シン・ウルトラマン対シン・ゴジラ 作:イマジンカイザー(かり)
全くもってその通りです。数え間違いをしておりました。
というわけで追々直してまいります。ご了承ください。
「ゴジラ……館山を抜け、東京湾沿岸に接近……」
横田・横須賀駐屯の米海軍、損耗率九割。ひとしきり熱線を吐き尽くしたゴジラは水面に艦首を晒す船舶や、帰る場所もなく右往左往する戦闘機を無視し、首都圏を目指し今もなお海上を進んでいる。
改めて攻撃しようという者はいない。
「これはもう、米国を責めてどうなるって話じゃないですよ」船縁は広がる惨状を見下ろして呟く。「遅かれ早かれ、どこかの国がババを引いてたって話ですし」
「こうならないため……こういう事態を起こさない為に僕たちは居たはずなのに……!」
滝は握り拳で壁を叩き、苛立ちを顔に滲ませて。
「済んだことは済んだことだ」田村はそんな滝の肩をぽんと叩き、怜悧な表情で続ける。「俺たちオブザーバーの仕事はアフターケアだ。一刻も早く事態を収拾しよう」
どこまでもドライなのは班長としての資質か、矜持か。はたまた両方か。未曾有の脅威にはもう慣れた。たらればの話をするくらいなら、この先をどう防ぐかを考えたほうが気分が良い。
「とはいえ班長、あれだけデータがあっても、現状出せる案なんて静観くらいしかありませんよ」
「現場のサーベイを拾いました」船縁が二人の間に割って入り。「あの『激ヤバ光線』……。予想通り、核物質です」
あれだけの巨体を維持し、行動出来る代物ともなればモノも限られてくる。おまけに、それを光線として打ち出した上、何の制約も無いとなれば、体内の保有量も天井知らずと言ったところか。
「パゴス、ガボラと同じ事案か……厄介だな……」
今さっき諦めるなと檄を飛ばしたが、その意志さえ鈍りそうになる。かの二体と違い、ゴジラは首都圏到達直前だ。座して待つ訳にも、消極的な対策を取る訳にもゆかない。
「いや、待て」そこに、田村の所持する携帯電話が着信音を打ち鳴らす。「宗像室長からだ」
その報に全員がイヤホンを付け、田村が電話を取る。
『――やあ諸君。君達に良いニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?』
この場合、どちらも宜しくない事態なのは、経験で何となく察している。「良い方から」
『――自分のケツは自分で拭く、ってことだろうが、米国があれの処理は最後まで責任を取ると約束してくれたよ。何とかする手立てを見つけたそうだ』
そう話す宗像の声は、どこか投げやりだ。それは何故か。「では、悪いニュースは」
『――米国政府はかの禍威獣、ゴジラの駆除に核兵器を用いると決めたそうだ。たった今行われた緊急各国首脳会談でG9八国が批准。本国だけが態度を渋っているが、首を縦に振るのは時間の問題だ』
「じょ、ジョーダンでしょ!?」浅見が目を剥いてそう吐き捨て。
「ゴジラは絶対零度化でも即応し、その後難なく行動しています。となれば核で根こそぎ滅却するのは理に適っていますが」船縁は生物学の観点からそう告げ。
「だからって、選ぶなよ……」滝がやりどころの無い怒りをぶちまけて。
『――現在、会議の場で総理が結論を引き伸ばして耐えている。君たちは避難指示と有効な対策を考えてくれ、以上』
これを無策丸投げと思うだろうか。思いたくもなるが、ここまでべらぼうな展開が続くとそうも言えない。宗像ら政府の上層はむしろよくやっている方だ。こうも八方ふさがりの状況では、逃げ出したところで政府筋の人間は誰も文句は言えまい。
「室長の言った通りだ。浅見、禍特対権限で警戒レベルを特Aに引き上げる。都二十三区に広域の避難命令を発令させろ」
「了解しました。直ちに」
「今からではシェルターへの避難は間に合いません。自宅待機、地下鉄構内への避難など必要かと思われます」
物申す権利がないのが中間管理職の辛いところか。それが焼け石に水と解っていても、今できる最善に注力しなくてはならない。たとえ今頑張ったとして、救える命は微々たるもの。それも全て呑み込んでいるからやりきれない。
「ゴジラ、風の塔を通過、羽田空港付近に接近中」
「空港から離岸というわけか。浅見、情報を通達、自衛隊に速やかに応援を要請しろ」
もう駄目だ。おしまいだ。この国はあれに蹂躙されて終わるんだ。そこらかしこで聞こえる絶望の声、避難せず留まろうとする人々。可視化できる形での厄災。どれだけ賢くなろうともヒトは所詮ヒトであり、荒ぶる厄災に対しては無力。誰もがそんな諦念を抱えたその只中。ゴジラが足を止め、その場に留まった。
「なん……だと?!」
「滝君。私のほっぺ、つねってください」
「もう既に自分でつねってます。夢じゃないです、現実です」
急になんだ? 止まってくれという願いが通じたか? 遅れてきたガス欠か? 誰彼もが当惑し、この状況を理解出来ないでいる。
「どうやら、自分の意志で止まったんじゃなさそうですね」皆が取るべき手を決めあぐねる中、神永が怜悧な顔でそう呟く。「見てください。動こうとする膂力を別の何かが抑え込んでいる」
動揺で誰もがちゃんと見ていなかったが、足を止めたゴジラの全身に、黒い鎖めいた何かが張り巡らされている。動けば動くほどきつく締まり、巨大な口も幾重にも巻き付けられ、開くことさえ許されない。
いつ、どこでこんなものを? 自分たちは真近でその動向を探っていた筈なのに。
『誰って? そりゃあ勿論、俺様だよ』
聞き覚えのない男の声に、その場にいた五人が同時に同じ方向を向いた。神永のすぐ後ろに、黒ずくめのロングコートを纏った若い男が立っている。
「何者だ、どこから入った!?」
『オイオイオイオイ、救世主サマに対して何だその態度は』黒髪を逆立て、黒のバイザーで目を覆ったその男は、向けられた銃口に不快感を示し。
『別に取って食おうって訳じゃない。物騒なものはしまって、お互い話をしようじゃないか』
平と手を振り、矛を収めよと訴えるものの、その口調からはこちらへの確かな侮蔑が見て取れる。だが向こうの言葉も一理ある。実際、上陸寸前だったゴジラは今もなお、羽田空港前で止まっているのだから。
「いいだろう」田村は他の四人に警戒を解くよう促し。「お前は一体何者だ。目的は何だ」
『名前、か』コートの男は額に人差し指を当て、暫し黙考すると。『悪いがお前達人間に発音出来るものではない。故にこう呼べ。"エックス"と』
「外星人、エックス」かつて来訪したメフィラスと同じタイプか。多少奇抜な格好を除けば、外見は同じ人間にしか見えない。
『それと、目的だったな。それについてこの国のトップと話がしたい。取り次いでもらおう。舞台はそうだな……』
"エックス"は窓越しに周囲を見回し、滝や船縁を押しのけ、指を指す。『あそこだ』
「あそこ、って……」
『何だ、不服か?』
「いや、不服というか……」
彼が選んだのは空港にほど近く、海沿いに面し、大観覧車や城のそびえ立つレジャーランド。年間三千万人が足を運ぶ夢の国。
「本当に、あそこにするおつもりで?」
『あぁ。今決めた、そう決めた。浦安ネズミーリゾート。そこで待つ。この国のトップを連れて来い』