カブトはコメディなシーンのカオスさと、シリアスなシーンのカッコ良さの対比がマジで最高。
でも最高過ぎて再現がムズすぎる・・・
なお、今回はカオスコメディ回となっております。
新生ZECTメンバー紹介
・田所修一 新生ZECT総監を務める壮年の男性。
その正体はネイティブだが、最後まで人類の為に戦った正義漢である。
ZECT解体後は実家の蕎麦屋を継いだが、ワームの活性化に伴い再び戦地に赴き
かつての仲間達を収集。
ワームの根絶と被害の縮小、そしてワームの被害にあった人々の真実を世に
知らせるべく新生ZECTを組織した。
・岬佑月 新生ZECTのオペレーター。時には戦闘もこなす。
ZECT解体後はじいやと共にディスカビルコーポレーションを設立し大成する。
しかし、かつての恩人である田所からの収集命令を受け企業の業務をじいやに
任せて新組織に参加。
その決意の裏には悲恋に終わった剣への強い想いがあった。
・高鳥蓮華 新生ZECTのゼクトルーパー部隊でリーダーを務める女性。
ずば抜けた戦闘の才を持ち、肉弾戦でサナギ体を葬るほどの実力を持つ。
その一方で、親しみやすい性格のため彼女率いるゼクトルーパー部隊は非常に
雰囲気がよく戦闘でも抜群の連携を発揮する。
可愛らしい外見や天然な発言などから、親衛隊なる者も存在するらしい。
・元シャドウ隊員達 かつて矢車想が率いたエリート部隊の生き残り達。
ほとんどの者が体に爆弾を抱えているにも関わらずほぼ全員が収集命
令に応じ、集まった者は揃ってこう告げた。
「矢車さんを必ず連れ戻して見せます、あの人は俺の恩人で、俺達の
リーダーだから・・・」
彼等の隊員服には本人達の意向であの金のラインが刻まれていた。
・加賀美新 ガタックの有資格者にして永遠のカースト最下位。
父と協力し、新生ZECTの組織としての重要性を広めるべく東奔西走している。
有力ヒーローと協力し、情報の共有やサポートアイテムの作成など多方面で
ZECTの技術を活かそうとするが失敗のほうが多い。
最近、彼がガタックゼクターに愚痴っているところを目撃する組織の関係者が
多く精神状態を心配されているようだ。
静かな山間にぽつんと立つ小さな蕎麦屋、「たどころ蕎麦」。300年の歴史を持つ老舗らしい。
その窓際に俺は腰掛けていた。
静けさに身を委ねつつ、古い日本建築特有の小洒落た窓枠の意匠に目を細める。
日本の建築は特徴として”ささやかな”意匠を凝る傾向にある。
黄金に輝く金閣でさえ、そのきめ細かな金の表情が場所ごとで違うのだ。
そしてその傾向は建築のみならず、料理にも見られる。
おばあちゃんが言っていた・・・料理を美味しくするのは相手を思いやる愛情と惜しまぬひと手間だと。
「特製手打ちそばと季節の天ぷら盛り合わせ、おまちどう!」
「・・・ほう」
テーブルに置かれた料理を美味そうだと思うことは間々あるが、この蕎麦を見たとき俺が抱いた感想は違う。俺はこの蕎麦を見たとき・・・美しいと思った
「なんて綺麗な蕎麦だ・・・色艶も盛り付けも「いただきま〜す!」芸術の域だ。」
特に変わったところや奇抜な部分はない普通の蕎麦だ。なのに、俺の心を掴んで離さない不思議な魅力がある。永遠に見つめていたいような・・・。俺は掻き立てられる食欲を人生で始めて憎々しいと感じた。
「先代が試食に試食を重ねて完成させた最高の蕎麦だ。この完成度で作れるようになるには相当な修行が必要になる。親父が言っていたよ・・・飯ってものは腹に入れるもんじゃない。目で見て楽しみ、鼻で香りを楽しみ、食べるのが惜しいほどいいものを作るんだ。だから飯って字は「「”食”に”反”すると書く。」」
思わず声が重なり合ったことに驚いたらしく目の前の職人は目を見開いた。
が、すぐに「分かってるじゃないか」と言って優しく笑った。
やはり料理に生きる者の教えは同じだ。
面と向かって話すのは初めてのはずなのに、どこか繋がりを感じてならない。
「本当にいい言葉だ。俺のおばあちゃんも同じことを言っていた。食べるのがもったいなくて、でも食べると美味くて止められない。また食べたいとすぐにねだっていたものだ・・・」
「全くだ。そのくらい気張らなければ今どき店もやってられんからな。」
「ああ・・・なあ加賀美よ、お前にはもったいない上司だ。こんな素晴らしい上司を持ちながらその体たらくでは釣り合わない。やはり自主退職したらどうだ?」
「んばぼ!?ぼばべがぱほへほ!!」(んだと?!お前また俺を!!)
・・・食事のモラル皆無か。
「そう言わんでやってくれ、こんなでもやる時はやる奴なんだ。」
「ほうはぼへんほー!ぼへはべひふほほほは!」(そうだぞ天道!俺はできる男だ!)
出世できる人間とできない人間の圧倒的な差がここまで分かる例もなかなかないものだ。
まず、お品書きに生わさびがあるのにチューブのわさびを使っている時点で加賀美は終わりだ。
あげく、俺達が食事を通して関係を深めている横で、コイツはバカみたいな音をたてながら蕎麦をすすっている。
この田所という男が親切な人間でなければ即クビにされるであろう所業。
コイツの為に協力すると思うと頭が痛くなるので、俺はこの蕎麦と田所の人間性に免じて協力するのだと自分に言い聞かせた。
「カブト・・・いいや、天道くん」
「ごちそうさまでした、正直蕎麦に関してはアンタの勝ちだ、美味かった。」
食事を取り終え、ピッチャーでお茶を注いでいた俺に話かける田所の姿は先程の割烹着から、張りのあるダークグレーのスーツに着替えられていた。
というのも、今回俺が協力するに当たってこの田所という男が何か礼をしたいと言って来たことが、今回蕎麦を食すに至った発端である。
「本当に・・・こんなことで良かったのか?金でも何でも・・・可能な限り何でもするというのに、俺の蕎麦を食いたいだなんて・・・。遠慮すること無いんだぞ?」
「野暮だな。これ以上何がある?俺は今日、最高の蕎麦を知った。そして、アンタという料理を愛する人間と仲を深めた。この経験は金では買えない。どんな権威を持とうともアンタと腹を割って話はできない。そうだろう?」
「それはそうだが・・・」
なんとなく想像はしていたが、やはりそんなことか。
田所といい加賀美といい、なぜZECTの人間はそこまで律儀になるのか?
元々の所業を知る俺としてはそこがわからない。
折角の機会なので遠慮はしないが。
「なら、もう一つ我儘を聞いてもらおうか。」
「おお、そうか!何でも言うといい。」
「また近いうち、この蕎麦を食べに来る、妹も連れてな。その時まで修行を怠るな。
でなければ・・・俺の蕎麦がこの味を超えてしまうぞ?」
「なるほど・・・だが、いくら君でも無理だろうな。もし君が負けたら10年はここで雑用をしてもらうからな。」
「フッ、望むところだ。」
満足した俺は帰ろうと引き戸に手をかけたところで振り返った。
「期待しておいてくれ、アンタが望む以上の結果を得て来てやる。」
「あぁ、頼んだぞ・・・仮面ライダー、カブト!」
外に出れば、いくつかの雲が気まぐれに流れるのが見える。
俺はバイクに跨がり次なる目的地・・・雄英高校へと出発した。
どうも何かを忘れている気がするが、俺が思い出せないということは重要なことでないのだろう。
風を切って疾走する俺の頭の中は・・・そば粉のブレンドをどうするかでいっぱいだった。
「ちょ、天道!!いない!?ああ、田所さんの車も無い!置いてかれたのか?
嘘だろ・・・携帯繋がんないしここ。取り敢えず残りの蕎麦食ってから考えよう、うん。
変身して帰ろうかなぁ・・・」
国立雄英高校、日本のみならず世界規模で見ても最高峰に位置していると謳われる高校。
中でもヒーロー科の入試倍率は300倍と規格外であり、最難関校とも言われている。
また、過去の卒業生にはオールマイト、エンデヴァー、ベストジーニスト等名だたるヒーローが名を連ねており、全ての教員が現役のプロヒーローであるなど非常に高い教育水準を誇る・・・か。
最高峰も何も、俺自身に上限など無いのだからどこに入ろうが関係ない。
選んだ理由としては、一流の料理人が食堂にいるという情報を得たからだ。
そして俺は今、その雄英高校の正門の目の前にいる。
ここの校長に直談判し、そのまま入学、田所達に協力させるのだ。
俺が入手した情報によれば自由な校風が特徴と記されていたので、アポ無しで行っても取り合ってくれるだろう。取り合わなければ・・・無理矢理でも俺の下に取り込むのみだ。
「全面硝子張りは気に食わないが、及第点はくれてやろう。
さて、見定めるとするか。俺の往く新たな道に相応しい場所かどうかを・・・」
だが、俺が天を指しながら意気揚々と門に足をかけた途端、開いていたはずの門が凄まじい勢いで閉鎖されたのだ。
億が一にもこの程度で俺がたじろくことはありえないが、客人に対してあまりにも無礼なこの門には少しばかり礼儀作法を教えてやらねば。
「大切な来賓を傷つけてどうする?俺だから良かったが、そうでなければ怪我をさせていたかもわからないぞ。この後お前の主人にこの旨は伝えるから、精々己を見直すことだな。」
そう言いながらせり出てきた壁を軽く小突けば、カツッといい音が鳴った。
俺はこの中にいるであろうこの門を操る人間にも注意を促すべく、門を飛び越えて校舎へと向かった。
<第三者視点>
雄英高校で教師を務めるプロヒーローの一人、スペースヒーロー13号は「雄英バリア」と呼ばれる防御システムを見つめて首を傾げていた。
「う〜ん、おっかしいなぁ・・・確かに足跡があるけど・・・」
「13号、どうだ?痕跡はあったか?」
ボサボサの長髪を掻き上げながら尋ねるこの男はイレイザーヘッドこと相澤消太。
この両名は雄英バリアが一体何に反応して作動したのかを現場検証するためにやって来たのだ。
ちょうどお昼休み中だったので教師達が各門を手分けして確認することになったらしく、この両名は先程天道が飛び越した正門を調査していた。
「ええ、たぶんですがここにあるこれが・・・」
「・・・これだな。愉快犯か何かがいたずらでやったか、間違って踏んだか。恐らくは前者だろう。最近はよくわからん輩ばかりで呆れるな。」
「ええ、確かに。雄英バリアを”下駄”で作動させるなんて前代未聞ですよ。」
二人が引き返しそうとしたとき、校舎からけたたましい警報が鳴り響いた。
[セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。]
「これは・・・!?」
「急ぐぞ!」
「はい!」
突然鳴り響いた警報に一抹の不安を抱えながら彼等は駆け出した。
時は遡りその15分前。いともたやすく雄英バリアを飛び越えた天道は無数の警備システムを難なく避けて校舎内に入ることに成功した。そして彼が真っ先に向かった場所は・・・
(今は丁度お昼時、きっと食堂も開いているはずだ。ここは予定を変更してここの食事がどれほどのものか先に確かめるとしよう。あの蕎麦のあとでも霞まぬ味なら合格圏だ)
既にお昼休みが始まってしばらくということも相まって、廊下を足袋に和装で歩く天道に気づくものはいない。
天道は特になんの障害もなく生徒で賑わう食堂に到着した。
制服姿の学生たちは皆、美味しそうに料理を食べている。
しかし天道は順番を待つ列に並ぶことなく、一直線に厨房へと歩いて行った。
その間に、生徒達からは不審な目を向けられていたが天道はその視線を無視し、歩みを進めるのだった。
<天道視点>
・・・おかしい。確かに食欲をそそられるが、何かが足りない。
生徒達が食しているのはその”何かが足りない”料理なのだ。試食どころの話ではない。
俺はためらうこと無く厨房へ続くドアを開け放ち中へ歩みを進めた。
しかしそこは、俺の知る料理人がいない場所だった。
「ほら日替わりできたから速く渡せよ!」
「ランチラッシュさん、カレーの方お願いします!」
「待っててくれ、もうすぐでハンバーグ定食があがるから、そしたらで!」
「おい新入り!速く動け!止まんな!」
「は、ハイ!!」
「そういうことか・・・」
俺が入って来たことにもまるで気づかないコックたちの忙しなさ。
怒声が飛び交い、息つく間もなく量産される料理の数々。
かつて訪れた加賀美の母校の食堂は忙しさこそ感じたものの、こんな殺伐とした雰囲気ではなかったはずだ。
(そうか、ここの食堂に足りぬものとはきっと・・・)
俺は未だ気づかれていないことを利用し、散乱する食材から一本のネギを引き抜いた。
「おばあちゃん秘伝のレシピで、目を覚まさせてやろう。道に迷いし同心達よ・・・」
<第三者視点>
「おい新入りぃ!いつまで待たせてんだ!って・・・え?」
粗暴な態度のコックが最近配属されて間もない部下を呼びつつ振り返る。
そこで彼が見たものとは・・・
「ようやく気づいたか、お前もたべるか?」
「ウギャー!!誰だテメェはあぁ!!」
丁寧に盛られた卵焼きを差し出す天道の姿だった。
足元には倒れ伏している部下の姿が見える。
「どうしたんだ!?って誰だよあんたは?!」
「俺の名は天道総「んなことより、おい新入り!しっかりしろ!コキ使って悪かった!だから起きてくれぇ!!目を開けるんだぁ〜!!」
「クソ、よくも新入りをやりやがったな!」
「いや、ソイツは「皆、落ち着くんだ!この不審者は私のしゃもじ神拳米の舞で倒す!」
彼の悲鳴に異常事態発生を察した、コック仲間達が駆けつけたことで厨房は大パニックとなった。少なくとも、天道の言葉が何も届かぬくらいに。
あるものは見知らぬ男の登場に驚き、あるものは目を開けぬ部下に慟哭し、料理長のランチラッシュは現役以来封印していた奥義を放とうとしている。
「食らうがいい!遥か弥生時代より受け継がれし米の力を宿す正義の究極奥義を「一ついいだろうか?」
”米”と刻まれたエネルギー流体を放とうとしているランチラッシュに天道は落ち着き払って一言添えた。
「何を勘違いしているか知らんが、俺はただの客人だ。そしてこの男は俺の作った卵焼きに感動するあまり昇天した。・・・それだけだ。」
「何?客人だと・・・?」
「ああそうだ。お前たちに料理の真髄を教えるべくやって来た。」
天道本人は本気で言っているが、事実とは大きく非なる証言である。
なお、天道の思考から入学云々はすでに消え失せており、今彼の中にあるのは迷える子羊達を己が導くという謎の使命感のみだった。
「つまり・・・?」
「俺の名は天道総司。天の道を往き、総てを司る男だ。
同時に誰よりも料理と食事を愛する者でもある・・・まあ見ていろ。」
天道は大勢の生徒が待つカウンターに立つと先頭で待っていた生徒に声をかけた。
「彼は何をするつもりだ・・・?」
後ろの物陰からはランチラッシュ始め、コック達が様子を伺っている。
「おいお前、名前は?」
「おお、俺ですか?」
どこか根暗そうな印象の生徒は突然の問いかけに肩をビクンとさせて聞き返す。
「お前だ。お前以外誰がいる?」
「私や通形もいるのに・・・不思議!」
天喰の後ろに立つ金髪の巨漢の背後から、長髪が渦巻いている女子生徒がひょっこり顔を出すが天道は天喰から目を逸らさない。
「そんな・・・に、2年A組3番ぁ天、喰・・・です・・・噛んだ・・・死にタイ・・・」
「そうか。なら天喰、これを食った後に5文字以内で感想を言え、ヒーロー志望ならそれくらい出来るだろう?」
目を伏せたまま項垂れる彼を無視して、天道は皿を差し出した。
その上には湯気を立てる卵焼きがのせられている。
「・・・何で俺が・・・こんなに人がいるのに俺がやる意味なんて、ムグゥ!?」
「クドい、黙って食え。」
ウダウダと煮えきらない天喰にしびれを切らた天道が無理矢理口にねじ込んだ卵が、咀嚼によってジュワッと音をたてる。
最初は涙ぐんでいた天喰だったが咀嚼を繰り返すうちにその表情は穏やかなものになっていった。そして、それをゴクリと飲み込んだきり、天喰は電源が切れたように静止しそのまま倒れてしまった。
そして意識を手放す間際に一言「さいこう・・・だ」とだけ言い残し気絶した。
「ねえねえ、美味しかった?卵焼きで気絶ってするの?それともそういう個性?あとなんで後ろで待ってる皆は怒ってるの?不思議!」
ダウンした天喰をつ突きつつ彼女、波動ねじれの問いかけに金髪と屈強な体つきの男子生徒、通形ミリオが答える。
「まあ、前者は食べれば分かるとして、いつになっても列が進まなけりゃ怒るよね!」
そんなやり取りをする両者の前にも天道は皿を差し出した。
「気になるなら食ってみろ、世界が変わる。」
両者は「いいの?!食べる!」「せっかくだし頂こうかな!」と言うなり一切れ口にした。
その直後、気絶どころではないことが起きた。
「な、なんだろう・・・頭がぼーっとするの・・・美味しくてたまらないの・・・ふ、不思議ぃ//もっと食べたいのぉ・・・//」
完全に卵によって理解らせられたねじれは、完全にアウトな表情で二切れ目を食しており、
「そうだ、俺は間違っていなかったんだ。諦めずに努力を続けたあのころは今この瞬間に報われたんだ・・・少なくともこの卵焼きは俺を認めてくれている・・・」
いつの間にか上裸になっているミリオは、悟りを開き総てを理解していた。
この光景を目の当たりにした他の生徒達も、興味の赴くままに食べ始め気づいた時には食堂を利用していた生徒全員が食し卵焼きは完食。
その代わりに、天恵を受けて幸せそうに倒れ伏す生徒達だけが残った。
「これが俺の力だ。もっとも、正しくは俺が受け継いだ力だ。」
「なるほど、理解できたよ。君は凄まじい才能を持っているな・・・。」
その言葉に答えたのはランチラッシュただ一人。
他のコック達は生徒同様に意識を失っており、辛うじて正気を保っているランチラッシュも膝を着き、肩で呼吸をしている。
「だが、わからないのは、作り方を見る限り何か特別なことをしている風には見えなかった。味を再現するだけなら私にもできる・・・それが、なぜあれ程の美味を・・・」
「答えは一つ、お前達に足りなかったのは”余裕”だ。」
「余裕だと・・・?これだけの生徒の食事を用意するんだぞ!どう余裕を持てと言うんだ?!」
捲し立てるランチラッシュに背を向け、天道は窓から射し込む陽の光を指さした。
「おばあちゃんが言っていた・・・食事を作るときは笑顔で作れ。料理は作る者の表情を真似る。食べる者は料理の表情を真似る。
俺も料理を嗜む者だ、日夜大量の食事を作り続ける大変さは理解できる。それでも、強い口調で指示したり、変に焦ったりするのは違うだろう?
急ぐのと焦るのはまた別だ。そこを改善すれば、ここは最高の食堂となるだろう。」
ランチラッシュはその言葉にハッとした。
忙しさの中で忘れていた己の信念、それは正に今天道が語ったことだった。
ゆっくりと立ち上がったランチラッシュは天道の横に並び立つ。
「そうか・・・そうだったな・・・君は教えるのが上手いな。」
「当然だろう?」
「もしよければ、教えてくれないか?あの卵の焼き方・・・君が許してくれるならメニューに加えたいんだ。」
それを聞いた天道は何も言わずに振り返り、食堂の出口へ向かって行った。
そして出口の直前で止まりこう告げる。
「・・・カウンターにもう一人前残っている。食って真似ろ、それが俺のレシピだ。」
「ああ・・・ありがとう!名も知らぬ料理人よ!」
天道はフッと微笑むと食堂の出口をくぐった。
が、その直後けたたましいサイレンが周囲に鳴り響いたのだった・・・。
雄英高校の職員室には、この高校に務めるプロヒーローが全員集結していた。
彼等は土下座させられている一人と、椅子に縛り着けられているもう一人に対しての尋問真っ最中であった。
「なるほどね・・・言いたいことは以上かしら?ランチラッシュさん?」
能面のような笑顔を称えて、鞭を鳴らすSM嬢・・・もといミッドナイトが死刑宣告のように尋ねる。
「ま、待ち給え!私は確かに彼が雄英の関係者で無いことはなんとなく察していたさ!
だが、彼はむしろ我々を導いて助けてくれたんだ!だからそのまま帰してやろうかと・・・」
「問答無用!私お手製の監禁室で反省なさい!」
「嫌だあぁ〜〜〜・・・」
(((さようなら、ランチラッシュさん・・・)))
ランチラッシュは雄英高校地下にある秘密の部屋へと連行されて行き、ミッドナイトを除いた全ての職員が彼の行く末を思い、心の中で別れを告げた。
「全く、あの人はどこまで詰めが甘いんだか!侵入者と気付きながらも報告しないどころか、そいつの料理を生徒に食べさせるだなんて!」
「食事が絡むと途端にあれだからな・・・」
無事送還を終えたミッドナイトが怒りのあまり鞭を打ち鳴らすと、カウボーイハットがよく似合うヒーロースナイプが手を合わせながら呟いた。
(なぜ行きで反応しなかったセンサーが帰りは反応したのか?)などと考えていた天道はその様子を見るなり静かに口を開く。
「物に当たるのは良くない。できる大人というのは男女問わず上手いストレスの発散方法を独自に確立しているものだ。それとも、アンタが大人なのはその服装だけか?」
「あ”ぁ?」
その言葉を聞いたミッドナイトの額にビキビキと青筋が浮かんでいく。
それに気づいているにも関わらず火に油を注ごうとする天道をそばで見ていたプレゼント・マイク代表してが止めに入る。
「命が惜しいなら止めときなBadBoy?ミッドナイトを本気にさせたヴィランで人間のまま帰ってきた奴は一人もいないらしいからな!You are right?」
オブラートに包んでいるため具体的にどうなって帰ってきたかは不明だが、マイクの笑い方がかなりぎこちなくなっているところを見ると相当黒い何かがあるようだ。
が、あくまでも天道は我が道を往く。
周知の事実だが、天道総司は今まで自分が標的となる脅しに屈したことは無いのだ。
「断る。もしそれが本当なら俺が最初の一人になってやる。
一つ教えておくが、俺は最も強く、賢く、そしてこの世の誰よりも偉い。
神に最も近い人間だと言うことだ。後悔したくなければ引き下がれ。」
「へぇ・・・?そうやって強がる子、カワイイから大好きよ❤️」
(((ダメだ、コイツ等理解できない。)))
舌舐めずりしながら迫ってくる露出の美女など普通の15歳が目の前にしたら性癖開発待ったなしの凄まじい刺激があるだろう。
が、天道に関しては全くの無。そもそもこの男、女性をくどく自分に酔いしれるタイプなのだ。
そして、妹という最高の女性を既に知っている為に告白されてもそれとなく理由をつけて断ってきた過去がある。
鞭の柄の部分で顎を持ち上げ、顔を自分の方へ向けても無反応の者は天道が初めてだったのでミッドナイトは驚いた。
そしてそれ以上に驚いたのは天道の顔立ちが己の性癖にどストライクだったことだ。
(なんて綺麗な顔?!キリッとした眉、くっきり二重に切れ長の目と女性的なまつ毛、スッとした鼻筋、色っぽい唇・・・ヤバ、それでいて反抗的で高飛車な性格とかエロ過ぎでしょ・・・)
その一瞬を天道は見逃さなかった。
縛りつけられている椅子からスルリと抜け出すと、すぐさまミッドナイトの耳元に口を近づけ彼女の好みに合うであろう”口撃”をいつもより低い声で行う。
「お前、俺に見とれてたろ?な、そうだろ?”フ〜ッ”」
「〜〜〜ッ!!」
「ダメだろ、ランチラッシュにあんな酷いことしたら・・・悪いのは黙ってここに立ち入った俺だ。だから・・・彼を許してあげてくれないか?」(猛烈な上目遣い)
「もうダメ、どストライク過ぎ・・・ガクッ。」
「おい、まだ寝るには早いぞ?お前にも神の恵みを与えなくては・・・」
”チュッ”
「フゴオォー!!!」
天道が放った止めの一撃にミッドナイトは断末魔をあげてノックアウトされた。
「・・・茶番は終わったか?」
「ああ、見た目の割にウブな女性で助かった。」
寝袋から問いかけてくる相澤に天道は重ねた人差し指と中指を開閉させながら答えた。
ミッドナイトが天道の唇だと思っていた物は重ねた指だったのだ。
これは、女性の唇を奪う行為の尊さを知る天道が編み出した女性を落とす方法だった。
が、その光景を終始見ていた者は一人としておらず、序盤で呆れて各々で休憩を取っていた。
もはや天道が自力で拘束を解いたことに慌てる者すらいない。
「あー・・・天道くんだっけ?素性は問題無し、倒れていた生徒も皆目を覚ましたそうだ。もう帰ってもらって構わん。今後立ち入ることは無いように。」
「そうか、なら帰ると・・・いや、帰るわけにはいかないんだったな。」
「なに?」
もうお腹いっぱいだと言わんばかりに相澤がこちらに目を向ける。
相澤の目を見ながら天道は宣言した。
「俺はこの一言を言うためだけに来たというのに随分と寄り道した。だが、構わない。
単刀直入に言う、俺をここの生徒にしろ。」
しばしの沈黙。
「・・・もう一度言う、帰れ。」
「断る。もしも受け入れないと言うなら、手荒い真似をしなければならなくなる。
ZECTという組織に頼まれてな。それとも、生徒でなく教員の方が向いているというならお前は見る目があるのだろう。そういうことか?」
「ZECT・・・?貴様、あのヴィジランテ集団の人間なのか?」
ブラドキングの言葉に天道は首を横に振り否定する。
「俺はどこにも属さぬ俺という人間だ。だが、その組織の人間から協力を求められて、」
言いかけた言葉は相澤が放った捕縛布によって遮られた。
「スマンな、帰れと言った手前申し訳ないが、それを聞いて帰せなくなった。」
「おいイレイザー落ち着けって・・・」
ただならぬ雰囲気を感じ取ったプレゼント・マイクが止めようとしたその時、椅子に座っていたはずの相澤は弾かれるように床に叩きつけられた。
「何だと・・・?」
「中々いい武器だな、気に入った。」
先程まで拘束されていたはずの天道が相澤を拘束し、拘束していたはずの相澤が拘束されているという状況の完全な逆転に相澤を始め、周囲も驚きのあまり言葉を失った。
「キサマ・・・ナニモノダ?」
エクトプラズムが代表して尋ねる。
捕縛布、この武器を扱えるのはイレイザーヘッド以外には存在しないはず。
しかも彼は、この布を巧みに操り片腕で3人のヴィランを捕獲できるだけの腕前を持つ達人だ。
そのイレイザーヘッドを油断していたとは言え捕獲してしまうほどの実力者。
捕縛布だけではない。
雄英バリアを乗り越えて侵入し無数の警備システムを避け、次には人間が気を失うほど旨い料理を作った。あのミッドナイトを落としてしまうほどの話術に、手錠と縄による拘束を1秒足らずで脱する技術。不自然なほど多才なこの男は何者なのか、疑問を抱かないわけがない。
「今さらか・・・俺の名は[校内にヴィラン襲来、ヴィラン襲来。生徒の皆さんは身の安全を確保し、速やかに避難してください。]
天道の名乗りは、無機質な警報に遮断された。
そして、奇しくもこの警報によって彼の正体が世間に知れ渡ることになったのは、今はまだ誰も知らない。
・・・続く
次回 仮面ライダーカブト in hrak
ヒーローの卵達に襲いかかる未知の怪物!
光を超える刺客達の止まらぬ猛攻が生徒達に迫る・・・!
「自分を犠牲にしてでも誰かを救う・・・どこぞのバカの集まりだな、ここは。」
「だが、その勇気に免じて戦ってやる。」
突如雄英に現れた謎の男、天道総司が遂にその正体を明かすとき、紅き太陽の神が邪悪の化身たちを打ちのめす!
「変身・・・!」
「おばあちゃんが言っていた・・・正義とは、俺自身。俺が正義だ!」
天の道を往き、総てを司る!!
1万字以上書いたのに、変身しなかった・・・だと?
しかも前回の後書きに書いた語録が次回に先延ばしになったという、ある意味の予告詐欺。
なんかコメディのノリもカブトというより、電王っぽい気がするし・・・。
でもでも、次回はシリアス回+天道少年の初戦闘なのでテンポよく書くぞ!