比企谷八幡と仮想世界(改稿版)   作:チャキ

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どうもチャキです!本当に申し訳ありません。勝手ながら改稿することになりました。良ければ見てください。では第1話どうぞ。


第1話

八幡side

 

修学旅行の1件で更に嫌われてしまった。文化祭でも嫌われてたのにそれを悪化させる感じになったもんな。まぁ、そりゃそうだよな。あんなことをしたんだから。何故そうなったかと言うと、葉山グループの3つの依頼があり、それを解消する為にオレは海老名さんに嘘告白した。オレが嘘告白をする時に雪ノ下達はオレに任せると言ったのに、あいつらはオレを…

 

雪ノ下『あなたのやり方嫌いだわ』

 

由比ヶ浜『もっと人の気持ち考えてよ』

 

と言ってきた。なんてだよ……お前らはオレに任せるって言ったのに。由比ヶ浜……お前が安易に受けた依頼だろ。オレはやめた方が良いって言ったのに。雪ノ下もだ。お前も最初、否定していた癖に由比ヶ浜に流されて引き受けた。あんまり手伝いもしていなかった癖に。それに由比ヶ浜が自分の主観で妹の小町に修学旅行の件が話がいったみたいだ。それにより小町はオレの話を聞かずに、オレのせいと思い込み、雪ノ下達に謝ってこいと言い出した。

 

 

 

 

ああ……そうか。お前は家族であるオレよりも他の奴の言う事を信じるんだな。それに小町主義の親父はそれを信じて、親父までオレを悪者扱いだ。日頃から小町ばかり甘やかしていたけど、ここまでとは思わなかった。親なら人の話くらい聞けると思ってたんだがな。雪ノ下も由比ヶ浜も小町同様話を聞いてくれない。罵倒も更にひどくなってきた。それにオレには来て欲しくないって言ってたから、その日から部室には行ってない。

 

はぁ……どうせオレの話を聞いてくれる人なんていないんだな、と思っていたが1人だけ聞いてくれた人がいた。それはオレの母ちゃんだった。オレはそれがひどく嬉しかった。誰も聞いてくれないと思っていからだ。

 

母「当然でしょ?片方だけ話を聞いて信じたり、事情をちゃんと調べないのはダメだからね。それに八幡は私の大切な子供だもん。話を聞くのは当然でしょ」

 

八幡「う…うぅ…うぅぅ」

 

オレは母ちゃんからそう言われた時、涙が溢れてきた。止まらなかった。拭っても拭っても溢れてくる涙。オレは何とかして止めようと思った時、母ちゃんに優しく抱き締められた。

 

母「辛かったね。苦しかったね。でも、大丈夫よ。辛い時は泣いていいんだよ。お母さんの胸貸してあげるから、好きなだけ泣きな」

 

そう言ってオレの頭を優しく撫でてくれた。

 

八幡「…母ちゃん……母ちゃん……母ちゃん!」

 

母「うんうん。大丈夫大丈夫。大丈夫だよ八幡」

 

八幡「うぅ…ああぁぁ……!」

 

嗚咽を漏らしながら、八幡はより一層涙を流す。母親の温もりを求めるように抱き締める力も強まる。八幡の母も八幡を力いっぱい抱きしめた。

 

 

 

涙が枯れるくらいに泣いた八幡。そっと母親から離れる。離れた八幡の顔は若干赤くなっていた。

 

母「ふふっ」

 

八幡「ううっ…」

 

母「可愛かったわよ八幡」

 

八幡「や、やめてくれよ」

 

母「ええ〜?本当に可愛かったんだもん」

 

八幡「やめてくれよ」

 

母「まぁ、それは置いといて。何があったか聞かせてくれる?」

 

八幡「わかった」

 

それからオレは修学旅行の事を話した。それだけではなく、文化祭の事やこれまであった事を話した。すると母ちゃんはまたオレを優しく抱きしめて、頭も撫でてくれた。

 

母「そんな事があったのね。八幡これだけは言わせて、良く頑張ったわね。お疲れ様」

 

八幡「…あっ」

 

それを聞いたらまた涙が流れた。

 

 

 

 

そして涙も止まり、また母ちゃんから離れる。

 

母「そっか…もう良い頃合いかもしれないわね」

 

八幡「何がだよ」

 

母ちゃんは突然そう言い出してきた。何が良い頃合いなのだろうか。

 

母「あのね八幡。もう私あの人と離婚しようと思ってるの」

 

八幡「え?突然どうしたんだよ」

 

母「もう私あの人とやっていけそうにないと思っていたの。小町ばっかり構って、八幡には何もしてないじゃない。だから離婚するの」

 

確かに親父はオレには全くといっていいほど構ってない。ほとんど小町ばかりだ。

 

母「八幡は来てくれる?」

 

八幡「そうだな。もうオレには母ちゃんしかいないからな。ついて行くよ」

 

母「そう、わかったわ。離婚や引越しとか色々準備が必要ね。八幡、学校は転校することになるけどいい?いい?」

 

八幡「ああ、良いぞ!あそこに居ても居心地悪し」

 

母「そ、じゃあ先生に言わないとね」

 

八幡「そうだな」

 

母「そうだ八幡」

 

八幡「なんだ?」

 

母「あのね。今回、八幡が関わってきた人は、たまたま八幡の事を信じてくれなかった人だったけど、世の中には八幡の事を信じてくれる人もいる事を忘れないでね」

 

八幡「オレを信じてくれる人…」

 

母「ええ、必ずあなたを信じてくれる人がいるわ。すぐには信じられないかもしれない。だけどね、みんながみんなそういう人じゃないってことを覚えといてね」

 

八幡「わかった。ありがとう母ちゃん」

 

確かに母ちゃんの言う通り、世の中の人があいつら見たな奴じゃ無いって事はわかっている。オレの事を信じてくれる人か…会ってみたいな。

 

 

 

 

 

 

翌日、オレは平塚先生の元へ事情を話した。

 

平塚「そうか……そんな事があったのか。今まで気づけなくてすまなかった」

 

そう言って平塚先生はオレに頭を下げてきた。

 

八幡「ちょっ!?頭あげてください!」

 

平塚「だが、私があそこに連れていかなかったら比企谷は」

 

八幡「いえ、平塚先生はオレのためにしてくれたんです。それは感謝しているんです。だから頭を上げてください」

 

平塚「そうか。そう言って貰えて嬉しいよ。もう一度言わせてくれ。すまなかった」

 

八幡「もう大丈夫ですから」

 

平塚「ああ。そうだ比企谷。親が離婚するのなら名前はどうなるんだ?」

 

八幡「確か母親の旧姓は八神でした」

 

平塚「そうか。………あいつらには言わない方が良いか?」

 

八幡「はい、出来ればお願いします」

 

そう言って頭を下げる。

 

平塚「わかった。まぁ、ここにいるのは短いけど頑張りたまえ」

 

八幡「はい」

 

そしてオレは職員室を後にした。それからは平日は家と学校の往復するだけの生活。家に帰ったら引越しのため準備をする。まぁ、オレは荷物が少ないから楽だった。家は東京の方のマンションになった。どうやら母ちゃんは今の仕事をやめて違う仕事にするようだ。理由を聞いたら…

 

母『もう今の仕事には疲れたのよ。それに息子との時間も作りたいからね』

 

と言っていた。そして今まで甘えさせてなかった為か、なんでも買ってくれると言ってくれた。最初はいらないと言ったんだけど、母ちゃんは…

 

母『私が買いたいの。だから何か欲しいものない?』

 

と聞かれた。オレはしばらく悩んだ。本当に良いのかどうかと。だけど、母ちゃんを見ているとどうやら引く気ないらしい。オレの座右の銘は押してダメなら諦めろだ。だからオレは母ちゃんにこう言った。

 

八幡『じゃ、じゃあナーヴギアとソードアート・オンラインというソフトが欲しい』

 

母『わかったわ』

 

そして母ちゃんは本当に買ってくれた。

 

 

そして数日後、母ちゃんと親父は離婚した。オレは母ちゃんへ小町…元妹は親父の方へいった。そしてオレは比企谷八幡から八神八幡へとなった。学校も転校して東京の進学校へと転校した。あ、そうだこれだけ言っておこう。母ちゃんの名前は八神七海である。

 

それからは母ちゃんは前よりも早く帰ってくるようになった。ご飯は母ちゃんが作ってくれた。久しぶりに食べたけどすげえうまかった。

 

 

そして今日、この日ソードアート・オンラインの開始日だ。オレは落ち着きがなかった。前々から楽しみにしていたからな。それに母ちゃんに買ってもらったからな。大切にしないとな。高2なのに子供のような気持ちが溢れている。βには惜しくもなれなかったけど、母ちゃんのおかげで初回ロットを手に入れることができた。そうこうしていると開始である13時まで後5分になっていた。オレはナーヴギアを被り、ベットに寝っ転がる。トイレも体調も大丈夫。

 

そして視界のデジタル時計が13時になった瞬間

 

八幡「リンクスタート」

 

音声入力によりナーヴギアが起動し、急激に視界が変化した。ワームホールの様なものをくぐり抜け、ながらいくつかの起動チェックが行われた後、次いでアカウントの設定画面に移行する。

 

 

 

そして《Welcome to Sword Art Online!》という文章が視界に浮かんで再び視界が一転すると、オレは仮想世界へと放り出されたのだった。そこには信じがたい光景が広がっていた。

 

 

 

八幡「おお、ここが…SAO…すげぇ…」

 

 

 

驚きと興奮で語彙力が低下してしまった。ホントすげえところだな。日差しに照らされた、中世ヨーロッパ風の石造りの街並み。ファンタジー感丸出しの装備で行き交うプレイヤーたち。彼方を飛ぶワイバーンの群れ。非現実感漂うその光景にオレは柄にもなく興奮して、仰ぐように周囲を見回した。そうだ早速武器を買うか。どんな武器にするか悩んだ結果、片手直剣にした。武器を背中に装備して、フィールドへ出て辺りを見渡す。そこは広い草原のようだ。そこには青いイノシシのモンスターがいた。そしてそんなイノシシと戦っている2人のプレイヤーがいた。1人は赤いバンダナをつけた男性プレイヤー、もう1人はそのプレイヤーに戦いのレクチャーをしていた。あいつはβなのか?オレも教わりたかった。だが、あいつらの事が脳裏によぎる。くっ!やはりオレは人を信じられなくなってきてるのかもしれない。どうしてもまた、やられてしまうのではないだろうかと思った。そんな時、母ちゃんの言葉がよぎる。

 

七海『みんながみんなそういう人じゃ無いって事覚えといてね』

 

ああ、そうだ。みんながみんなそういう人じゃない。何最初から決めつけてるんだよ。初対面なのに失礼過ぎるだろ。頑張れオレ。頑張って話しかけるんだ。リアルじゃなくてもここで友達が作れるかもしれないんだ。頑張れオレ。

 

オレは意をけして2人に話しかける。

 

八幡「なぁ……ちょっと良いか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「どうした?」

 

八幡「失礼かもしれないが、あんたはもしかしてβテスターか?」

 

「ああ、そうだけど」

 

八幡「もしかしてそっちの人にレクチャーしているのか?」

 

「ああ、そうだ。良くわかったな」

 

八幡「いや……勘だけどな。じゃなくて…急に悪いんだけどオレにもレクチャーしてくれるか?」

 

ちょっと緊張したけど、何とか噛まずに言えたぞ。やっぞ母ちゃん!

 

「ああ、良いぞ」

 

八幡「本当か!?」

 

「ああ、1人も2人も変わらないしな」

 

八幡「そっか、サンキュ」

 

キリト「俺はキリトよろしくな」

 

クライン「俺はクラインだ!」

 

そう言って2人はオレに手を差し出してくる。向こうが名乗ったんだからこっちも名乗ならないとな。

 

エイト「オレはエイト。その…よろしく頼む」

 

そう言って2人の差し出した手を取る。

 

キリト「エイトか。それとタメで良いぞ」

 

クライン「俺も」

 

エイト「わかった」

 

そしてキリト先生のレクチャーが始まった。

 

キリト「ソードスキルを発動させるには、まずモーションを認識させなきゃいけないんだ。エイトは俺と同じ片手用直剣だから、構えはこんな感じだな」

 

 

構えを取って約一秒後、キリトの腕が光り、ソードスキル『レイジスパイク』を放った。モンスターの青いイノシシ、『フレンジーボア』はポリゴン片となって消えた。へぇ、これがソードスキルか。

 

キリト「まあ、こんな感じだな。コツを掴むまでに時間がかかるかもしれないけど、そこは個人でがんばってくれ」

 

エイト「おう、わかった。ちょっとやってみるか」

 

クライン「難しいぜ」

 

エイト「そんなにか?」

 

クライン「おうよ」

 

そうか。難しいのか。でも、やれるだけやってみるか。オレは念の為モンスターのいない方へ向かって構える。キリトと同じモーションをとったつもりだったが、中々上手くいかない。

 

エイト「ホントに上手くいかないもんだな」

 

クライン「そうだろうそうだう!」

 

キリト「なんで偉そうなんだよ」

 

エイト「ホントな」

 

クライン「うるせぇ」

 

ほんの短いやり取りだが、楽しいの思えた。オレはこいつらなら信じてもいいのかもしれない。こんな簡単なことで信じるとは、オレも単純みたいだな。だけど、本当に楽しいと思っている。

 

エイト「それにしてもタイミングが合わないと発動しないのか。確かにムズいな」

 

キリト「ん〜、そうだな。スキルが立ち上がったのを感じたら、スパーンと打ち込む感じ」

 

エイト「ほう…」

 

スキルが立ち上がったのを感じたらスパーンね。やってみるか。そう思いオレはモーションを取る。そしてキリトの言う通りスパーンと打ち込む。素振りだけどな。

 

するとソードスキル『レイジスパイク』が発動に成功したのだ。

 

エイト「えっ……これが?」

 

キリト「やったな!できたな!」

 

エイト「お、おう」

 

キリト「イェイ!」

 

と手を上げてきた。えっ?何?

 

キリト「どうした?ハイタッチだ」

 

エイト「あ、ああ。なるけどね」

 

オレはキリトとハイタッチを交わす。ハイタッチなんて生まれて初めてしまたわ。

 

クライン「うっそ〜ん。俺まだできてねぇのに」

 

エイト「たまたまだって」

 

キリト「そうそう、クラインもすぐにできるって」

 

クライン「そうだな。愚痴言ってもしょうがねぇしな」

 

キリト「そうそう。その意気だ。エイトは今の感覚を忘れずにモンスターにやってみたらどうだ?クラインは俺が見とくからさ」

 

エイト「おう、そうさせてもらう」

 

オレはキリト達から少し離れて『フレンジーボア』と戦闘を開始する。さっきのようにモーション取り、スキルの立ち上がりを認識する。そしてフレンジーボアが突進してきたところをさっきの『レイジスパイク』を放つ。するとフレンジーボアに命中して、フレンジーボアはポリゴンの欠片となって散っていた。

 

エイト「よしっ!」

 

キリト「ナイス!」

 

エイト「おう」

 

クライン「おわっ!?マジかよ!?」

 

エイト「たまたまだって。お前も頑張れよクライン」

 

キリト「そうだぞ」

 

クライン「おう!サンキューな。ええっと……スパーンだよな」

 

そして、クラインが曲刀を構えるとスキルが立ち上がった。そして近くにいたフレンジーボアに当てる事ができた。そしてフレンジーボアはオレの時同様ポリゴンの欠片となって散っていた。

 

クライン「よっしゃあ!!」

 

キリト「おめでとう」

 

エイト「やったな」

 

キリトはクラインとハイタッチをした。そしてオレもクラインとハイタッチをした。なんか良いなこういうの。初対面なのにここまで楽しく思えるのか。

 

キリト「でも今のイノシシ、スライム並だけどな」

 

エイト「だろうな」

 

クライン「ええー!?まじかよ!俺はてっきり中ボスなんかだと」

 

エイト「んな訳ねぇだろ。ちょっと考えたらわかるだろ」

 

キリト「だな」

 

クライン「ひっでぇ」

 

キリト「フッ」

 

エイト「くくっ」

 

クライン「…はは」

 

3人「「「あはははは」」」

 

3人は顔を見合わせて笑いだした。

 

エイト「そういばスキルって他にもあるんだろ」

 

キリト「ああ、そうだな。スキルの数は無数にあると言われている。その代わり魔法は無いけど」

 

クライン「RPGで魔法無しか、大胆な設定だよな!」

 

エイト「そうだな」

 

キリト「よし、次行くか?」

 

クライン「おうよ!ガンガン行こうぜ!」

 

キリト「エイトは?」

 

エイト「ああ、オレも行く」

 

クライン「よし、行くか!」

 

キリト・エイト「「おう」」

 

 

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あれから何時間経っただろうか。分からないけど、外の景色が夕焼けになっていたので、かなり時間が経った事がわかった。

 

クライン「いや〜、ホントすげえよな。ここがゲーム中なんてよ」

 

エイト「ホント信じられねぇよな」

 

クライン「作った奴は天才だぜ」

 

エイト「そうだな」

 

クライン「ホントこの時代に生まれてきて良かった〜」

 

ホントにこの時代に生まれてきて良かったわ。母ちゃんに感謝しねぇとな。

 

キリト「大袈裟だな」

 

クライン「初のフルダイブ体験なんだからよ」

 

エイト「オレもだ」

 

キリト「へー、じゃナーヴギア用のゲームをするのもこれが初めなのか?」

 

クライン「つーか、SAOの為に慌ててハード揃えたって感じだな」

 

エイト「オレは母親に買ってもらった」

 

クライン「へー、良い母ちゃんじゃん」

 

ああ、ホント自慢の母ちゃんだよ。そうだちょっと気になる事があったんだ。キリトに聞いてみよう。

 

 

エイト「ちょっと聞くけど、βの時はどこまで行けたんだ?」

 

キリト「2ヶ月で8層までしか行けなかった」

 

エイト「へー」

 

キリト「でも今度は1ヶ月もあれば余裕だけどな」

 

エイト「かなりのハイペースになるじゃねぇのか」

 

キリト「ああ、かもな。でもやってみせる」

 

ほう…やる気満々みたいだな。

 

キリト「よし、もうひと狩り行くか?」

 

 

クライン「おうよ!って言いたい所だけど…腹減ってよ。1回落ちるわ」

 

キリト「こっちの飯は空腹感を紛らすだけだからな」

 

クライン「へへっ、5時半に熱々のピザを予約済みよ!」

 

エイト「用意がいいな」

 

キリト「だな。じゃエイトはやるか?」

 

エイト「おう、少しだけやったら。オレも落ちる」

 

キリト「そうか」

 

エイト「それよりも……その……フレンド登録良いか?キリトが嫌じゃなければ」

 

キリト「……ああ、いいぜ」

 

キリトの了承も得てフレンド登録をした。そしてキリトともうひと狩りしようとした時だった。

 

クライン「あれ?」

 

キリト「どうした?」

 

エイト「何かあったのか?」

 

クライン「ログアウトボタンがねぇな」

 

エイト「んなわけねぇだろ」

 

そう言いながらオレもシステムウインドを開きログアウトボタンを探す…が。

 

エイト「あれ?ない?」

 

キリト「え?そんな筈は……ない」

 

クライン「まじかよ!?俺のピザとジンジャーエールがー」

 

エイト「GMコールはしたのか?」

 

クライン「したさ、でも何もねぇんだよ」

 

キリト「なんでだ?」

 

クライン「というか他にログアウトする方法ってなかったけ?」

 

キリト「……無い。プレイヤーが自発的にログアウトするには、メニューを操作する方法しか無い」

 

クライン「んなバカな絶対なんかあるって。もどれ!ログアウト!脱出!」

 

でも何もこきない。

 

キリト「無いって言ったろ。マニュアルにも緊急切断方法はのってなかった」

 

エイト「マジかよ」

 

クライン「あ、そうだ。頭からナーヴギアを外せば!」

 

キリト「できないよ。俺達は今、現実の体を動かせないんだ。ナーヴギアが、俺達の脳から体に向かって出力それる命令を、全部ここで遮断されている」

 

キリトは後頭部の下、延髄をとんと叩く。

 

エイト「てことはバクが直るまで待たないといけねぇのか?」

 

キリト「もしくは現実世界の誰かがナーヴギアを外してくれるまでだ」

 

クライン「でも、俺1人暮しだぜ。2人は?」

 

キリト「母親と妹がいる。だから晩飯になったら」

 

そう言いかけた時だった。クラインがキリトの肩をつかみ出した。

 

クライン「キリトの妹さんっていくつ?」

 

は?こいつもしかして?

 

キリト「は?あいつ、運動部だしゲーム大嫌いだし、俺らみたいな人種とは接点ないって」

 

クライン「そんな事言わずごふぉ!?」

 

キリトがクラインの股間を膝蹴りをしたのだ。うわっ……痛そうだな。あっ、そういえば痛くないんだったけ?それにしても妹か……嫌な奴を思い出してしまったぜ。まったくこんな時に…

 

キリト「ったく……エイトは?」

 

エイト「え、ああ、オレは母親しかいねぇから、キリトみたいに晩飯になれば」

 

キリト「そうか。それにしても変だと思わないか?」

 

クライン「そりゃバクなんだし、変だろうよ」

 

キリト「ただのバクじゃない。ログアウト不可能なんて今後の運営にも関わる大問題だぞ」

 

エイト「確かに」

 

もし、バクなら運営が強制ログアウトでもするはずだよな。

 

 

するとその時、始まりの街の鐘が大きく鳴り響いたのだ。その音色はなんだか不吉な感じがする。

 

 

そして気づいた時にはオレ達3人は始まりの街の中央の大広場にいた。

 

キリト「強制転移?」

 

キリトが冷静に分析する。ふと周囲を見渡すと、大広場はオレたちと同じように転移されてきたであろうプレイヤーたちで埋め尽くされていた。鐘が鳴り止んでも、周りはザワザワとしている。オレはその後周りを見渡していると、空にポツリと浮かぶ、紅く塗られた≪WARNING≫の表示があった。

 

キリト「あれは?」

 

その瞬間、表示が瞬く間に増殖し、空一面を紅く覆い尽くす。さらにそこから赤黒い液体が漏れ出し、空中に留まり、別のものへと変化していった。

 

一体何が起きようとしているんだ?キリトを見ると、キリトも何が起きているのかわかっていないみたいだ。元βテスターのキリトでも分からないみたいだ。

 

そして趣味の悪い演出を経てそこに現れたのは、一体の巨大なアバターだった。紅いローブを纏いフードを被っているが、その中にあるはずの顔はない。そいつは空中に漂いながら、大広場の1万人近いプレイヤーたちを睥睨すると大仰な仕草で語りだした。

 

「プレイヤー諸君、私の世界へようこそ」

 

先ほどまでざわついていたプレイヤーたちは、話が始まった途端水を打ったように静まり返る。オレも上空に浮かぶそいつを呆然と仰ぎ見ながら、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。

 

「私の名前は茅場晶彦。現在、この世界をコントロール出来る唯一の人間だ」

 

 

茅場晶彦。

その名前を聞いた瞬間プレイヤーたちに再び動揺が走ったが、当の本人は意に介す様子もなく話を続ける。

 

 

「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す。これはゲームの不具合ではなく、ソードアートオンライン本来の仕様である。……諸君はこのゲームから自発的にログアウトすることは出来ない」

 

 

何でもないことのように語る茅場晶彦。淡々としたその口調に、オレはかえって茅場晶彦の狂気を感じていた。

 

 

「また、外部からのナーヴギアの停止、または解除による強制ログアウトもありえない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる」

 

雰囲気に呑まれ静まり返っていたプレイヤーたちが、話が続くにつれてざわついてくる。自分の中で冷静に事態を飲み込もうとする部分と、それを拒否しようとする部分がせめぎ合っていた。

 

クライン「何言ってんだ?あいつ?頭おかしくね?なぁキリト、エイト」

 

キリト「信号素子のマイクロウェーブは確かに電子レンジと一緒だリミッターを解除すれば脳を焼き切ることも」

 

クライン「でも電源を切れば」

 

キリト「いや、ナーヴギアには内蔵バッテリーが内蔵されている」

 

クライン「でも無茶苦茶だろ!」

 

確かに無茶苦茶だな。

 

 

「しかし残念ながら、警告を無視してナーヴギアの解除を試みた例が少なからず存在し、既に213名のプレイヤーがこのソードアートオンラインの世界から、そして現実世界からも退場している」

 

 

そう言って、茅場は空中に幾つかのウインドウを出現させた。そこにはナーヴギアによる死亡者のニュース映像が流れており、茅場の発言が単なる狂言ではないことを否が応でも理解させられてしまう。

 

 

キリト「213人も」

 

エイト「そんな……バカな」

 

ありえない。そんなの絶対嘘に決まってる。そう信じたい。

 

「だが今ここに居る諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。様々なメディアが繰り返しこの事実を報道したことを鑑み、これ以上ナーヴギアの強制解除による被害者が出る可能性は低くなったと言っていいだろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま2時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他準じる施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心してゲーム攻略に専念してほしい」

 

エイト「ざけんなよ」

 

そこでとうとうオレの口から鋭い叫び声が迸った。

 

エイト「何言ってんだよ!こんな状況でゲームなんて出来るわけねぇだろ!!」

 

キリト「そうだ!」

 

「しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、ソードアート・オンラインは、既にただのゲームではない。もうひとつの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される」

 

 

瞬間、甲高く哄笑したいという衝動が腹の底から押し寄せてきて、オレは必死にそれを押さえ込んだ。

 

オレの視界左上には、細い横線が青く輝いている。視界を合わせると、その上には324/324という数字がオーバーレイ表示される。これがヒットポイント。オレの命の残量。これがゼロになれば、オレは本当に死ぬ。マイクロウェーブに焼かれて即死すると、茅場は言った。本物の命がかかった遊戯。つまり、デスゲーム。

 

「諸君らがこの世界から解放される方法はただ1つ。この始まりの街の存在するアインクラッド第1層から第100層までの迷宮を踏破し、その頂点に存在するボスを撃破してこのゲームをクリアすることだけだ」

 

 

 

その茅場の発言にとうとう耐えきれなくなった様子で、隣に立つクラインが叫ぶ。

 

クライン「第100層……? ふざけんなっ…! βテストじゃマトモに上がれなかったんだろ!?」

 

この話はさっきフィールドでキリトから聞いた話だ。

 

「それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え」

 

 

その言葉を受け、周りのプレイヤーたちは律儀にアイテムストレージを確認する。オレも恐る恐るアイテムストレージを確認する。そこにあったのは…

 

エイト「手鏡…だと?」

 

 

手鏡がプレゼントだと?つくづくふざけてやがるなと思った瞬間、青い光に包まれた。オレだけじゃない他の周りの連中もその光に包まれる。けどその光は直ぐに収まる。なんだ?と思い近くにいたであろうキリトとクラインに視線を移すと…そこにはキリトとクラインとは違う奴がいた。

 

エイト「誰だ?」

 

 

キリト「こっちのセリフだ。ん?その声はエイトか?」

 

 

エイト「ああ……じゃあこっちはクラインか?」

 

クライン「え?キリトとエイト!?なんだって顔が…」

 

 

キリト「そうか……ナーヴギアは高密度の信号素子で顔を覆ってる。顔の形を把握できるんだ。でも身長や体重は」

 

エイト「ナーヴギアを初めて装着する時、キャリブレーションとかで、自分の体をあっちこっち触ったからか」

 

確か母ちゃんと付き添った記憶がある。

 

キリト「なるほど。その時のデーターを」

 

クライン「でもよ、なんでだ!?そもそもなんでこんな事を……」

 

エイト「それはあいつが答えてくれるだろうよ」

 

キリト「ああ、だな」

 

「諸君らは今、何故、と思っているだろう。何故茅場晶彦はこのようなことをするのか、と」

 

 

オレはその言葉に神経を集中させた。茅場晶彦のこのテロ行為に目的があるのなら、交渉の余地があるかもしれない。だが続く言葉によって、そんなオレの希望は儚く打ち砕かれた。

 

 

「しかし、既に私に目的は存在しない。私が焦がれていたのは、この状況、この世界、この瞬間を作り上げること。たった今、私の目的は達成せしめられた……」

 

短い間に続いて、無機質さを取り戻した茅場の声が響いた。

 

「……以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の……健闘を祈る」

 

最後の一言が、わすがに残響を引き、消えた。言い終えると、巨大なアバターは耳障りなノイズを立てながら崩れ去っていった。同時に空を覆っていた紅い表示も一瞬にしてなくなり、霞みがかった夕暮れの空が視界に戻ってくる。しかし不気味な演出が消え去っても、広場を支配する言い知れぬ不安だけは決して消えることはなかった。

 

 

そして…この時点の差に至って、ようやく。1万人のプレイヤー集団が、然るべき反応を見せた。つまり、圧倒的なボリュームで放たれた多重の音声が、広大な広場をビリビリと振動させたのだ。

 

「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」

 

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せ!」

 

「こんなの困るよ!このあと約束があるのよ!」

 

「嫌ああ!帰して!帰してよ!」

 

悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。そして咆哮。たった数十分でゲームプレイヤーから囚人へと変えられた人間達は、頭を抱えてうずくまり両手を突き上げ、抱き合い、あるいは罵り合った。もうこれは大パニックだ。

 

キリト「クライン、エイト、ちょっと来い」

 

オレとクラインはキリトに腕を引っ張られ、その場を後にしていた。路地裏に立ち止まったキリトが、真剣な様子で話を切り出す。

 

キリト「2人とも、よく聞いてくれ。俺は今から次の村に向かおうと思う」

 

クライン「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだ頭の整理がつかねぇんだ……つーか、なんだって急に……」

 

オレもまだ少し混乱していたが、ここはひとまずキリトの話を聞いてみようと肩に手を置きで続きを促す。クラインが少し落ち着くのを待って、キリトが再び口を開いた。

 

キリト「茅場晶彦の話、全て事実だと思って行動した方がいい。俺たちはこのゲームの中で生き残らないといけない」

 

確かにキリトの言うことは一理ある。けど、オレはひとまずキリトの次の言葉を待った。

 

 

キリト「この世界で生きていくためにはモンスターを狩って、経験値と金を稼ぐ必要がある。ゲーム内のリソースには限界があるから、始まりの街周辺のモンスターは他のプレイヤーたちにすぐ狩り尽くされるだろう。効率稼ぐには今のうちに次の村を拠点にすればいい。俺は道や危険なポイントを全部知っている。レベル1でも安全にたどり着ける」 

 

キリトは迷いなくそう言い切った。確かにβテスターのキリトが言うのなら信じた方がいいかもな。

 

エイト「わかった。オレはキリトについて行く」

 

キリト「わかった。クラインは?」

 

クライン「今日は別行動だったけど……俺、他のゲームの友達と一緒にこのゲームを買ったんだ。あいつらを置いてはいけねぇよ」

 

友達……か。するとキリトは何やら考え込むような表情になる。するとクラインはゆっくりと首を左右に振った。

 

クライン「いや……。おめぇにこれ以上世話んなるわけにゃいかぬえよな。俺だって、前のゲームじゃギルドのアタマ張ってたしよ。大丈夫、今まで教わったテクで何とかみせら。それに……これが悪趣味なイベントの演出で、すぐにログアウトできるっつう可能性だってまだあるしな。だから、おめぇらは気にしねぇで、次の村に行ってくれ」

 

キリト「…そうか」

 

エイト「良いんだな」

 

クライン「おうよ!」

 

キリト「じゃあここで別れよう。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ。じゃあなクライン」

 

エイト「…またな」

 

振り向こうとしたオレ達に、クラインが叫んだ。

 

クライン「キリト!エイト!」

 

少しだけ振り返る。

 

クライン「おい、キリトよ!おめぇ、本物は案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜ俺!」

 

そしてキリトは苦笑して

 

キリト「お前もその野武士ヅラの方が10倍似合ってるよ!」

 

クライン「そうかよ。エイト!お前の本物の目ゾンビみたいだな。敵と間違えて切られるなよ」

 

エイト「フッ、お前こそモンスターに好かれるじゃねぇか?」

 

そしてオレは初めてできた友達の1人に背を向けて、まっすぐ、ひたすら歩き続けた。そしてキリトと途中で1度振り向いたが、もちろんもう誰の姿もなかった。

 

キリト「行くぞエイト。ちゃんと着いてこいよ」

 

エイト「…ああ」

 

 

オレはキリトの後を追うようして駆け出した。

 

 

母ちゃん。待っててくれ。必ず…必ず戻ってくるから。だから待っててくれ。

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。
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