よう実に転生した雑魚   作:トラウトサーモン

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第55話

 今日は、今月のクラスポイントが発表される日だ。

 真嶋先生が、いつもと同じようにホワイトボードへプリントを張り出した。

 

 Aクラス 1355cl

 

 Bクラス  524cl

 

 Cクラス  362cl

 

 Dクラス  0cl

 

 Dクラス……龍園たちのポイントがゼロになってしまった。他クラスとはいえ、あまりの悲惨さに多くの者が愕然としている。だが、冷静に考えてみると無理もない。

 三人が退学処分となり、一人は停学だ。そして体育祭は最下位で、さらに(Bクラスもだが)数々の違反行為による減点も反映されているはずだ。これだけ一か月に重なってしまえば、全ポイントが消し飛んでしまうのも止む無しだろう。

 

 そちらが衝撃的過ぎてインパクトは薄れたが、Bクラスの減少率もかなり高い。

 想像以上に削られている。どうやら、体育祭でめちゃくちゃなことをしたのはかなり大きなダメージとなったようだ。他に減点される要素がないので、消去法でそういうことになる。

 

 思い返すと、棒倒しでは30ポイントの没収と説明があったが、それ以外の競技のペナルティが30ポイントとは誰も言っていない。反則行為による危険度を考慮すると、騎馬戦などは棒倒し以上に重い罰が設定されていても全く違和感がない。

 ……普通に考えれば、棒倒しの直後に真嶋先生が来たのは「警告」の意味が大きかったと理解できる。それを察せず、何をしても30ポイントで済むと勝手に判断したのがBクラスの連中だ。

 また、複数種目にわたって違反行為があった場合の規定も聞いていない。そのあたりのことを誰も質問しなかったため、真相は闇の中である。

 いずれにせよ、制裁が下ったことに関しては何ら不思議ではない。後悔してももう遅いのだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 数日後、先週行われた中間テストの結果が発表された。

 俺は勉強不足もあり50点台をうろうろしていたが、今回気になったのはそこではない。

 

「有栖ちゃん、もしかして本気出した?」

「本気と言われると微妙ですが……もはや、目立たないよう調整する意味もありませんから」

 

 有栖ちゃんが全教科満点を取っていた。これは、この学校に入って初めてのことである。

 当然学年一位だ。クラスの生徒たちは驚きを隠せず、ざわめいている。

 

 この変化は、Bクラスが帆波たちの軍門に下ったことが影響しているのだろう。

 有栖ちゃんは、自分がリーダーに担ぎ上げられるようなことは絶対に避けたかった。だが、天才的な頭脳を持っていると知られてしまえば、入学当初から一定数存在していたアンチ葛城が「坂柳派」になりかねない。そのため適度に手を抜いていたのだ。

 しかし、すでにその必要はなくなった。クラスごと植民地にされてしまった以上、今さら周りが有栖ちゃんの優秀さに気づいたとしても、何もできることはない。

 

「退学者はゼロ人だった。今後も気を抜かず、勉学に取り組むように。そして本題だが、只今から今度の特別試験……通称ペーパーシャッフルについての説明を行う。よく聞きなさい」

 

 特別試験という言葉に、Bクラスの生徒たちはめんどくさそうな顔をした。

 真嶋先生は苦笑いした後、その概要を説明し始めた。

 

「来週小テストが行われるが、その結果は成績に一切反映されない。その代わり、テストの結果を用いて二人一組のペアが組まれる……退学に関するボーダーなどは、ペアの合計点で決定される」

 

 簡単に言うと、馬鹿と一緒に組むと大変だということだ。

 これだけだと特別試験の要素が少ない、ただの介護イベントである。

 

「期末試験のポイントは、その特殊な実施方式にある。各クラスの生徒が問題を作成し、それを他クラスに出題する。そして、受けた側のクラスと総合点で勝負することになる。勝ったクラスは50クラスポイントを獲得し、負けたクラスはそれを失う。出題という『攻撃』を行うイメージだ」

 

 ……この学校がそんな単純な試験を行うわけもない。生徒たちの表情が歪む。

 つまり、誰かが問題を考えなければならない。めちゃくちゃダルいと思ってしまった。

 俺はすでに逃げ出す気マンマンであった。合計400問の問題を作るなんて、ありえない。

 

「なお、クラスポイントがゼロの相手を攻撃し、成功した場合も問題なくポイントは加算される。その時相手クラスのポイントは変動しないが、内部的に50ポイントの減算が実施される。具体的には、ポイントが増加するイベントが発生した際に50ポイントが差し引かれる形となる。従って、最終的には合計100ポイントの差が開く。Dクラスを攻撃対象に選択しても損をすることはない」

 

 真嶋先生の説明はわかりやすいものの、若干のぎこちなさを感じた。あくまでも予想だが、ペーパーシャッフルの時点で全てのポイントを失っていたクラスが今まで存在しなかったのかもしれない。前例がないとすれば、まるでマニュアルを読み上げているような感じになるのも頷ける。

 そんなことはどうでもいい。俺は面倒な作業が大嫌いなので、問題作成者に選ばれないようにしなければならない。終わった瞬間に、誰とも話さず速攻で帰ろう。

 

 話の最後に、全ての問題を完成させられなかった場合、学校が作った低レベルな問題を出題することになると補足が入った。知らんがな。むしろ俺にその問題を出してくれって感じだ。

 黙って有栖ちゃんの方を向いたところ、笑顔を見せてくれた。相変わらず今日も可愛いな。

 

 

 

 ホームルームが終了してすぐに、俺は有栖ちゃんを連れて教室から退出しようとした。

 葛城などに話しかけられたら面倒だ。可能な限り素早く動く必要がある。

 

「にゃっ!」

「うわっ」

 

 扉を勢いよく開けた瞬間、目の前に帆波がいた。びっくりした……

 その背後には神崎の姿もある。早速Bクラスへ指示を出しにきたのだろうか?

 

「あっ……」

 

 帆波は一瞬恍惚とした表情を浮かべたが、すぐに首を振って正気を取り戻した。

 そのまま教室の中へと入り、教壇に立った。女子の大半はキラキラした目で帆波を見る。男子も雑談を止めて、話が始まるのを待っている。真嶋先生の時とはえらい違いだ。

 俺は有栖ちゃんの手を引いて、しぶしぶ自席に戻った。

 

「はいはーい、みんなありがとう!」

 

 全体に向けて手を振ると、男女問わずその美しさに見惚れてしまう。

 何しろ今の帆波は私服なのだ。もちろん、俺の命令で買った100万の装いである。こうして多くの人の前でお披露目するのは、きっと初めてのことだろう。

 ……その破壊力はとてつもない。すでに一度見たことのある俺ですら、目を離せなくなってしまうほどだ。初見の者、特に男子の心を奪うには十分すぎる。

 

「今日はお話があって来たんだ。ペーパーシャッフルのルールは聞いたかな?」

 

 結論、見た目が可愛いというのは得である。

 こうして普通に話すだけでも、みんなの意識をぐっと引き寄せることができる。さらに帆波には人徳をベースとしたカリスマ性もある。これほど独裁者に相応しい存在は他にいないだろう。

 

 話の内容は、出題する相手にAクラスを選べというシンプルなものだった。それは協力体制を敷いた以上当たり前のことなので、他の生徒も驚いた様子はなかった。

 

「被ったらくじ引きになっちゃうから、うまくいくとは限らないけど……もし思い通りの組み合わせになったら、作戦を考えてくる。それに協力してほしいの」

 

 どこかふわふわとした雰囲気。帆波の容姿と優しい話し方が、生徒たちの感覚を麻痺させる。

 ここで私のために死ねと言われたら、何人か死ぬような気がする。そんなことを本気で考えてしまうほど、今日の彼女は圧倒的なオーラを放っていた。

 

「でも、これだけは約束するよ。私は絶対にみんなを苦しませない、みんなにとってもメリットのある戦い方をする。私の目的は、この学校の人たちを幸せにすることだから」

 

 有栖ちゃんは、そんな帆波を愉快そうに眺めていた。表情からして、何か考えがありそうだ。

 ……今回は、この子が得意そうなタイプの試験である。本領発揮となるだろうか?

 

 

 

 俺たちの部屋に帰った後、さっそく有栖ちゃんは誰かとメールを始めた。

 ……すでに桔梗ちゃんからは、今日は来れないと連絡を受けている。あちらはあちらで、作戦会議でもするのだろう。きっと行きたくないだろうに、人気者の立場を守るのは大変だ。

 ストレスが溜まりすぎないよう、また今度話を聞こうと思う。

 

「晴翔くん、後で帆波さんのお部屋に行きましょう」

「了解。どんな話になるのか、楽しみにしてるぜ」

 

 不参加だった体育祭と比べると、かなり楽しそうにしているのがわかる。

 それに影響されて、俺もワクワクしてきた。やっぱり、有栖ちゃんが動かないと始まらない。

 問題を作るのは面倒なものの、悪くはない気分だった。

 

 ……いや、それでもめんどくさい!

 怠惰すぎる考えを心の内に抱きながら、俺と有栖ちゃんは帆波の部屋へ向かった。




 後半部分をいろいろ修正しているため、また分割になってしまいました。
 明後日までには出せる……と思います。
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