ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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いつもより短いですがキリがいいので投稿


第12話 併走(模擬レース)

 トウショウボーイがトレーナー室に訪問してきてから一週間後。併走の約束の日が来たので俺とテンポイントは練習場へと向かっている。

 練習場へと向かっている間に、この併走が組まれた経緯を詳しく知らないテンポイントから質問される。

 

 

「リギルの人たちと併走なんてよう組めたな。どんな手を使ったんや?」

 

 

「あー……」

 

 

 まさかトウショウボーイが駄々をこねたからなんて言うわけにはいかないだろう。厳密には違うが、組むことになったのは間違いなく彼女の駄々が入っている。トウショウボーイの名誉を守るためにも詳しい経緯に関してはボカして伝えることにした。

 

 

「メイクデビューからの三戦が圧勝だったからな。それでおハナさんがお前の強さに興味を持っていたから俺からお願いしたんだ。こっちは強いウマ娘と並走することでお前の経験になる、あっちは強さを測ることができる。お互いに利が一致したからこそだな」

 

 

「……なーんか少し怪しいけど、まあええか。納得したる」

 

 

 少し声が震えていたせいか、テンポイントはこちらを訝しんでいたが一応納得はしてくれたようだ。まあ嘘は言ってないので大丈夫だろう。一部の真実を隠しているだけだから。

 そしてテンポイントは続けざまに質問してくる。内容は今日併走する相手に関することだ。

 

 

「今日は誰と併走するんや?ボク相手のこと知らされてへんのやけど」

 

 

「今日の相手か?それはおハナさんが決めてくれるらしい。リギルのウマ娘はクラシック級やシニア級でも指折りの実力者ぞろいだ。誰と走ってもいい経験になるからその条件でもOKしたんだ」

 

 

 まあ誰が出てくるかなんて俺は察しがついている。ただ本当に出てくるかは分からないのと少しのサプライズ感を出したいので名前は出さない。

 そして少しばかり会話を続けていると練習場へと着く。約束の時間よりも前に来たがそれは向こうも同じだったらしく、すでに練習場にはおハナさんとリギルのメンバーがいた。そしておハナさんは俺の顔を見るなり苦虫を嚙み潰したような顔をする。そんな顔をされる心当たりは一つしかないのだが。

 

 

「おはようございます。早いですねおハナさん」

 

 

「……あなた、謀ったわね」

 

 

 開口一番酷い言われようだ。だが俺はあくまで何も分かっていないように振る舞う。

 

 

「何の話ですかね?俺にはさっぱりだ」

 

 

「しらばっくれないで。あなたこうなることが分かって併走を取りつけたんでしょう?」

 

 

 あぁ、やっぱり併走の相手はアイツになったか。おハナさんがここまで憔悴しているのも止められなかったからだろう。

 しかし俺は分からないふりをすることにした。

 

 

「うーんやっぱり心当たりがないなぁ」

 

 

「……まあいいわ。後悔しないことね」

 

 

 そう言っておハナさんは踵を返してリギルのメンバーがいる場所へと向かい、彼女らに指示を飛ばしている。悪いことをしたとは思っているので今度何か奢ることにしよう。

 するとテンポイントから質問が飛んでくる。

 

 

「な、なぁ、あの人リギルのトレーナーさんやろ?何があったんや?なんや随分疲れとったけど」

 

 

まあ確かに気にはなるだろう。俺はテンポイントの疑問に答える。

 

 

「まあ俺に一杯食わされたってのと、宥めるのに苦労したってとこだろうな。結局無駄だったみたいだが」

 

 

するとテンポイントは呆れたような口調で

 

 

「なんちゅうか、怖いもん知らずやな……君」

 

 

と一言だけ発した。その後は併走の時間も迫っているということでテンポイントにウォーミングアップをするように伝え、俺は観客席の方、おハナさんとリギルのメンバーがいる方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何をやったんやトレーナーは……」

 

 

 ウォーミングアップをしながらもボクはこの併走への疑問が止まらなかった。一週間前に唐突にリギルとの併走が決まったと言われたと思ったらあれよあれよという間にこの日が来てしまった。一体どうやって最強チームとの約束を取りつけたのか、どんな手を使ったのか気になって仕方がない。しかし聞いてもトレーナーからははぐらかされてきた。それは対戦する相手に関しても同様だ。向こうのトレーナーが決めると言って今日の今日まで知らされていないし今この瞬間も誰が相手なのか分からないままである。ただトレーナーが言うには「誰が来ても強いから経験になる、勉強させてもらってこい」、と教えられている。

 

 

「さて、そろそろ相手の人が来てもええころやけど……」

 

 

 クラシック級、シニア級クラスのウマ娘と言っていたのでボーイはまずないだろう。テスコガビー先輩も足を故障して療養中であるため違う。本当に誰が相手になるのだろうか。

 

 

「やぁ、待たせてしまったね」

 

 

 そしてウォームアップしていたボクに声がかけられる。おそらく今日の相手の人だろう。ボクは顔を上げて応対しようと思って、固まった。

 ボクの相手、それは

 

 

「自己紹介は不要だと思うが一応しておこう。今日君の併走相手を務めさせてもらう、ハイセイコーだ。よろしくお願いするよ、テンポイント」

 

 

生徒から絶大な支持を集めトレセン学園の生徒会長として慕われており、トゥインクルシリーズを半ば引退の身でありながらも今なお最強のウマ娘の一人に数えられているチーム・リギルのトップ、ハイセイコー先輩だった。彼女はにこやかに微笑みながらこちらに握手を求めている。ボクはそれにぎこちない笑顔を浮かべながら握手を交わす。

 

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 

緊張しすぎて声が震えてしまっている。するとハイセイコー先輩はウィンクをしながら

 

 

「そう緊張しなくていいよ。キミの走りには前々から興味があってね、お互い頑張ろうじゃないか」

 

 

そう言ってくれた。しかしボクの胸中は穏やかじゃない。確かに併走するとは言っていたがまさかこんな大物だとは思わないだろう。トレーナーの方を向いてみる。こちらに元気よくサムズアップしていた。心の中で叫ぶ。

 

 

(やたら楽しそうにしとったんはこれのせいか!絶対分かっとったやろ!)

 

 

とりあえずこの併走が終わったらトレーナーに文句を言いに行こう。ボクはそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり相手はハイセイコーになったか。テンポイントの奴ビックリしてんなぁ」

 

 

 俺は観客席の方でハイセイコーとテンポイントのやり取りを見ている。予想通りテンポイントはいい反応をしてくれたのでサプライズは成功になっただろう。

 近くにいたおハナさんに話しかけられる。

 

 

「あなたやっぱり分かってたんじゃない、ハイセイコーが併走の相手になるって」

 

 

「まぁな。元々併走に関してもあいつからお願いされていたし、十中八九ハイセイコーの奴が相手になるだろうって思ってたよ」

 

 

「だったら教えてくれてもいいじゃない。大変だったのよ?」

 

 

「そこはサプライズってやつだ」

 

 

「いい性格してるわねホント……」

 

 

 おハナさんは呆れ口調だ。

 そうして話していると、並走が始まるのかハイセイコーとテンポイントが位置について並んだ。そして旗を持った子の合図でスタートを切る。テンポイントが前を取りハイセイコーが後ろにつく展開だ。今回の距離は1600m。併走というよりは模擬レースに近い形を取られるようになった。

 俺はおハナさんに聞いてみる。

 

 

「なぁ、なんで1600mなんだ?併走だったらもっと短くていいだろう?」

 

 

「……ハイセイコーの我儘よ。せっかくだから実戦形式でテンポイントの走りを見たいからって無理矢理押し通したわ」

 

 

「……スマンおハナさん、それはさすがに予想外だった」

 

 

 強権が過ぎるだろ生徒会長。そう思いながら俺はレースに集中する。しばらく経って、レースは1000m地点を通過したところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(クッソ!全然引き離せん!)

 

 

 最初こそ相手がハイセイコー先輩で驚いたが、レースが始まってからはそんなことはお構いなしにボクは全力をぶつけている。相手はシニア級、ジュニア級のボクが勝てる見込みはないがそれでもやる以上は勝ちたいからだ。だが当の先輩は余裕綽々と言った感じで

 

 

「ハハッ!確かにすごいね。今の実力でもクラシック級で十分通用するだろう!」

 

 

こちらに話しかけながら、プレッシャーを掛けながら走っている。レースが始まってからずっとだ。こちらがどれだけペースを乱そうともそれを意に介さない。ハッキリ言って格が違う。そう感じた。

 すでにレースは第4コーナーを回って最後の直線に差し掛かろうかというところ。そこで唐突に先輩はこちらに向かって話始める。

 

 

「時にテンポイント。キミは生徒会長に求められるものは何だと思う?」

 

 

(知らんわ!こっちは話す余裕なんかないねん!)

 

 

 こちらはもういっぱいいっぱいだ。だが、構わずに先輩は話を続ける。

 

 

「生徒からの信頼、レースでの実績……他にも色々あるだろう。それらは生徒会長としては欠かせない要素だ。だがね、大元をたどればとてもシンプルなものさ」

 

 

 瞬間、先輩の空気が一変する。ここからが本気だ。そう言わんばかりに。

 

 

(嘘やろ!?ここからさらに上がるんか!?)

 

 

 そしてボクに並んだ。その瞬間先程の答えを言ってくる。

 

 

「誰もが認める最強たり得ること。それが生徒会長としての絶対条件だ」

 

 

 最後の直線に入って先輩は凄まじい加速を見せる。一瞬でボクを引き離しにかかった。これがシニア級の実力、かつて最強の一角と呼ばれたウマ娘の実力。それを見せられてボクは痛感する。自分が天狗だったことを、自分はまだまだ未熟であったことを。

 けれど、

 

 

(やからって、負けてたまるかぁぁぁぁぁ!)

 

 

 ボクは今自分が持てる全てをぶつけるように加速する。もう足は限界だ、今加速しても先輩には追いつけないかもしれない。だが、諦めるなんて嫌だ。驕りかもしれない、生意気かもしれない。それでもボクは先輩に、ハイセイコーに負けたくなかった。その感情だけが今のボクを突き動かしていた。そしてその気持ちが実ったのか、一度は引き離された距離がグングンと縮まっていきついには先輩に追いついた。その横顔を見てみると、とても驚いていた。

 

 

「ッ!まさかあそこから追いつくなんてね。驚いたよ」

 

 

(当たり前や!絶対に負けへんぞ!)

 

 

 そう思ったのもつかの間、先輩はさらに加速したかと思うとこちらを突き離した。さすがにもう体力も脚も残っていない。

 

 

(くそぉ、くそぉ!届か……へん……か……)

 

 

 5バ身差。それがボクとハイセイコー先輩の模擬レースの結果だった。




テンポイントとハイセイコーの模擬レースとかどれくらい積めば見れますか?


※細かい誤字を修正 7/22
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