比企谷八幡と仮想世界(改稿版)   作:チャキ

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どうもチャキです。第5話です。ではどうぞ。


第5話

 

こんばんは。私はフィリア。今、エイトとキリトが借りている農家の風呂にアスナと一緒に入っている。エイト達は宿と言っていたが本当は農家だった。2人が借りているのは農家の2階で一晩で80コル。二部屋もあって、ミルク飲み放題のおまけ付き。ベッドもデカくて眺めもいいらしいんだけど。最初にキリトが言った風呂に入ると言う言葉に私もアスナもびっくりした。まさか、お風呂があるだなんて。私とアスナもそこを借りようと思い場所を聞いたのだが、そこにはもう空き部屋は無いと言われた。理由はその農家をエイトとキリトが丸ごと借りているらしい。だから、空き部屋が無かった。それを聞いた瞬間、私とアスナは膝から崩れそうになってから、危うく踏ん張る事はできた。けれど、その部屋はエイト達がまだ借りているそうだ。けれど、そんな事を聞く前にお風呂があるって聞いた途端、私とアスナは同じ事を思ったのだろう。私はエイトの肩をアスナはキリトの肩を掴んで同時にこう言った。

 

フィリア・アスナ「「そのお風呂。貸してくれない?」」

 

エイト・キリト「「は?」」

 

2人は素っ頓狂のような声を出していた。そしてさっき言ったような農家の情報を教えてくれた。もう、なんで空き部屋ないのかな本当に!あれば私もとれたのに。まぁ、文句言っても仕方ないよね。そんな事を思いながらもアスナと一緒にお風呂に入る。初めて会うのに何故か自然と仲良くなれた。それで一緒に入ることだってできた。お互いの背中を洗ったりなってできた。そして2人で湯船に浸かる。かなり大きいサイズだったので2人で入ることにした。微妙な違和感もある。エイトが言ったように現実世界のままという訳では無かった。液体環境はナーヴギアも苦手らしい。なので、あまり過剰な期待はするなって言われた。私とアスナ的にはお湯が沢山あれば、それ以上何ものぞまなかった。だが、食事と同じである程度はプリセットされた《入浴している感覚》が送り込まれているらしく、眼を閉じると手足に些末な違いなどもう気にならなかった。

 

それにしても…

 

フィリア「アスナの髪サラサラしてて良いな」

 

アスナ「そう?」

 

フィリア「うん、私くせっ毛だからアスナみたいな、ストレートの人が羨ましいんだ」

 

アスナ「そうなんだ」

 

フィリア「うん」

 

ホントにアスナみたいなサラサラの髪になりたいよ。でも、仕方ないよね。

 

アスナ「そういえば、フィリアさんはエイトくんと知り合いなの?なんだか初対面って感じがしなくて」

 

フィリア「うん、そうだよ。実はエイトとは幼なじみなの」

 

アスナ「ええー!そうなんだ!?」

 

フィリア「うん。でも、会うのは久しぶりなの」

 

アスナ「え?どうして?もしかして……仲悪いとか?」

 

フィリア「あーううん!そうじゃないんだ。小学生の時に私が引越ししちゃって、それで会うのが久しぶりになっちゃったんだ」

 

アスナ「そうなんだ。でも、そんな久しぶりの再会がこんな世界の中だなんて」

 

フィリア「そうだね。そこは確かに思うところはあるけど、私はエイトが元気だった。それだけでも嬉しいんだ」

 

アスナ「そうなんだ」

 

嬉しい…けれど気になる事はある。エイト…八幡の妹の小町ちゃんだ。それを聞いた時、八幡の顔が暗くなっていた。なにかあったのは確かだ。けれど、それは八幡はその事は後で話すって言った。正直、気になるけれど八幡が話すって言ってたので、話してくれるまで私は待つつもりだ。

 

その後もアスナとおしゃべりしながら、一緒にお風呂を堪能した。

 

 

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フィリア「2人ともお風呂ありがとう」

 

アスナ「ありがとう」

 

エイト「あー?おう」

 

キリト「はいよ」

 

エイト「ミルク飲むか?」

 

フィリア「うん、ありがとう」

 

キリト「…アスナも飲むか?」

 

アスナ「いいの?」

 

キリト「ああ、いいぞ」

 

アスナ「じゃあ、貰おうかな」

 

キリト「はいよ」

 

俺とキリトはミルクをフィリアとアスナに渡す。2人はそれを受け取るとゆっくりと飲み干した。

 

フィリア「ぷはっ…おいしい」

 

アスナ「ホントね」

 

キリト「気に入ってもらえて良かったよ。飲み放題だからおかわり欲しかったら言ってくれ」

 

フィリア「うん、ありがとう」

 

そして、少しの時間この場所でゆっくりさせてもらった後、私はアスナと一緒に農家を後にした。

 

 

その後、アスナとも別れた後、自分が取っている宿屋に戻り装備を解除してラフな格好になってベッドに寝転がる。今日は色々あったなっと考える。まさか、幼なじみの八幡と再会するとは思ってなかったな。小さい時よく遊んでいた記憶がある。家が近くで親が仲良くなってそれで会う事があった。もちろん小町ちゃんにもあった事があるし、遊んだ事もある。それでちょっと気になって八幡に聞いてみた。リアルの事を聞くのはちょっとアレだけどね。でも、それを聞いた八幡の顔がちょっと暗くなったのがわかった。何があったのかと思った後、八幡はここで話すわけにはいかないって言ってた。多分、どこかで教えてくれるのだろうかな?

 

気になるけど、今は明日の為に準備万端にしないといけない。明日は大事なフロアボス戦。ここで勝ってばクリアに1歩近づける。だから頑張らないと。最悪の場合明日が最後になってしまう可能性もあるから。……でも、せっかく八幡と再会したのにそうなったらもう八幡と関われない。そんなの嫌だ。そういえば引越ししてから一度も会ってないな。今思えば手紙や電話もしてなかったな。

 

だから、絶対に生きて八幡と帰る。そう、心に違う。

 

フィリア「そろそろ寝よっかな」

 

電気を消してベッドの中に入り目をつぶった。

 

 

 

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翌日

 

 

今日はいよいよ第一層のボス戦である。

 

キリト「最終確認だが。俺達の担当はルイン・コボルドセンチネルっているボスの取り巻きだ」

 

エイト「そこで、俺達が武器をは跳ね上げさせるから、すかさずスイッチしてくれ」

 

フィリア「わかった」

 

ボス部屋に着くまで俺達のパーティーは最終確認をしていた。でも、俺らはあぶれ組だからな。取り巻き担当となってしまった。まぁ、仕方ないよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちにボス部屋前に到着した。そしてこの場のリーダーとも言える存在のディアベルが全員の前で口を開く。

 

ディアベル「最後に一言……勝とうぜ!」

 

そしてディアベルが部屋のドア開ける。部屋の中に入るとそこは俺達46人が余裕で入れる大きな場所だった。全員入るとさっきまで薄暗かった部屋の左右の壁で、ぼっと音を立てて粗雑な松明燃え上がった。そして次々と奥に向かって数を増やしていく。光源ジェネレートされるにつれ、内部の明度(ガンマ)も上昇する。ひび割れた石床や壁。各所に飾られた大小無数のドクロ。部屋の最奥部には粗雑かつ巨大な玉座が設けられ、そこには何者かのシルエット。そいつは、今日俺達が相手するボス。《イルファング・ザ・コボルドロード》の姿だった。コボルドロードは玉座から跳んで、空中でぐるりと一回転し、地響きとともに着地。オオカミを思わせるあぎとをいっぱい開き、吠える。

 

「グルルラアアアアッ!!」

 

 

獣人の王《イルファング・ザ・コボルドロード》の外見は2メートルわ軽く超える逞しい体躯。さらに右手にはアックス、左手にはバックラーを持っている。赤い体毛に丸みのある体をしていて、なんだか太っているようにも見えるが、筋肉の塊とか言うんじゃないだろうな。《イルファング》のHPゲージが四段表示させる。確かあのゲージが四段目になると斧と盾を捨ててタルワールを抜くんだよな。そしてボスの前に人間サイズのコボルドがポップする。あれが俺が入っているパーティーの相手ルイン・コボルドセンチネルだ。手には耳掻きみたいな武器を持ち、全身を鎧で身にまとっており、数にしたら3体である。そしてディアベルが手に持っていた剣を上にあげた後、一気に下に振り下ろしたと同時に

 

ディアベル「攻撃開始!」

 

その合図と共に全員がコボルト達に向けて走り出す。コボルドも俺達に向かって走り出す。

 

そして今、第一層のボス戦が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エイト「フィリア!スイッチ!」

 

フィリア「やあぁ!」

 

俺がセンチネルの持っていたハルバードをソードスキル《スラント》で思いっきり弾き返し、フィリアがソードスキルでトドメ刺した。

 

キリト「スイッチ!」

 

アスナ「はぁ!」

 

キリトの方も弾き返した後、アスナが飛び出しソードスキル《リニアー》でトドメ刺した。アイツの剣さばきスゴすぎる。剣先が見えないな。そういえばキリトもアスナの剣先が見えないって言ってたな。

 

すると、ボスコボルドの最初のHPゲージが消えた。最前列でディアベルが「二本目!」と叫ぶ。そして追加の《センチネル》が飛び出てくる。俺達は手近な1匹へと向かってダッシュした。

 

 

 

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コボルドの王とその衛兵対プレイヤー46人の戦いは、順調にいっているのではないかと思う。もう二本のHPゲージを削り、今は三本目を半減させていた。ここまで、壁役の隊のメンバーが何度かHPを半減させた程度で、赤の危険域にまで落ちたことは1度もない。そして…

 

エイト「スイッチ!」

 

その一言とともにふわりと飛び退く。代わりにフィリアがコボルドの前に飛び込んでも、敵はまだ激しく仰け反ったままで、がら空きになった喉元の弱点に《ベーシックバイト》を撃ち込んだ。

 

エイト「ナイス」

 

フィリア「えへへ、ありがとう」

 

前線の方で、おおっしゃ!というような歓声が弾けた。その理由はボスの長大な四段HPゲージがついに最後の一本に突入したのだ。

 

「ウグルゥオオオオオオオーーー!!!」

 

《イルファング・ザ・コボルドロード》が、ひときわ猛々しい雄叫びを放つ。それと同時に、最後の《ルインコボルド・センチネル》が3匹飛び出してくる。

 

キリト「行くぞみんな」

 

エイト「ああ」

 

アスナ「ええ」

 

フィリア「うん」

 

そんなやり取りの後、こちらに突っ込んでくるセンチネル1匹に剣を向ける。センチネルとの戦闘中にチラリとメイン戦場のほうに一瞬だけ視線を向ける。コボルド王が、右手に持っていた骨斧、左手に構えていた盾を同時に投げ捨てたところだった。そして右手を腰の後ろに持っていく。ぼろ布粗雑に巻かれた柄を握り、凶悪に長い湾刀をぞろりと引き抜いた。ベータの時と変わったのかどうかは分からないが、ここからは死ぬまで曲刀カテゴリのソードだけを使うらしい。キリトから聞く限り対処は今までよりやりやすいらしい。使う技が直線長射程の縦斬り系ばかりなので、技発動時に軌道をしっかり把握すれば、ボスに張り付いたままでも回避可能と言っていた。そしてディアベルの指示で、C隊の6人がボス周りをぐるりと取り巻いた。横薙ぎ攻撃のある骨斧装備には取れないフォーメンションらしい。ディアベルって奴はすごいと思った。ここまで的確に指示を出せるのだから。

 

フィリア「来るよエイト!」

 

フィリアの声で、思考から脱した。センチネルが振り下ろしかけたハルバードを、単発斜め斬りソードスキル《スラント》で思い切り弾き返す。

 

エイト「スイッチ!」

 

叫び、飛び退くと、代わりにフィリアが衛兵の前に出た。そして、ソードスキルを発動させてHPを削る。再度左のメイン戦場を一瞥した。すると、突然ディアベルの口を動いた。

 

ディアベル「下がれ!俺が出る!」

 

そう言ってディアベルが前に出ていく。ん?なんで前に出たんだ?その疑問とともに違和感を感じとった。俺はベータテスターでは無いのに何故か違和感又は嫌な予感がする。一体なんだこれは……一体どこに違和感を感じるんだ。一体なんだこの嫌な予感は。この部屋か?あのボスか?それともディアベルか?いや…違う…どこだ?どこだ?一体……あれ?そういえばあのボスが持っている武器、湾刀してはやけにまっすぐ過ぎやしないか?

 

キリト「ダメだ!!下がれ!全力で後ろに跳べ!」

 

その時、突然キリトが叫ぶ。しかし、そんな声は、イルファングが始動させたソードスキルのサウンドエフェクトにかき消される。コボルド王は持っていた武器を床すれすれの軌道から高く斬り上げた。

 

ディアベル「ぐ、うわぁ!」

 

ディアベルはボスのソードスキルに吹き飛ばされ、空中に打ち上げられた。そして、イルファングは追撃の如く更にソードスキルを発動し、連続でディアベルを斬り裂いたのだ。そしてイルファングはそのまま、他の隊へタゲを変更した。

 

吹き飛ばされたディアベルにキリトは駆け寄っていく。俺も身体が勝手に動きキリトとディアベルの方へ駆け寄る。すると、2人の話し声が聞こえてきた。まさか…ディアベルもベータテスターだったのか。それにラストアタックボーナスの事も聞いた。そして、ディアベルは更に続けて話す。

 

ディアベル「頼む…ボスを…ボスを倒してくれみんなの為に…」

 

そこまで言うとディアベルが青いガラスの欠片へと変えて四散させた。リーダーが欠けてしまったのは、あまりにも大きい損失だ。脳裏に2つの選択肢が交互に明滅していた。それは『撤退』又は『戦う』のどっちかだ。もしここで逃げれば、長射程範囲技のソードスキルを操るイルファングに背を向けて遁走すれば、最後の方の十人…いや、下手すればそれ以上がディアベルと同じようにスタンからの連撃だHPゲージを全て奪われる可能性がある。と考えているとキリトが立ち上がった。

 

エイト「どうするんだ?」

 

キリト「決まってるだろ。アイツを倒しに行くんだ!」

 

エイト「だよな」

 

キリト「来てくれるか?」

 

エイト「当たり前だ。俺はお前の相棒なんだろ?」

 

キリト「っ!…ああ!」

 

相棒という事もあるが、ディアベルが俺達に言ったんだ。あのボスを倒してくれってな。

 

すると、キリトの隣にアスナ。俺の隣にフィリアが立った。俺はフィリアにこれ以上は危険だから後ろに行くように言おうとしたが、それよりも先にアスナと一緒になって宣言した。

 

アスナ「私も一緒に行く」

 

フィリア「私も!仲間外れなんてさせないんだから!」

 

エイト「お前ら…」

 

キリト「…解った」

 

俺とキリトは顔を見合わせる。そしてその瞬間同じ事を思ったのか、同時に頷いた。

 

キリト・エイト「「頼む」」

 

四人は同時に体の向きを変え、広間の奥に向かって走り出す。向かう先はイルファング。どうやらディアベル以外の死者はいないようだ。だが、前線にいるプレイヤーのHPは全て半分を下回っている。ディアベルがいた隊に至っては二割を切っている。

 

キリト「手順はセンチネルと一緒だ」

 

アスナ・フィリア「「わかった」」

 

エイト「了解」

 

そしてどんどん俺達とイルファングの距離は縮まっていく。他のプレイヤーにタゲを取っていたイルファングは、俺達へとタゲを変更した。そして、野太刀を左腰に持っていき、ソードスキルを起動させる。そして、俺達へ向けて放たれるが、キリトがソードスキルで弾き返す。

 

キリト「スイッチ!」

 

その声とともにアスナがキリトと入れ替わるように飛び出し、《リニアー》を起動させ放とうしたその時、イルファングの目がギョロとアスナに向ける。これはやばい!

 

「「「アスナ!」」」

 

俺達は一斉にアスナの名を叫ぶ。そして、イルファングが野太刀をソードスキルを使わず振り下ろした。アスナはその野太刀を間一髪躱す事ができた。だが、身につけていたフード付きケープがガラス片のように四散していった。昨日も見たけれど、こうして見ると黄金の色を放ち、ボス部屋の薄闇。吹き散らすかのような輝き。艶やかな栗色のようなロングヘアなのに今はそう見えてしまう。

 

アスナ「セアアッ!!」

 

そしてアスナは再度《リニアー》を起動させコボルド王の右腹を深々と打ち抜いた。四段目のHPゲージが、わずかだが、確かな幅で減少する。

 

「グルっ」

 

だが、安心できない。まだ終わっていない。体勢を建て直したコボルド王がアスナに向けて野太刀を薙ぎ払うかのように振ってくる。その野太刀を俺が弾き返す。

 

エイト「スイッチ!」

 

フィリア「やあっ!」

 

フィリアが入れ替わるように飛び出しソードスキル《ベーシックバイト》を放ちHPゲージを削る。

 

キリト「次来るぞ!」

 

技後硬直から回復したキリトが叫び、再びボスの振りかざす長大な刃にのみ全精神力を集中させた。

 

 

キリト、アスナ、俺、フィリアという順番でこれは攻撃を仕掛けているが、これもいつまでも続くかどうか分からない。俺とキリトで弾いているが、いつまでもつか。この中でも、経験があるキリトでもあってもいつかはミスをしてしまう。だが、そのフラグを回収と言わんばかりに十五回か十六回目に起きた。

 

キリト「しまっ……!」

 

キリトはボスの武器を弾き返そうとしたがタイミングが合わず、空振りしてしまいボスのソードスキルが直撃してしまった。吹き飛ばされ、すぐ後ろにいたアスナと衝突してしまった。キリトのHPは三割以上も減った。そして、追撃の如くソードスキルを発動させキリトとアスナの方へ向かって行く。ここからじゃ間に合わない。

 

「ぬ……おおおッ!」

 

太い雄叫びが轟いたのは、ボスの武器がキリトとアスナを襲う寸前だった。2人の頭上を掠めるように、巨大な武器が緑色の光芒を引きながら撃ち込まれる。両手斧が回転するかのように野太刀と激突した。ボス部屋全体が震えるほどのインパクトが生まれ、イルファングが大きく後方にノックバック。割って入って来たのは、褐色の肌と魁偉な容貌を持つB隊リーダー、エギルだった。

 

エギル「あんたが回復するまで、俺達が支える!」

 

キリト「スマン、頼む」

 

そう言ってキリトは回復ポーションを飲み下した。それにどうやら、前進してきたのはエギルだけではない。エギルの仲間たるB隊をメインに数名、傷が浅かった者達が回復を終えて復帰してきたのだ。

 

エイト「大丈夫か?キリト!」

 

フィリア「アスナも大丈夫?」

 

キリト「大丈夫だ!」

 

アスナ「私も大丈夫!」

 

エギル達はボスへ全力攻撃を仕掛けている。ボスHPは徐々にだが、減ってきている。そして、俺も硬直すると、ソードスキルを使って叩き込む。俺が参戦する前にキリトが後ろまで囲むと全方位攻撃がくると忠告を受けている為、そうならないように立ち回っている。フィリアも俺と一緒になって参加してくれている。けれど、これを繰り返していればいずれ憎悪値が俺かフィリアに向けられるが、壁の六人が《威嚇(ハウル)》などのヘイトスキルを適宜使用してターゲットを取り続けている。

 

そしてボスのHPが残り三割を下回り、最後のゲージが赤く染まった。その瞬間、一瞬緩んだのか、壁役の1人が脚をもつれさせた。よろめき、立ち止まったのはイルファングの真後ろだった。

 

エイト「そこから早く動くんだ!」

 

そう言いつつ後ろへ飛び退く。けれど、間に合わなかった。ボスが《取り囲まれ状態》を感知し、ひとかわ獰猛に吠えた。ぐっ、と巨体が沈む。全身のバネを使って高く垂直ジャンプ。その軌道上で、野太刀と己の肉体を、ひときわゼンマイでてもあるかのようにギリギリと巻き絞っていく。あれがキリトが言っていた全方位攻撃なのか?

 

キリト「う……おおああっ!!」

 

キリトは短く吠え、まだ全快には至らないHPの状態で飛び出してくる。剣を右肩に担ぐように構え、左足で思い切り床を蹴り付ける。キリトの体は斜め上空へと砲弾のよに飛び出す。あれは片手剣突進技《ソニックリープ》。《レイジスパイク》より射程は短いが、軌道を上空にも向けられるとキリトが言っていた。右手の剣が、鮮やかな黄緑色の光に包まれた。行く手では、ジャンプの頂点に達したイルファングのカタナが、深紅の輝きを生もうとしている。

 

キリト「届……けェーーーッ!!」

 

叫びつつ、限界まで右腕を伸ばしながら、俺は剣を振った。俺と同じ愛剣アニールブレード+6の切っ先が、空中に長いアーチを描きながら走り、ソードスキル発動寸前のイルファングの左腰を捉えた。ざしゅうっ!という重く鋭い斬撃音。クリティカルヒット特有の激しいライトエフェクトが見えた。次の瞬間、コボルド王の巨体は空中でぐらりと傾き、必殺の竜巻を生まぬまま床へと叩きつけられた。

 

「ぐるうっ!」

 

喚き、立ち上がろうと手足をバタつかせている。辛くも倒れることなく着地に成功させたキリトは、イルファングに向き直り、走り出しながら俺達に向けて叫ぶ。

 

キリト「3人共、最後一気に行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

俺を含めたアスナ、フィリアの3人はキリトの後を追うようにして走り出す。イルファングは《転倒》状態から立ち上がり、タゲを俺達に向けられ、ソードスキルを軌道させ、こちらに突進してくる。その攻撃をキリトが弾き返した後、アスナの《リニアー》が右腰へ直撃する。そして、また体勢を建て直し、野太刀を振り下ろしてくるのを俺がソードスキルで弾き返す。そして、フィリアが《スタンダードステップ》放つ。

 

そしてイルファングのHPがもう後少しで削り切れる。だが、イルファングは攻撃を止めない。ソードスキルを立ち上げ放つが、今度はアスナとフィリアが2人がかりでそれを阻止した。バランスを崩したイルファングを見て2人は俺とキリトの方を見て

 

アスナ・フィリア「「スイッチ!!」」

 

俺とキリトは前に出て、ソードスキルを立ち上げる。青い光芒をまとった俺の剣は左肩口から腹へ、キリトの剣は右肩口から腹までを斬り裂いた。HPゲージ残り……残り一ドット。

 

獣人が、ニヤリと嗤った気がした。それに対して、俺達も獰猛な笑みを返すと、素早く手首を返した。

 

キリト・エイト「「お……おおおおおおッ!!」」

 

全身全霊の気勢とともに、剣を跳ね上げる。激戦を経て数箇所刃毀れした刃が、先の斬撃と合わせてV字の軌道を描き、イルファングの左肩口を、キリトは反対側の肩口を抜けた。片手剣2連撃技《バーチカル・アーク 》コボルド王の巨軀が、不意に力を失い、後方へとよろめいた。狼に似た顔を天井へと向け、細かく高く吠える。その体に、びしっと音を立てて無数のヒビが入る。両手が緩み、野太刀が床に転がった。直後、アインクラッド第一層フロアボス《イルファング・ザ・コボルドロード》は、その体を幾千幾万の硝子片へ変えて盛大に四散させた。

 

そして上空には《Congratulations!!》と大きく表示されていた。俺の目の前にはクリア報酬が表示されていた。どうやら、LAはキリトが取ったらしい。他の奴らはクリアしたことに喜び肩を組んだりして、歓声を上げ盛り上がっていた。

 

アスナ・フィリア「「お疲れ様」」

 

アスナとフィリアが俺達に近づきそう呼びかけた。

 

エギル「…見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたらのものだ」

 

キリト・エイト「…いや」

 

なんて答えたらいいのかと思い出た答えがその言葉だけだった。だが、他の奴らは俺とキリトに拍手や口笛なんかを拭いたりして歓声が上がるが…

 

「なんでや!」

 

突然、そんな叫びがこの部屋に入ってきた扉近くから弾けた。歓声が静まり、ここにいた全員が声のした方向へ視線が移る。その発声した人はキバオウだった。

 

キバオウ「なんで…なんでディアベルはんを見殺しにしたんだ!」

 

キリト「見殺し…?」

 

キバオウ「せやろうが!だってジブン、ボスの使う技を知ってたやないか!あの情報ちゃんと教えとったら、ディアベルはんは死なずに済んだんや!」

 

それを聞いて残りのレイドメンバー達は次々と「そういえばそうだよな…」やら「なんで、攻略本に書いてなかったんだ?」やら声が聞こえる。

 

すると槍を持ったプレイヤーが、人差し指をキリトに突きつける。

 

「きっとあいつベータテスターなんだ。だからボスの攻撃パターンを全部知ってたんだ!知ってて隠したんだ!」

 

これはまずい。キリトだけじゃなくて他の無関係なベータテスター達まで、責任取れとか言い出すかもしれん。

 

「他にもいるんだろ!出て来いよベータテスターども!」

 

その言葉に他の連中達は他の奴らまで疑い始めた。これはますますやばいどうすれば……どうすれば良いんだ。と考えていると

 

キリト「ククク……あっはははははは!」

 

キリトが大声で笑い始めた。その笑い声に全員がキリトの方へ視線が移る。

 

キリト「元ベータテスターだって?……俺をあんな素人連中と一緒にしなでもらいたいな」

 

キバオウ「な、なんやと!」

 

キリト「SAOのベータテスターに当選したほとんどがレベリングのやり方を知らない初心者だった。今のアンタらの方がまだマシさ」

 

キリトの奴もしかして…まさか自分にヘイトを集めようとしているのか?まさか、俺のように?そうか……お前がそういうことをするのならば、俺にも考えがある。

 

エイト「……おいおい、随分と悲しい事言ってくれるな?」

 

その言葉を発すると、全員がこちらを向いた。キリトは少し驚いた表情でこちらを見ていた。ちょっとおもしろいが、今はそんな事をしている場合では無い。俺はキリトに近づきながら続けて言う。

 

エイト「このSAOが始まってから、ここまで俺はお前とコンビを組んでいたんだぞ?それなのに俺までコイツらと同じレベルなのか?え?」

 

俺の目を見てわかったのかキリトは俺にだけ気づくように頷いた。

 

キリト「おっと…悪い悪い。そうだったな。アンタはここにいる奴らとは違って優秀だ」

 

エイト「当然だろ」

 

キバオウ「なんで、なんでジブンだけ!お前も元ベータテスターなんか!」

 

エイト「俺はベータテスターじゃない」

 

キバオウ「なんやと!?」

 

その言葉に全員が驚いているようだ。

 

エイト「俺はお前達と同じ初心者だった。だが、俺は元ベータテスターであるコイツと出会い、レベリングやら戦い方やら、色々教えてもらった。もしあの時出会ってなかったら俺は死んでたかもしれないな。そして、コイツは俺を見捨てなかった。正直…助かったわ〜」

 

キバオウ「そんなんずるいわ」

 

キリト「ずるくなんかないさ。コイツは俺になんも言わずに着いてきてくれた。だから、それに答えようと見捨てなかっただけだ。だから勘違いするなよ」

 

キバオウ「そ、そんな……そんな」

 

キリト「それに俺はベータテスターの中で、他の誰も到達出来なかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知っていたのは、ずっと上の方で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ。情報屋なんか問題にならないくらいにな」

 

キバオウ「な、なんやそれ?……そんなベータテスター所じゃないやんけ。そんなんチートやんけ」

 

キバオウの言葉に周りからもヤジが飛んでくる。そして周りの奴らの中の1人が、チーターだ、ベータのチーターだ。という声が幾つか湧き上がる。それらはやがて混じり合い、《ビーター》という奇妙な響きの単語が耳に届く。

 

キリト「《ビーター》良い呼び方だなそれ。そうだ、俺は《ビーター》だ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ。そして、俺の相棒もお前らと一緒にしないでくれ」

 

エイト「ということだ。わかったか」

 

すると、キリトは先程のLAでゲットしたのか、黒いコートを装備した。くびれた灰色の生地が、艶のある漆黒の革へと変化した。その黒いロングコートをばさりと翻し、俺は背後…ボス部屋の奥にある小さな扉へと向き直った。

 

キリト「二層の転移門は、俺らが有効化(アクティベート)しといてやる。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のMObに殺される覚悟しとけよ」

 

歩き出そうとする俺とキリトを、エギル、アスナ、フィリアがじっと見つめてきた。3人とも、何もかも解っている、という眼をしていた。それが救いだった。俺達は3人に向けてほんの少し微笑みかけると、大股で進め、主なき玉座のすぐ後ろに設けられた、第二層へと繋がる扉を押し開けた。狭い螺旋階段をしばらく上がると、再び扉が出現した。そっと開けると、いきなり途轍もない絶景が眼に飛び込んだ。

 

エイト「おお、スゲエ」

 

キリト「…ああ。でも他の所も条件が揃えばこれ以上の景色が見れるぞ」

 

エイト「マジか」

 

キリト「さて…これからどうしようかね」

 

エイト「まぁ、それは追々考えようぜ」

 

キリト「だな」

 

すると、背後で螺旋階段を上がってくる、小さな足音が聞こえてきた。多分あの2人だろう。振り返ると予想通りアスナとフィリアだった。

 

エイト「どうした?」

 

アスナ「エギルさんと、キバオウから伝言があるの」

 

キリト「へぇ…」

 

エイト「後者聞きたくねぇな。で?なんて?」

 

アスナ「エギルさんは、『二層やのボス攻略も一緒にやろう』って」

 

フィリア「それでキバオウの方は」

 

フィリアは小さく咳払いし、真剣な顔で下手くそな関西弁の再現を試みた。

 

フィリア「……『今日は助けてもろうだけど、ジブンらのことはやっぱり認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す』だって」

 

エイト「ああ…そう」

 

キリト「…そうか」

 

アスナ「それだけ伝えに来た」

 

フィリア「私も」

 

キリト「そうか」

 

アスナ「じゃあ、またねキリトくんエイトくん」

 

フィリア「またねキリト、エイト」

 

そう言って扉を開ける。すると、フィリアが立ち止まる。どうしたんだ?と思っているとこちらに振り向いて口を開いた。

 

フィリア「あ、それとエイト」

 

エイト「なんだ?」

 

フィリア「今回は聞き聞きそびれたけど、また今度聞かせてねエイトの話」

 

…あ、ああ。あの時の事か。確かにあの時話すって感じで言ってしまったしな。

 

エイト「…わかった。いつか話すわ」

 

フィリア「うん!約束だよ!」

 

エイト「ああ」

 

そしてアスナと一緒に扉を開けて階段を降りて行った。

 

キリト「……さてと行くか」

 

エイト「ああ、道案内頼むぞ」

 

キリト「ああ」

 

そう言ってキリトは歩き出す。俺はその後を追うようにして歩き出す。それにしても……

 

エイト「というかお前黒似合うな。もう、ボスかなんかと思ってしまうわ」

 

キリト「はあ!?ボスってなんだよ!俺はボスより孤高の剣士とか好きなんだよ」

 

エイト「フッ、そんな事言って良いのか?後で自分の黒歴史として刻まれるぞ。ソースは俺」

 

キリト「なっ…!」

 

エイト「まぁ、でも残念だったな。俺がいるから孤高の剣士になりそびれたな」

 

キリト「くっ…」

 

エイト「まぁ、これからよろしく頼むぞ”相棒”」

 

キリト「っ!……ああ、こっちこそ”相棒”」

 

そしてその後キリトを弄りながら第二層の主街区《ウルバス》へ向けて歩き続けた。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまた会いましょう。
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