シン・ウルトラマン対シン・ゴジラ   作:イマジンカイザー(かり)

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(04.07.13 更新)

構成を計算していった結果、次回にかかる負担がめちゃくちゃ大きくなることを考慮し、前回分に多少加筆しました。
後半分2千文字くらいふえてます。


(加筆・再掲)敵の敵は味方

※ ※ ※

 

「班長! 何やってるんです?! というか何なんです!?」

「ゴジラ……ゴジラ、ゴジラ、ゴジラ! 目覚めちゃってますよ、上陸しちゃってますよぉ!」

 VTOLがネズミーランドに降りてきて、滝と船縁が田村らと合流する。開口一番の話題はゴジラだ。あれだけ上陸させてはならないとしていたのに、彼らが座してその進撃を見守っているとなれば気が気ではない。

「ああ。浅見が立案し、俺と室長が許可した」

 その事由を知る田村班長は一切恥じ入ることなくふたりにそう返す。

「賽は投げられた。あとはもう、神永さんに任せるわ」

 突拍子もない提案をした浅見は、一周回って開き直り。

「い、いやまあ。他に手がないってのは解りましたけど」

 あまりにも溌剌とした態度に、却って付け入る隙が無い。滝は鳩が豆鉄砲を喰ったような顔で言葉を返し、

「だからって、ウルトラマンにおんぶにだっこじゃいけません。私たちも、私たちなりに出来ることを探しましょう」

 船縁はなんとか平静を取り繕い、タブレットのモニタ画面に皆の注意を向ける。

 ウルトラマンは神ではない。それを教えてくれた人物はもういない。我々禍特対はチームだ。一枚で不安なら二枚張る。まだ朧げな勝ち筋を、神永の元に引き寄せるために。

 

※ ※ ※

 

(ゴジラ……だと!?)

 直前まで掃討作戦に参加していた彼が驚くのも無理はない。その是非で外星人を受け容れるか否かを議論していた、原因そのものが枷を溶かれ、目の前にいる。

『ROARRRRR!!!!』

 眼窩に収まった小さな瞳は憤怒に燃えており、溶岩めいたその身体は熱を帯び、全身からごうごうと湯気を上げている。その目線の先にあるのはギドラだ。あれを外星人の尖兵だと知っているのか? 長く拘束されていた鬱憤を晴らそうとしているのか?

 

『G、RUOOOOOOO!!』

 周囲の建物を踏み越えて、十分に近付いたゴジラが、急にこちらに背を向けて、雄々しき背びれを見せ付ける。その後には何がある? ワンテンポ遅れ、身長と同じくらい長い尻尾が風切る勢いで飛んで来た。

(くっ……!)

 ウルトラマンは側転で尻尾をかわし、その延長線にいたギドラに衝撃を肩代わりさせた。ゴジラとギドラの体高は目算でほぼ同じ。強烈な一撃は奴の背を打ち、その勢いで二・三歩たたらを踏ませる。

(成程、敵でも無いが、味方でもない)

 奴に復讐なんて高尚な考えは無い。ベムラーの時と同じだ。視える範囲に敵がいる。だから斃す。それは自分もギドラも例外ではない。

 自分が手も足も出なかった相手だ。援軍として見ればこれほど心強い者もいないが、そう決めつけるのは早計だ。振り抜かれ、戻りゆく尻尾が高層ビルの真中を打ち、積み木を崩すかのように倒壊させてゆく。

(悩ましい展開だ)

 現状、自分の力だけではギドラには勝てない。だが、奴をなすがままにしておけば、この国の都市機能は一夜にして崩壊する。

(となれば、やるべきことはひとつ)

 神永は覚悟を決めた。よろけから体勢を立て直しつつあるギドラと、再び身体をこちらに向けたゴジラの間に立つ。

 それが効かないのは百も承知。ギドラの懐に潜り込み、ダブルスレッジ・ハンマーを叩き込む。

 体重の乗った一撃を放ってなお、やはりギドラは小揺るぎもしない。そんなことは分かり切っている。足を止めさえすれば十分だ。自分とギドラが一列に重なったその場所に、ゴジラが前のめりに飛び込んできた。

 

『GRURORRRRRR!!』

 道路上に敷き詰められた乗用車を巻き上げながら、その巨体と運動エネルギーを押し付ける。ウルトラマンは寸前の側転でそれを躱し、ギドラのみに肩代わりさせた。何万トンと何万トンとのぶつかり合いだ。爆発めいた轟音が夜の都心に鳴り響き、ギドラの身体が十数メートル引きずられてゆく。

(思った通りだ)

 奴にあるのはただ目の前の敵を斃すという考えのみ。そこにものの大小など関係ない。共闘と言うより誘導か。敵の敵は味方なら、その注意をギドラのみに向けさせてやる。

 

『GUORRRRRR……』

 先のベムラー戦で『生長』した両の腕がギドラの右端・左端の首を掴んだ。膂力をフル稼働させ抵抗するも、ゴジラの握力がそれに勝り、動かない。

 メキメキ・バキバキと、木の枝を素手で折ったかのような音がゴジラたちの足元に響く。それまで、ゴジラの脚は『取り組み』に不釣り合いなつま先立ちであった。格闘戦を挑むに伴い不利と判断したか、足裏が地につき、踵やアキレス腱めいたものが次々と生成されてゆく。

『RO……ARRRRR!!』

 都心部を土俵に見立てた取り組みは、ゴジラによる寄り倒しでひとまず決した。瞬間的に発生した震度5の地震が麻布の街を激しく揺らし、ギドラの身体が半回転。そのまま地表に叩き付けられた。

 

『GI……GIGAGGGG』

 かの一撃が有効打足りえたのか、ギドラはよろよろと身体を起こす。正面切っての肉弾戦は不利と判断したか、ギドラの背に生えし両翼が開いた。自身の体長をも超える大きな翼で風をとらえ、みるみる空へと昇ってゆく。

(させるか!)

 ここへ来てウルトラマンが動いた。逃げ出そうとするギドラに向かい十字に構えた腕を向け、光波熱線を叩き込む。

 だが、向こうもそれを見越していた。理不尽な暴力を受け続ける中、三つ首の禍威獣は斃すべき『優先順位』を既に付けていたのだ。

(なに……?!)

 放たれた光波熱線に対し、ギドラは先の重力干渉光波を放ち対応。光波同士が東京上空でぶつかり合う。

 ウルトラマンの縦回転が寸止めされたときと同じだ。青の光波は無理矢理に軌道を捻じ曲げられ、あらぬ方向へと飛んでゆく。

 

『GUORRRRRR……ROARRRRR!』

 その先には何がある? 今しがた首を上向けたゴジラの顔だ。青と金が混ざり合った光波熱線をこめかみで受け、その巨体が大きく仰け反る。

 続く展開は至ってシンプル。新たな敵が立ちふさがるなら、斃し滅ぼし道を拓くのみ。ゴジラの背びれが紫色に発光し、口内に莫大なエネルギーが集束されてゆく。

(駄目だ、避けられない!)

 海上で米の軍艦や最新鋭兵器を焼き尽くしたあの光線が、ウルトラマン目掛け解き放たれた。ここがあの時と同じ海ならば、飛んで逃げれば良かったが、生憎とここは東京都心。自分が躱せばこの街は数分で灼熱地獄と化すだろう。

 彼に他の選択肢はない。ウルトラマンは腕を十字にクロスさせ、その莫大な熱核エネルギーを受け止めた。

 

※ ※ ※

 

「ちょちょちょ、冗談でしょ……!?」

「さすがの神永さんも、あれをマトモに喰らったら……」

 ウルトラマンがフレンドリーファイア(?)を受けるその瞬間を、禍特対の面々はVTOLのモニタ越しに見守っていた。

「班長、今からでも何か出来ることは」

「無理だ。空自も陸自も間に合わない」

 助けたい気持ちは皆同じ。だが、今この瞬間に即応出来る手段は無い。よしんば間に合ったとして、ゴジラの気を逸らした先には何がある? あの熱線が街に向かえば、東京都心はあっという間に火の海だ。

「けど、今動かなきゃ、神永さんが!」

 自分たちの為に、命を賭して帰ってきてくれた彼を、こんな形で見捨てるなんて嫌だ。そんなことはこの場にいる誰もが百も承知である。打つ手はないが、座して待つのも御免被る。

「いや……待ってください」誰もが固唾を飲んでモニタを見つめる中、船縁だけは自身の端末を目にし、驚嘆の声を上げた。

「これを見てください。ひょっとしたら、ひょっとするかも……」

 彼女がよこしたのは都心部のカメラではなく、船縁が独自に作成したエネルギー計測を主目的としたサーモグラフだ。ウルトラマンとゴジラ、そして上空のギドラ。三つ巴の戦いが抽象的な赤・青・緑のエフェクトで示されている。

 ウルトラマンに対しぶつけられる赤の奔流がゴジラの熱線か。彼はそれをただ受け止める事しかできていない。

 

「嘘でしょ」

「こんなことが、あるのか……?」

 だが、これを見せられた浅見たちは目を剥いた。ガボラの時と同じだ。ウルトラマンはただ受けているのでない。ゴジラの放つ放射性物質を、十字に組んだその腕で、自らの内に取り込んでいるではないか。

 

※ ※ ※

 

(駄目だ……このままでは……)

 変身しこの場に立つ神永の脳裏に、かつて『ウルトラマン』として戦った時の記憶がまざまざと浮かび上がる。

 

 放射性物質を光線にして放つ地底禍威獣ガボラ。『彼』は側にいた禍特対メンバーを守るため、自らという"フィルター"を通し、無害化させて取り込んだ。

 ネロンガのときのように光波熱線を使わなかったのは、放射性物質の拡散が如何な被害を招くか、先んじて学習し知っていたからだ。

 しかし、それだけが理由ではない。自らの身体を構成するスペシウム133と地球由来の核物質。この二つが結びついた際、制御できない凄まじいエネルギーが生じてしまうのではないかという懸念だ。

(他に手はない。今ここで……試す!)

 体内に残されたスペシウム133はあと僅か。よしんば耐え切ったとして、ゴジラとギドラを相手取る体力はもう無いだろう。イチかバチかの大博打。神永は死中に活を求めんと、十字に組んだ腕を解き、ゴジラの放つ熱線をそのまま胸部で受け止めた。

 

(うぐ……くぅ……。ウォ、オオオオオオオオオオオ!!)

 ウルトラマンの体内にゴジラが放つ熱線が流れ込んできた。それらはスペシウム133と結びつき、身を引き裂かれるような激痛が神永の身体を蝕んでゆく。

(負けて……たまるか……!)

 だが神永は一歩も退かない。歯を食いしばって激痛を耐え、熱線をあるがまま受け容れる。

 やがて、自らの身体が少しずつ『変わり』始めていることに気が付いた。糸と糸が絡まり組み紐となるように、異なる二つのエネルギーが結びつき、ウルトラマンに変化をもたらした。

 

 ゴジラの全身を駆け巡る赤のラインが暗くくすみ、熱線が炎に戻り、やがてそれすらも失せていく。我慢比べはウルトラマンに軍配が上がった。彼は放射熱線を『克服』し、立て膝状態から悠々と立ち上がる。

 

 ガス欠間近を示す緑のラインはオレンジ色に変貌し、元々銀だった体表の各所に水疱瘡めいた緑が差し込まれている。

 変化は体表だけではない。痩身の体躯の上から堅牢な筋肉が盛り上がり、シルエットを大きく違えている。

 銀と赤に彩られた美しき巨人は、人類の産み出した強大な力を取り込み、極めて歪な存在へと成り果てた。




・次回、「放て!激ヤバ光線!!」、ご期待ください。
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