久しぶりに筆が乗ったので更新いたします。
第三十六話『対日包囲網』
中央暦1642年7月18日
ムー連邦 首都オタハイト
ムー連邦で最も栄えた首都オタハイトの中心地に、日本国外務省の大使館があった。
ムー連邦の行政区画である議政府回廊の一等地に立つこの建物は、日本政府が閉鎖されたムーの迎賓館を買い取って使っている建物だ。当時の建物をそのまま使っているため、外装は豪華な作りだ。
だが独特の建築様式と、日本式の改造などが行われているため、日本人が想像するヨーロッパ式建築とはまた違う。日本の歴史で例えるならば、明治初期の頃の洋風建築に近いだろう。
「よく懲りずに何度も来れますね」
そんな日本大使館の一室では、ピリピリした空気の中で外交が行われていた。
日本国外務省の外交官である朝田 泰司は、世界連合の外交官の面々を相手にしても冷静で冷ややかな目をしており、澄ました顔で皮肉を言った。
その皮肉に世界連合側は多少の不快感を示すが、彼らはそれを表に出すことはない。まずはじめに、グラ・バルカス帝国の全権大使であるシエリア・オウドウィンが今回の交渉の目的について切り出した。
「……今回も対日外交要求の件で参りました。期限は過ぎております、いつになったら回答が出るのですか?」
「すでに何度も言った通り、まだ明確な答えを出すつもりはない。しかし、認められる可能性は低いだろう」
朝田はあくまで事務的に、感情を悟られないように無表情でそう言った。
だがこの態度が気に入らないのか、エモールの全権大使であるモーリアウルが突っかかった。
「それは要求を拒否するという事かね?我がエモールも世界連合もそれを認めんぞ」
今回の対日外交要求を突き付けた張本人であり、日本に対してモーリアウルノート*1の早期実行を望むエモールにとって、日本側の済ました態度は気に入らない。
早急に要求を呑んで履行するよう、朝田に突き付ける。しかし、朝田は動揺することなく言葉で反撃する。
「要求を全面的に拒否するというわけではありません。一部は飲めますが、中には我が国にとっては承諾しかねる要項もある。交渉を進め、要項を整理しようと言っているのです」
「詭弁だ!要項の変更などあり得ない!貴様ら日本が魔帝の手先だと疑われている以上、貴様らが要求を呑まなければ戦うまでだ!!」
モーリアウルは脅しもかねて、朝田に対して怒号を浴びせる。
しかし、日本側は脅しに動揺することなく無表情のまま。朝田に至っては少し笑っている。
モーリアウルは気に入らず、さらに言葉の脅しを続けようとしたが、ここで横やりを入れられることになる。
「そこまでです。エモールの態度は行き過ぎている。それは宣戦布告と同義、我が国でも容認できない」
「っ……」
発言したのはムー連邦の全権大使、ユウヒだった。
最初の接触時期から日本との交渉と友好関係を築いてきた大使は、今では日本と世界連合間の交渉を仲介する立場となっている。だがその発言は全て日本寄りだった。この発言もあからさまなタイミングだ。
「……日本め、忠告しておくが貴様らがどんな事を言おうとも、世界は見ているぞ」
「我が国を不当に不意打ちしておいて、"己が正義"とは本当に甚だしい……世界とは我が国を仲間はずれにしたすべてなのですかな?」
あからさまな挑発を朝田から受け、モーリアウルがさらに青筋を立てるが、それ以上の言葉の応酬はシエリアが左手で阻止した。
「一部の要項が飲めないのは分かりますが、そろそろ明確な回答を提出していただきたいものです」
「我が国は民主主義国家である。決定には時間がかかる上、飲めないものは国民が納得しない」
「国民を説得するというのは?」
「既にやっているが、これを行えばさらに時間がかかるのは必然だ」
詭弁だ。国民を納得させるにしても、時間をかけすぎている。
そもそもグラ・バルカス帝国の調べでは、日本国内でそのような国民への説明がなされている情報はない。つまり、朝田は時間を稼ぐつもりで答えをはぐらかしているに過ぎない。
シエリアはそれを知っているが、今この場で日本側を追及しても答えをはぐらかされるか、ムー連邦が擁護するかのどちらかなので言っても無駄だと判断した。
「なるほど、あくまで茶番で誤魔化すおつもりですか。回答はいつになるつもりで?」
「茶番……茶番ですか。私共はあなた方の提示したモーリアウルノートの方が、よっぽど茶番染みていると思いますがね」
回答期限を誤魔化すような口調で、朝田は世界連合の面々に対して皮肉を言う。
その舐め切った態度にモーリアウルが再び青筋を立てるが、シエリアは彼の脚を蹴り自制を保たせた。
中央暦1642年7月20日
神聖ミリシアル帝国 国際港湾都市カルトアルパス
その後、全く進捗がなかった対日交渉の成果を、シエリア達世界連合の面々はカルトアルパスに持ち帰った。
先進11カ国会議にも使われたカルトアルパス文化会館の会議室には、ミリシアルやグラ・バルカス帝国などの各国の重役が外交官の報告に耳を傾けている。
「……と、いうわけで日本側はまたしても回答を延期しました」
シエリアからのその報告に、各国の重役たちからは落胆の声がボソボソと聞こえた。日本側が回答を延期するのは、もうこれで三度目である。
「解答をはぐらかして、手出しをさせないつもりか……」
「あからさまな時間稼ぎだ、もう聞き飽きたぞ」
「いつになったら回答が出るんだ!」
各国の重役たちから、苛烈な不満の声が出てくる中、グラ・バルカス帝国の席からそれを宥める声が出た。
「だが皆、相手は民主主義国家だ。意思決定に時間がかかるのは致し方ないのは事実であろう」
そう言ったのは、グラ・バルカス帝国から出向した外務担当の皇族、ハイラス・カールだった。
ハイラスは穏健派の外交担当者としても有名で、皇族にしてはフットワークも軽い。
転移当初には、率先的に第三文明圏の各国と外交交渉を行い、国交を成立させたという功績もある。
「だがハイラス殿、回答を延期されるのはこれで三度目だぞ?」
「最初から回答期限があったわけではあるまい。何処かの誰かが、キチンと回答期限を定めて正規のルートで要求を提示したならば、このようにはならなかっただろうが……致し方ないさ」
あくまで爽やかに、しかし的確に先走ったエモールの行動を皮肉ったハイラスに、モーリアウルは小さく舌打ちする。
「フンッ、魔帝の尖兵に正規ルートなど必要ない。正規の手続きを踏む国かどうかも怪しいからな」
「……まあ、ともかくだ。これで図らずとも"プランB"を進めることになったが、このままでは埒が明かん。既に手は打ってあるが、どうやってニホンを追い詰めるか?」
その言葉を受け、各国の重役たちはしばらく頭を悩ませた。当のハイラス自身も、妙案は持ち合わせていない。
「回答を引き延ばしても、ペナルティが無いのがキツイですな……」
「このままでははぐらかした者勝ちだぞ?」
「いっそのこと、もっと味方を引き入れて孤立させるか?ほら、まだ中立宣言してる奴らがいるだろう、アニュンリールとか」
「鎖国主義のアニュンリールは乗らないだろう。それに、文明圏外と同レベルのアイツらを引き入れてなんになる?」
各国の重役たちが悩む中、ここでもまたモーリアウルが発言した。
「何を悩んでおる!簡単な事だ、我が国の対日要求を支持しない国を片っ端から囲い込めば良い!」
「な、なんだと……?」
「中立を名乗る奴らを根こそぎ制裁すれば、それこそニホンは孤立するではないか!なぜそれを早く実行しないのか!」
モーリアウルは中立国をターゲットに、外交圧力を加えるべきだと発言した。さらに興奮した様子で言葉を続ける。
「まずは中立を決め込むムー連邦に制裁を与えよ! あの国が親日勢力の筆頭、あの国が靡けばニホンが泣いて詫びるのも近いだろう!」
その言葉に、エモールをはじめとした一部の国々は「その手があったか!」と声をあげて賛同し始めた。
モーリアウルは持て囃されるのを受け、誇らしげに胸を張り鼻を高くした。
しかしその言葉の過激さには、まだ理性のあった国々が苦い顔をした。日本だけならばまだしも、ムーなどの第二文明圏国を相手にするのは世界連合といえど骨が折れる。
「…………フーッ」
そして、そのような過激なやり口はハイラスの好むところではない。ハイラスは深く息を吸うと、机を勢いよく叩いて立ち上がった。
「調子に乗るのもいい加減にした方が良いぞ、蜥蜴風情が!」
ハイラスは会議室に響き渡る大声で、モーリアウルに食ってかかった。その覇気は力強く、竜人族のモーリアウルですら一瞬たじろいでしまった。
「な、なんだとっ……!?」
「黙って聞けば貴様ら、相手国の主権どころか、中立の意思すら吐き捨てているではないか。自分に都合の悪いことは全て敵なのか?自分たちに従わないものは全て敵だと?貴様ら、外交を舐めてるのか!」
普段温厚で和かな性格のハイラスが、会場を震わせるほどの気迫で迫るのを見て、モーリアウルを含めた全員が凍りつく。
なにしろ多少過激な発言があったとはいえ、モーリアウルは竜人族の巨漢だ。人間とは1メートルくらい背丈が高く、威圧感に優れている。
「なっ……我々を馬鹿にしているのか!?人間風情が我が国の方針をとやかく言う権利はない!黙ってろ!!」
「外交の"が"の字も知らず、ただ地位で抑圧することしか知らぬ愚か者に言われたくはない。恥を知れ!貴様らが先走って代償を受けるのは、我々全員なんだぞ!」
「ぐっ……」
だがハイラスはそれに臆することなく、むしろそれに迫る勢いでの言葉を浴びせた。竜人族の恐ろしさを知っている者からすれば、戦々恐々ものだ。
そして彼が言う言葉もまた、モーリアウルの痛いところを突いた的確なものだった。地位と圧力で抑圧することしか知らぬエモールからすれば、図星である。
……もちろんグラ・バルカスも昔は同じ穴の狢であったが、今は改めていると信じたい。その様子を見ていたシエリアは心の中でそう思った。
「力を振るう横暴な者は、力によって滅ぼされるだけだ。……我が国はそうならないために改めたが、貴様ら蜥蜴には予知能力はあっても学習能力は無いようだな」
「だ、黙れ、人間風情が!魔帝討伐に協力しないのは、魔帝に屈したのと一緒である!敵として認定するのは当たり前の話であろう!」
「……ふむ、では逆に聞くが、なぜカルトアルパスの事件の際、貴様らのドラゴンはニホン艦隊に攻撃する事なく戦闘を避けていたんだ?」
「そっ、それは……」
「魔帝討伐に協力しない奴らは、敵ではないのかね?どうなんだそれは!?」
さらに痛いところを突かれたモーリアウルは、言葉に詰まって何も言えなくなった。だがここで会議がヒートアップするのを、司会役を務めるミリシアル帝国のシワルフが止めた。
「ハイラス殿、そこまでにしてくれ……言い分はわかるが、今は各国で協力するべきだ」
「……失礼した」
シワルフが止めるのを聞いたハイラスも、流石にこれ以上はまずいと判断したのか、素直に警告を受け入れた。
ハイラスは乾いた喉に水を飲んでリセットすると、先ほどまでの発言を締め括った。
「とにかく、グラ・バルカス帝国としては事態を煽るような行為は避けるべきだと考える。中立国への制裁などをしてしまえば、大義名分はあちら側に向くぞ」
「くっ……」
ハイラスの言葉には、シワルフとしても賛同している。シワルフはミリシアルの意思を伝えるべく、発言した。
「我がミリシアルとしても、"プランB"の方がニホンの足元を崩しやすいと思います。今は交渉で時間稼ぎ、大義名分が得られるまで凌ぐべきかと……」
シワルフの声は周りを配慮してから、ヘビの尻尾のように語尾が小さくなっていったが、意思は伝えられたのか、重役たちは頭を冷やした。
「……そういえばそのプランBだが、進捗はどうなんだね?」
「現地の協力者との連携は取れてるのか?」
「そうだな。そろそろ進捗を報告しよう。シエリア君、説明してくれたまえ」
ハイラスが言うのを聞き、再びシエリアが立ち上がって発言する。
「はい、では再び発言させていただきますシエリアです。現在のところ、我が国の諜報機関を中心としてムー連邦の分離主義勢力にコンタクトをとっているところです」
シエリアは用意していた資料を捲りながら、計画の進捗を語った。
「既に幾つかの勢力とは、連携を取り付けられました。今後も労働組合を中心に声掛けを続けますが、あとはムー連邦の情勢次第かと」
シエリアはその後も、手元の資料の情報をもとに各重役たちに報告を続ける。その後も報告会議は続き、各国の重役たちが対日戦略を協議したが……
カルトアルパスの一角にて、この会話を盗聴している者がいた。市内の空き家を借りているハーフ顔の日本人が、会議の様子を盗聴器でバッチリ聞いていた。
「プランBか……これはまずいな、報告しなければ」
盗聴装置からの音声を漏らさず聞いていたのは、組織も経歴も不明な自衛隊の諜報組織、"別班"の諜報員たちだった。
日本政府がかつてその存在を否定したことで知られる別班だが、彼らは極秘といえども実在する存在であり、転移後もこのように活動していた。
現在は情報省と協力し──ただし陸自中央情報隊の所属として身分を偽っている──、情報省が確保していたカルトアルパス市内の拠点に居を構えていた。
盗聴装置の方は、測距レーザーにより会議室の窓の揺れを測定し、会議室内の音波を解析して会話内容を把握する──というハイテク盗聴器だ。おかげで彼らは会議室から離れた場所で会議を盗聴している*2。
そして彼らの存在は、敵味方ともに巧妙に秘匿されていた。
「"パンサー"、ミリシアルの憲兵隊が来るそうだ。そろそろ行こう」
「おう、すぐ行く」
それとほぼ同時刻。
カルトアルパスに駐留するミリシアル軍の憲兵隊が、市街の空き家の壁に張り付いた。魔光短機関銃を持ったフル装備の部隊だ。
彼らはその空き家に張り付くと、タイミングを合わせて扉を蹴破り突入した。しかし中は人の姿も家具の欠片もなく、もぬけの殻だったり。
「なっ……」
「誰も居ないだと!?」
困惑する憲兵隊の足元に、小さな機械が電波を発信していたが、電池が切れたのかその直後に光が消えた。
憲兵隊は空振りをしてしまい、まんまと騙されていたのである。
「偽の発信機はうまく機能したようだな」
「……念には念を入れよう、俺たちも拠点を移すぞ」
野次馬に紛れていた彼らは、困惑する憲兵隊を尻目にどこかへ立ち去っていった。人を隠すなら、藪の中である。
中央暦1642年7月22日
ムー連邦 南部管区カッセロ州
一方、こちらは第二文明圏のムー連邦。
農業と軽工業が盛んな南部管区のカッセロ州のとある村では、今日も労働者たちが村の缶詰工場で働いていた。
その様子を監督する経営者のフィリップは、社長室にてタイプライターを打ち込み書類仕事をしている。彼は頑なに日本製のパソコンなどを拒むタイプだった。
そんな時、執務室の扉をノックされた。フィリップは扉の向こうの労働者に入るよう促す。
「失礼します。フィリップさん、ロイドさんが来ましたよ。今は応接室に居ます」
入ってきた労働者の言葉に、フィリップは顔を上げた。
「ん、村役場のロイドさんだよな……なんで?」
「なんでも労働組合の話みたいです」
労働者から組合の話が出ると、フィリップは目の色を変えてタイプライターの仕事を中断した。
「……分かった。すぐ行く」
報告しにきた労働者が、その豹変ぶりを疑問に思う中、フィリップは足早に工場の応接室に向かった。そして周りに誰もいないのを確認し、扉をノックする。
「……合言葉を言え、"サンダー"」
「"フラッシュ"」
合言葉を受け、仲間が扉を開けてくれる。フィリップと同年代くらいの経営者は、気さくに声をかける。
「来てやったぞフィリップ。工場はどうだ?」
「相も変わらず、景気が良くないよ。庶民はみんなニホン製の缶詰を買いやがる。政府はまともな関税を引いてくれないしな」
そう不満を漏らしながら、フィリップは執務室のソファに腰掛けた。
彼の言う通り、ムー連邦での軽工業の立場は低くなった。原因は安くて高品質な日本製品と、それに対する連邦政府の対応のせいだ。
衣類や食料品など軽工業はムー連邦のGDPの四分の一を占めているが、目先の利益を上げにくい上、安い日本製が出回り始めた為、政府は軽工業の保護を後回しにしている節がある。
結果として、ムー連邦の軽工業業者はかなり苦しい地位に追い込まれているのが現状だった。
「で、例の進捗報告だよな。今はどうだ?」
「……武器の調達が遅れてる。各所の労働組合に声を掛けて、自警団にも協力を取り付けているが、政府の目も厳しくなってきたからな」
これらの政府の方針に不満を抱き、果てには反乱まで考えている勢力がムー連邦には多数散らばっていた。
大都市圏を除いた田舎の地域、特に南部管区や西部管区の工業地域では、それらの地下活動が活発化してきていた。
もちろん、連邦政府もこの不穏分子を見逃しているわけではない。
日本の諜報機関からの情報をもとに、武器の流通の制限や強制捜査などを執行し、反乱分子を排除しようとしていた。
「このままじゃ、反乱するにしたって武器も練度も足りない。目も厳しくなったらますます追い込まれる。どうする?」
「一応、練度に関してはいくらか正規軍の奴等にも声を掛けて、話に乗ってくれてはいる。だが……本当に大丈夫なのかは不安だ」
二人がため息を吐いて不利な状況を嘆く中、鍵を掛けてあるはずの執務室の扉がノックされた。
「ん……誰だ?」
「合言葉を言え、"サンダー"」
その音を聞き、二人は身構える。だがもしかしたら仲間かもしれないので、合言葉を投げかけた。
「"フラッシュ"」
すると、ドアの向こう側の人物は正しい合言葉を言った。フィリップとロイドの二人は、まだ疑いの余地があった為に懐から拳銃を取り出した。
そして恐る恐る鍵を開け、扉の前に取り付くと、扉は見境なく開かれた。
同時に扉の先からぬっと手が飛び出し、取り出したばかりの拳銃の銃身をがっちりと握られて押さえられてしまった。
二人が驚愕するまでもなく、相手の体が部屋の中に滑り込んでくる。
「な、誰だお前は!?」
「てめぇ、どこで合言葉を知った!」
扉を開けた人物に拳銃を向けようにも、相手に拳銃を押さえられて向けられない。苦し紛れに二人は怒声を放つが、相手はパッと拳銃から手を離すと、飄々とした態度で余裕を見せ、両手を上げた。
「おいおい、銃を向けるなって、話がしたくて来たんだよ」
「話だと……?」
その人物は足を使って乱雑に扉を閉め、そのまま応接室の中に入る。一応、ロイドと協力して武器を持っていないことを確認し、その後ソファに座らせた。
彼の話を聞き取ると、どうやら協力を申し出てきたようであり、話の通じる人間だった。
「……つまり?アンタらグラ・バルカス帝国が、この反乱に協力してくれるんだな?」
「ああ。もちろんこちらから提供できるものもある。軍事教練、ゲリラ戦のやり方、それから武器に関しても」
「反乱のことはどこで知った?」
「すまないが、それは軍機でね。ノーコメントだ。それよりもこれを見てほしい」
そう言って男が手渡した書類を、フィリップとロイドは受け取り、仕掛けがないかを確認してから開封した。
そしてその中の資料には、大量の武器弾薬の供与リスト、軍事顧問の派遣準備に関する資料、そして同じ志を持つムー連邦内の協力者のリスト……などが大量にあった。
「こんなに大量に……何が条件だ?」
「話が早くて助かる。俺たちが求める条件は、ムーの現政権を打倒した後の話だな」
そう言って男は話を続ける。
「その新政府にはニホンではなく、我が国と強固な関係を結んでもらう。貿易なども我が国を優遇してほしい。それが条件だ」
「なるほど、条件としては……悪くはないな。むしろ当然の権利だ」
「なら、決まりだな」
比較的話の分かる協力者は、そうにこやかな表情で握手の手を差し伸べた。
フィリップとロイドは、その男をうさん臭く思いながらも、渋々手を取り交渉を成立させた。
情報省があるのに別班を出したのは、最近のドラマの影響です。