「1月15日の夜だった。15日といえばそろそろ正月が終わって、冬休みが終わって、そろそろ仕事が本格的に始まろうとしている時期だった。私も政府の公務員だったから、冬休みは他の人より10日早く終わったけれどね。
その日の夜、午後11時50分くらいだろうか……暗く不気味なまでに静かだった空がいきなりピカッ!って光ったと思えば、一瞬でその光が消えたんだ。
当時の私は外務省に勤めていた。下っ端で主な仕事は書記だから、その日はあんまり仕事がなかった。けれど、外務省だから常に海外とネットを使って接続していたんだ。それがな、周りが不気味な光りに大騒ぎしている時に海外との連絡が全て途絶えたんだ。ネットも、電話も、株価も、それどころか人工衛星ですらなくなっていた。
あの時の私は何が起こっているのか分からず、不安を押し殺して対応に当たっていたんだ。思えばあの日の混乱は私にとっても日本にとっても災難であり、最悪の序章に過ぎなかったんだ」
──当時の外務省職員へのインタビュー、令和12年1月15日放送のドキュメンタリー番組の中で
「あの時は小腹が空いた事もあり、コンビニへ買い物に向かう途中でした。
突然辺り一面が一瞬光ったので、思わず尻餅をついてしまいましたね。唐突にフラッシュライトを目の前で点灯させられたかの様なイメージです。
何が起こったのかも解らず、その場で座り込んでいたら。光のせいなのか、それともカーナビが機能しなかったせいなのか、あちら此方で車による事故が多発して阿鼻叫喚と言った感じでした。
光を見たのか、騒ぎを聞き付けたのかは解りませんが、家に居た人達がみんな外に出始めました。そんでみんな口々に何が起こったのか、何が起こっているのか、これからどうなるのかと話し始めるんです。
暫くして家にいる家族の事が心配になったので、急いで家に帰りました。その後、次の日の朝でしたか……私はニュースで大変な事実を知ったんです」
──徴用自衛官として新世界大戦を戦い抜いた笹原さん(仮名)、当時はまだ学生だったと言う
※以下、関係者以外の観覧を禁ずる。
平成28年度以降に係る防衛計画の大綱(27大綱)における防衛費及び編成の拡大を受け、陸海空自衛隊の拡大内容が決定したことを伝えると共に、その内容を報告させていただく。
──陸上自衛隊について。
・師団編成
以下は平成27年度(西暦2015年、中央暦1638年)現在における陸上自衛隊の編成。
北部方面隊
・第2師団(機械化師団)
・第7師団(機甲師団)
・第5旅団(機械化旅団)
・第11旅団(機械化旅団)
東北方面隊
・第6師団(一般師団)
・第9師団(一般師団)
東部方面隊
・第1師団(政経中枢師団)
・第12旅団(空中機動旅団)
中部方面隊
・第3師団(政経中枢師団)
・第10師団(一般師団)
・第13旅団(一般旅団)
・第14旅団(一般旅団)
西部方面隊
・第4師団(一般師団)
・第8師団(一般師団)
・第15旅団(離島配備旅団)
その他
・第1空挺団(空挺部隊)
・西部方面普通科連隊(強襲連隊)
・富士教導団(教導機甲旅団)
──以上9個師団、6個旅団。
これらの師団数では、現在維持しているパガンダ、レイフォル特区における治安維持と各種防衛の任務遂行には、到底人員が不足していると言わざるを得えない。
である為、陸上自衛隊の人員の拡大とともに、師団数及び旅団数の大幅拡大を行うべきだと強く進言する。
要求として、陸上自衛隊及び防衛省は、最低でも40万人体制以上であるべきだと主張する。
これはレイフォル地域における治安維持及び、将来の情勢における実戦戦闘を考慮した結果、本土に残すべき一部師団と対艦ミサイル連隊を含め、10個師団と6個旅団が必要であると分析された結果に基づく。
なお、人員の拡大にあたって現在の部隊における欠員の補充と補給整備の拡充も重視するとし、現地の治安維持と予備兵力を加味し、最終的に師団16個と旅団10個へ拡大する案を要求するとした。
──以下、編成拡大後の陸上自衛隊の部隊編成の予想。
本土
・第1師団(政経中枢師団として配備)
・第3師団(政経中枢師団として配備)
・第4師団(地域配備を維持)
・第9師団(地域配備を維持)
・第20師団(新設師団・地域配備)
・第22師団(新設師団・地域配備)
・第13旅団(地域配備を維持)
・第15旅団(沖縄守備を重視)
・第16旅団(拡充により新編・地域配備)
・第25旅団(拡充により新編・地域配備)
・第26旅団(拡充により新編・地域配備)
その他
・第1空挺団(空挺部隊)
・第1水陸機動団(強襲旅団へ拡大)
・第2水陸機動団(強襲旅団へ拡大)
・富士教導団(教導機甲旅団へ拡大)
パガンダ方面隊
・第23旅団(拡充により新編・地域配備)
・第24旅団(拡充により新編・地域配備)
トラント方面隊(レイフォル北部)
・第6師団(機械化歩兵師団)
・第8師団(機械化歩兵師団)
・第10師団(トラント方面への地域配備)
バルクルス方面隊(レイフォル東部)
・第2師団(機甲師団へ拡大)
・第7師団(機甲師団・戦力拡充)
・第17旅団(拡充により新編・機動旅団)
・第18旅団(拡充により新編・機動旅団)
レイリング方面隊(レイフォル南部)
・第5師団(機械化歩兵師団へ拡大)
・第11師団(機械化歩兵師団へ拡大)
・第12師団(空中機動師団へ改編)
・第14旅団(機動旅団へ改編)
レイフォリア方面隊(レイフォル西部)
・第19師団(新設師団・地域配備)
・第21師団(新設師団・地域配備)
──以上、16個師団と10個旅団。
・陸上自衛隊の装備について
上記の編成及び充足率を達成するには、既存装備の増産と新装備の開発が求められる。具体的な内容は以下の通り──
『10式戦車』
→戦車定数の拡大に伴い、我が国の主力戦車として900両以上の配備が求められる。90式と合わせ戦車定数1200両を満たす。
『機動戦闘車』
→引き続き開発を続行し、主に普通科連隊や偵察戦闘隊への配備するのが望まれる。ファミリーモデルを含め2400両以上の配備が必要。
『新型装輪装甲戦闘車』
→開発が望まれていた装輪装甲車シリーズを満たすべく、16式機動戦闘車をベースとした歩兵戦闘車が望ましい。
『新型装輪装甲車』
→同、16式ベースの装輪装甲車として配備。おそらくファミリーモデルで最も生産されるであろう事から、急ぎ生産ラインの拡充が求められる。
『火力戦闘車』
→PLS付10tトラックの車体に榴弾砲を搭載し、高い戦略機動性と砲兵火力を投射する装備。後述の連隊戦闘団向けに平成30年までの配備が求められる。
『新型多連装ロケットシステム』
→PLS付10tトラックの車体にMLRSロケットシステムを搭載したロケット砲システム。MLRSシステムの後継装備としての調達が望まれる。
『新型自走高射機関砲』
→PLS付10tトラックの車体に新型の高射機関砲装置を搭載した装輪自走高射機関砲として調達。今後拮抗した航空戦力が出現した場合に備え、少数でも配備を行うべき。
『新型装軌装甲車』
→89式装甲戦闘車の後継として機関砲を搭載した装軌式装甲車。機甲部隊における装軌式への統一のために配備が求められる。
なお、装軌式への統一のため、装甲戦闘車型を筆頭に自走榴弾砲型、自走迫撃砲型、自走高射砲型、自走短SAM型、地雷原処理車などのバリエーションを増やす事が求められる。
『汎用ヘリコプター』
→現在運用している汎用ヘリコプターに関しても、空中機動部隊の編成の為増産が求められる。各種ヘリのライセンス生産を再開し、800機の定数を満たす。
『新型攻撃ヘリコプター』
→現在運用中のAH-1攻撃ヘリの後継として、国産の新型攻撃ヘリコプターを配備する事が求められる。開発はOH-1をベースに行うとし、空中機動部隊へ配備を行う。
・常設連隊戦闘団(RCT)について
陸上自衛隊の編成に関しても、大きな改編が求められる。現在の部隊編制単位である「師団」とその隷下の各種連隊、大隊では新世界勢力との武力衝突における戦線を維持するには非効率である。
かいつまんで言うならば、現代戦における師団単位の編成では人員を一つの戦線に集結させなければならず、想定される新世界勢力のゲリラ戦闘において隙間が生じてしまう可能性が分析されているのである。
これを解消し、部隊展開の効率を上げるべく連隊単位での独立した諸兵科連合部隊の編成を行う事が求められた。
具体的には地球世界におけるロシア連邦陸軍の「大隊戦術群」「BTG」の編成を参考に、機甲科、普通科、特科、補給整備を連隊単位で纏めて編成する新しい戦闘団である。
現在、三通りの部隊編成の案が浮上している。
戦車連隊戦闘団の編成
・本部
・本部管理中隊
・第1戦車中隊(10式戦車装備)
・第2戦車中隊(10式戦車装備)
・第3戦車中隊(10式戦車装備)
・第4戦車中隊(10式戦車装備)
・第5戦車中隊(10式戦車装備)
・第1普通科中隊
┣第1小隊(装軌装甲車)
┣第2小隊(装軌装甲車)
┣第3小隊(装軌装甲車)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第2普通科中隊
┣第1小隊(装軌装甲車)
┣第2小隊(装軌装甲車)
┣第3小隊(装軌装甲車)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・重迫撃砲中隊(120mm自走迫撃砲16門装備)
・特科大隊
┣本部管理中隊
┣第1火力支援中隊(自走榴弾砲5門装備)
┗第2火力支援中隊(自走榴弾砲5門装備)
・高射隊
┣指揮情報小隊(対空レーダー装備)
┣第1高射小隊(自走高射機関砲装備)
┗第2高射小隊(自走短SAM装備)
・後方支援隊
┣管理小隊
┣輸送隊
┣補給隊
┣衛生隊
┗整備隊
普通科連隊戦闘団(機動戦闘車主体)の編成
・本部
・本部管理中隊
・機動戦闘車隊
┣本部班
┣偵察小隊
┣第1機動戦闘車中隊(機動戦闘車MCV装備)
┗第2機動戦闘車中隊(MCV装備)
・第1普通科中隊
┣第1小隊(装輪装甲車WAPC、LAV装備)
┣第2小隊(WAPC、LAV装備)
┣第3小隊(WAPC、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第2普通科中隊
┣第1小隊(WAPC、LAV装備)
┣第2小隊(WAPC、LAV装備)
┣第3小隊(WAPC、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第3普通科中隊
┣第1小隊(WAPC、LAV装備)
┣第2小隊(WAPC、LAV装備)
┣第3小隊(WAPC、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・重迫撃砲中隊(120mm迫撃砲16門装備)
・特科大隊
┣本部管理中隊
┣第1火力支援中隊(火力戦闘車5門装備)
┗第2火力支援中隊(火力戦闘車5門装備)
・高射隊
┣指揮情報小隊(対空レーダー装備)
┣第1高射小隊(短SAM装備)
┗第2高射小隊(短SAM装備)
・後方支援隊
┣管理小隊
┣輸送隊
┣補給隊
┣衛生隊
┗整備隊
普通科連隊戦闘団(装輪装甲車主体)の編成
・本部
・本部管理中隊
・機動戦闘車中隊(機動戦闘車MCV装備)
・第1普通科中隊
┣第1小隊(装甲戦闘車IFV、LAV装備)
┣第2小隊(IFV、LAV装備)
┣第3小隊(IFV、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第2普通科中隊
┣第1小隊(IFV、LAV装備)
┣第2小隊(IFV、LAV装備)
┣第3小隊(IFV、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第3普通科中隊
┣第1小隊(IFV、LAV装備)
┣第2小隊(IFV、LAV装備)
┣第3小隊(IFV、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・第4普通科中隊
┣第1小隊(IFV、LAV装備)
┣第2小隊(IFV、LAV装備)
┣第3小隊(IFV、LAV装備)
┗迫撃砲小隊(81mm迫撃砲装備)
・重迫撃砲中隊(120mm迫撃砲16門装備)
・特科大隊
┣本部管理中隊
┣第1火力支援中隊(火力戦闘車5門装備)
┗第2火力支援中隊(火力戦闘車5門装備)
・高射隊
┣指揮情報小隊(対空レーダー装備)
┣第1高射小隊(自走高射機関砲装備)
┗第2高射小隊(短SAM装備)
・後方支援隊
┣管理小隊
┣輸送隊
┣補給隊
┣衛生隊
┗整備隊
これらの編成を全ての師団隷下の連隊に適応し、2年以内に30個RCTの編成が完了している事が望まれる。
──海上自衛隊について
・護衛隊群について
海上自衛隊についても、同様の増強が必要である。
本土からレイフォル特区までのシーレーンはおよそ6000kmと長大であり、そのルートの保護、及び今後の脅威に対抗するには、現在の4個護衛隊群編成では対応力が足りないのは明白である。
今後シーレーンの防衛、及び今後の脅威に対する対処、及び海上の武力衝突が発生する懸念から、2倍の8個護衛隊群編成に拡大するべきだと強く求める。
なお、それにあたって現在の護衛艦保有数も大幅に増強する必要がある。求められる艦に関しては次項にて。
・新規建造の護衛艦について
前項の護衛隊群拡充に伴い、新規で建造を行う護衛艦と新型艦が求められる。項目は以下の通り。
なお、移転により失われた民間商船の建造との兼ね合いから、200m以上の大型艦の建造に関しては年2隻までが望ましい。
『航空護衛艦(CV)』
→他国で言う航空母艦に当たる艦艇。対レイフォル戦争における旧米海軍第7艦隊の活躍を鑑み、自衛隊も独自の航空機搭載艦艇を保有し運用するべきである。我が国初の国産空母であるため、搭載機数は40機までと妥協し、船体の大きさも300mを下回るコンパクトさが求められる。
『ミサイル護衛艦(DDG)』
→新型のミサイル護衛艦。現在計画中の新型イージスシステム搭載護衛艦を基準とし、新世界の海上事情と照らし合わせ、航続距離が長く求められることから1万tを超える巡洋艦クラスの艦艇であることが望まれる。
『汎用護衛艦(DD)』
→新型の汎用護衛艦。現在建造中のあさひ型汎用護衛艦の後継として、多数の建造が望まれる。大型艦の護衛、及び各種護衛隊群の中核を担う艦として、量産性と多機能性に特化した汎用艦艇である事が望まれる。
『多機能護衛艦(FFM)』
→フリゲートクラスの艦艇。主に近海警備や機雷戦などの地方隊が担う任務を行う為の艦艇であり、地方隊に人員を割かれるのを防ぐ為、現在の地方隊の艦艇は全てこの護衛艦に転換する事が求められる。
『原子力潜水艦(SSN)』
→長い潜水時間と航続距離を誇る原子力を動力とした潜水艦。新世界の広大な領海、及びシーレーンでの任務を担うべく、原子力を動力とする。
・特殊艦艇について
なお、新世界における軍事的特殊事情を鑑み、地球基準の装備のみでは対処が困難な場合に備え、特殊な艦艇の配備も強く求められる。
『大型護衛艦(BBD)』
→巨大な船体と大口径砲を搭載した大型艦、現代に蘇った戦艦と言える。此方は建造について大きな議論を呼んだが、遥か遠方から敵艦を誘導砲弾を用いて脅威を駆逐する特殊な艦艇として、コストパフォーマンスに優れていると判断された為、計画に記入。なお、誘導砲弾を用いてアウトレンジを行う為、戦艦の特徴である装甲に関しては、コスト削減のため妥協するべきである。
『巡航ミサイル搭載型潜水艦(SSG)』
→新規開発を行う高速巡航ミサイルを多数搭載した特殊な潜水艦。主に敵地における後方基地、軍港への攻撃や、地上部隊への火力支援にも対応可能とする。なお、内容によっては原子力潜水艦(SSN)との統合も検討されるべき。
──航空自衛隊について
・戦闘機定数に関して
現在、航空自衛隊が保有している戦闘機数は300機超であるが、この戦力は新世界において到底足りていないと言わざるを得ない。
パガンダ、レイフォル特区における領空は日本本土の6倍の面積を持ち、それらの空域の防衛、さらに有事の際の航空支援を加味するならば、この倍の600機〜800機ほどの航空戦力が必要と見られている。
これに基づき、各特区に航空自衛隊の基地及び飛行場の整備を早急に行い、基地高射隊の増強も行うべきである。その際の現地住民の反対意見は、強硬手段で捩じ伏せることを視野に入れるべきである。
・戦闘機の増産について
戦闘機定数増強に伴い、最新鋭戦闘機の生産を行わなければならないのであるが、次期戦闘機として開発が行われている『F-3戦闘機』の開発は数年ほど時間がかかると見られるため、その間の穴を埋めるべく、既存の戦闘機の再生産を行うべきである。
候補は以下の通り──
『F-2スーパー改』
→地球世界においてアメリカ企業より提案された『F-2近代化改修計画』を基に再生産を行う案。新型高出力エンジンへの換装、最新のアビオニクスの搭載を施し今後の主力マルチロール戦闘機として200機以上の配備が求められる。
『F-18E/F』
→旧アメリカ海軍第7艦隊が保有している『F-18E/Fスーパーホーネット』を用い、日本国内でライセンス生産を行うという案。空母艦載機ということもあるため、海上自衛隊における航空護衛艦への配備が期待される。
『F-15スーパー改』
→『F-15イーグル』の再生産を行う案。再生産の際、『F-15Eストライクイーグル』を元にマルチロール化と近代化を施し、本土防空用に配備を行う。
──当時の防衛省提出の自衛隊増強案、情報開示がなされたのは今年の令和12年になってからであった。