自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~   作:ハの字

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未知なる者達

 幾度となく続くテロや破壊活動によって人口が減少した結果生まれた廃墟の中、車所か人の行き来すら稀となった寂れた舗装道路に、大型のダンプカーが二台止まっていた。

 

 そのダンプカーの傍らに、数人の男女の若者がいた。

 どれも二十歳前後か、高校生に見える子供までいる、全員ばらばらの私服で、場所が違えば何かのイベントの集まりにしか見えないだろう。

 

 しかし、木立から薄っすらと頭を覗かせるビルを遠目に観察しているその集団は、どこか剣呑とした空気を纏わせている。

 

「……やっぱりな、いるのは旧式の二十三式だけだ、ネットの書き込みも馬鹿にできないぜ」

 

 ダンプカーの屋根に立ち、双眼鏡を覗いていた男が言って、路上でダンプカーから何らかの機材を操作しているビジネススーツ姿の女性に「どうする川口さんよ」と声をかける。

 川口と呼ばれた女性は、ショートヘアの髪を揺らして男を見上げる、この集団のトップらしいことが、周囲の反応と身のこなしで伺えるが、それにしてはかなり若く見えた。

 

「手はず通りに行くわ。それに、この子たちなら相手が自衛隊の最新鋭でも負けはしないわよ」

 

 川口は淡泊な口調でそう返すと、手元の機材へと話しかける。

 

「良い、二人とも、あくまで目的は研究施設の無力化だけ、無駄な戦闘と被害は抑えて、目標を達成したらすぐに合流ポイントに向かって、特にアリサ。あなたはすぐ熱くなって周りが見えなくなるんだから」

 

機材のケーブルが繋がれた先、シートが被せら外からは見えない荷台の中に、それは膝を抱えるようにして佇んでいた。

 

 丸っこくも分厚い甲冑の様な赤い装甲に、関節部分は細く、ヒダのような物が重なり合ったように出来た支柱で繋がっているように見え、まるで細い藁人形に西洋の鎧を着せたような出で立ちをしていた。

 

 その胴体、ひと際丸く、ハッチのような装甲がつけられたその中で、それを操る少女が、リーダーからの何度目かの注意を聞いて辟易としたように返した。

 

「わかってるって、できるだけ怪我人を出さない、人を殺さないでしょ?」

 

『それと、熱くならないこと』

 

「わかってるってば!」

 

 アリサと呼ばれたその少女は、少しダボ着いた、サイズが大きいパイロットスーツを身に着けた、まだ高校生か中学生のどちらかに見える若さだった。

 長い栗色の髪を一纏めに括り、年相応の表情を見せる少女に、座席以外何もない球体の中に立体映像のように浮かぶ女性がため息をついて

 

『わかっていたら、その子に義手と義足をつける必要なかったでしょう……真木、アリサをよく見ててあげて』

 

『りょーかいです川口さん、アリサがいつもみたいにやり過ぎて失敗しないように、ちゃーんと見張ってますよ』

 

球体の中に、また切り取ったように別の場所の画面が浮かび上がり、快活そうな印象のショートカットの少女の顔が映った。

 アリサの親友である真木と呼ばれた少女が載っている、赤い甲冑の正面に蹲っている人型、青い甲冑の機体に乗っている方からの通信だった。

 

 アリサは親友のあまりの言い草にむっと頬を膨らませて

 

「そんなに言わなくてもいいじゃない! 大体、私の不手際でこうなったんだから、私が頑張るべきでしょ、真木がついてくる必要なんてないじゃない」

 

『アリサがそうやって熱くなるから、いつも私がカバーするんでしょーって、学校と一緒だよ』

 

 真木が笑顔で諭す、二人は同じ学校のクラスメートで、幼馴染でもある。

 故に、川口は訓練から何からこの二人を組ませていた。

 

『真木、実際の戦闘は初めてなんだから、気を付けるのよ。アリサ、失敗したとは言え、貴方は一度戦闘をこなしてるんだから、冷静に対処なさい』

 

『おっけーでーす』

 

「だからわかってるわよ!」

 

『では、お願いね』

 

 球体から川口の立体映像と真木の映像が消え、代わりに真っ暗だった球体の中が明るくなり、甲冑が見ている風景をそのまま取り込んだように、球体の中全体に映し出された。

 

 アリサが球体の表面を撫でながら、先ほどまでとは違い、子供をあやすように優しく囁く。

 

「いこう、スピネル。君の手と足を取り返しに」

 

 答えるように、その巨体が「ぐぉん」と唸り、立ち上がった。

 

 二体の甲冑が音もなく低空飛行でダンプカーから飛び出したのを見送ってから、川口は機材を補助席に放り込み、周囲の若者達に指示する。

 

「スピネルとアイオライトが残骸を運んで来たら即座に撤収、レーダーには映らないけど、用心に越したことはないわ……宮野、見張りよろしく、別動隊との連絡もお願いね」

 

「りょーかーい」

「うーっす」

 

 川口は周囲の若者たちに指示すると、自身ももう一台のダンプの荷台に潜り込んだ。

 

「そう、一応の用心と転ばぬ先の杖よ」

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