政庁からの公式の発表を確認したルルーシュは、呆れと困惑の表情を浮かべる。
「……親衛隊の残党がここまで愚かな連中だったとはな。犯人をでっちあげるにしてもブリタニア軍からは行方不明扱いになっているスザクか他の名誉ブリタニア人辺りを選ぶと思っていたが、よりにもよってシュナイゼル兄上の直轄組織を犯人に仕立て上げるなど、何を考えているんだ?」
親衛隊のあまりにもお粗末かつ先を考えていない行動に、ルルーシュは何か裏があるのではないかと勘ぐる。
報道では、特派が開発した新型機を投入する事を渋ったのをクロヴィスが接収して出撃させ、テロリストに強奪されたことに腹を立てた事が動機としているが、あまりにも短絡的過ぎる筋書きだ。
「新型機……多分、ランスロットの事だよね?」
「だろうな」
「ねえ、ルルーシュ……この人たち、僕たちで助けられないかな?」
「スザク、何を考えている」
スザクからの提案に、ルルーシュはその真意を確かめるために問いかける。
「僕たちはシンジュクゲットーでブリタニア軍に反旗を翻して、ルルーシュはクロヴィス総督を殺した」
「ああ。俺達がブリタニアをぶっ壊す第一歩だ」
「その過程で、僕はできるだけ無用な犠牲は出したくないんだ。例え目的は正しくても、そのための方法を間違えてしまったら、周囲に怒りや悲しみをまき散らすだけじゃなく願った目的さえも果たせなくなってしまうかもしれないから……」
スザクが語った理由は、はっきり言ってしまえば感情論だ。父である枢木ゲンブを殺害した事で日本を降伏に追い込んでしまった過去に起因するトラウマは、スザクの心に深い傷跡を残したままなのである。
「やっぱり……駄目かな?」
「いや、まさか。ランスロットを整備できる技術者を確保するためとという実利だったなら、確保するタイミングを待てと止めるつもりだったが、お前の根本にかかわる感情ならば仕方ない。お前は、一度これだと決めたら意地でも変えようとしない頑固者だからな。どうせ、俺が駄目だと言っても勝手に助けに行こうとするだろう?」
「じゃあ!」
「ああ、リスクはあるがメリットも相応にある。特派の者たちを救出してこちら側に寝返らせようじゃないか! それに──」
「それに?」
「俺とお前が組んで出来なかった事など無いだろう?」
「……! うん!!!」
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クロヴィス総督の遺体を運ぶ護送車の中で、バトレー将軍が頭を抱え悲嘆に暮れていた。
「親衛隊の者たちは何を考えておるのだ! クロヴィス殿下の死を公表するにしてもタイミングが早すぎる! それに、よりにもよってシュナイゼル殿下の直轄組織である特派を犯人に仕立て上げるなど……」
昨夜の政庁におけるクロヴィス総督の薨御と犯人逮捕の一報は、クロヴィス総督の下で行われていた様々な実験・研究の証拠隠滅と研究所の移転に奔走していたバトレー将軍にとっても寝耳に水であった。
そもそも、クロヴィス総督の死はまだ隠さなくてはならない案件であり、親衛隊の者たちにも厳命していたはずなのだ。にもかかわらず、その親衛隊が勝手にメディアを集めて会見を開き、公表してしまった。
それだけでも既に背信行為だと言えるのに、シュナイゼル第二皇子の配下であり自身も伯爵であるロイド・アスプルンド研究主任を含めた特派をまとめて犯人に仕立て上げることも愚行極まる。
開発した新型機をクロヴィス殿下に接収された恨み? 新型機がテロリストに強奪された責任逃れのために暗殺?
なんだそれは。あの新型機の一件でクロヴィス殿下と特派の間でトラブルが起きたのは事実だが、親衛隊にとって都合よく脚色した内容を発表して既成事実化を図ってまで特派を排除する意味が何処にあるのだ?
それに、ちょっと調べれば簡単にわかる虚偽だというのに、普段は貴族に忖度しているメディアも、今回は皇族殺しの容疑者という事もあってか早朝から特派が犯人で確定したかのような論調で競い合うように報道しあっている。
まるで、何者かによってそうなるように仕組まれたかのように。
「申し訳ありません、殿下……」
G1ベースのメインブリッジに侵入した
守る事が出来なかった事実と、死後もこうやって騒がせてしまっている事にバトレー将軍は後悔の念を抱いていると、護送車が何かにぶつけられたような衝撃が響いた。
「何事だ!?」
『ナ、ナイトメアが! 純血派の……』
「純血派だと!?」
護送車を襲った純血派のサザーランドから通信が入る。
『バトレー将軍。クロヴィス殿下の殺害幇助の容疑で拘束させていただく』
「おのれ、殿下の亡き今、軍部を乗っ取るつもりか……!」
「お分かりですか、私たちの決意を」
「だ……だから、私は!」
バトレーの弁明を聞かずに、ジェレミアのサザーランドは護送車の屋根を力づくで引き剥がす。
『覚えていない? 意識を失っていた? まだそんなつまらぬ言い訳を。G1ベースの監視カメラやデータベースの記録まで破壊しておきながら、よくもまあぬけぬけと!』
「他の者たちにも聞け! 証言なら──」
他の参謀たちの証言で弁明を図ろうとするバトレー将軍に対し、ジェレミアはコックピットから姿を見せて怒りを露わにする。
「親衛隊の者たちといい、貴方といい、そこまで我が身大事か、見苦しい!」
「親衛隊たちの昨夜の発表は、私にとっても寝耳に水であったのだ! クロヴィス殿下の死を早期に発表した事も、特派の者たちを容疑者として拘束していた事も!」
「その言葉のどこを信じろと? あなた方がこれ以上、殿下の御傍にいる事は許されない!」
ジェレミアはバトレー将軍をそのまま拘束し、クロヴィスの遺体も確保する。そしてその足で政庁に戻り、同じ純血派であるヴィレッタから状況の報告を受ける。
「バトレー将軍、並びに旧体制派の文官たちは全て更迭しました。しかし、親衛隊の者たちはそれに反発してナイトメアも持ち出しての応戦も辞さないとの事です」
「我ら純血派が軍部の実権を握るためには、皇族に対する不忠者である親衛隊の連中の排除は必要不可欠だ。しかし、メディアの注目を浴びている状況で奴らを力づくで排除すれば、クーデター扱いで我らが悪者にされかねん」
メディアというのは例え不合理な事でも視聴率が取れるならば、部数が上がるならば時に過激に脚色して世に流すものだ。
ただでさえ冤罪である特派を既に犯罪者として扱うメディアも出ているこの状況では、親衛隊の排除を強行すれば正義は純血派にあるにもかかわらずその真実が曇らされかねない。
「では、特派の件は如何しますか?」
「そうだな……特派を弁護する方向で動いて親衛隊の正当性を崩すべきだろう。ブリタニアの人間が犯人では、我ら純血派の主張にも影が差してしまう。それに特派の無実を裁判で証明する事で、親衛隊は我が身可愛さに同胞に罪を擦り付けた連中であることを知らしめて我等の正当性を高める事ができる。クロヴィス殿下を殺害した真犯人を調べるのは、その後となりそうだな」
「では、私は特派が無実である証拠を集めてきましょう」
「頼んだぞ、ヴィレッタ。私はキューエル卿と共に親衛隊の動向を監視する」
ジェレミアにとって、今回の一件をしくじるわけにはいかない。
エリア11において純血派が軍部の実権を掌握するために、ひいては神聖ブリタニア帝国と皇族の繁栄ために、親衛隊残党という膿は排除しきらなければならない。
そうでなければ、敬愛するマリアンヌ皇妃の忘れ形見であったルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下、ナナリー・ヴィ・ブリタニア殿下が眠るこの地を平定する事など夢のまた夢なのだから。
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クロヴィス総督の薨御とクロヴィス暗殺犯として特派が逮捕されたニュースは、扇グループにも少なくない衝撃が走った。
扇グループの拠点ではテレビから流れるクロヴィス総督の追悼番組を面白くなさそうに眺めていた玉城が、苛立ちを隠さずに口を開く。
「だから、さっさと声明を出せばよかったんだよ! そうすりゃブリキ野郎の皇子を倒した手柄は俺達のものになったのによー!」
玉城が不満を扇にぶつけてると、ぶつくさと愚痴を吐いたまま部屋を出ていく。
「はぁ、ナオト……。やっぱり俺には無理だよ。リーダーなんて」
玉城が乱暴にドアを開けて外に出かけていったのを見送った扇は、机に立てかけられている写真──親友であり、嘗てはこのレジスタンスグループのリーダーであった紅月ナオトが写った一枚に心の内を吐き出す。
紅月カレンの兄、紅月ナオトは既にこの世にはいない。レジスタンス活動の中でブリタニア軍との戦いでその命を落とし、扇が新たなリーダーとなったのだ。
ナオトは非常に優秀な男だった。軍事経験など誰もなかった自分たちを率いて作戦立案から実行まで立派にこなし、一時は日本解放戦線からも一目置かれる勢力だった。
「……シンジュクゲットーで俺達を指揮してくれていた奴がリーダーになってくれたら、何か変わるんだろうか」
リーダーにあるまじき独り言を言ってることも自覚はしている。自分は仲間たちの不満を解消してやる事もできない優柔不断な男で、元々リーダーにふさわしくないのだろう。
扇の気持ちがますます落ち込んでいく中、シンジュクゲットーでも使っていた連絡用端末に通信が入る。
「もしもし、俺だ」
『お久しぶりです』
「その声……まさかシンジュクゲットーのS1か!」
連絡を入れてきたのはシンジュクゲットーで共に戦い、ブリタニア軍の新型機の強奪まで成し遂げた謎の人物であるS1だ。
『はい。覚えてくれていてありがとうございます』
「あれだけの活躍をしたんだ、忘れるわけがないだろう。それで、要件は何だ? 只の世間話という訳ではないだろう」
『話が早くて助かります。実は、相談したい事がありまして……』
「相談したい事?」
『はい。そちらが構わないのであれば明後日の16時頃、東京タワーの展望台に来ていただけないでしょうか? 勿論、そちらの仲間の方もご一緒で構いません。それでは……』
「な、なあ。待ってくれ! 君は一体……切れちまった」
一方的に要件を伝えられた後に通信は切られ、呆然とする扇。
S1から相談したい事があると言われたが、一体どんな内容なのだろうか?
俺達を呼び寄せるための罠だったりはしないだろうかと不安になるが、そんな事をする意味が彼らにあるのだろうかと扇は悩む。
「とりあえず、みんなを呼んで相談しないと」
受けるにしても無視するにしても、自分一人では決められない。そう考えた扇は仲間たちを呼びに部屋を出るのであった。
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ゲットーに点在する廃材置き場の一つ。そこに、イレヴンの孤児たちがマーヤを囲むように集まっていた。マーヤの両手は大量の食料や飲料が入った袋をそれぞれ握っている。
「みんな、手伝ってくれてありがとね。これは心ばかりのお礼よ」
「わーい、ごはんだ!」
「これ、”ほぞんしょく”っていうんだよね? こんなに貰っちゃって良いの?」
マーヤは一人一人に目線を合わせながら、飲み物や保存食と一緒に用意したお弁当を配っていく。ルルーシュの話によると金一封ではないのは、子どもたちがチンピラなどに奪われる可能性を減らすためらしい。
「ええ、皆が手伝ってくれた事に比べたら、これでもお礼には足りないくらいだもの。だから、今回の事を秘密にしてくれたら、皆が安心して暮らせる場所を用意してくれる人を紹介してあげる」
「ほんとう?」
「ええ、本当よ」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
この子供たちはスザクが見つけてルルーシュに報告していた孤児たちだ。
ルルーシュとしては元から保護しようとしていたのだが、初めて会った男のブリタニア人にそう言われても信用されない可能性が高い。だからこそ、少女であるマーヤに頼んである事をする手伝いの報酬という形で、保護するきっかけを作ったのだ。
活き活きとしている子供たちの様子を見て、マーヤは改めてルルーシュは凄いと思う。
ルルーシュは保護された孤児たちが独り立ちしてからも、一人或いは仲間たちと一緒に生きていけるように育てていかなくてはならないと未来を見据えて考えていた。
「マーヤ、こっちは連絡取れたよ」
「分かった、スザク。それじゃ、お姉ちゃんはこの人と大切なお話があるから、明日の朝9時ごろにもう一度ここに来てくれないかな? ここで食べたお弁当の容器は私たちが後で回収しておくから」
「わかったー」
「やくそくだよー」
お腹を空かせた孤児たちがマーヤから渡されたお弁当を食べ始めたのを確認すると、マーヤはスザクとともにその場を離れる。廃材置き場にはルルーシュが簡易的にだが人避けの結界を張ったので大丈夫だろう。
マーヤとスザクは近くの廃墟の中に入り、既に中にいたルルーシュと共に腰を落ち着ける。
「ルルーシュ、分かっていると思うけど」
「勿論だ。今後こんな事に関わらせるつもりはない。今回手伝ってもらったのは、あの子たちを保護できる口実が欲しかっただけだ」
「良かった」
「今の俺達があれを作るためには、何よりも人手が必要だったからな」
スザクにそう言ったルルーシュは、割れた窓越しに見える孤児たちとその近くに布を被せられたものを眺めながらそう呟く。
数日後に控えた特派の裁判。それに合わせた作戦に絶対に必要となる物が置いてある。孤児たちに協力して組み上げたそれは外見だけのハリボテではあるが、役割としてはそれで十分だ。
「彼らは誘いに乗ってくれるかな?」
「乗るさ。奴らは俺達に少なくない借りがある。ある程度怪しく感じても、シンジュクゲットーで共に戦ったランスロットのパイロットという肩書が此処で役に立つ。それに、誘いに乗らなかったならばそれはそれ。その程度の奴らだったと見切りをつけて計画の方はプランBに移行すればいい」
「僕としては言い出しっぺだからプランAで行けると良いんだけどね」
「俺としては、プランBの方がお前を好奇の目と危険に晒さなくて良いんだがな」
扇グループに関しては、誘いに乗ってくれれば成功率が上がるが、誘いに乗らなくてもどうにかなる範疇だ。
ルルーシュは扇グループが協力しようとしなかろうと、特派を救出するための作戦を別個に練っているようだ。
「それで、当日は私は何をやれば良いの?」
「扇グループが誘いに乗るかどうかで変わる部分はあるが、基本的にマーヤには裏方を担当してもらいたい。そこで使ってもらう道具は既に用意してある」
「分かった」
ルルーシュの返答に、マーヤは短く答えて頷く。
ふと何かに気が付いたのか、スザクはルルーシュに問いかける。
「そういえば、ルルーシュ。肝心な事を聞いていなかったけれども良いかな?」
「何だ?」
「名前、どうするの?」
「「名前?」」
「うん。僕たちがブリタニアと戦うにあたっての組織の名前」
「スザク……それ、今聞く事?」
「重要じゃないか。名無しの権平じゃ格好付かないだろう?」
「……ふぅ。スザク、俺達はまだ三人だぞ? そういうのは団員を募集できる状態になってから公表するべきじゃないか? ……まあ、既に13種類程考えているが」
「やっぱルルーシュはすごいな。僕はまだ4種類くらいしか考えていないのに」
「二人とも、もうそんなに考えてあるんだ……」
男の子ってやっぱりこういうのを考えるの好きなんだなぁ。マーヤはぼんやりとそう考えながら、ルルーシュとスザクの会話を聞いているのであった。
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扇たちはS1から指定された時刻通りに7年前の日本へのブリタニア侵攻時に発生した戦闘によって特別展望台のある上部が破壊され、修復されないまま戦争博物館となった東京タワーへと向かった。
そこでカレン・シュタットフェルトの落とし物という事になっていた鍵と通信機から聞こえてきたS1とは別人の声──シンジュクゲットーで扇たちレジスタンスを指揮したゼロを名乗る謎の人物の声──から新たに指定された場所へ向かうと、そこには1台の大型車が駐車されているのを発見する。
東京タワーで通信機と一緒に受け取った鍵はこの車のキーであり、今度はその車で高速道路を指定したルートで向かうように指示されて、その指示に従う扇たち。
扇が車を運転して指定したルートを走っている最中に再びゼロから連絡が届き、カレンが通信機を取る。
『進行方向に向かって右を見ろ。何が見える?』
「ブリタニア人の街だ。私達の犠牲の上に成り立つ、強盗の街」
ゼロからの問いに、カレンは忌々しげに答える。
『では左は?』
「私達の街だ。ブリタニアに吸い上げられた、搾りかすの街」
もう一つの問いに、カレンは悲しげに答える。
『良い答えだ。ではこれから指定するポイントまで来い! そこで私たちは待っている!』
ゼロから一方的に通信が切られると同時に、車のナビに新たな目的地が指定される。
ここまで振り回された以上は、せめて一目見ないと気が済まないという気持ちもあって扇たちは指定された廃工場に向かう。
廃工場内の指定されたポイントに車を停めて扇たちが廃工場内に入ると、暗がりの奥に何者かがいる事に気が付いた。
「お前たち……なのか?」
「罠じゃ……ないよな?」
「なあ、シンジュクのあれは、停戦命令もお前なのか?」
「おい、何とか言えよ」
沈黙を保ったままの何物かに対して、扇たちは次々と疑問や質問をぶつける。すると、廃工場のはずの建物の明かりが点いて奥にいた者たちの姿が露わになった。
そこにいたのは黒と紫を基調としたスーツを着てフルフェイスの仮面をかぶった人物。
「どうだ。租界ツアーの感想は」
「ツアー?」
「おい、ゼロってこんなふざけた奴だったのか?」
「まずは正しい認識をしてもらいたかった。租界とゲットーの、そしてブリタニアと日本の」
仮面をかぶった男、声質からして恐らくはゼロを名乗っていた男の方が、扇たちに現状の日本とブリタニアの差を認識させるためにここまで遠回りをさせたのだと言う。
「確かに、我々とブリタニアの間には差がある。絶望的な差だ。だからレジスタンスとして──」
「違うな。テロではブリタニアを倒せないぞ」
「倒す?」
「テロなど、所詮は子供だましの嫌がらせに過ぎない」
扇の反論に対して、ゼロは彼らが今までしてきたことを一蹴した。
それに対して、扇の仲間たちからは反発の声が上がる。
「何だと!?」
「俺達がガキだってえのか?」
それに対し、ゼロは叱り諭すように言葉を紡ぐ。
「相手を間違えるな。倒すべき敵はブリタニア人ではない。ブリタニアという国家そのものだ」
「あっ……」
「やるならば戦争だ。無関係な民間人を巻き込むな! 撃つ覚悟と撃たれる覚悟。二つの覚悟を決めろ! そして、正義を行え!」
ゼロの言葉に真っ先に反応したのはカレンだ。
「ふ……ふざけるな! 口だけならば何とでも言える! 顔も見せられないような奴の言う事が信じられるか!」
「そうだ、そうだ!」
「その仮面を取れ!」
「なあ、顔を見せてくれないか?」
扇たちの意見も尤もだ。顔を出さずに一方的に今までの自分たちの活動を否定してくる、初めて対面した相手に対して素直に賛同する事など普通は無理だろう。
険悪な空気が漂う中、廃工場の二階に繋がる階段からカツン、カツン、と誰かが下りてくる音が聞こえてくる。
「「「誰だ!」」」
扇たちの言葉に合わせて二階から降りてきたのは、一人の若い男のイレヴンだ。年齢的にカレンと同じくらいだろう。少年は階段を降りながらゼロを諭す。
「ゼロ。君の言う事が正論でも、頭ごなしに言われたら大概の人は頭にくるよ」
「ふむ、私としてはもう少し彼らの本心が知りたかったのだが、お前がそういうならば仕方ないな。―――枢木スザク」
ゼロの口から出た人物の名前に、扇たちは目を見開いた。
「枢木って……確か!?」
「しかもこの声はS1!」
「日本最後の首相の息子と一緒にシンジュクで戦っていたのか、俺達」
日本最後の首相である枢木ゲンブは世間では評価が二分する人物である。
一つは日本最後のサムライ等と呼ばれる肯定的評価。
もう一つはブリタニアへの徹底抗戦を唱えながら真っ先に自決した売国奴と呼ばれる否定的評価。
「えっと、スザク……じゃなくてS1のほうが良いか?」
「いえ、気軽にスザクで構わないよ」
「それじゃあ……スザク、俺達に相談したい事があるって言っていたよな?」
「はい。実はシンジュクゲットーで共に戦った皆にお願いしたい事があって」
「お願いしたい事?」
あの枢木首相の息子からの頼まれごとに、扇は緊張から喉を鳴らす。
「うん。数日前からニュースで話題になっている特派に掛けられたクロヴィス殺害容疑についてなんだ」
「あ~、あれが報道される前に俺達で声明を出せば、手柄になったのにって玉城の奴が愚痴っていたな」
「無理にとは言いません。ブリタニアとこれから戦うためにも、特派を救出する手助けをしてくれないかな?」
「「「……ええっ!?」」」
スザクの提案に、扇たちは一瞬思考が硬直した後に驚きの声が上げる。
「ちょっと待てよ!? 何でブリタニア人の、それも軍の人間をわざわざ助けなきゃいけないんだよ!?」
「そうだぞ! それに、皇族殺しの嫌疑が掛けられている奴らの所なんて、どれだけ警備が厳重か分かったもんじゃない!」
「スザク、貴方が手に入れた新型のナイトメアは確かに強力よ。でも、相手を追い払えばいいだけのシンジュクゲットーの時とは難易度が違いすぎる! 死にに行くようなものよ!」
それぞれが様々な理由からスザクを止めようとする。そんな扇たちに、ゼロが横から説明を加える。
「いや、奪取した新型機、ランスロットは今回使わない」
「え?」
「というより、この救出作戦では戦闘行為そのものが不要だ」
「どういう事だ?」
「相手は命令にかこつけて無力な幼子まで殺そうとする親衛隊の残党だ。戦闘が発生したならば、これ幸いと特派の者たちを殺害して責任を押し付けてくるだろう。故に、この作戦は如何に戦闘を行わず、行わせずに完遂するかがカギとなる!」
戦わずして作戦を成功させると言い切るゼロに、扇は言いようのない惹きつけられる魅力──所謂カリスマというようなものを感じながら疑問点を口にする。
「しかしゼロ、実際問題としてどうやってそれを達成するつもりなんだ?」
「親衛隊の奴らは悪逆だが頭が回る連中ではない。クロヴィス殺害の罪を動機を含めていくらでも捏造できる名誉ブリタニア人ではなく、シュナイゼル第二皇子の直属部隊である特派に着せるような杜撰で考えなしな所からも分かる。そして純血派のリーダーであるジェレミア・ゴットバルトに関して調べた結果、面白いことが分かった。そこで、この二つの勢力の溝を利用する」
ゼロはそう言って、袖から何かを取り出して広げ、描かれている設計図を見せる。
「お前たちには、これを作ってほしい」
「これはっ!?」
「これで外部から見た形状と予想される機構は
「まさか、これを脅しに使って……」
「これによって親衛隊と純血派、そして観衆が取りうる行動のパターンは35パターン。全て此方で対応可能だ。さあ……無実の者を救うために、正義を行おうじゃないか!」
最後の台詞、ルルーシュは絶対悪い表情しながらノリノリで言っている(確信)
それと作戦に協力するかを扇グループが明言する前に巻き込んでいます。来なかったならば別の方法を選んでいましたが、彼らがここまで来てしまった時点でね……。