黒い少女に誘われ、狭間にやってきた。ここに来るのは何度目だろうか?数えるのも面倒な位だ。ああ、うん、退屈だ。最近歯ごたえが無さ過ぎる。今は何人かいるが…片手で数える事が出来るくらいか。あぁ、全力を出せないなんて退屈だ。
…気配を感じる…この世界での最上級の強さを持つ気配を感じる。ようやくだ…ようやく現れた。そいつはどれほど俺を楽しませてくれるのか?
向こうからしかけてきたな。図体に似合わずせっかちな奴だな。ん?奴の口から熱気を感じる。どれ位の熱量なんだ?太陽如きじゃ駄目だぜ。もっと熱くしないと俺の骨まで焼けないぞ?さぁ、来いよ!
ズズゥゥゥン!
…若干肉の焦げる匂いがしたな。いいねぇ、僅かに焼かれたか。こっちの予想を上回ったか…だが、全然物足りねぇな。
次は何だ?爪か?尻尾か?あぁ、うん、その牙も良いなぁ。おっ?なんだい?自慢の爪で来るのかよ。
爪が周辺の空間を切り裂き迫って来た。もし、ただの人間ならその風圧だけで消し飛ぶ程の速さで突き刺してきた。
いいねぇ、じゃあ、「今の」俺の拳とどっちが硬いか…試してみようかぁ!!
爪と右の拳が激突する。
グジュリッ
…拳がいい感じに割れたぜ。まぁこの程度だろ。ん……?何ニヤついてやがる?勝った気でいるのかよ?
おいおい…俺がこの程度の傷でくたばるとでも?動けなくなるとでも?
…ナメタナテメェ!…この俺を!…この程度で終わる存在だとぉ!…歯牙にも掛けない脆い人間だとぉ…。
上等だぁ…名乗れよ蜥蜴ェ…たかが数万年しか生きてねぇ奴が俺を舐めてんじゃねぇ。
…グレートレッドだって?へぇ…まぁ…それがどうした。
久しぶりに名乗ってやる。永き時を生き、無限の時を刻む、紅き羅刹…ただの人外「那由他」だ。
さぁ駄弁ってないでやろうぜ!準備はいいかよ?爪の手入れは?ブレスの熱量は?そして!負ける覚悟はできたかい!?さぁ、殺ろうかぁ!ハリー!ハリー!ハリー!!
「………レッツ・ダンスマカブル
」
side:龍
久しぶりに来客がこの狭間に来た。他人を見たのはいつ以来だろうか。あの無限とのじゃれ合いから随分時が経った。
見た目はタダの人間のようだ。だが、ここに来るからにはタダの人間なんてありえない。此処は次元の狭間…弱者は存在できない空間だ。
だが、念には念を…我のブレスで消滅するか存在するか試そう。仮にこの空間で生きることができても、消滅したら、所詮そこまでの存在ということだ。さぁ、避けれるものなら避けてみろ!耐えれるものなら耐えてみろ!!このブレスが貴様の試金石だ!!
ズズゥゥゥン…!!
前方に爆煙が広がる。そこには少し服と皮膚が焦げ、赤いコートを纏い
、赤いワイシャツ、黒のネクタイ、黒のスーツを、薔薇の刺繍がされた黒い帽子、不敵に笑う赤目紅髪の男がいた。
ほほう…ならば、我が爪で切り裂いてやろう!奴は右拳を我の爪に合わせてきた。グジュリ…奴の拳が割れた。
なんだ…その程度か…この狭間に来れるくらいなら、もっと頑丈だと思っていたが…期待外れか?…ん?男の目が突如、憤怒の色に染まった。髪が逆立った。奴に何が起こった?
「…ナメタナテメェ!クソみてぇな攻撃で動けなくなるとでも?所詮脆い人間だと?…ふざけんなよ…どいつもこいつも、俺相手に手加減なんてしてんじゃねぇよ!…あ〜ムカつくぜぇ…こっちは壊さねぇように、全身全霊で手加減してやってんのに…それをいいことに大したことがないだぁ!?…上等だよ、名乗れよ蜥蜴ェ…テメェが死んでも覚えてやっからよぉ!!………あ?グレートレッド?…あぁ…ただ狭間を泳いでいるだけのぐうたらドラゴンちゃんかよ…え?なに…怒っちゃったの?無限の龍を追い出して俺が一番強いってかぁ?…おーい?プルプルしちゃってどったの蜥蜴ちゃーん?激おこプンプン、ムカ着火ファイヤーインフェルノってか?…ヤル気マンマン?いいねぇいいねぇ!楽しくなってきたじゃんかよぉ!しょうがねぇから、こっちも少しヤル気出してやるよ。嬉しいだろぉ?…うーん、いい感じの闘気じゃねぇの!気分がいいねぇ!!ワクワクするねぇ!!よし、名乗ってやるよ…永き時を生き、無限の時を刻む、紅き羅刹…ただの人外「那由他」だ。聞こえたか?テメェくらいのレベルなら理解できんだろぉよ。さぁて…レッツダンスマカブル!」
男の威圧感が、雰囲気がガラリと変わった。それとともに、奴の周りには紅い荊棘が生い茂り、赫いオーラが噴き出る。
「あの野郎に『私の歌劇に出るには、それなりの技名が必要であろう?なぁ、わかっておるよな、友よ。貴殿は裏ボス的扱い、故に生半可な技名では場が白けるというもの…様式美は重要であろう?』とかドヤウザ顏で言ってきたから、作ってやったよ。聖遺物とは関係ないんだかな。」
『咲けよ、紅薔薇…形成:羅刹道・大紅蓮羅城門』
宣言と同時に男の背後に禍々しい紅い門が現れた。燃え盛る炎のような赫…血のように鮮やかな紅…気品溢れる衣のような緋…様々な赤色が混在している…その扉には厳重に鎖が巻かれている。きっと余程のことが無い限り、この扉は開かれないだろう。そう、歯応えのある相手が現れるまでは開かないだろう。
…男の周りの荊棘に薔薇の華が咲き乱れる。男のオーラを吸い取り、養分として咲いたのだろう。心臓の鼓動のように音を鳴らしている。
満開になるまで待ってる義理もない。故に仕掛けよう。さっきよりも熱いブレスを奴に…っ!?目の前に右腕を振りかぶった奴がいる!その握った拳を見て直感する…この拳を避けることはできない…否…避けてもその右拳は必ずあたる。
「とりあえず一撃だ…俺相手に手加減したということは、俺を舐めた…つまり俺の世界を舐めたってことだろ?…どちらにしろこの際関係はねぇが…」
男の…那由他の拳がギチギチと音がなる
「俺の想いが所詮『その程度』だってことだろ?…俺は背負っている…俺は誰よりも重い…決して軽くは無い期待を…数多の出会いで得た絆を…それらを大事にしているからこそ…俺が背負っている想いを…『その程度』で済まされるなんて…許せねぇ…だからこそ…」
ギチギチギチギチギチギチ
『想いを……握る……』
『想いを……乗せる……』
『想いを……打ち込む!!!』
ゴォッ!!
奴の拳が我の頬骨を捉える…骨がミシミシとヒビ割れていく…拳が重い…その小さな見た目に反して重い…我の身に響く…実感する…この那由他の『想い』を…認めよう…奴は真の敵であると
故に此処からは真剣に死会う
「ようやく目覚めたかぁ?…さっきよりいいねぇ…何より『眼』が変わった。…さぁやろうぜ!此処からは俺もイロイロやらかすから、簡単にくたばんじゃねぇぞ!そぉら、伸びろぉ!」
そう言った途端、紅い荊が縦横無尽に伸びる。そして我の尾に巻き付き、振り回される。視界が回る。
「ほらほら、捕まえたぜぇ!そぉらっ!!」
荊の壁に叩きつけられる…棘が甲殻を突き破り、血が流れる…久しぶりの流血に驚きを多少感じながらも、奴を探すと…
「なぁに止まってんだよぉ!飛べッ!蛇翼…崩天刃!!」
上空に蹴り飛ばされ、荊に捕まり、叩きつけられる。荊の壁に拘束された。
「死にな!オラオラオラァー!」
物凄く踏まれ、紅いオーラを纏った脚に蹴られ、吹っ飛ぶ。
「大蛇…武錬葬!退屈しのぎにもなんねぇなぁ、クズが!」
奴の顔が「せっかくやる気出してやったが、がっかりだぜ」と言ってる。…おいおい、貴様も我を舐めているな。赤龍神帝と呼ばれてる我がこんな醜態を晒すとでも?確かに現状はボコボコにやられたが…これからが本番に…ッ!ん?
「んー…ものたりねぇ………ッ!貴様見ているなっ!」
那由他が荊を伸ばし、何かを捕獲した。その先に巻かれていたものは…オーフィスだった。
「お前にお願いされて、ここまでやったが…楽しくなかったな…だから、お前も俺の相手をしろ…異論は認めねぇ。…ん?二人掛かりでもだめか?じゃあ、あそこら辺に封印されてる獣でも参加させよう。それならちょうどいいだろ?」
〜続く〜