委員会の議員による視察があった。

 目的は新規ロールアウトされた『パンツァー・マルダー』と『キュクロプス』の生産ラインの視察だ。……()()()()

 視察を終え、パリへと戻るリムジンの車内で、二人の議員が歓談している。

 1人はでっぷりと腹が出て肥え太った、白髪交じりの短めの金髪をオールバックにまとめた中年の男だ。身長は凡そ180cmほどで、上の前歯の内一本が金の挿し歯となっていて、指には緻密な装飾が施された金の指輪がそれぞれの指に嵌められている。

 

「次の大規模攻勢の際には、『()()()()()』の投入が間に合いそうですな。それもこれも、ヨハンナ議員の働きかけのお陰です」

「いえいえ。ユーロピアの未来を憂えるコンスタンティン議員の尽力があってこそです。私は微力ながらそのお手伝いをさせて頂いたにすぎませんわ」

 

 ヨハンナと呼ばれたもう一人の議員は、丸眼鏡を掛けた身長160cmほどの茶髪の女性だ。フルネームはヨハンナ・アングリクス。若くして四十人委員会の議員に選ばれ、先の新機軸有機コンピューターによる無人KMFの本格導入のための法案整備に道筋を作ったエリートだ。

 ヨハンナ議員の模範的な返答にコンスタンティン議員は気を良くしたのか、熱意を持って持論を展開していく。

 

「残念ながら、今のE.U.には無条件に自由と繁栄、栄光の明日が続くと考える無能な議員が多いのです。王権や貴族から自由を勝ち取るため、先人たちは血と汗を流してきたというのに、嘆かわしいばかりだ」

「心中お察しいたしますわ」

「ありがとう。しかし! パンツァー・マルダーとキュクロプス、そしてティフォンが投入された暁には、これまでE.U.の自由と民主主義、そして領土を踏みにじってきたブリタニアの連中などこの世界から叩きだして見せましょう! そして、E.U.の理念である自由と革命を世界に知らしめるのです!」

「実に心強いお言葉ですわ」

 

 ヨハンナ議員は笑みを浮かべたまま、コンスタンティン議員の持論を具体的な言葉は使わずに肯定する。

 

「そう……ユーロピアを救うのは、スマイラス将軍でも、クレマンの小娘が作ったナイトメアでも、極東から来た救援部隊でもない。ティフォンだ」

 

 それまで饒舌に語っていたコンスタンティン議員が、唐突に苦虫を噛み潰した表情を見せる。その言葉にヨハンナ議員が反応する。

 

「コンスタンティン議員がそこまで警戒する者たち。どのような者たちなのか聞かせていただけないでしょうか?」

「ああ、構わないとも。ヨハンナ議員には、奴らが躍進することによってユーロピアが被るリスクを知ってもらいたい」

 

 寄り添う姿勢を見せるヨハンナ議員に、コンスタンティン議員は自らが想定しているE.U.にこれから降りかかるであろう数々の受難の可能性を打ち明けていく。

 密に野心の炎を燃やしているスマイラス将軍が持つ、E.U.の在り方を変えてしまいかねない危うさを。

 若くして鹵獲したグラスゴーを分解解析し、新機軸のKMFを開発運用し始めているアンナ・クレマンへの嫉妬心を。

 そして合衆国日本から来た救援部隊に借りができるほどにE.U.は将来的に大きな譲歩を迫られる事になる危機感を。

 熱心に語るコンスタンティン議員が、ヨハンナ議員の仮面のような作り物の笑みに気が付くことは無かった。




 ライラのギアス暴走に巻き込まれた研究員は、現実世界とCの世界の狭間に呑まれて集合無意識に取り込まれて霧散しました。
 今回話題に出てきた「ドクター」はスカリエッティの事ではなく、リョウのグループと抗争していた犯罪シンジゲートのボスの通称の方です。なお、原作通り死んでいます。
→パリで「ドクター」の情報を得て捜索中に、たまたまライラが追い詰められているのを発見して介入した形です。なお、「ドクター」違いだった模様
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