よう実に転生した雑魚   作:トラウトサーモン

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 お久しぶりです。生存報告です。
 言い訳は長々と活動報告に記載させていただきました。
 あちらに書いた通り全く見通しが立たない状況ですが、なんとか復活できたら……とは思ってます。
 この話はpcに残っていたメモから書き起こしたものです。短いです。

 連載を待っていた皆様、本当にすみませんでした。


番外編4

 それは、中学2年の夏休みのことだった。

 俺たちは二人で、外を歩いていた。

 うちのご主人様は身体が弱いくせに、クソ暑い中散歩したいなどと言い出したのだ。

 そこで日傘を用意して、彼女にだけ差してやっていた。それによって俺は35度の炎天下であってもノーガード。倒れてしまいそうな灼熱に耐えながら、付き合っている。

 

「歩くのが速いです。もっと私に合わせてください」

「……わかった」

 

 クーラーの効いた部屋に帰りたいと思っていたためか、無意識に歩く速度が上がっていた。

 彼女は人の気持ちを一切考えず、そのことを指摘してきた。冷たすぎる態度にむっとしながらも、歩調を合わせた。

 

「それにしても、暑いですね」

「そうだな」

 

 俺はお前の何倍も暑いけどな、とは言わないでおいた。少しでも反抗的なことを言うと、このプリンセスは熱くなって反論してくる。その方が圧倒的にめんどくさい。

 ……まったく、困った主人だ。

 

「あなたが私の隣にいることを許されているのは、身体面で支えることができるからです。しかし、いずれあなたは私にとって不要な人間になると思います。その時が来れば、お別れです」

 

 何を言い出すかと思えば、お得意の天才マウントだ。また始まったよと辟易しながらも、俺は適当に相槌を打ってやる。特にイラつくこともない。所詮はガキの相手だ。

 

「有栖ちゃんは天才で、俺は凡人。否定はしないさ」

「そうですね。本来あなたは、私から意識されるような人間ではありません。あなたの父と、私のお父さま……その良好な関係を維持するために使われているのです」

「ああ、わかってる」

 

 思うところが無いわけではないが、言っていることは事実だ。

 俺がいなくても、有栖ちゃんは大して困らない。せいぜい世話係がいなくなる程度のもので、こいつの父親の財力を考えればその道のプロを雇うことなど容易である。

 

「可愛くって頭がいい。そんなお前と俺が、釣り合うわけがないだろ」

「ふふふ……」

 

 不愉快な発言も多いが、可愛いところもある。こんな風に煽てたら、いい気になってしまうぐらいには子供なのだ。元大人の俺が、わざわざ目くじらを立てるものではない。

 

 いずれ縁を切られるだろう、と覚悟していた。

 まさか同じ高校に行くことになるなんて、考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 それから月日が経ち、卒業式の日がやってきた。

 式典の後、俺たちはいつものように手をつないで校舎から出る。

 あの夏の日から俺は、有栖ちゃんのペースに合わせて歩くことをより意識するようになった。

 

「……歩く速さとか、大丈夫?」

「問題ありませんが……あっ」

 

 俺の質問を受けて、有栖ちゃんもあのエピソードを思い出したらしい。

 一瞬はっとした顔をした後、途端に表情が曇り、目には涙が溜まっていく。

 

「ちょっ、そんなつもりじゃなくて」

「ご、ごめんなさい。あの夏のことですね。全て思い出しました」

「いいって!頼むから普通にしてくれ!」

 

 病院での一件以降、有栖ちゃんは過去のことを思い出す度に謝罪するようになってしまった。

 迂闊に思い出話もできないのでとても困っているのだが、この子の中では全てが黒歴史になってしまっているため、どうしようもない。

 思わず、「はあ」とため息をついてしまう。そんな俺の様子を見て、有栖ちゃんはびくっと身体を震わせる。

 

「ああ、別に不機嫌とかじゃないから。今のため息は……なんだろうな?」

 

 そこまで怯えなくてもいいのに、と思う。

 

「ふふ……」

 

 揺らぐ瞳で、遠くを見つめる有栖ちゃん。

 自信無さげな姿は、かつての彼女からは全く想像できないものである。

 どうしてこうなったのか、なぜ変貌してしまったのか……この時の俺は、その原因が自分にあることをまだ理解していなかった。




 自分が過去に書いたものを読み返すというのは、なかなか恥ずかしい気持ちになりますね。

(追記)前半の内容は、R-18の20話ですでに投稿したものだったので消しました。
 こちらは、雑魚君の身の上話はなるべく出さないというスタンスで書いていたことを思い出しました。
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