ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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あの記者会見の後回


第96話 会見が明けて

 記者会見から早いもので1週間が過ぎた。俺は今自分のトレーナー室で雑誌を読んでいる。その内容は先週行われた記者会見の記事について言及されているものだ。一通り読み終わった雑誌を置いて、溜息をつく。

 

 

「まあ分かっちゃいたが……非難轟々なことで」

 

 

 書いてある内容は、俺に対する批判の声がほとんどだった。一応、俺のことを好意的に書いてある雑誌も数は少ないが存在している。代表的なのは乙名史記者が勤めているところだ。

 だがそれを埋め尽くすほどに批判的な記事を書いてある雑誌がほとんどだ。果てには陰謀論めいた記事を書いている雑誌すら出てくる始末である。正直、復帰の道を選んだ時からこの手の批判は受けると思っていたのだが予想以上に多かった。

 

 

(まあ、俺は赤の他人から何言われたところで気にしねぇから別にいいんだが)

 

 

 しかし、この雑誌をテンポイントが見た時が怖い。ただでさえ記者が苦手で取材を敬遠しがちなのに、この雑誌を見たら今後一切取材を受けなくなりそうなのが可能性としてあるのだ。それはあまり好ましくない。だからこそ、この雑誌群はテンポイントの目につかないように厳重に保管しておく必要がある。お見舞いに行く子たち、特にキングスにはしっかりと言っておく必要があるだろう。テンポイントに新聞やらを買って届けているのはキングスだ。一応、記者会見の後に新聞や雑誌はしっかりと吟味してから渡すように言ってあるので大丈夫だとは思うのだが。

 今後のことを考えていたところで、トレーナー室の扉がノックされる。

 

 

「どうぞー」

 

 

 俺がそう答えると、勢いよく扉を開けて誰かが入ってくる。入ってきた人物は仲の良いトレーナー達だった。勢いよく扉を開けて入ってきたことに驚いていると、全員が俺に詰め寄ってくる。

 

 

「おい神藤!大丈夫か!?」

 

 

「何の話だ?というか、えらい勢いよく入ってきたが何があった?」

 

 

「何があったって……、お前ネットの記事とか見ないのか?」

 

 

「そういや見てないな。俺のことに関して何かあったのか?」

 

 

「まあ、とりあえずこれ見てみろよ」

 

 

 そう言って、トレーナーの1人が俺に対して携帯を見せてくる。俺はその携帯の画面を覗き込んだ。とあるまとめサイトのようだ。記事のタイトルを見る。

 ……まあ、この手の反応も一応予想していた通りだった。俺は内心困りつつ記事に対して反応する。

 

 

「随分過激なファンレターだな」

 

 

「ファンレターで済ませていい範疇じゃねぇだろ!?」

 

 

 記事の内容は、大雑把に言うなら俺の解雇を求める記事だった。おそらくテンポイントのファンの人達によるものだろう。あくまで憶測に過ぎないので愉快犯の可能性もあるが。

 俺は溜息をついて答える。

 

 

「そう言ったってな。正直この選択をした時点でこういった声が上がるのは予想していたことだからな。別に驚くことでもない」

 

 

「にしてもだぜ?あることないこと書かれてるし、お前はそれでいいのか?」

 

 

「心配してくれていることには感謝している。ただ、お前たちも知ってるだろ?俺が他人からどんな評価を下されたところで気にするような性格じゃないってこと」

 

 

「それは……そうだけどよ」

 

 

「でも!元々今回のレースはファンの人達のために出走を決めたって言ってたじゃないですか!なのに、なんで神藤さんだけが悪いように書かれなきゃいけないんですか!?」

 

 

「まあ、俺が記者会見でそう言ったからだな。最後に出走を決めたのは俺だって」

 

 

 彼らの言葉に俺は冷静に答えていく。そして、1人が我慢の限界とばかりに告げる。

 

 

「そもそも、ファンが無理強いしたからテンポイントの骨折に繋がったんじゃねぇか。それが手のひら返したように神藤だけを糾弾しやがって!お前はファンの人達に対してなんか思わねぇのか?」

 

 

「何か思う……ねぇ」

 

 

 俺は嘆息しながら答える。

 

 

「仮にだ。俺がファンの人達に恨みつらみを重ねているとしよう。お前たちの声さえなければ、お前たちが望まなければ。そう思っていたとする」

 

 

「あ、あぁ」

 

 

 俺の言葉にトレーナー達はたじろいでいる。だが、俺はお構いなしに言葉を続ける。

 

 

「で?それを口に出したところでテンポイントの骨折は治るのか?テンポイントが骨折する前の状態に戻るのか?違うよな?」

 

 

「……」

 

 

「ま、結論としては。そんな無駄なことに時間を割いている暇があるんだったら、テンポイントが復帰するために試行錯誤する方が有意義だってことだよ」

 

 

 俺の言葉にトレーナー達は押し黙る。俺の言っていることにも一理あると思っているのだろう。ただ、俺を心配してここにきてくれているのだ。そのことに感謝する。

 

 

「心配してくれてありがとうなみんな。ただ、見ての通り俺は通常運転だからよ。心配ご無用……ってな」

 

 

 その言葉に、全員苦笑いを浮かべている。

 

 

「……そういえば、こういう奴だったな神藤は」

 

 

「だな。心配するだけ無駄だったわ」

 

 

「ただ、ファンの人からの突撃に気をつけろよ?そういう事件だって少なからずあるんだからな」

 

 

「安心しろ。俺は普段からここで寝泊まりしているから寝込みを襲われることはまずない」

 

 

「それ安心できることなんですかね……?」

 

 

「なんか別の問題が浮上してきたな……」

 

 

 そう言って彼らは帰っていった。1人になって静かになったトレーナー室で俺は1人愚痴るように呟く。

 

 

「……まあ、結果を出して見返すしかない、ってな」

 

 

 結局ファンの人も、記者の人も不安なのだろう。本当にテンポイントは復帰できるのか?また、自分たちの前で走ってくれるのか?そんな不安が襲うのは仕方のないことだ。それに、テンポイント本人はいまだに表舞台に出てきていない。だからこそ、俺の言葉が真実なのか疑っているのだともとれる。だが、記者が苦手なテンポイントは取材されるだけでもストレスがかかるだろう。一応、テンポイントが好意的に接する記者の人も何人かいるのだが……。

 

 

「特例を認めたら他の取材も応じなければならなくなるからな」

 

 

 そうなったらどの道テンポイントにストレスがかかる。

 

 

「何かいい手はないだろうか……」

 

 

 テンポイント本人にストレスがかかることなく、かつファンの人達が安心できるように報告する方法。そう考えていた俺に、ふとあるアイディアが思いつく。

 

 

「……あるにはあるな。ただ、本人の同意が必要だが」

 

 

 とりあえずテンポイントの説得から始めなければ。そう思いながら俺は病院へ行く準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日もボクは病院のベッドの上で過ごしている。無論、リハビリはまだ始まってすらいない。ただ、いつもなら暇を持て余しているのだが今日は妹であるキングスがボクのお見舞いに来ている。学園の方は特別に休みがもらえたらしい。

 キングスがコンビニの袋をボクに渡してくれる。それを喜びながら受け取った。

 

 

「お姉。これ今日の分の新聞だし」

 

 

「ありがとなキングス。さてさて、今日はどんなことがあったんやろな~?」

 

 

 そんなボクの様子をキングスは笑顔で見ていた。ボクはコンビニの袋から新聞を取り出して確認する。そして、ある記事を探す。

 

 

(……おかしい。絶対にあるはずやのにこん1週間も記事になっとらんのはどういうことや?)

 

 

 ある記事とは、先週ボクのトレーナーが開いた記者会見について書かれた記事だ。あれだけの記者がいたのだ、新聞の記事にあってもおかしくない。アイツらは何を書いているのか、そう思いながら1週間過ごしていた。

 しかし、探せど探せどこの1週間記者会見に関する記事が1つも見当たらなかった。ネットの記事と新聞の記事とでは多少ではあるが異なる部分があるためできれば新聞の方で真偽を確認したいと考えているボクは見逃さないように探しているのだが、不思議なほど見つからなかった。

 思わずボクは呟く。

 

 

「今日もないなぁ。トレーナーの記者会見の記事……」

 

 

 何となく呟いたその言葉。しかしその言葉にキングスが過剰に反応する。

 

 

「うぇ!?そ、そうだし!そう思えばないし!ふ、不思議なこともあるもんだし!」

 

 

 ……怪しい。そう思ったボクはキングスに質問する。

 

 

「なぁキングス?」

 

 

「な、なんだし?」

 

 

 ボクの方へと顔を向けるが、視線があっちこっち動いているし、かなり挙動不審だ。まるで知られたくないことがあるかのように。

 ボクは平静を保ちつつ答える。

 

 

「キングス、お姉になんか隠しとることないか?」

 

 

 ボクの言葉にキングスはその場から飛び跳ねそうな勢いで驚いていた。そして答える。

 

 

「ななな、なに言ってるし!?ああ、あたしが、お姉に、か、隠し事なんて……するわけないし!?」

 

 

 ……もうこの態度が答えだろう。キングスはボクに隠し事をしている。そう確信した。なので、ボクはキングスを問い詰める。

 

 

「キングス、その態度が答えやで。お姉に何隠しとるんや?」

 

 

「うっ……。そ、それは言えないし!」

 

 

「なんでや?」

 

 

「だって!アイツが見せるなって……あッ!」

 

 

 キングスは慌てて自分の口を塞ぐがもう遅い。大体分かった。

 アイツ、というのは十中八九トレーナーのことだろう。キングスが素直に言うことを聞くような人物でアイツと呼ぶのはボクのトレーナーぐらいしかいない。つまりキングスはトレーナーから記者会見の記事を見せるな、と言われているのだろう。そして、キングスにボクに記者会見の記事を見せるなと言ったということは……。

 

 

(大体記事ん内容察しがついたわ)

 

 

 ボクはキングスを威圧するように告げる。

 

 

「キングス?ボクはキングスのこと大好きやで?」

 

 

「あ、あたしもお姉のこと大好きだし!」

 

 

「やったら、大好きなお姉の言うこと……聞いてくれるよな?」

 

 

「うっ……そ、それは……」

 

 

「聞いて……くれるよなぁ?」

 

 

 キングスには悪いが、どうしても気になる。だからこそ、無理矢理にでも持ってきてもらうことにした。

 やがて、観念したのかキングスは鞄の中からボクに渡す前に抜き取ったであろう新聞の記事を渡してくる。渡してきた手は震えていた。怖がらせたこと、無理強いさせてしまったことに申し訳なく思う。ボクはしょげているキングスの頭を慰めるように撫でる。

 

 

「ごめんなキングス。トレーナーにはボクが無理矢理奪い取った言うとくから」

 

 

「うぅ……。そこは気にしてないんだけど……。お姉、記事見ても怒らないし?」

 

 

「内容次第や」

 

 

「あ、もうダメだしこれ。諦めるしかないし」

 

 

 キングスはそう言って諦めたような表情をしていた。まあ、すでにどんな内容かは察しがついているのだが、キングスの頭を撫でるのを中断して内容を確認する。

 ……なるほどなるほど。そういうことだったのか。トレーナーがボクに見せないように言った理由が分かった。

 自分の中で納得していると、キングスが怯えたような声でボクに告げる。

 

 

「ヒィィ!?やっぱり怒ってるし!」

 

 

 怒っている?キングスはなにを言っているのだろうか?そう思いながらボクは冷静に答える。

 

 

「何言うとるんや?ボクは、極めて、冷静やで?」

 

 

「絶対噓だし!新聞が破れるぐらい手に力が入ってるのに説得力ないし!」

 

 

 そう言われて、ボクは気づく。ボクの持っている新聞が真ん中から真っ二つに裂けていた。無意識に力を込めていたのだろう。

 だが、それも当然だ。何故ならある意味予想通り、いや、それ以上に酷い内容の記事が散見されたのだから。

 

 

「それにしてもなぁ、会見でちゃ~んとボクとトレーナーで話し合って決めた言うとったのになぁ。なんッでトレーナーの独断みたいな記事が書かれとるんやろうなぁ?不思議やなぁホンマに」

 

 

「……」

 

 

 キングスはボクに対して手を合わせている。まるで鎮まりたまえといわんばかりに。ボクは他の新聞の記事も確認する。

 ……まあ察しはついていたが、内容は似たり寄ったりだった。どれもこれもトレーナーを批判するような記事ばかりだった。思わず溜息をつく。

 落ち着いたことを察知してか、キングスがボクの顔色を窺うように見てくる。

 

 

「お、お姉?落ち着いたし?」

 

 

「……もう怒り通り越して呆れとるわ」

 

 

「……一応好意的な記事もあるし」

 

 

 そう言ってキングスは遠慮がちに新聞を渡してくる。受け取って確認すると、そこにはトレーナーに対して好意的なことを書いている記事が見られた。あの会見で喋っていたことをありのままに伝えている。少しだけボクは満足した。ちゃんと見てくれている人もいるのだと。そして、ボクはトレーナーに言われたことを思い出す。それは事前に批判されるだろうと話していたこと。

 

 

(まあ、トレーナーもこうなるって言うてたからな)

 

 

 彼らはそういう仕事、悪い人たちばかりではない。良く書いてくれる記者だっている。トレーナーはそう言っていた。そして、実際トレーナーのことを良く書いてくれる記者だっている。

 まあ、だからと言って感情的に納得できないのだが。しかしここで怒りを見せても仕方がないので我慢する。

 キングスがボクに質問してきた。少し遠慮がちに。

 

 

「お、お姉。大丈夫?」

 

 

 ボクはその問いかけに笑みを浮かべて答える。

 

 

「うん、もう大丈夫やで。怖がらせてごめんなキングス」

 

 

 すると、キングスも笑顔を浮かべて返す。

 

 

「あたしは大丈夫だし!それに、お姉が怒るのも分かるし!」

 

 

「まあもう気にせんことにするわ。ボクもしっかり治して、治ったらまた一緒に遊ぼか!キングス!」

 

 

「うん!約束だし!」

 

 

 そう言ってボク達は約束する。怪我が治ったらまた一緒に遊ぶことを。

 そろそろ帰らなければならないということでキングスは帰り支度をする。去り際にボクに尋ねてきた。

 

 

「最後に1ついいし?お姉」

 

 

「なんや?キングス。どうかしたんか?」

 

 

「……アイツのこと悪く書いてた記者の人達、これから先取材しに来るかもしれないけど……、どうするし?許すし?」

 

 

 ボクはその質問にとびっきりの笑顔で答える。

 

 

「許すわけないやろ。二度と取材受けんわ」

 

 

「あっ、はい」

 

 

 キングスはそう言って病室を後にした。どことなく怖がっていたのは気のせいだろうか?




昨今の振る舞い見てると悪いイメージしか湧かないのが悲しいところ。
今期は見たいアニメが多いので消化する時間を確保しないと。
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