シン・ウルトラマン対シン・ゴジラ   作:イマジンカイザー(かり)

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ひとつきと一週間かけて続いた本シリーズも、いよいよここで終幕です。
最後までお付き合いくださり、まことにありがとうございました。


エピローグ

※ ※ ※

 

 

『――正午になりました。お昼のニュースをお伝えします』

『――禍威獣第十号……、防災庁によってギドラ、と名付けられた敵性大型生物とウルトラマン、そしてゴジラの出現から三ヶ月。都市機能はほぼ回復し、避難を続けていた人々は続々と街に戻りつつあります』

『――米国からの支援・介入もあり、経済への打撃は最小限。昨年冬に過酷な年越しを強いられた東京ですが、春は心地よい陽気を享受できそうです』

 

 

「建築資材も復興費用もあっち持ち。これじゃあ向こう何年か、米国サマに頭が上がりませんね」

「ま。その分ゴジラについては口外するなって言ってきたんですから、アイコでしょ」

 内閣府の一区画にひっそりと立てられた陸の孤島。禍威獣災害専門部署、禍特対専従班。船縁と滝はデスクに腰掛け、テレビで流されるこの街の光景を当事者らしからぬ態度で眺めていた。

 冬場のかじかむような寒さも失せ、草木の芽吹く春先。あれ以降この国は禍威獣や外星人とは無縁の生活を送っている。米国は協力的だ。政界では見返りもなくこの国に資材や人材を惜しまないことへの不信感もあったが、供与を受け続けていく中でそんな声も次第に影を潜めていった。

 

「けど、ベーターシステムの開発は諦めてないみたいよ」

 浅見が手元のパソコンを動かしながら、彼らの話に乗る。「施設自体はバラバラになっちゃったけど、神永さんが変身した時のデータは残ってたみたいだから。いま本国での準備を進めてるんだって」

「うっそマジすか。ソースは」

「うちの古巣が小耳に挟んだって。あっちの国からしたら、あの騒動だって、大いなる実験の1ページみたいなもんなのかもね」

 そんな話を耳にすると、手厚い支援もなんとなく胡散臭く感じてしまう。トライアンドエラーはヒトの美徳ではあるが、何にだって限度というものがあるだろうに。

 

「ただ、それも。しばらくは気にしなくていいんじゃないかな」

 

 どこに聞き耳が立っているか分からないものだ。扉を開けて入って来たのは、ここ数ヶ月本部に顔を見せなかった神永新二だ。

「おかえりなさい神永さん。結果の方は」

「お役に立てず申し訳無いと言って出て来たよ。ようやく、僕を留め置く意味がないと理解したらしい」

 快復した神永を待っていたのは、米国からの開発協力と言う名の捕縛・拘束だった。人類初のベーターシステム実験は、別のマルチバースから予期せぬ来訪者を呼ぶという結果で失敗に終わったが、ウルトラマンを『引き当てた』神永とそのメカニズムさえ解明できれば話は変わる。

「じゃあ、あれからずっと……?」

「あぁ。何度点火しても、『彼』は現れなかった」

 研究をすると言っても、神永新二自体は普通の人間だ。実際ウルトラマンにならなくては研究のしようがない。

 同時に、ベーターカプセルも研究機関の手に渡り、解析が行われたのだが――。構造はおろか、それを構成する物質を採取することさえ適わなかった。

「なる程。自分たちでは解析も起動も出来ないから」

「神永さんに返して……いや、押し付けたと言うべきでしょうか」

「まあ、そんなところか」

 尤も、今も監視の目は光っているがね。神永は窓から外の様子をちらと見る。街に溶け込んでいるようで、その実こちらをそれとなく見張っているスーツ姿が、目の届く範囲に三人は居た。

「うえー。また監視……」

「しかも米国……。これ治外法権ってやつじゃないすか」

「しばらくの辛抱さ。僕が無力と分かったら、彼らも早々に引き上げるだろう」

 そう話す神永の顔はあっけらかんとしていて。軟禁の疲れも、この先への不安も無いように見えた。

 だからこそと、浅見が疑問を呈する。「けど。なんでウルトラマンは現れなかったのかしら」

「それは、彼に直接訊かなきゃ分からないが」神永は言って若干の間を取り、「今もまだ、疲れを癒やしている最中なんじゃないかな」

 彼はゴジラの放射線物資を吸収し、文字通り身を粉にして戦った。ベーターカプセルが反応しないのも。彼の側が整っていないとしたら合点がいく。

「しばらくは寝かせておいてあげよう。人類の揉め事は、人類が解決しないと」

「そうね。私たちの尻拭いばかり、彼にさせていられないもの」

 ウルトラマンは万能の神ではない。こころを持ち、傷もつく。彼が人間の為に力を貸してくれるなら、我々もそれに応えなくては。

「けど、なんだか不思議」船縁はそんな神永を観てふふふと笑い。

「でもあれって神永さんだったんでしょ。なんだかずっと他人事」

「かもな」神永は真顔で首肯し、「なんとなく、実感が湧かないんだ。彼が僕なのか、僕が彼なのか……」

 今でも、何もかも夢だったのかもしれないと思う。身長六十メートルに巨大化し、禍威獣たちと戦ったあの冬の日。これは総て夢で、自分はどこか別の場所で観ていただけだったのではないか。当事者でありながら、神永はこの事案に未だ現実味を持てずにいた。

「やめてくださいよ神永さん。あなたに言われると、本当に夢っぽく聞こえます」

「わかってる。ほんの冗談さ」

 などととぼけていたが、心の内はどうなのか。きっと彼の口から語られることはないのだろう。

 

「なら、現実味のある仕事をやろう」

 

 そんな彼らの間に割って入るは田村班長。遊びのない神妙な面持ちから、続く言葉がなんとなく想像できる。

「横田基地の旧・ベーターシステム研究セクションから一晩で四人が消えた。詳細は不明だが、外星人らしき異様な存在を目撃したとの情報もある。我々に協力要請だ」

 既に、システムの再開発区画は米国内に移っている。今更日本の、しかも横田を狙う理由は不明だが――。外星人のすることを邪推したとて殆ど無意味か。

 

「まったく、こういう時だけ頼るんだから」

「そう言わない。これがあたしたちの仕事でしょ」

「私としては、山とか島とじゃなく、ヒトの居住区ってだけでテンションが上がるんですけどねえ」

 各々思いに違いはあれど、入った依頼を無碍にすることはない。それぞれがパソコンやハードディスクを鞄に詰め込み、不貞腐れながらも立ち上がる。

「さあ、行こうか」

 まるで、君もチームの一員だとでも言うように。神永は起動しないベーターカプセルを握り締め、他の四人の後を追う。

 

「禍特対、出動!」

 

 禍威獣・及び外星人特別対策専従班、禍特対。彼らの活躍はこれからも続く。

 

 

 

 

◎シン・ウルトラマン対シン・ゴジラ 完

 

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