よう実に転生した雑魚   作:トラウトサーモン

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 ここまで無人島。
 蛇足かと思って一瞬投稿を迷いましたが、この話が無いと次以降に矛盾が出そうなので……
 短いです。


第19話

 帆波さんはクラスで打ち上げをするらしく、俺のことを心配しつつも去っていった。

 それと入れ替わりで、次のお客さんがやってきた。

 

「えっ、殺したい」

 

 とんでもない過激派がここにいた。直球すぎて惚れ惚れする。

 一体、俺は何を悩んでいたんだ……

 

「桔梗さん。気持ちは嬉しいですが、殺すのはやめてくださいね?」

「うーん、そんな男は死んだ方がいいと思う」

 

 俺もようやく心の整理ができて、戸塚とのエピソードを普通に話せるようになった。

 終始半笑いで、俺の話を聞き続けていた桔梗ちゃん。目が笑ってない。怖い。

 一週間も会えなかったことで、依存がさらに強くなってしまったのかもしれない。

 レイプ犯に仕立てあげるのもアリかな……なんて口走っている。

 

「あー、それにしても早く死なないかな堀北。戸塚と一緒に地獄へ落ちろ〜」

 

 有栖ちゃんに頬擦りしながら、危険な発言を繰り返す。

 あまりにも言いたい放題すぎて、逆に面白く感じる。

 

 俺たち三人でいるとき、桔梗ちゃんはこんな感じだ。

 思ったことに一切フィルターをかけず、そのまま言葉にして吐き出している。

 普段から人の何倍も取り繕って生活している彼女には、これが落ち着くのだろう。

 

「晴翔くん、喉かわいた!」

「はいはい」

 

 俺は冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに注いでやる。

 例えば、ここで俺が桔梗ちゃんの不興を買うようなことをすれば、容赦なく「うざい、死ね」などの言葉が飛んでくる。何なら経験済みだ。

 ……そのあと有栖ちゃんに怒られてシュンとするのも、なかなか可愛いものだが。

 

 桔梗ちゃんにとってありのままの自分でいられる、唯一の時間なのだ。

 これを一週間奪われたのは、想像以上にキツかったはずだ。

 

「はい、ジュース。桔梗ちゃん、一週間もよく我慢したよな」

「本当にね……ありがと、いつも気遣わせてごめん」

「いいよ、俺もお前のこと結構好きだし」

「有栖ちゃんにはかなわないけど?」

「当たり前だろ、何言ってんだ。つーか、それはお互い様だろ」

 

 このやり取りが心地よい。

 きっと、桔梗ちゃんもそう思っているだろう。

 お互いに素を出せる関係。親友といって差し支えないと、俺は思っている。

 

「私、二人に会えてよかった。もし会えてなかったら、今ごろ退学してたか、精神やられておかしくなってたかも」

「桔梗さんは、頑張り屋さんですからね」

「私すごい?」

「すごいですよ。リタイアせずに頑張ったなんて、信じられないぐらいです」

「有栖ちゃん……好き」

 

 さらに、こうやって甘々にしてもらえる。

 こんなことをされたら、有栖ちゃん中毒になるのも仕方がないというものだ。

 

 

 

 風呂を上がったあと、三人でベッドに寝転んだ。

 真ん中に有栖ちゃんを寝かせて、俺たちがそれを挟み込む。

 桔梗ちゃんがお泊まりする時の恒例となっている寝方だ。

 俗に言う川の字だが、有栖ちゃんが娘みたいだって言うと拗ねる。

 

「桔梗ちゃんは、Dクラスの打ち上げとか大丈夫だったの?」

「そもそもやらない。Dクラスだって、一枚岩じゃない」

「そうか、そんなもんだよな」

「もしやってたら、その場で誰かが堀北を叩いたかも。それは、ちょっと見てみたかった」

 

 ……ん?

 そんな結末だったっけ?

 

「あれ、なんで叩かれるの?」

「あいつがリタイアしなければ、Dクラスが一位だったから……まぁ、堀北自身は打ち上げなんかに参加するとは思えないけど。体調悪いのは事実みたいだし」

 

 待て待て待て。どうしてそうなる?

 頭がこんがらがってきた。

 225+30で255ポイント。240ポイントより多いから、それは事実なように見える。

 だけど、俺が知っている話はそんな終わり方ではなかったはず。

 そもそも、堀北がリタイアしなかったらAクラスとCクラスにリーダーを当てられていたから、255-100で155ポイント。その上、一クラスでもリーダーを当てられたらボーナスポイントを失うというルールがあったと記憶している。その分も差し引かれることで、ゼロではないにしろかなり低いポイントになったと思われる。

 Dクラスの大多数は、堀北のリタイアが最善手だったという事実を知らないのだろう。

 

「うーん、軽井沢が持ち上げられるのも不快。やっぱり無くていいかも」

 

 ……軽井沢!?

 意味がわからない。一体何が起きたんだ?

 

「なるほど、綾小路くんはそちらの方向で進めるのですね」

 

 ずっと黙って聞いていた有栖ちゃんが、話に参加してきた。

 状況を把握してそうな口ぶりだが、俺には何もわからない。

 いやいや、そちらの方向ってどちらの方向だよ。

 この全くついていけない感覚。これもなんだか久しぶりだ。

 

「そっか、あいつ実はすごい奴?なんだよね」

「はい。おそらく、綾小路くんがリーダーを当てた上で、その功績を軽井沢さんのものとしたのでしょう。ここで飴を与えるのは少し意外でしたが」

「あー……なんかいい雰囲気になっててウザかったけど、そういうこと」

 

 どうやら、有栖ちゃんは綾小路がした行動の意味を読み切っているようだ。

 今聞いた話を整理すると、綾小路は俺の教えたAクラスのリーダーと、独自で調査したCクラスのリーダーを予定通り当てた。そして、何かしらのエピソードを捏造して、軽井沢の活躍によりリーダーがわかったということにした。

 なぜそんなことを?そもそも、軽井沢には……

 

「平田はどうした、平田は」

「それいつ情報?とっくの昔に別れてた気がするけど」

 

 同じクラスの人間、しかも桔梗ちゃんが言うのなら間違いはないだろう。

 綾小路が、クラス内でも既に動いているということか……全然知らなかった。

 

「手が早いなあ」

「あの尻軽、とっかえひっかえしやがって。あーやだやだ。どいつもこいつも、ムカつく!」

 

 つい口から出てしまったが、微妙に危険な発言だったと気づいた。

 これでは原作に比べて、という意味になってしまう。

 どうやら、軽井沢の手が早いと解釈してくれたようだ。助かった。

 

 頬を膨らませて、足をじたばたさせる桔梗ちゃん。

 相変わらず、人に可愛いと思わせる才能がすごいな。

 

 

 

 しばらく桔梗ちゃんにDクラスの話を聞かせてもらった。

 なかなかあっちに行く機会がないので、新鮮で面白かった。

 ふと、首を下に向けると……

 

「……すぅ」

 

 有栖ちゃんが眠っていた。

 

(何これ?可愛すぎるんだけど)

(可愛いよなぁ)

 

 俺たちは起こさないよう、小声で話す。

 

(寝てるだけでこんなに可愛いなんて……反則でしょ)

(この顔は、小さい頃から全然変わらないんだ)

 

 有栖ちゃんの寝顔に、俺はいつも癒されてきた。

 ほっぺたにキスをしたり、抱きしめたりすると、とても幸せな気分になれる。

 隣にいることが許される者の特権である。

 

(はぁ、一週間疲れた……私も寝る。おやすみ)

(よく頑張ったな。おやすみ)

 

 疲れが出たのか、桔梗ちゃんもすぐに寝息を立て始めた。

 なんだか、子供を寝かしつけた夫婦みたいだなぁと思った。

 怒られること必至なので、有栖ちゃんには内緒だ。




 堀北さんはただ単に体調不良でリタイアした人みたいになってます。
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