神聖ミリシアル帝国 地方都市カン・ブリッド
とある郊外の空き家
神聖ミリシアル帝国の本土において、地方都市の一つに数えられるカン・ブリッドは、歴史ある街並みと、小さな行政区画のみで成り立っている。
主な収入源は観光で、それもあまり産業として振るわない。地理的にはそれほど重要視されておらず、人口も少ないため街の規模も小さかった。
さらに悪いことに、最近になって人口が大都市圏に出稼ぎに出るようになってから、空き家の数が増えてきた。引っ越した後に残された住居に人が寄り付かず、空っぽのままなのだ。
都市としては衰退まっしぐらであるが、治安が悪化しているわけではないのが、唯一の救いであろう。
そんな暗い影を落とす地方都市にある空き家の一つ。その部屋の中に、一人の大柄な体格をした人間種の男性が、落ち着かない表情で部屋を彷徨いていた。
「はぁ……」
時折このようにため息をつき、不安そうに頭を抱える。そして時計の時間を見ながら、机の上の資料らしきものを見てまたため息をつく。
「はぁ…………」
この男性が落ち着かないのは、少し込み入った事情があった。彼は、亡命を希望しているのだ。
彼の正体は空軍の上級士官である。それも、前回空軍がグローバルホークの侵入を許した事件で、結果的に左遷された空軍参謀の方である。
華のエリートコースから一転、坂を転げ回るよう真っ逆さまに左遷され、地方都市のしがない書類仕事役となった時点で彼のキャリアは終了していた。もう元の道に戻るのは不可能だろう。
理不尽な左遷によって失意のどん底に落ち、一時はヤケ酒に溺れていた彼には何も残らず、妻にも見捨てられ子供を連れ去られた。唯一残っている愛人の女性がこの場にいるが、それ以外を全て失った彼にとって、ミリシアル空軍に対する忠誠心などカケラも無くなっていた。
だがそんな時、一筋の希望とも言える出来事が舞い込んだ。彼が酒場でヤケ酒をして居たその最中に、"外国の商人"を名乗る人物に声をかけられたのだ。
──「あなたは空軍の士官とお見受けしますが、どうしてこんなところに?」
彼はその問いに対し、酔った勢いで事の顛末を全て洗いざらい話した。自分の不始末と不注意を空軍全体に押し付けるように、愚痴を言ってやった。
一般人らしき人物にこんなことを言うのは、後で冷静になって「しまった」と思ったが、その商人の人柄の良さに惹かれ、思わず口が滑ってしまったのだから仕方ない。それに、結果的にそこまで暴露したことが、今回の希望に繋がっている。
──「そうですか……もしお困りなのでしたら、こちらの連絡先にお手紙をください。我々は、きっとお力になれると思いますよ」
そう言って商人の彼は、一通の封筒を手渡してその場を離れた。後になって分かった事だったが、この商人の正体は日本と呼ばれる国の諜報員だったのだ。
彼らと極秘裏に連絡を交わすうちに、素性がわかってきた気がした。日本という国の諜報機関は、エリア48への潜入を試みているようであり、それの詳しい情報を求めていた。
ここで上層部にこれをチクってやっても良かったのだが、ミリシアル空軍という組織にあしらわれ、裏切られ、全てを奪われた彼にとっては、復讐心の方が優っていた。だから、ニホンという"親切な人々"に自ら利用される形となり、情報を明け渡してやろうとしていた。
「う〜む……」
それが果たして上手くいくのか、裏切られたりしないかと、彼こと元空軍参謀は不安で仕方なかった。だから落ち着きがないのである。
元空軍参謀は時計を見ても時間が進まないのを受け、この空き家に放置された時計が壊れているのでは?と不安に思い、連れてきた愛人兼専属秘書の女性に問いかける。
「……リリア君、彼らは何時に来ると言っていたか?」
「まだ約束までには30分ほどありますが」
「そ、そうか……」
元空軍参謀はそう言って落胆すると、改めて手土産として持ち込んだ資料を確認した。
その資料は、自分がかつて空軍参謀だった頃の記憶を頼りに描いた、エリア48の概略図である。日本側がエリア48についての情報を求めているのを受け、ここ数日間で手書きで書いたのだ。
詳しい図面は分からない部分があるが、それに関しては記憶が朧気なので仕方ない。だがこの情報だけで本当に日本側が良い顔をしてくれるのかは、不安が残っていた。
彼は出来れば空軍時代よりも、悪く言っても今の左遷待遇よりは良い扱いを望んでいる。そのために用意するべき手土産は用意したし、それがダメでも今後の日本の諜報活動をサポートするつもりで、交渉をしようとしていた。
──コンコン……
と、その時であった。
待ち合わせの時間より20分ほど早く、空き家の扉がノックされた。日本の使者が早めに来た可能性もあるが、大家が怪しんできた可能性もある。その時に備え、元空軍参謀は腰に携行した拳銃の安全装置を確認し、それを解除する。
そして秘書の女性に扉の覗き窓を確認するように伝え、彼女が扉の前に取り付きそれを実行する。彼女は大丈夫だと確認したのか、指でサインを送った。
「ソリダス」
最後の確認として、あらかじめ定められた日本側との合言葉を言う。すると扉の向こうの人物から返答が来た。
「リキダス」
合言葉が合っているのを受け、空軍参謀は安心して扉に駆け寄った。扉につけていた鍵を取り外し、少し開いて日本側の使者を確認する。
「早かったな」
「ええ、待たせてはいけないと思いまして」
そこには、茶髪の髪を携えた比較的彫りの浅い人種が、スーツ姿で立って居た。人数は二人で、武器などはきちんと隠していた。
「分かった。立ち話もなんだから入ってこい」
そう言って元空軍参謀は、扉を人間二人分だけ開けて彼らを空き家に招き入れた。そしてすぐさま鍵をかけ、人を寄せ付けないようにする。
「さて、その……早速で悪いんだが、亡命するに当たって、君たちは私の好待遇を約束してくれるのかね?」
開口一番、一番気になっていた内容を聞き出す。すると日本側の使者は顔を少しだけ見合わせると、冷静な態度で答えた。
「そうですね……それに関しては、渡してくれる情報次第かと」
「……そうか」
うまい具合にはぐらかされたので、元空軍参謀は仕方なくそっぽを向き、土産として手渡すつもりの資料が入った封筒を手に取った。
「リリア君、これを手渡してくれたまえ」
「分かりました」
そしてその封筒を秘書に一旦手渡し、彼女に確認させた。それの確認が終わると、彼女は封筒を日本側の使者へと手渡した。その拍子に艶かしく彼女の豊かな胸が揺れ、白い谷間が灯りで栄える。
「……どうぞ」
「あ、あぁ……ありがとうございます」
思わず彼女の胸に釘付けになった視線を、不躾に眺めるのはどうなのかと思った日本側の使者は慌てて封筒へ視線をずらした。
封筒の表裏を確認した日本側の使者は、封筒に怪しい点がないかを見つつ、安全性を確認する。そして確認が終わると、それを鞄の中に入れて隠した。
「それでは後ほど確認させていただきますので、我々はこれで」
「あ、ああ……」
わずかな会話を経て、会合と用事が終わった日本側の使者は、特に挨拶することなく荷物を持って空き家を出て行こうとする。
「あー、待ってくれ……返事はどこで待てば良い?」
「ああ、お返事ですか?……2日後の同時刻、またここでお会いできればと思います」
「……分かった」
日本側の少し冷たい態度に焦りつつも、元空軍参謀との会合はこれにて終了し、彼らはそのまま出口へ進んだ。
「…………」
そんな最中、秘書の女性は元空軍参謀を片眼で見つつも、日本側の使者が帰るまでしばらく扉を見つめていた。その後、部屋には扉が閉まる音のみが響き渡る。
神聖ミリシアル帝国国内某所
情報省セーフハウス
グローバルホークの一件を利用して現地入りした日本の諜報機関、情報省の面々は、ミリシアル帝国の各地にて既にセーフハウスを構えていた。
海外にて諜報活動を行う上では、このような拠点は必要不可欠である。その点で言えば、日本の情報省の手際はかなり良く、現地での展開も素早かった。
「これは……すごいな」
そのセーフハウスの一角にて、元空軍参謀から手渡された封筒の中身を見聞していた情報省の職員は、その内容に小さく驚嘆の声を上げた。部下たちの反応を見て、情報省職員の上司もそれを覗き込む。
封筒の中の図面は、エリア48の地下構造に合わせて四枚に分かれており、そのすべてが非常に詳細な出来となっていた。通路の幅から長さ、そして空気ダクトやダストシュートの位置まで詳細に描かれている。
空軍参謀が知っていたはずの粗雑な図面とは打って変わった、非常に完成度の高い情報だった。
「こんなにも詳細な地図を提供してもらえるとは……これなら、特殊作戦群の潜入ルートも簡単に構築ができる」
「どうやらあの空軍士官、相当な地位と情報源を持っていたようだな」
情報省の面々も、思わず感心する出来であったのを受け、驚きの声を上げていた。同時に、どうやら自分たちが接触に成功した空軍の士官は相当な食わせ者かもしれない、とも思った。
しかしながら、このセーフハウスをまとめる上司には微かながらに疑問があった。図面にはあらゆる情報が入っており、一人の空軍の軍人が持ってくるにしては正確すぎるのだ。
「しかし、幾らなんでも詳細過ぎる……これ、ミリシアルの罠を疑った方がいいんじゃないか?」
「確かにそうは思いますが……今は"コブラ"からの裏取りを待つ方がいいと思われます」
しばらく前に、現地のエリア48の付近に潜入している工作員"コブラ"にも暗号通信でこれを送っていた。もしこれが罠だったとしても、図面の信憑性は"コブラ"が暴いてくれるはずだ。
"コブラ"は陸上自衛隊の中央情報隊傘下にある対外ヒューミント部隊、現地情報隊から出向してきた現職の自衛官だ。
転移前は国連PKOなどでの自衛隊海外派遣に際し、先んじて現地入りして情報収集を行い本隊を支援する業務を担っていた現地情報隊だが、発足したばかりで経験も浅い情報省からすれば本職と言ってよい。
「っ……コブラから返信が来ました」
「来たか、どうだ?」
通信機を操作していた職員が、コブラからの返信を受けて声を上げた。上司と職員らがそれを確認するべく、通信機の方へと駆け寄った。
「……返信解読しました。どうやら、図面にはかなりの信憑性があるようで、エリア48の概略図とも一致するとのことです」
「なるほど、でかした!」
確たる情報を得て、信憑性を確認したところで、職員たちは静かにガッツポーズを決めその喜びを分かち合った。
「この情報は信憑性のあるものとして、本部へ送れ。図面はスキャンして送っておくんだ、衛星回線を使え」
「了解です」
「よし。しかしな……幾ら空軍の参謀だったとは言え、どうやってこんな詳細な図面を入手したんだ?」
上司が思った僅かな疑問は、微かな風のように流れていき、すぐさま誰も気にしなくなった。上司自身も、疑問に思うのをやめてしまう。
もし彼らの経験がもう少しあれば、話も違ったかもしれない。しかし情報省職員もその上司も、情報機関の人間としての経験がまだまだ浅すぎた。
そうしてその情報は、つい最近日本が打ち上げたばかりの通信衛星を通じ、日本本土にある情報省本部へと即座に送られる。その情報が詳しく精査された後、潜水艦で行動している特殊作戦群の部隊にも送られていた。
神聖ミリシアル帝国 地方都市カン・ブリッド
とある空き家
カン・ブリッドのとある空き家にて、元空軍参謀の秘書が、一人で薄暗い空き家の中で何かの作業をしていた。懐中電灯を片手に、何かを探している。
そしてゴミ箱に捨てられた紙束の中から、何かを見つけ出す。それはくしゃくしゃの紙束に偽装され、捨てられた空軍参謀の手書き図面であった。
それを空き家の中の暖炉に火を付けると、何かを隠滅するかのようにその中に手書き図面を放り込み、焼却してしまった。
「…………」
女性秘書は薄暗い闇の中でニヤリと笑うと、空き家の中にあるテーブルと椅子を持ち出し、椅子の方に足をクロスさせて腰掛けた。タイトスカートから伸びる白く長い美脚、その雰囲気と相まって非常に絵になっている姿だ。
そして女性秘書は、小型の魔導通信機を腰から持ち出して、それをテーブルの上に置いた。パカリ、と蓋を開いて通信機の電源を入れ、アンテナを伸ばして通信を試みる。するとすぐさま、彼の上司にあたる人物につながった。
『……ミモザか。撹乱の方は、上手くいったか?』
「はい。ニホン側に、例の図面を手渡すことに成功しました」
その女性秘書は、自分の本当の上司にあたるアニュンリール皇国の工作員と報告を交わす。元空軍参謀と一緒に居た彼女の正体は、アニュンリール人の工作員であった。
「予定通り、あの男の図面はすり替わっていました。本物の方は今処分したところです」
『……なるほど。ではこれでニホン側はミリシアルの技術解析を妨害できるな』
「ええ、私の方もニホンとコンタクトを取れました。今後はあの男をダシに、様々な情報を手に入れられると思います」
実は彼女らは、元空軍参謀とニホンを使ってミリシアルに妨害を仕掛けようとしていたのだ。
アニュンリールとしては、グローバルホークはミリシアルに解析されては困る。なのでそれを破壊しようとしている日本を、間接的に手助けする形にしたのだ。
まず元空軍参謀が用意した粗雑なエリア48の図面を、アニュンリールの諜報機関が手に入れた図面とすり替える。これにより日本側の作戦を手助けし、グローバルホークを確実に破壊させる。
これにより、元空軍参謀は日本から気に入られて特別な地位を得られるだろう。当然、このアニュンリール人の女性も正体を偽り続けることでその地位のおこぼれを貰える。それを利用して、日本に関する調査を進めようとしていたのだ。
『……よし、上手くやっているようで何よりだ。それからこの件は、"アイツら"にも伝えるんだ。良いな?』
「了解です、では」
そう言って女性秘書は小型魔導通信機を閉じ、艶やかな足を閉じ、椅子から立ち上がる。夜の闇に照らされると、彼女の恐ろしさすら感じる美しさが、さらに際立った。
彼女は空き家を出ると、しばらく閑散とした街を歩いた後、とある公園に立ち寄った。女性一人の夜道の散歩としてはかなり長く、そろそろ警官に声をかけられそうである。
しかし、彼女は臆することなく夜の公園のベンチに座った。
しばらく座っていると、その同じベンチに一人の男性が近づいてくる。その男性に、女性秘書は手で合図を送ると、隣に座るように促した。
「……今日は何かあるのか?」
「あるわ。とっておきのビッグニュースが」
その男性の顔つきは彫りが深く、地球でいうならゲルマン人のような人種の顔つきをしている。
この辺りでは珍しいその男性に対し、女性秘書は一通の手紙を手渡し、一言だけ言い残した。
「このビッグニュースは、賞味期限があるわ。早めに行動しないと、破壊されちゃうわよ」
「……了解した」
そう言って女性秘書は、ベンチから立ち上がって、自宅への帰路についた。
取り残された男性の方は、夜の闇の中でその封筒を開く。そしてその封筒の中身の内容に、相当驚いていたようだ。
「これはこれは……」
その男性の正体は、グラ・バルカス帝国の諜報員。彼が入手したのは、日本に手渡したのと同じ、エリア48の詳細な図面であった。
グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ
戦略情報局
一方のグラ・バルカス帝国戦略情報局の方では、昨晩に大きな情報が飛び込んできた為、少しばかり騒ぎになっていた。
廊下で職員らがひっきりなしに移動しており、走って駆け抜けていく。時折、廊下ですれ違うカイザルに対して敬礼をしていく職員もいるが、中には無視して突っ走っていく職員もいる。
「なんだ、やけに騒がしいな」
カイザル大将はそんな彼らの様子に疑問に思いつつも、もはや恒例となっているバミダル大佐への訪問のため、建物の中で一番奥の部屋へ移動した。
「カイザル大将」
「うおっ……」
すると、気配を察知していたのか、向こう側の方から扉が開けられた。カイザルは突然の出来事に少し驚き、後ろに下がった。
「どうしたんだ急に……なんか騒がしいぞ?」
「詳しくはこちらへ。実は少し、重大な事件が起きまして……」
バミダル大佐に招き入れられるのを受け、カイザル大将はそのままバミダル大佐の執務室に入っていく。そして、いつものソファに腰を掛け、お互い対面で座る。
「今日は第二次報告のはずだが……それよりも重要なのか?」
「はい、重大です。実は我々情報部と、外務省とで掴んだ情報なのですが……」
バミダル大佐は、周囲に聞こえないようにカイザル大将に直接耳打ちをし、その事件の内容を話した。それは、ミリシアル領内にグローバルホークが墜落した事件のことであった。
「……何っ、ニホン製と見られる偵察機がミリシアル領内に墜落しただと?」
「はい。おそらくは、前回雑誌でお見せした無人偵察機かと思われます」
カイザル大将はその情報の信憑性はともかくとして、それが事実だった場合のことを考えた。他国の領内に偵察機が落ちたとなれば、外交問題に発展する大事件である。
「我が情報局の職員が、現地協力者と共につかんだらしいのです。無人機はミリシアルの秘密研究施設であるエリア48に安置され、場所も図面と共に提供されました」
「図面まで来たのか?そこまでされたら、逆に怪しいが……」
「ええ。しかしどうやら、ニホン側は無人機を解析されるのを良しとしておらず、残骸を破壊しようとしているそうです」
「……確かに解析されたら怪しまれるからな。理にかなった行動だ」
そう言ってカイザルは、日本側の素早い対応に感心しつつも納得していた。自国の秘密兵器が、他国によって落とされ、鹵獲されては外交問題である。証拠ごと消してしまうのは、確かに対応としてアリだ。
「確かにこれは、すぐさま対応しなければならない案件だな……」
「どうしますか?今回の件を利用すれば、ミリシアルから日本に対する不信感を煽ることができます。暴露してみますか?」
「そうだな……しかし、それを言ってミリシアルが信じるのか?"なんで知っているのか?"と疑われかねない。逆に、俺たちの方が日本のお仲間だと疑われる」
「確かにそれもそうですね……しかし、我々としては絶好のチャンスなのですが……」
カイザルとバミダルは、お互いに目を落としながら顎に絵を当て、しばらく考え込む。するとカイザルの方から、何かアイデアが出たのか口を開き始めた。
「……なあ、それが本当なのだとしたら、我々の手のものにしてしまうというのはどうだ?」
「……どういうことですか?」
カイザルは悪戯を思い浮かべた子供のように笑うと、「なに」と一言挟んでから、思い浮かべた内容を話した。
「ミリシアルから、残骸を奪い取るんだ。こちらも特殊部隊をそのエリア48とやらに派遣し、残骸が安置されている場所へ向かい、ニホンよりも先に残骸を回収する」
「特殊作戦ですか……?しかし、やるとしてもバックアップが……」
「バックアップの方は、ニホン側がやってくれる。ニホンの特殊部隊と同時に侵入すれば、少なくとも陽動として機能する」
「た、確かに……」
確かに日本の特殊部隊と同時に潜入できれば、基地には二部隊が侵入することとなり、ミリシアル側の混乱を誘えるだろう。少なくとも、これにより作戦の陽動が必要なくなる。
「そして同時に侵入した後、無人機の残骸が安置されている場所にニホンより素早く辿り着けば、残骸のパーツくらいは奪える。それを持ち帰って解析すれば我が国の糧になる上、軍人の説得材料にもなる」
「しかし……我が情報局には手持ちの特殊部隊がいません」
「なに、我が海軍から部隊を出そう。それにツテがある、外務省の暗殺部隊も編成に加えてみよう。外務省の方は、すでに現地にセーフハウスがある筈だからな」
「ならば、協力者から受け取った図面を用いて作戦の詳細を決めさせましょう。どうにかして、我々も動かなければ」
「よし、そうと決まれば早速根回しだ。私は海軍と外務省の方に行ってくる。またとないチャンスだ、無理を言っても動かすぞ」
そうして二人の間で五月雨式に概要が決まると、二人は行動を開始した。それが今後の戦略に大きな影響を与え、大事件を引き起こすとも知らず、彼らは動き出す。
解説
・アニュ工作員の女性について
彼女は完全に二重スパイしていますが、別にアニュンリールとしては状況を引っ掻き回したいだけなので、理に適っているというわけです。