故も知らぬ簒奪者   作:青い灰

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未実装だしどんな設定つけてもええやろ……(蹴
割と元ネタは即バレするもんですかね?

本小説では実在する競走馬を起用しています。
イメ損ですわ!って方はバック推奨です。

大丈夫な方のみ、どうぞ。





憧憬 憐憫 嫌悪 否定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はずっと、夢を見ている。

 

 

目覚めてしまえば、触ったシャボンみたいに弾けて

空に消えてしまう─────そんな、泡沫の夢に。

 

それでも、いつか、と手を伸ばす。

 

届かないと分かっていても。

無駄だと知っていても。

 

 

だからこそ、私は───────

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

レースは終盤に差し掛かっていた。

 

調子は最悪。足が、身体が鉛のように重い。だが、このまま行けば5着以内には入れる、かもしれない。前を塞がれる前に、突っ切るしかない。

 

 

(あぁ、でも)

 

 

果たして、()()()()()()()()()()()()()()

当然の話なのだが、ここで私が負けたとして。私は別に、悔しく思うこともないのではないか?

 

そんな考えが、過ってしまう。

 

足が速いわけじゃない。

体力に自信があるわけでもない。

根性も特にない。

 

 

 

「ッ、あ………!!」

 

後ろからの震えるような威圧感に、意識が戻った。けれどその時には、何もかも遅かった。

 

 

「───はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

あぁ、相変わらず凄い気合いだ。

そうして私を雷みたいに追い抜いたのが誰なのか、私は知っている。誰だって、知っている。

学園中が今、貴方に夢中だ。

誰からも尊敬されて、誰からも期待されて。

 

どうして、そこまで走れるんですか。

どうして、そんなに強いんですか。

どうして、そんなに期待に応えられるんですか。

 

どうして、そんなに貴方は。

 

 

 

 

 

『一着ッ、シンボリルドルフです!!』

 

 

 

 

 

『皇帝』で在り続けられるんですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

【私は貴方が、羨ましい】

 

 

 

 

 

━━━━━

━━━━

 

━━

 

 

 

 

「お疲れ様です、■■■」

 

 

レースが終わって休んでいた時、声をかけられる。顔を上げれば、そこには見慣れた友人がいた。名を呼ばれたけれど、何故かうまく聞こえなかった。

 

「あはは……まぁ、疲れるほどじゃなかったけどね」

 

実際には、死ぬほど辛いけれど。

私の友達は上品に口元に手を当て、クスリと笑う。やっぱりお嬢様だなぁ、と思いながら、その反応に安堵する。私が上手く笑えている証拠だ。

 

「惨敗しちゃったけど、まぁ次もあるからね」

 

「もう。いつまでもそんなこと言ってると、

 トレーナーもレースも見失っちゃいますよ」

 

突き刺された正論で耳が痛い。

だから今は、この話はしたくない。……話を逸らす。

 

「ソフィアはトレーナーさん捕まえたって?

 流石だよねー」

 

「まだ仮契約ですよ。

 でも、私を見初めて下さったのは確かですし、

 頑張ってその期待に応えたいと思ってます」

 

「凄いなぁ……よくそんな気が起きるね」

 

隣に座った友人に、本心を告げる。

小さい頃からの友人には、私の一部は見せていた。全部を見せて失望されるのは嫌だから、一部だけ。

 

「あなたも思えるようになりますよ。

 多分……近いうちに。ただの勘ですけどね」

 

「まっさかー。私の性格知ってるでしょ?」

 

「きっと良い人が見つかりますよ」

 

表面しか見せてないから、そう言えるんだもんね。

それでも、私の友達でいてくれるのは、嬉しいよ。

 

 

どこまでも純粋で、どこまでも優しい、私の友達。

綺麗な私を信じてしまっている、大好きな友達。

 

 

 

【私は貴方が、憐れだ】

 

 

 

 

━━━━━

━━━━

 

━━

 

 

 

 

「ちょっと話がしたいんだけど、いいかな?」

 

 

そう言った頭のおかしい人が現れたのは、下校時。憎たらしいほど晴れてた空が、オレンジ色に染まり始めていた時だった。私が学園を出たとき、突然にその人は現れた。

 

若い男の人だった。

スーツが似合っていて、その胸元にはトレーナーのバッジが夕焼けの光を反射して、キラキラと光る。

 

 

「……………あぁ、皇帝サマを探してるんですか?」

 

 

皮肉を込めて、笑顔を作って私は聞いた。

とんだ人違いをするものだ。私なんかと『皇帝』を間違えるだなんて、目に穴でも空いたのだろうか。眼球は正常に見えるが。

するとどうしたことか、その人は首を横に振った。

 

「彼女は関係ないよ。俺は、君と話をしたい」

 

「………手短にお願いします。

 悪いですけど、ちょっと、疲れているので」

 

無性に、腹が立った。

あんなレースを見せた私と話がしたい、なんて。

傷に塩を塗るのも大概にして欲しい。此方としてはあんな醜態、早く忘れてしまいたかったのに。

 

 

「だったら、単刀直入に言うよ。

 君をスカウトしに来た。答えを聞かせてほしい」

 

「───────はぁ……」

 

 

私は、溜め息を隠しきれなかった。

疲れもあるだろうけれど、私は本当に限界らしい。この人は狂っているのだろうか。いや、疑うまでもないのだろう。狂っていると断言してやる。

…………まぁ、理由くらいは聞いておくとしよう。

 

 

「どうしてそう思ったんですか。

 私、惨敗でしたけど」

 

「………気持ち悪いと思われるかもだけど、

 あのレースで誰よりも君が気になったから」

 

 

うわっ、本当に気持ち悪いじゃないですか。

…………あぁ、いや、違うか。トレーナーなら担当になるかもしれないウマ娘を気にするのは、当然だ。

だとしたら、考えられるのは。

 

 

「……………あぁ成程、そんな酷い走りでしたか」

 

「それは違う。

 君は、あの直線で()()()()()()()()()()()?」

 

「─────────」

 

 

虚を突かれて、思考と身体が凍り付く。

まさか、と感じた。だが、あの迷いは一瞬だった。一瞬だったハズだ。どうして気付かれた?しかも、観席からはかなりの距離がある。

 

いや、狼狽えるのは悪手だ。

この男の意図は分からないが、隠さないと。

 

 

「あはは、そう見えました?

 最後まで頑張ったつもりでしたけど」

 

「いや確かに………、─────いや、ごめん。

 君がそう言うのなら、そうなんだろう。

 謝らせてほしい。勝手な先入観で話をした」

 

「いやいや、別に良いですって」

 

 

良いワケがない。

たとえ先入観でも、気付かれてたのは本当なんだ。

だが、一体どうして。

 

 

「………それで、スカウトの件だけど」

 

「あぁ、そうでしたね。

 私が手短にって言ったのに、すみません」

 

「いや、謝るのはこっちだよ。

 今じゃなくても、考えてくれれば嬉しいかな」

 

 

 

 

 

 

頭がいっぱいだった。

手を伸ばしても、あの高みには届かないとしても。

 

もしかしたら、なんて考えてしまう。

 

これは、差し出された千載一遇の好機だ。

ここを逃せば、この男は他の生徒らをスカウトしに行く可能性だって、十分にある。声をかけてくれた彼というチャンスが、唯一になるかもしれない。

 

 

 

「………あ、もうこんな時間か。

 あまり時間を取らせるのも悪いか。

 ごめんね、疲れてるところに。それじゃ───」

 

 

「あ─────」

 

 

 

顔を上げれば、彼は此方を振り返っていた。

それなりにあったハズの距離は詰められていて………そこで、私の指が彼のスーツの裾を掴んでいるのに気が付いた。………慌てて、手を離す。

 

 

「……あ、ごめんなさ─────」

 

「……………」

 

 

慌てて取り繕おうとした私に向けて、彼は微笑みを浮かべる。いつもなら、普通なら、腹が立つような微笑みだった。けど今は、何だか穏やかな気持ちになるような、そんな微笑みで。

 

 

「改めて─────君を、スカウトしたい」

 

 

それ以上の、続く言葉はなく。

私からは、何もかも見透かされている感覚だった。だからこそ彼にも私にも、それ以上の言葉はない。

 

手が、差し出されている。

 

 

 

 

 

 

そして私は、震える手で、その手を取ったのです。

 

後から考えれば、なんなのだこれは。

まるで恋をした乙女のようだ。馬鹿らしい。

 

 

 

そもそも、なんなんですか、貴方は。

 

勝手に人の心を見透かして。

それでいて、どうして手を差し出したんですか。

 

だから、だから。

 

 

 

 

 

【私は貴方が、大嫌いだ】

 

 

 

 

 

 

━━━━━

━━━━

 

━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【私は、私自身が何よりも嫌いだ】

 

 

 

 

 

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