シン・ウルトラマン対シン・ゴジラ   作:イマジンカイザー(かり)

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天体制圧兵器・『』

 

「球体、二足歩行型に変化!」

「武蔵小杉駅周辺に落下します」

 着地の瞬間、近辺十数メートルに震度五、そこから五キロ以内に震度三の揺れが起こり、夕方の街中が『それ』に釘付けとなった。

 白骨を思わせる外郭に、ワニを思わせる口と牙。外郭の下でうごめく黒の筋繊維。今そこで数台の車を弾き飛ばした長い尻尾。ゴジラの来襲、そして沈黙。そこで慣らされ、油断した都民の前に、全く別の禍威獣が予告なしに現れた。

 

 

「今動かせる全力はどのくらいだ」

 事態が動いた以上、禍特対として仕事をしなくてはならない。田村は集結しつつある自衛隊に電話を飛ばし、指示系統を移管させる。

 

『――対戦ヘリ部隊現着。戦車大隊、まもなく多摩川河川敷に陣地形成完了します』

「良し。威力偵察を兼ねた攻撃を行う。ヘリに機関砲での攻撃を指示してください」

 ゴジラの一件で浮足立っているとはいえ、現場が人口密集地であることに変わりはない。民間人の避難が最優先、戦車隊に待てを出し、ヘリに先制攻撃を要請する。

 

『――機関砲、禍威獣第十号の頭部に全弾命中。しかし効果を認めず』

『――禍威獣第十号、武蔵小杉から目黒方向へ前進』

 

「目黒……」船縁は地図アプリを呼び出し、進行予測を計算する。「まずいですねこれ、このまま放置すると都心のど真ん中直行ですよ」

「みたいだな」田村は苦い顔で手にしたガラケーの画面を目をやって。「防災大臣から宗像室長に会談のリークが渡った。やつはギドラ。あの外星人が寄越した天体制圧兵器だそうだ」

 会談の最中、総理は人類の尊厳を守るため、外星人からの要求に否を叩き付けた。結果禍威獣が街に放たれ、都心を目指していると言うことは、この惨状そのものが目的。

「厄介な奴だ……」田村は心底嫌そうな顔をし。「住民の避難を急がせろ。今ここで止められなきゃ、次は核が首都圏を直撃だ」

 そもそもゴジラ掃討を名目として、核兵器の発射は秒読み段階にあった。米国が日本に持ち込んだ対禍威獣兵器は、先の戦闘でその殆どが失われた。残る手段は戦術核しかない。無論使われればどうなるか。この場に知らぬ者はいない。

 

「班長、禍威獣第十号ギドラ……、翔びましたッ」

 威力偵察用ヘリからのライブ映像がモニタに流れ、覗き込んでいた浅見が叫ぶ。跳んだ? 翔んだ? あの質量で?

 

『――禍威獣第十号跳躍! 対戦ヘリ二十撃墜!』

 まるでプロの格闘家だ。一瞬上体を沈ませてからの跳躍。そこから右足を九十度水平に伸ばしての回転蹴り。その直撃と遅れてやってきた尻尾による三百六十度攻撃は、この場のヘリ部隊総てを一瞬で薙ぎ払った。

 奴が着地したその瞬間、紅い瞳と両肩口ふたつの『斑点』が激しく輝き、粒子ビームめいた何かが周囲に拡散。手近なビルにスイスチーズめいた穴を開け、道路は陥没、先んじてシェルターに避難した三・四桁近い市民らを茹で上がらせた。

 

「身軽さもパワーもウルトラマン並か」映像を前に田村がそうぼやき。

「流石外星の制圧兵器。私たちの常識なんてまるで無視ってとこですね」船縁がハの字眉でそれに続き。

「こんなの、自衛隊の武装でどうこうできる相手じゃ……」浅見の顔に絶望が滲む。

 

『――禍威獣第十号、加速!』

『――避難、間に合いません! 早すぎる……!』

 ギドラを示すマップ上の赤マーカーが都心に向けて飛び石めいて一気に動いた。多摩川に集結しつつあった戦車大隊を華麗に飛び越え、着地の地響きだけで横転に追い込む。戦車らが体勢を立て直す頃には、その姿は田園調布を抜け目黒区の真中にまで走り抜けている。

「目的最優先、他のことなんかどーでもいい、って感じですねえ」船縁はいっそ他人事のようにそう話し。「首都圏を破壊したあとはこの調子で日本全土。いや世界中をこんな風に壊して終わりでしょうか」

 

『国会ではもう核使用しかないと結論が出始めている』国会の宗像室長がこの場の全員に緊急電話を飛ばした。

『主要首脳陣は浦安、他の閣僚連中はこぞって立川へ移動。後はもう好きにやってくれとでも言いたげな状態だ。なにせ、外星人に啖呵を切ったのは総理だからな』

 官僚が生き残ってさえいれば、都は京都や大阪に遷都したって構わない。あれが都心を目指すというなら、誘き寄せてそこで放つのが最適解。

 自分のケツは自分で拭け、と言うのがG9からのお達しらしい。総理は命懸けで外星人の支配にNOを叩き付けたというのに。

「くそっ、何か無いのか、何か!」

 電話を切るなり、焦ってそう喚く田村だが、答えが出ることなど期待していない。実際どうしようもない事態だ。現場で何を言おうがもう……。

 

「あります」

 

 それまでずっとパソコンに向かい無言だった滝が、待ってましたとばかりに声を上げた。

「米国はやり方こそ間違えたけど、技術面は既に及第点に来ていたんです。要は『核』をどうするか。彼らは僕らを通すべきだったんですよ」

「待て、待て。話が見えん。どういうことだ」

 急に話題に入ってきて、要領を得ない言葉を捲し立てる。天才の所業といえばそれまでだが、この状況でそれは困る。

「あれは、見間違いや幻覚じゃなかった」滝は、隣にいた神永の手を取って、自信満々にこう告げる。「『彼』はまだ、ここにいます。一緒に来てください神永さん。僕たちの手で、ウルトラマンをここに呼ぶんですよ!」

 

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