戦隊ヒーローのレッドは戦いが終わって無職になったので、これからは自分の正義だけを追求する ~ヒーローは日常へと帰れるのか?~   作:ゼフィガルド

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誰の為のヒーローか
矛盾 1


 

 大坊は憤っていた。播磨の裏切りには始末を付けたが、一連の出来事が外部へとリークされてしまったのだ。ネットや雑誌では好き勝手に意見が飛び交い、自分達の存在意義を問われる事になっていた。

 

「何故、播磨があんな物を持っていた。何処で手に入れたんだ?」

「ジャ・アーク手製の爆弾なら、連中のマッチポンプの可能性は?」

「あり得る。いや、だとしたら地下に転がっていた怪人化リングや代紋バッジの存在が不可解だ」

 

 自作自演をするのに、自分達がやったという証拠を残していくハズがない。真相を知っていた人間は、一人残らず始末してしまったので手掛かりが無い。

 七海も一緒に頭を悩ませていた所、モニタにはハト教へ搬入された資材のリストが映し出されていた。

 

「ビリジアン。何か分かりそうか?」

「橘さんにも連絡を取った所、心当たりが1件だけあるみたいです」

「なんだ?」

 

 大坊が身を乗り出す。リストの内の一つをピックアップする。それは、大坊がリチャード達と共にハト教に訪れた日に、搬入された物だった。

 

「あの日。橘さんは立ち会っていたそうですが、資材や機材については殆ど分からなかったって事ですから。もしも、持ち込んだなら。って事ですね」

「ちょっと待ってくれ。アレはリチャードさんからの贈り物だぞ。実際、アレで介護施設の負担は減ったとも聞いたが」

「一緒に何か持ち込んだとか?」

 

 そもそも。ジャ・アークが使っていた爆弾など、簡単に入手できる訳が無い。リチャードにしても爆弾を荷物に紛れ込ませると言う不手際を晒すとは思えない。

 

「聞いてみるか。……もしもの時は」

 

 ゴク・アクや播磨の様に、彼さえも自分を裏切るというのなら。決して許す訳には行かない。かつて燃え滾っていた勇気は、疑心暗鬼に包まれていた。

 

~~

 

「よー!  朝から健康的だね~!」

 

 やる気を出してランニングを始めたのは良かった。だが、行先には自分を待ち構えていたかのように、いつぞやの怪人―—槍蜂が手を振って来た。

 誰に見られている訳でも無いので、無視した所で咎められることもない。スッと横を通り過ぎようとしたら、ペースを合わせて付いて来た。

 

「実はお願いがあってさぁ。いや、桜井さん。昨日の事件にも関わったでしょ? 中田君がどうなったか、俺達も気になるんだよ」

「……」

「もう、ニュースとかにもなっているからさ。彼が殺されているってことは無いだろうけれど、何かされているかもしれないし。安否を確かめて欲しいんだよね」

 

 実際、彼女としても今日が休みになるなら、中田の様子は見に行こうと考えていた。だが、彼らの言うことに従うのは癪だった。

 

「貴方達に頼まれなくても見に行くつもり」

「マジで!? じゃあ、どうだったかメールして来てくれない?」

「それは出来ない。私は個人として見に行くだけだから」

 

 彼の安否を教えることについては、水面下の情報戦に加担しかねない為。線引きをしておく必要はあった。

 

「そっか。分かった、こっちも強制しない。じゃあね」

 

 あっさり引き下がった彼を見送りながら、桜井はペースを落とさずにランニングを続けた。

 

~~

 

「先輩が輝いている……」

「は?」

 

 シャワーを浴びた後の朝食で富良野がそんなことを言った。疑問符を浮かべている桜井に対し、彼女は雄弁に説明して見せた。

 

「今までは食っちゃ寝ゴロゴロダラダラ。ピンクではなく、ピグ一歩手前でしたが」

「は???」

「働き始めてからはややしんどそうな気もしましたが、ちょっとずつ慣れて来たと思ったら! 私よりも早く起きて! 朝食の準備までして! 驚異的なレベルアップですよ!」

 

 自分の事を豚と思っていたのかと言う怒りはそっと処理しておいた。ただ、意識の持ちようは先日とは別物だった。

 

「そうね。今日が休みだったって事もあるけれど、色々とあってヒーローとしての自分を少しだけ取り戻したのかもね」

「……私としては、先輩には平和な世界にいて欲しいんですけれど。やっぱり、先輩はヒーローなんですよね」

 

 先のハイテンションとは打って変わって、少し俯きがちに言った。

 ヒーローの世界が夢と希望だけで構築されているのは特撮や映画の世界だけの話であり、現実は一切の容赦が無かった。桜井は、その世界の住人だった。

 

「リーダー達の活動には手を貸さないけれどね。今日は休みだし、行きたい場所があるんだけれど。付き合ってくれない?」

「先輩からのお誘い!? 何処に行くんですか!?」

「中田君の見舞い」

 

 先程まで浮かんでいた百合の花もかくやと言わんばかりの笑顔は、ラフレシアの様に嫌悪感と言う臭気を放っていた。

 

「う~~~ん。よっし、一緒に映画を見に行きましょう!」

「何、勝手に目的地を変更してんのよ!?」

「見舞いって。どう考えても、エスポワール戦隊の本部とか支部的な所に行く羽目になるじゃないですか! 私、あの人達に関わりたくないんですよ!」

「いや、でも稚内君みたいな子もいるかもしれないし!」

「いーやーでーすー!!」

 

 散々、ロクでも無い目にあわされている富良野にしてみれば当然の反応だった。しかし、1人で行くのは心細い。どうした物かと考えた。

 

「くっ、分かった。私が出来る事なら何でもするから!」

「え?! 今、何でもするって言いましたよね!?」

「え、えぇ……」

 

 流石に節度は弁えてくれるだろうと信じるしかなかった。早速、大坊に電話を掛けた所、通話口に出て来たのは少女の声だった。

 

「リーダーは席を外している。代わりに、七海が受け取った。ピンク、何か用?」

「えっと。あの、中田君と面会したいんだけれど。出来るかな?」

「ちょっと待って」

 

 背後でガサガサとする声が聞こえる。待たされている時間が長い程、行けるかどうかという可能性も低くなるが、果たしてどうだろうか。

 

「お待たせ。現在、彼に面会をしたいという人間は後を絶たない」

「一躍、話題の人物になったからね」

「でも、私は貴方に丁重に保護すると言った。貴方には彼の現在を知る権利がある。もしも、面会に来るなら所定の時間に、この場所に来て」

 

言われた場所と時間をメモして通話を切った。直接住所を教えないのは、探られたり襲撃を掛けられたりすることを防ぐ為だろう。

 

「ヒーローの本部に」

「大丈夫。変なことを考えなければ、問題ない筈よ」

 

 朝食を済ませた後の片づけをしながら、桜井は時間まで久々にベルトなどの調子を確認していた。

 

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