ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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前回さらっと流したカイザーがハダルに戻った経緯回。
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閑話12 大切な友達

 昨年同様、ボーイさん主催の下で行われたクリスマスパーティ。ただ昨年とは違い、ボーイさん・クインさん・テンポイントさん・グラスさんだけではなく、今年はマルゼンスキーさんにエリモジョージ先輩とハイセイコー先輩も参加することになった。ちなみにキングスさんはお友達のみんなと楽しんでいるらしい。

 そして迎えた当日、会場に着いた私たちを待っていたのはとても室内とは思えないような装飾が施されている多目的室だった。まるで本当に外にいるかのように感じたプラネタリウム、どういう原理かは分からないが時折星空を駆けるサンタクロースの姿、勿論クリスマスツリーなどもちゃんと置かれておりクリスマスを演出している。

 最初見た時はあまりの光景にみんな言葉を失った。……まあ、暗すぎてご飯が食べることができないという欠点からすぐにプラネタリウムは消されることになったのだが。もったいなく感じたが仕方ないだろう。それにプラネタリウムが消されたと思ったら今度は去年のような光景が広がっていた。火のついた暖炉に電飾のイルミネーション。そしてテーブルの上に置かれた料理の数々。去年も思ったが本当に1人で準備したのかを疑いたくなるほどのクオリティだ。料理は去年同様別の人が作ったのだと信じたい。

 そこからはボーイさんの乾杯の音頭で私たちは各々料理を頂くことにした。どれも美味しそうなのでつい目移りしてしまう。

 

 

(う~ん、どれから食べましょう。にんじんハンバーグもいいですが後に取っておきたいですし……。ここはバランス良く野菜から食べていきましょうか?)

 

 

 そんなことを考えていると横から声を掛けられた。

 

 

「よ、カイザー!」

 

 

「ボーイさん。どうかしましたか?」

 

 

「いやさ、料理を前にカイザーが立ち止まってたからさ。何となく気になって声を掛けたんだよ」

 

 

「そうですね。去年と同じくとても美味しそうなのでどれから食べようか目移りしてしまって……。ボーイさんは決まってるんですか?」

 

 

「オレか?オレは野菜からだな。ほら、こんな感じ」

 

 

 そう言ってボーイさんは自分の皿を私に見せてくれた。とても奇麗に盛り付けられており、お店で出てきても違和感ないほどである。

 私は思わず感嘆の声を漏らした。

 

 

「はぁ……相変わらずすごいですねボーイさん。とても奇麗に盛り付けられてます」

 

 

「そうか?こんくらい慣れれば楽勝だぜ?」

 

 

 ボーイさんは言いながら盛り付けてある野菜を食べ始める。そのまま別の人のところへ行ってしまった。他人が食べている姿を見ていると私も早く食べたくなったので急いで料理を取る。ボーイさんのようにとまではいかないが、自分なりに奇麗に盛り付けることはできた……と思う。

 しばらく経って、私は少し休憩するように1人で佇んでいた。陽気な曲に耳を傾ける。そんな時、先程別れたボーイさんが私の方に歩いてきた。近くにはグラスさんも一緒である。

 

 

「どうした、カイザー?具合でも悪いのか?」

 

 

「あぁいえ。少し休憩を取ろうかと」

 

 

「そうなんだ~。じゃあさ~、私たちとお話しな~い?」

 

 

「構いませんよ。ところでテンポイントさんは?」

 

 

「あぁ、テンさんならあっちにいるぜ」

 

 

 ボーイさんが指した方向にはハイセイコー先輩と話すテンポイントさんの姿があった。とても楽しそうである。

 ボーイさんが続けた。

 

 

「ハイセイコー先輩、テンさんを気に入ってるからな。すげぇテンション上がってるぜ」

 

 

「そうなんだ~。それは初耳だね~」

 

 

「そうですね。私も初耳です」

 

 

「まあ先輩はあまり表立って接触はしねぇからな。メッセージのやり取りは結構頻繁にしてるらしいけど」

 

 

 そう話していると、会話が終わったのかハイセイコー先輩とテンポイントさんが別れる。ハイセイコー先輩はクインさんとマルゼンスキーさんのとこへと足を運んでいた。テンポイントさんは料理を取りにいったようである。皿の前で迷っている姿が見えた。そこにエリモジョージ先輩が近づいている。2人でどんな料理を取ろうか迷っているような光景が見えた。

 

 

「しっかし、テンさんとジョージ先輩も仲良くなったよなー。出会いはアレだったのに」

 

 

「衝撃的だったね~アレは~」

 

 

「まぁ……確かにそうですね。アレは忘れられませんよ」

 

 

 麻袋を被せて拉致する光景を見せられたのだ。忘れようにも忘れられないだろう。

 すると、唐突にボーイさんが大きな声で私に質問してきた。とても驚いたような表情で。

 

 

「そうだ!カイザーに聞こうと思ってたんだけどさ、カイザーっていつハダルを辞めたんだよ!オレグラスから話聞いた時スゲェビックリしたんだけど!?」

 

 

「あぁ……、そういえばボーイさんには言ってませんでしたね。まあ、結果から言えば辞めてなかったことになってたんですが……」

 

 

「どういうこと~?辞めたのに辞めてなかったの~?」

 

 

「その話をすると少し長くなるんですが……」

 

 

「へぇ?それは私も気になるね。是非聞かせてもらえるかい?クライムカイザー」

 

 

「クライムカイザー様、ハダルを辞めたというのは……」

 

 

「どういうこと!?お姉さんに説明しなさい!」

 

 

 そう言いながら、ハイセイコー先輩がこちらに近づいてきた。クインさんもマルゼンスキーさんも興味津々……というよりはボーイさんのハダルを辞めたという言葉を聞いて心配しているような表情を浮かべている。

 

 

「なんやなんや?みんなしてどないしたん?」

 

 

「わくわく じーっ」

 

 

 そして、みんなが集まっているのを見てかテンポイントさんとエリモジョージ先輩も近づいてきた。別に話すのは構わないが、少し話すのを躊躇するぐらいには大人数だ。しかし、私は意を決して話すことにした。ハダルを辞めて、もう一度ハダルに入部することになった経緯を。

 

 

「まあ、簡単に言えばタケホープ先輩に一杯食わされたと言いますか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 有マ記念の控室でグラスさんにレースの世界に復帰宣言をした私が最初にしたことはトレーナーを探すことだった。しかし、当たり前だが難航するだろうと予想していた。

 その時の私はダメ元でハダルのもとへと訪れることにした。自分から辞めた身で厚かましいとは思ったが、ダメで元々、試さないよりはマシだとその時は思っていた。結果的にこの判断が大正解だったわけなのだが。……いや、後々のことを考えるとむしろ大失敗のような気がする。

 私はハダルの部室の前を訪れ、意を決して扉をノックした。中から返事が聞こえたので部屋に入る。中にはハダルのチームのみんながいた。少し懐かしさを覚えたが、私は思いっきり頭を下げる。そして大声でお願いした。

 

 

『もう一度!私をハダルに入部させてもらえないでしょうか!?』

 

 

『え、え!?どしたのカイザー!?』

 

 

 ハダルの人たちから戸惑いの声が上がっている。ただ、私はお構いなしにお願いした。

 

 

『一度自分から辞めた身で厚かましいとは思っています!けれど、もう一度、私がハダルで走ることを許してはもらえないでしょうか!?』

 

 

『え、え~とぉ……』

 

 

『雑用からしろというのであれば喜んでやります!もう二度と敷居を跨ぐなというのであれば……!自分が蒔いた種です!もう二度とハダルの敷居を跨ぎません!けれど!もし許されるのであれば、もう一度このチームで走ることを許してはもらえないでしょうか!?』

 

 

 私は一生懸命お願いした。それこそ、土下座をしそうな勢いで。

 そんな私に返ってきたのは、戸惑いの言葉だった。

 

 

『え~っと、カイザー?1つ聞いてもいいかな?』

 

 

『はい、私に答えられる範囲であれば』

 

 

『え~と、じゃあさ……』

 

 

 部員を代表して1人の先輩が私に質問してくる。それは、私にとってあまりにも予想外な言葉だった。

 

 

『カイザーって、ハダルをいつ辞めたの?休部扱いになってるのは知ってるけど、辞めたってのは初耳なんだけど……』

 

 

『……えっ?』

 

 

 そのあまりの予想外の言葉に、私は呆けるしかなかった。

 少しの間、沈黙が流れる。そして、我に返った私は焦りながら先輩に聞いた。

 

 

『ど、どういうことですか!?私は宝塚記念の後ちゃんと退部届を出したはずです!』

 

 

『こ、こっちが聞きたいよ!私たちはカイザーが休部するってことしか聞いてないんだから!チーフトレーナーもそう言ってたし!』

 

 

『そ、そんな……!私はあの時確かに退部届を出したはず……!一体どうして……』

 

 

『おはよぉ。随分騒がしいねぇ。何かあったのかぁい?』

 

 

 なぜ退部届が受理されていないのか。そう考えている私の後ろにタケホープ先輩が来ていた。そして、タケホープ先輩は私に気づくと、何事もなかったように私に告げた。

 

 

『おやぁ?カイちゃんじゃないかぁ。休部から復帰したんだねぇ。よかったよかったぁ』

 

 

『そ、そのことなんですけどタケホープ先輩!一体どういうことですか!?私は退部したはずで……』

 

 

『退部ぅ?あぁそれってぇ』

 

 

 そう言いながらタケホープ先輩は1つのロッカーを開けて中から一封の封筒を取り出した。それには見覚えのある字でしっかりと【退部届】と書いてある。間違いない、私があの時出した退部届だ!

 

 

『これのことかぁい?』

 

 

『そ、それ!私が書いた退部届!なんでそんなところにあるんですか!?』

 

 

『そりゃあ、あの時退部届を受け取った子から私が受け取ってぇ、ここにしっかりと保管していたからだねぇ。誰の目にも止まることがないようにねぇ』

 

 

『ど、どうしてそんなことを……』

 

 

 つまり、ハダルのチーフトレーナーにも見られていないということだ。ということは、私はハダルを辞めていないことになる。そのことに戸惑いを覚えながら私はタケホープ先輩に質問した。

 

 

『決まってるじゃないかぁ。このままカイちゃんがハダルを辞めたらきっと後悔するだろうと思ったからねぇ。ほとんど私の勘のようなもんだったけどぉ、結果的にはそれが正解だったわけだぁ。だからこれはぁ……こうしてやろうかぁ!』

 

 

 そう言って、タケホープ先輩は私の退部届を破いていった。最早なんて書いてあったのかすら分からないほどに細かく破いていく。私はその光景を呆然と見ていた。

 タケホープ先輩が私に話しかける。

 

 

『さてさてぇ、まあ、色々と言いたいことはあるけどぉ。カイちゃん?』

 

 

『……なんでしょうか?』

 

 

 私は少しの不安を覚えながら答えた。すると、タケホープ先輩は笑顔で告げた。

 

 

『おかえりぃ。また一緒に頑張ろうかぁ』

 

 

 ……おかえり、ということは、私はまた……!

 

 

『ここで頑張っても……!いいんですか……!』

 

 

『もちろんだよぉ。そもそも、チーフにもみんなにも休部だとしか言ってないからねぇ。真相を知っているのは封筒を受け取った子とぉ、私だけさぁ』

 

 

『……!分かりました。クライムカイザー、もう一度ハダルで頑張らせてもらいます!』

 

 

 私は震えた声でそう言った。ハダルの人たちは事情が分かったのか、私が戻ってきたことに祝福するように拍手をしていた。タケホープ先輩は満足そうな表情で私を見ている。

 

 

『うんうん、良かった良かったぁ。それじゃあカイちゃん?』

 

 

『なんでしょうか?今ならなんだってできちゃいそうです!』

 

 

『そうかいそうかい。そいつは良かったぁ。じゃあ……』

 

 

 タケホープ先輩は私に近づいて、両肩をガッシリと掴んで笑顔のまま告げる。まるで逃がさないとばかりに。痛みを覚えるぐらいにはガッシリと。

 

 

『今まで休部してた分、しっかりと、頑張ろうねぇ?』

 

 

『あ、あの。練習の話ですよね?』

 

 

『……』

 

 

 タケホープ先輩は何も言わず笑みを浮かべるだけだ。……もしかしてこの人!

 

 

『わ、私に何をする気ですか!?』

 

 

『人聞きが悪いねぇ。ちょぉっと生死にかか……キツめにお灸を据えるだけさぁ』

 

 

『生死!?下手したら死ぬようなことされるんですか私!?だ、誰か助け……ッ!』

 

 

 私は助けを求めるように視線を送る。しかし、みんな気まずそうに目を逸らすだけだ。自業自得とはいえ、あんまりだった。

 

 

『それじゃあ、私と個人レッスンだよぉカイちゃん。頑張ろうねぇ』

 

 

『待ってください!復帰初日でそれは本当に……ッ!いやぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 

 そのまま私はタケホープ先輩に連れられて、先輩の特別レッスンを受けることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……というわけなんです。つまるところ、タケホープ先輩の計らいでハダルを辞めたことになっていなかったんです」

 

 

「そういうわけだったのか……。そもそも、なんでハダルを辞めようとしたのかは……まあ大体察しがつくけどさ……」

 

 

「ボーイさんの思っている通りですよ。でも、あまり気にしないでください。そこから立ち直って、またハダルに戻ることができたので」

 

 

 そう言うと、ボーイさんは少し申し訳なさそうな表情を見せたものの、すぐに表情を崩して私がレースの世界に復帰したことを喜んでくれた。そのことに、私は嬉しくなった。

 ただ、私はいつもの悪い癖で悪いように考えてしまう。今更自分がドリームトロフィーリーグに行ったところで勝てるのだろうか?また、届かない壁に挑んで、絶望するだけじゃないだろうか?復帰を決意するのが、遅すぎたんじゃないだろうか?そんなことを考えてしまう。

 私は、思わず呟いてしまった。

 

 

「……少し、遅すぎるかもしれませんけど」

 

 

 私の呟きに対して、ボーイさんが否定する。

 

 

「何言ってんだよカイザー。確かに早くやるにこしたことはねぇけどさ、何かを始めるのに遅すぎるなんてことは絶対にない!ドリームトロフィーリーグでさ、また一緒に走ろうぜ、カイザー!」

 

 

 次いで、グラスさんが私を応援する。

 

 

「そうそ~う。カイザーちゃんは強いんだから~。もっと自分を誇ってあげて~?だから~、また一緒に走ろ~?」

 

 

 最後に、テンポイントさんが約束する。

 

 

「カイザーの強さは、ここにおるみんなが保証する。やから、また一緒に走ろうや!ターフの上で、思いっきり!みんなで!」

 

 

 3人だけじゃない。他の人たちも、言葉にこそ出さないが私に温かい視線を送っていた。

 ……あぁ、私は本当に……。

 

 

(いい友達に……恵まれました……!)

 

 

 きっとこれからも、ネガティブな思考になることもあるだろう。けれど、きっと大丈夫だ。乗り越えていける。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちなみにタケホープ先輩の個人レッスンってどんなことするんだ?」

 

 

 ボーイさんがそう聞くと私の身体は震える。寒いからではない、恐怖で震えた。そのことにみんなが驚いている。

 私は叫ぶように言った。

 

 

「言わないでください!思い出すのすら恐ろしいんですから!」

 

 

「……何されたんだよカイザー」

 

 

「聞かない方がいい。それがクライムカイザーのためだ、トウショウボーイ」

 

 

 内容を知っているのか、ハイセイコー先輩がそれ以上追及しないように釘を刺した。正直、ありがたい限りである。

 プレゼント交換を終わらせたのち、いい時間になったので解散となる。テンポイントさんとエリモジョージ先輩はハイセイコー先輩の家に、私たちはそれぞれの家へと帰っていった。プレゼント交換でもらったプレゼントを持って私は自宅に戻る。

 私にとって忘れられない一日になった。それはきっとクリスマスということだけではない、大切なものを再確認した、そんな一日だった。




次のガチャ更新で衣装違いは誰が来るのか楽しみです。
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