自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~   作:ハの字

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フォトンドライブ

 陸上自衛隊技術研究所。

 そこは、防衛装備庁直轄の日本における兵器関連の研究開発を行っている拠点の一つである。

 市街地か離れた森林地帯を切り開くように、白いビルが立ち並ぶその施設は、周囲を取り囲む高い塀と、迷彩服を着た警備員も相まって、怪しい組織の秘密基地のようだった。

 

 そこへと出向いた安久、宇佐美の二人が、例の残骸の調査報告を聞こうとしたすると、残骸の調査を担当している研究員に「人が居るところではちょっと」と言われて、人気がない場所に連れ出された。

 

 通路を歩く研究員、吉田の後ろに続いて、片方はきびきびと、もう片方は気怠そうに付いていく。

 

 ここ数日、万が一のために施設の護衛を兼ねてやってきた二人であったが、今のところはデモやらテロなどの妨害活動もなく、順調万端であるので、割と暇なのだった(新しい装備のテストなどの手伝いをしたが、それでもだ)。

 

 今日、調査結果を聞いて、資料にまとめた後、一度駐屯地へと戻る手はずになっている。

 

「それにしても、わざわざ日々野ちゃんのから部品……というか上半身丸ごと貰ってまで修理して、Tk-7持ってくる必要ってあったのかしら」

 

「何度も武装デモが発生しているし要件も要件だからな、用心に越したことはないという日野部一佐の判断だろう。それに、ここには旧式の二十三式しか置いてないからな」

 

 そういった安久が窓の外を見ると、ちょうど、敷地を取り巻く高い塀の前を、全体的に丸っこい緑色のAMWがのっそりと巡回しているのが見えた。

 

 森林地帯が多い沖縄に合わせて迷彩されたそれ、二十三式は、半人型のシルエットに三本指マニピュレータを持つ、土木作業用と言われても違和感がない見た目とスペックの機体である。

 

 武装は腕部に装着された、対装甲車を想定された口径の機関砲と、左腕に一本だけ格納されている高振動ナイフだけ。これでは、テロリストに出回っている旧式のAMWを相手にすることすら危うい。

 

 五年前までこれが主力機であったというのだから、技研の設計局と、重要部品を作り上げ、生産を続けている大小様々の工場に、自衛隊の機士は頭が上がらない。

 

 そんな会話が聞こえたのか、吉田が振り返らずに話す。

 

「物騒なデモ隊がよく来ますからねぇ、ほんとはもうちょっと真面な警備体制にしたいんですが……最新機種を駐在させようとするとこわい政治家さんが怒るんですよ、市長さんとか、こうして巡回させてるだけでも、抗議の電話が来ますからねぇ……いやぁほんとに」

 

「頭の痛い話だ……」

 

「うちの上司も頭抱えてますよ」

 

 まぁそれは置いときまして、と吉田は足を止めて、二人に向き直った。

 

「お二方、フォトンダイト、いやフォトンドライブについてはどの程度ご存じか……いえ、これは愚問でしたか」

 

「フォトンドライブ搭載機の評価試験は我々の隊が行っているからな、最低限の知識はある」

 

「Tk-9ねぇ、私あんまり好きじゃないなぁ、大味過ぎて」

 

「作ったチームの一員が言うのも難ですが、試験機ですから」

 

 フォトンダイトとは、近年発見された、地下深くから採掘されるエネルギー物質である。科学者によれば、それは単体でエネルギーを保持する極小の鉱石であるとされている。

 

 特性は何らかのエネルギー、特に電力を与えると、それを倍の光エネルギーにして放出し返すという物。資源不足によるエネルギー問題を抱える各国では、夢の永久機関の足掛かりとして注目されている……まさしく「魔法の粉」だった。

 

 主に日本近海の地下深くや、国外では東南アジアと南米の山岳地帯で採掘されているが、その短期間での採掘量はあまり多くなく、貯蔵施設や研究機関は、恰好の標的としてテロリストに狙われ続けていた。

 それらが紛争の火種となっている地域も部分も有り、良くも悪くも世界的に影響が大きい存在である。

 

 吉田が話題に出したフォトンドライブは、それをAMWの動力源として利用できるように加工した装置だった。未だテスト段階である物の、機動兵器のエネルギー源としては革命的な高出力を誇る。

 

 AMWを自己生産できる国家間では、技術者達が死に物狂いで研究を続けている分野で、この吉田もその技術者の一人だ。

 

「して、お二人ともフォトンドライブの基本的な構造とかはお知りだと思いますが、それがどうしてアレに関わるかというとですね」

 

 そこまで喋ると「ちょっと失礼」と煙草を一本取りだして、無造作に火をつけて一息、吸う。

 

「話が話なので、ちょっとばかし緊張していまして……お二人もどうです?」

 

「「いや、結構」」

 

 パイロットとして喫煙は厳禁、それを知ってか知らずか、吉田は軽く「さよですか」とまだ残っている煙草を携帯灰皿に押し込み、周囲をちらりと覗ってから続けた。

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