ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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日常の続き回


第114話 再始動

 カイザーの闇が垣間見えた気がしたカフェテリアでの食事が終わり、午後の授業も終わって現在放課後。ボクはすぐに帰り支度を済ませて練習に行く準備を整える。

 

 

「それじゃ、また明日なみんな!」

 

 

「おう!また明日な、テンさん!」

 

 

「じゃ~ね~。頑張ってね~テンちゃ~ん」

 

 

「応援してますよテンポイントさん!また一緒に走りましょう!」

 

 

 ボーイ達と挨拶を交わしてボクは足早に教室を出てトレーナーが待つトレーナー室へと向かう。

 駆け足気味にいつものプレハブ小屋に向かうと、すでにトレーナーが外で待っていた。ボクに気づいて、トレーナーはこちらに手を振る。

 

 

「早いなテンポイント」

 

 

「せやな。はよう復帰したいっちゅう気持ちが強くてここまで駆け足で来たわ!」

 

 

 ボクの言葉に、トレーナーは苦笑い気味に言葉を返す。

 

 

「ま、そりゃそうか。なら早速着替えて練習と行こうか」

 

 

 ボクはトレーナーの言葉に元気よく返事をして小屋の一室を改造した更衣室で着替える。着替え終わったらトレーナーと再度合流して今日のトレーニングの確認に入った。

 

 

「さて、昨日も言った通り今日から本格的に復帰に向けたトレーニングを始めていく。まずは落ちた筋力を戻すことが先決だ。これが今日のメニューな」

 

 

「ありがと。どれどれ~?」

 

 

 トレーナーから渡されたトレーニングの内容が書かれた紙をボクは確認する。

 ……紙には腕立てや腹筋などの基礎的なトレーニングから懐かしの坂路トレーニングまで色々書かれていた。その量は1つ1つは大したことはない。ボクは疑問に感じてトレーナーに質問する。

 

 

「う~ん、トレーナー。ちょい量が少なくないか?」

 

 

「そのことか。なら安心してくれ。それはあくまで仮の数字だからな。大丈夫そうだと判断したら量を増やしていく予定だ」

 

 

「そういうことか。まぁ復帰初日やし慎重に……っちゅうことやな?」

 

 

「そうだな。それと、今回はサポートメンバーもいる」

 

 

 サポートメンバー、という言葉にボクは反応する。ボクのトレーニングに付き合ってくれる子がいるのだろうか?一体誰だろうか?と思っていると、トレーナーは早速その子を呼んだ。

 ボクの目の前に現れたのは……。

 

 

「テンポイント様!退院おめでとうございます!」

 

 

「私達、テンポイント様が復帰できるこの日を一日千秋の思いで待ち望んでおりました……!」

 

 

「あぁ……!今日もお美しい……!やはり写真で見るのとは違います!」

 

 

「我々も微力ながらサポートさせていただきます!」

 

 

 キングスの友人達だった。みんなボクの姿を見て感激の涙らしきものを流している。その姿に思わずたじろぐ。

 戸惑っているボクにトレーナーがこの子達を呼んだ理由を話し始める。

 

 

「この子達はキングスとファンクラブ経由でテンポイントの情報は知っていたんだが、復帰のための練習を今日から始めるってことを知ったら自分達も是非手伝いたいと言ってくれてな。好意を無下にはできないし、何より複数人で練習した方が効率はいいしな」

 

 

「そういうことか。ボクは問題ないんやけど……キングスはどうしたんや?キングスも言いそうなもんやけど」

 

 

 ボクの疑問にトレーナーは即座に答える。

 

 

「キングスは後で合流する。もう少ししたら来るんじゃないか?」

 

 

「成程な。了解や。やったらさっそく始めよか」

 

 

「「「分かりました!テンポイント様!」」」

 

 

「……うん、よろしゅうな」

 

 

 この子達が悪い子ではないと分かっているので強くも言えない。純粋にボクを慕ってくれているのが分かるからこそ。

 気にしていても仕方がないので、ボク達は練習を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習を初めて結構な時間が経った。キングスも途中で合流し、後輩達と一緒にトレーニングをしながら時折ボクを応援している。ボクは肩で息をしながら考える。

 

 

(ホンマ……ッ!思うたよりも体力が落ちとるわ……ッ!)

 

 

 練習量はシニア級の時よりも少ない量だ。だが、肩で息をしている自分の現状から入院生活で筋肉が落ちている上に体力も落ちていることを改めて実感する。

 だが、へこたれてもいられない。こういうのは積み重ねが大事だ。焦らずに、じっくりと元に戻していくことを心がけることが重要だと。そう思い直して決して無茶だけはしないようにする。それに、

 

 

「がんばれー!お姉!」

 

 

「頑張ってくださーい!テンポイント様ー!」

 

 

「後1セットです!踏ん張っていきましょう!」

 

 

自分を慕ってくれている後輩達の応援もあってか、不思議と力も湧いてくる。まだまだ頑張れそうだ。

 今は坂路でのトレーニングをしている。思えば、坂路のトレーニングもジュニア級の頃は嫌々やっていたことを思い出して、苦笑い気味になった。

 

 

(坂が苦手やから坂路のトレーニングって聞いただけで憂鬱になっとったなそういや。アカン、ちょい懐かしいわ)

 

 

 そこまで考えて、すぐに気を取り直して練習に集中する。先程の言葉通り後1セット。気合を入れて走った。

 最後の坂路を走り終わったところで、トレーナーからの言葉が飛んでくる。

 

 

「よーし休憩だ!しっかりと休むぞ!」

 

 

 その言葉とともにボクはトレーナーの下に集まって休憩を取る。休憩を取っているボクにトレーナーが話しかけてきた。

 

 

「……で、改めてトレーニングをしてみてどうだった?予想以上に体力が落ちていて驚いたか?」

 

 

「やな。やっぱ長い間リハビリでしか身体動かさんかったから思うた以上に体力が落ちとるわ」

 

 

「だが基礎トレの方はもう少し数を増やしても問題なさそうだな。問題なくこなせていたし」

 

 

「頼むわ。やっぱ数は少なく感じたからな。まだまだいけるで」

 

 

「分かった。明日からは回数を増やしていこう」

 

 

 ボク達は休憩を取りながらトレーニングの内容を改善していく。

 休憩を取り終わったら、すぐにトレーニングを再開する。1日でも早く復帰するためにもと気合を入れて練習に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が傾きかけてきた頃、トレーナーの声が響き渡る。

 

 

「テンポイント!他のみんなも今日はここまでだ!クールダウンして上がるぞ!」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

 その言葉でボク達はトレーニングを切り上げてクールダウンをする。ボクはキングスと後輩達に改めてお礼を言う。

 

 

「キングス、みんな。今日はホンマにありがとな。ボクのために集まってくれて」

 

 

 ボクの言葉に、キングス達は笑顔を浮かべて答える。

 

 

「気にしなくていいし!お姉のためだったらどんなことでもやるし!」

 

 

「そうです!テンポイント様のためならたとえ火の中水の中嵐の中でも!」

 

 

「ウチらで力になれるんだったらいつでも呼んでください!」

 

 

「そうです!補習中だろうと飛んでいきますよ!」

 

 

「いや、補習はちゃんと受けろ」

 

 

 最後の子にはトレーナーからのツッコミが入ったが、多分冗談だろう。その証拠にみんな声を出して笑っていた。それぐらいの心意気でいるという意志表示かもしれない。

 クールダウンが終わったキングス達はみんな寮へと帰っていった。ボクとトレーナーはトレーナー室へと戻る。今日の晩御飯のお弁当を受け取りながら、明日以降の練習内容を2人で考えていく。

 

 

「さて、今日はタイム走は行わなかったがどこに入れるのがいいと思う?俺は最初にするのがいいと思ってるんだが」

 

 

「タイム走は日によって交互にやるのがええんやないか?この日は最初に、この日は最後に見たいに。疲れとる時とそうでない時のタイムどっちも欲しいやろ」

 

 

「そうだな。まだ1本しか走らない時はそうしよう。その内本数を増やすときになったらその日の最初と最後に1本ずつ測る。これで行くか」

 

 

「やな。後は基礎トレ……腹筋や腕立てなんかの回数やな」

 

 

「休憩中も話してたやつだな。もう1セット……いや、2セットいけるか?」

 

 

「そんぐらいで問題ないで。あんま数増やしても逆効果やしな。そんぐらいが安牌やと思う」

 

 

「ならそれでいこう」

 

 

 ボク達はお互いに意見を出し合いながら次の日以降のトレーニング内容を詰めていく。

 内容の修正が終わると、ボクはトレーナーから脚のマッサージを受けていた。疲れが取れていく感覚を味わいながらボクはトレーナーと会話をする。

 

 

「せや。今日久しぶりにみんなと学園で話たで」

 

 

「どうだった?」

 

 

「みんな病院で会話しとる時とあんま変わらんけど、やっぱ病院と学園とでは全然ちゃうな。こう、日常に戻ってきたー、って感じがするわ」

 

 

 ボクは笑顔でそう言った。トレーナーも嬉しそうに答える。

 

 

「それは良かったな。他には何かあったか?」

 

 

「う~ん……ボーイがサマードリームトロフィーに向けての調整がバッチリなんと、グラスの次走がだいぶ先になる言うてたな」

 

 

「グリーングラスはやっぱり脚か?」

 

 

「やな。宝塚が終わってからまた少しずつ悪うなっとるみたいや。走る分には問題ないみたいやけど、全力は出せん言うとった」

 

 

「グリーングラスも沖野さんも歯がゆいだろうな……」

 

 

 そんな会話をしている。これも怪我する前のいつもの日常のような感じがして、心地よかった。

 そして、言うべきかどうか迷ったが話題としてカイザーのことを上げる。それはカフェテリアでのこと。

 

 

「後……カイザーの闇を垣間見た気がしたわ」

 

 

「何があったんだよクライムカイザーに?」

 

 

「なんやろうな……。ハダルでタケホープ先輩にしごかれとるらしいで」

 

 

 一応、タケホープ先輩の名前を憎々し気に、しかも呼び捨てで呟いていたことは言わないでおく。ボクの言葉にトレーナーは冷静に答える。

 

 

「まぁ、クライムカイザーもサマードリームトロフィーが近いからな。タケホープも練習に熱が入ってるんじゃないか?」

 

 

「やけど、滝行とか逆鬼ごっことかやらされとるらしいで」

 

 

「……逆鬼ごっこってなんだ?」

 

 

「鬼を鬼以外の人が追い回すらしいで。しかも山ん中」

 

 

「……大変だな、クライムカイザーも」

 

 

 トレーナーはカイザーに同情しているような声でそう言った。

 マッサージも終わり、ボクは帰り支度を済ませる。お弁当が入ったスポーツバッグを持ってトレーナー室を後にする。

 

 

「じゃあトレーナー。明日もよろしゅうな!」

 

 

「あぁ。明日も頑張るぞ!テンポイント!」

 

 

 そう挨拶を交わしてボクはトレーナー室を後にする。寮へと帰宅した。

 寮の部屋にはすでにジョージがおり、ボクが帰ってきたことが分かるとジョージはボクに飛びついてきた。

 

 

「テン坊 おかえり」

 

 

「ただいまジョージ。ジョージは今日は休みやったん?」

 

 

「そう すやぷぅ」

 

 

「寝とったんか」

 

 

 ボクの言葉にジョージは頷く。ボクは微笑ましく思いながらスポーツバッグの中からお弁当を取り出して食べ始めることにした。

 お弁当を食べていると、ジョージが物欲しげな表情でボクのお弁当を見ていた。ボクはお弁当からおかずを1つつまんで、ジョージに食べさせる。

 

 

「ホラ、ジョージ。あーん」

 

 

「あーん」

 

 

「どや?美味いか?」

 

 

「でりしゃす」

 

 

 それだけ答えて次を催促するように口を開けていた。苦笑いしながらもボクはおかずをジョージに食べさせていく。

 お弁当を食べ終わってからはいつものようにお風呂に入り、予習と復習をしながらジョージとの会話に華を咲かせる。

 消灯時間が近づいてきたのでボクは勉強を切り上げて布団の中に入った。ジョージと挨拶を交わす。

 

 

「それじゃジョージ。おやすみ」

 

 

「おやすみ テン坊」

 

 

 電気を消して眠りにつく。一日でも早く復帰できるようにと思いながら。




衣装違いタマモと衣装違いイナリ……。良きですね。ところでウマさんぽはどこですか?
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