戦隊ヒーローのレッドは戦いが終わって無職になったので、これからは自分の正義だけを追求する ~ヒーローは日常へと帰れるのか?~   作:ゼフィガルド

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 お久しぶりです。あけましておめでとうございます。2か月ぶりですね。2022年に終わらせると言っていたのにこの体たらく。後ちょっとなので、頑張ります。


ビッグ・ブラザー 23

「本部! 本部!」

 

 軍人としての特権階級を使い、女子供達と共に先んじて避難したカーター達は、フェルナンドとレッドの戦闘の余波から免れていた。事態を重く見た彼は、本国へと連絡を取っていた。

 

「状況は分かっている。たかが、一反社会団体がそこまでの脅威になるとは」

「そうです。アイツらはこの皇にとっての脅威です! もはや、私の手に負える存在ではありません」

「そんなことは知っている。機は巡って来たということだ」

「何を言っているんですか!?」

 

 通信越しの相手の冷淡な様子に、カーターは腹を立てていた。多くの同胞が犠牲になり、自分も命の危険に晒されたというのに、まるで他人事だった。

 

「世界を制するのは、悪の組織でもヒーローの集団でもない。我々だ」

 

~~

 

「え?」

「ユーステッドの。戦闘機……」

 

 交戦中だった桜井と七海が手を止めた。自分達の遥か頭上を戦闘機が通過していく。目指す先が、レッド達が交戦している議事堂付近であることは明白だった。程なくして、七海に通信が入った。

 

「七海か! 今すぐ、その場から離れろ!」

「ビリジアン。どうしたの?」

「ユーステッドの奴ら。自軍の被害を鑑みて、あの付近で焦土作戦をすることにしやがった! クソッタレ!!」

「リーダー達はこの事を?」

「通信が出来ねぇんだよ! お前だけでも逃げろ! 良いな!」

 

 一方的に通信は切られた。桜井も怪訝に思い、攻撃の手を止めた。すると、七海が構えを解いた。

 

「事情が変わった。今直ぐ、この場から脱するべき」

「何が、あったのよ?」

「この付近をユーステッド軍が焼き払う。早く逃げないと」

 

~~

 

 中空で死闘を繰り広げていた2人はいち早く、彼らの接近に気付いた。

 個人の力で持ち出す様な物ではなく、国が本気を上げて排除する為に持ち出して来た軍事兵器『戦闘機』だった。ガトリング砲が火を噴き、30mmにも及ぶ徹甲弾地上部に向かって放たれる。

 

「ギャアアアアアア!!」

 

 強化外骨格(スーツ)により防御力が高まっていると言っても、戦闘機の攻撃に耐えられる訳もなく。周辺に夥しい量の肉片が飛び散った。

混乱状態に陥った所に投下された鉄塊は、空中で幾つもの爆弾を展開した後、降り注いだ。爆炎と鉄片が降り注ぐ。

 

「熱い“いぃい”い“い”い“!」

「畜生! 俺の腕は! 俺の腕は何処に行ったんだ!!」

 

先程まで存在していた勝利の余韻は一瞬で地獄絵図へと変貌した。地上部で戦っていた剣狼は、仲間達から受け継いだリングの力で回避していたが、事態を把握しかねていた。

「(何が起きているんだ?)」

 

 こうなってしまえば戦闘を行っている場合ではない。徹甲弾と爆撃の雨は止む気配がなく、笑えるほど簡単に命が散って行く。

 

「やめろ! 俺の仲間になんてことをするんだ!」

 

 グレート・キボーダーから放たれた巨大な手裏剣が戦闘機を捉え、搭乗者を圧し潰した。戦闘機が墜落し、爆炎を上げた。巻き込まれてどれだけの人間が死んだか、もはや把握するのも億劫だった。

 だが、攻撃の手が止まることは無かった。中田達に向けても機銃での攻撃が行われた。中田の体表を覆う鱗にヒビが入ったが、レッドの装甲には傷一つ付かなかった。加えて、地上で戦死した隊員達の力が機体に吸い込まれて行く。

 

「感じるぞ! 皆の無念が! 俺に力を!」

「もう、やめろよ! そうやって、テメェが戦うことを止めなかったから! アイツらは死んじまったんだろ!?」

「ここで戦うことを止めたら、彼らは犬死になってしまう! 俺は! 彼らの死を無駄にはしない!!」

「いい加減にしやがれ!! テメェが始めたからこうなったんだよ!」

 

 爪牙を振るう。30mmの徹甲弾でも傷が付かない装甲を抉り取る。中田の胸中に沸き上がっていたのは怒りや闘志よりも虚しさだった。

 倒すべき悪を全滅させて、守るべき人々を手に掛け、共に進むはずの仲間達をも犠牲にして。何故、今も戦い続けるのか。まるで理解が出来なかった。

 

「だったら、これは俺に対する挑戦だ。世界の理不尽が俺を殺そうとするなら戦ってやる! 俺はヒーローなんだ!」

 

 全身に展開されたガジェットの一斉砲火が次々と戦闘機を落としていく。議事堂付近は既に火の海となっていた。

 もう、言葉は出てこなかった。あるのはお互いの存在を否定するかのような暴力の応酬だった。取り付けられたガジェットを破壊して、装甲を削り取る。鱗を削ぎ落とし、露出した素肌を切り裂く。噴き出た血が地上部へと降り注ぐ。

 

「アニキ……」

 

 持ち前の俊敏さでキルゾーンを抜けていた剣狼は、少し離れた場所で様子を見ていた。もしも、仲間達の遺品であるリングを身に付けていなければ、自分も地面の染みになっていただろう。

 一矢報いる為に戦場に戦っていたが、自分の意思とは掛け離れた方法で目的は達成されてしまった。ならば、逃げ帰るかと言われれば否。

 

「黒田のアニキ、フェルナンド、豊島。皆、俺に力を貸してくれ」

 

 すっかり戦闘機の気配も無くなっていた。人間の形態から巨大な四足歩行の獣へと変わって行く。リングの力を取り込む毎に、体躯が膨れ上がる。堪らずに上げた咆哮は周囲を震わせた。レッドも叫んだ。

 

「剣狼ォオオオ!!」

「レッドォオオオ!!」

 

 迎え撃つべく振るったグリーン・スピアの穂先が切り飛ばされた。それだけには留まらず、グレート・キボーダーと化したレッドの手首から先をも切り落としていた。

 

「ヘッ。ケン、遅かったじゃねぇか」

「アニキ。待たせたな。コイツだけはここで倒す」

「ふん。良いだろう。まとめて始末してやる!!」

 

 龍と狼。彼らに向かい合うのは鋼鉄の巨人。さながら神話の様な光景でありながら、神々しさなどある訳もなく。咽返る様な血と鉄の臭いが立ち込めるばかりだった。

 

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