男女比1対10あべこべ世界inネガティブ君 作:かんしゃにだくてん
「――え?」
気づいたら、一面まっさらな世界にいた
「うぇ…頭いったぁ…てかここ、何処?」
謎の頭の痛みに顔を
え…と、僕は確か、高校に行ってる途中だったような……
それで…横断歩道に差し掛かった時に何か大きな音がして……
「───あっ」
思い出した、大きな音ってのは多分、クラクションだ
そう、僕は車に轢かれて、おそらく……──死んだ
「え、でも、ここは? 死んでない、よな?」
一先ず体の安全を確認しようと体を探ろうとすると
「思い出したか」
何処かから声がした
「……は?」
急いで周囲を確認するが、声の主らしき影どころか、
「だ、誰だ! 誰が今声を出した! 何処にいる!」
いきなり訳のわからない場所に連れてこられた恐怖や焦りを吐き出すように、僕はその声の主に対し勢いよく頭に浮かぶ疑問を
「落ち着きなさい、時間なら文字通り『いくらでも』ある、質問には答える」
またしても出所の解らない言葉に更に焦りを覚え、いきなり流れ込んできた情報を処理できず発狂しそうになるも、状況を理解しなければならないと思いなおし、冷静さを忘れないよう声の主に問いかける
「……こ、ここは何処なんだ、僕はなんでこんな場所にいる」
凹凸一つないどころか、果てすら見えない一面真っ白な平面の世界。夢や幻を疑おうにも、先程から続く頭の痛みがそれを許してくれない
「ここは君達人類が言う、死後の世界に当たる場所だ」
何気なく放たれたその一言に、僕は言葉を出せないでいた
“死後の世界”
「あ、ぼ、僕は…死、んだ、の…か?」
かなりどもってしまったが、今はそんなことを気にする暇はない
「そうだな、君は普段通りに学校へ行く道の中で、信号無視をした車に
理解できない。いや、理解したくない
「あ、はは……そうか、死んだか……ハハハ、ハ――
――僕がその無機質に告げられた残酷な言葉の意味を理解するまでに、優に数十分はかかったように思える
「あ、の…家族や友人は、悲しんでいましたか…?」
冷静になった今になって、優しかった家族や共に笑いあっていた友人たちの顔が脳裏に浮かぶ
今まで迷惑ばかりかけて、やっとバイトが出来るようになり、家族に今までの恩返しが出来ると思った矢先にこれだ。世界のどこを探しても、僕ほど親不孝な子供はいないだろう
いつも一緒にいたあいつらも、最後に渡せたプレゼントは僕の死に顔だ。いつもの何気ない日常から友人の死に顔を見た人生最悪の日にしてしまった僕はどんなに最低な男なんだ、とネガティブな考えが頭に浮かび続ける
「ああ、君は家族や友人にはそれなりに大切に思われていたようだ、葬式は静かに小さく行われたが、皆涙を流していたよ」
「───っ」
……その言葉を聞いた瞬間、何か張りつめていたモノが切れ、息が出来るようになった気がした
僕は昔から人の顔を伺って、人が不快にならない言葉を選んで言うような気の弱い人間だった
皆の言葉を自分に重ねて、勝手に自分に気を遣っているものと思ってしまっていた
そして今、皆が僕のために涙を流したと聞いた時、酷い事だが、安心してしまったんだ
涙がぽろぽろと溢れてしまう。最後まで皆に恩すら返せず、先立ってしまった後悔、皆に僕の死を惜しいと思ってもらった喜び、様々な感情が目の奥から溢れ出してくる
「…っ、ありがとう、ございます……本当に、ありがとうございます……っ」
「私に礼はいらない、ただ事実を伝えただけ。仕事の一環だ」
先程まで無機質だと感じていた言葉が、少し温かく聞こえるようになったような気がする
「…それを知れただけで、嬉しいんです。だから、ありがとうございます」
「構わん、今言った通り、仕事の一環だ」
耳に入った言葉の中に、少し違和感を覚える
「仕事、とは?」
その言葉を投げかけた瞬間、
「うわっ! 誰だ!?」
目の前に黒い人型が現れた
まるでその空間が抉り取られたかのような黒。一面真っ白の世界に一つだけぽつんと浮かび上がっている事もあり、かなり異質な雰囲気を
僕がその人型をを観察していると、人型からいきなり声が発せられた
「一先ず自己紹介をしよう。私は人類の死後の管理を行う世界のシステムの一つshdm,04と言う者だ」
何やら大層な言葉が出てきた、“人類の死後の管理”それはどういう意味だ、人類全ての死後を管理するシステム?何だそれは、それはまるで……
「か、神様?」
思わず口に出てしまう。神。人類の理解の範疇を超えたこの人型は、そう表す事が最も相応しいように思えた
「いや、私は君達人類が言う神という存在ではない。この世に存在するありとあらゆるものに介入することなく、任務をこなす事だけを命じられた存在、それが私達だ。私の呼び方は仮称として、『D』とでも」
ところが、このディー? という存在は自らを神でないと言う。話の内容から他にも同じような存在がいる事も想像できる……やめよう。おそらくこれは理解しようとしても到底出来ないものだ、考えるだけ無駄というもの。
今は出来るだけ冷静に、やるべきことをやる
「あの、ディーさん? 死後の世界とは、どういうものなんですか? 僕はこれからどうなるんでしょうか……」
この一面が白に囲まれた世界について、僕がずっと疑問に思っていたことを口にする
「そうだな、人類の死後は先ずこの世界に送られ、その後私が説明をし、次の段階に進むという流れになっている。天国や地獄と言うものはないが、生まれ変わりというものがある、君に話しかけたのも、その生まれ変わりについての話をしようと思ったからだ」
その言葉にどうしても反応してしまう。生まれ変わり。
僕も同じように特別な力を貰い、別世界に行くのだろうか
「あの、その生まれ変わりというのは……」
「生まれ変わりとは、死んだ生命の魂を輪廻の輪に乗せ、新たな世界での生を与えるものだ。新たな世界とは君達の言う、現代、中世、古代、未来等の様々な時代、そして君が生きた世界と法則が根底から違った世界、例を言うならば、人間以外の新たな知的生命体が地球を支配した世界、魔法が存在する世界、生命が生まれなかった世界等の、無限大に広がる可能性の世界の事を言う。望みがあれば生まれた環境の調整はある程度しよう。何かあれば言え」
驚いた。生前は友人たちと冗談半分に生まれ変わって最強になりたいなんて話もしていたが、そんなことが現実にあるとは思ってもみなかった。そしてある程度の望みも叶えてくれるという、これ以上にいい対応はないだろう、なにせ頭の片隅に思っていた程度には望んでいたことだ、今すぐにでもディーに望みを伝えようとして……
……思い止まる、先程からどうしても、みんなの顔が脳内に浮かぶ
「あの、生前にいた世界への生まれ変わりというものは、出来ないのでしょうか……」
別の世界に行って強くなりたい。その思いも確かにあるが、みんなとの何気ない日常が自分にとって最も幸せなものだった……と、今になって強く思う。だからこそ、自分はあの暮らしに戻りたい
「それは出来ない」
その言葉に、一気にどん底に叩き落された気分になった
「っそれは、どうしてですか……?」
心が強く揺さぶられるように感じて、上手く言葉を出せない
「君が生前いた世界は、魂を輪廻の輪に乗せる事が出来なくなった。つまり、記憶が魂の許容量を超えかけた者達が記憶を消去し生まれ変わる世界の一つだ。またあの世界に生まれ変わるには、記憶を消さなければ存在を保てなくなる程魂を圧迫しなければいけなくなる。そして、魂が記憶に耐え切れなくなまでに掛かる平均的な時間は、おおよそ一万年程だ。最もこれはただの目安であって、これより短い事も長い事もある」
──一万年……まだたったの十五年しか生きていない僕にはとても想像出来ない途方もない年数。いや、人類で最も長く生きた人が聞いたって、きっと想像なんて出来やしないだろう。それほどまでに、一万年とという時間は長い。
どうすればいい、僕の記憶を消してもう一度みんながいる世界に生まれ変わるか? いや、僕に大切な思い出を捨てるなんて選択は出来ないし、おそらくディーに許可もされない
「それじゃあ! もう二度と、家族や友人には会えないということですか……?」
「その可能性が高い、例外はあるが限りなくゼロに近い確率だ」
──例外はある。ディーは確かにそう言った
「例外、とは?」
限りなくゼロに近いからなんだというのか。可能性が少しでもあるならば諦められない
「君が生まれ変わった世界に君の知人が生まれ変われば、完全にではないが君の望みは叶えられた事にはなるだろう」
……無理だ
その言葉に期待をかけるには僕はあまりに死ぬのが早すぎた。限りなくゼロに近いどころか、ゼロそのものだ
……諦めるしかない、のか。自分のために大切な人の死を望めるほど、僕はクズになれない
「そう……ですか。じゃあ、僕はどうすれば……」
「考える時間はある、自分で答えを見つけろ。そろそろ生まれ変わりの工程に進む、望みがあれば言え。大まかな世界観、人種、立場、才能、性別等、言えばある程度の調整はする」
そうだ、生まれ変わり。みんなの事で頭がいっぱいで忘れかけていた
――どうするべきか、みんなの事は……諦めるしかないとしよう。これは、仕方がなかった。そう、仕方ない事なんだ。それに、ずっと引きずったままだと何も進まない
生まれ変わる世界の条件を考えよう、うだうだしていても意味がない
先ず、危険な所は無しだ。どんな才能を持っていようと死んでしまう可能性が高まる選択はしない
真に死の恐怖を知ってしまった今、文明のレベルが低かったり、人類が生態系の頂点に立っていない世界は論外。超常的な力がある世界も無し、最低限の条件としては、安全で、娯楽があって、出来れば日本人である事。これくらいか?――
「――あの、決まりました」
「早いな、それで、君が望む条件は何だ」
「う、生まれる国は出来れば日本、もしくは日本と文化が似通った国がいいです。時代は生前と同じか少し先位で、魔術? とかの超常的な力はない方が良いのと、顔やスタイルも、一般的に見て、『良い』と思われる程度にはして欲しいです。それと、ある程度の立場が約束された家にも生まれたいです」
うん、この条件なら僕が危惧している事も起こらないだろうしきっと大丈夫だろう。問題はディーにこの要求が受理されるかどうかだ
「そうだな、その程度の要求なら問題ない。本当にこれだけでいいか?」
良かった、ディーにとってはあの条件でも“その程度”らしい、つくづく底が知れない存在だ。いや、人類の死後の管理とか言ってたし当然か
「はい、十分です」
「そうか、では、君が生まれ変わる世界を決めよう。候補は三つ。
一つ目は、君が生前住んでいた世界と価値観や文化はほぼ同じだが、太陽系の大きさが拡大された世界。この世界のメリットは生前と同じような生活を送れる事、デメリットは一日が数時間程長くなる事による意識の差。それ以外は君の望みの通りだ。
二つ目は、人類が独自の進化を経て、外見だけが大きく変化した世界。この世界のメリットは独自の進化を経た人類の形が、生存に特化している事、デメリットは生前の価値観を持った君が外見が完全に違う人類に対して愛情を抱けないだろうという事だ。
三つ目は、男性と女性の価値観が逆転し、男女比が一対十になった世界。この世界のメリットは子孫繁栄の過程で外見が美しい者が多く生まれるようになった事により、君の好みの外見の者が多くいる事、デメリットは男として生まれた場合、減少傾向にある人類の子孫繁栄のため精子の提供を強制される事。
この三つの世界が君の出した条件に沿って見つけた世界だ。何か思うものがあれば言え、全て気に入らなかったのなら別の世界を探そう。時間はある、考えておけ」
一日が長い世界。人類の見た目が違う世界。貞操観念が逆転した上、男女比も一対十、ついでに美人に言い寄られる世界……いや、どう考えても三つ目だろう。先ず一つ目、一日が長くなるのはデメリットともメリットとも取れるし、僕の言った条件の中の、ある程度の立場が約束された家に生まれる、これは悪くはない。二つ目、人類の外見が違って愛情を抱けない、ダメだ、論外。三つ目、これはデメリットなんてあってないようなもの。美人が多くて、貞操観念が逆転しているから僕から女性にアタックしなくてもいい、そして男性が希少な上に顔も家柄もいいならおそらく積極的に仕掛けてくれるだろう。悪くないどころか最高だ。健全な男子高校生としてはこれ以上に行きたい世界はない
先程の鬱屈とした心が少し晴れたような気がする。我ながら単純だ
「三つ目の、男女の価値観が逆転した世界に生まれ変わりたいです」
この意思が変わらない内に、口早に言葉を告げる
「そうか、生まれ変わった後については、6歳の小学校入学時意識が戻るようにしておく。生まれ変わった後の六年間の記憶は継ぐようにもしてある。その世界のある程度の常識は解るようになるだろう」
中々に親切な設計だ。しかし六歳か。貴重な男ということもあり、だいぶ甘やかされて育つ可能性もあるだろう。精神年齢がだだ下がりしそうで心配だが、まぁ……いいか
「生まれ変わりは、どうすれば?」
「直ぐにでも始める事は出来る。覚悟が出来たら目を瞑れ」
覚悟……難しい話だ。頭ではとっくのとうに出来ていると思っても、いざ目を瞑ろうとすると上手く動かない。
……だがこのまま考えていても時間が過ぎていくだけだ。頭の中で仮初の覚悟を決めて、力を込めて目を瞑る
「覚悟が出来たか、では──────
「外行こー! 鬼ごっこする人ー!」
「はーい!」 「はいはいはーい!」 「私も行くー!」
「必殺! ファイアーパンチ!」 「バリアー! きかないもんねー!」
「うちバリア貫通ある!」 「私バリアかんつーバリアあるしー!」
「捕まえちゃうぞー!」 「キャー! やーめーてー!」
「昨日のラブキュア見た?」 「昨日ね、ママとお買い物行ってたから見てない、録画してある」
「こいつ今トイレ行ってたー! うんこマンだー!」
「行ってないし! うんこマンじゃないし!」
「……」
「ゆうきくん今日も一人だねー」 「話しかけてきたらー?」
「えー、なんか絶対ダメっておかーさんに言われてるんだよねー」 「私もー」
(うるさいぃ……)
拝啓 盛夏の侯、連日厳しい暑さが続いています。
両親、友人方におかれましてはお変わりなくお過ごしであることを切に願っております。
転生と入学をしてはや数ヶ月、僕は今だクラスに慣れないまま、無駄に顔が良いくせにやっていることは小学生男子の幼女達に遠巻きに顔を覗かれる生活を送っております。
嗚呼お父さまお母さま、どうか僕を応援してください。
いくら男性が少ないとしても、そりゃ大人のお姉さんが精通前の小学生男児に恋愛感情なんて抱きませんよね、はい。小学校入学時の転生は本当に、ほんっとうに失敗したと思っています。
美人にアタックされると言われたからこの世界に来たのに、今僕の周りにいるのはうんこと外遊びが大好きな超活発な美幼女だけです。この状況に喜ぶ人もいるのでしょうが生憎僕にロリコンの気は無い上にこの世界に来てからの数ヶ月で目が肥えに肥えてしまい、美しい人を美しいと思えなくなってきました。
そして友人方、僕は転生以前より友人がどれだけ大切だったかを思い知り、何も気負うことなく思ったことが話せる友人方がどれだけ僕にとって大きな存在だったかを再認識しました。この世界では貴重な男性、それもルックスも良く家柄も中々ときたら友人になりたい、という目的ではなくまた別の
あなた達との馬鹿らしくも楽しかった日々は今も僕の心の支えになっています。
最後になりますが、一言だけ、言わせていただきたく思います。
助けてマジで
敬具
7月■■日
両親、友人方
こういうの書ける方いたら書いてください
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