ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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合宿2日目回


第117話 ひたすら前に

 合宿2日目の朝。ボクは旅館の部屋で目を覚ます。時間を確認した後身体を起こして顔を洗うために洗面台へと向かった。

 顔を洗いながらこの後の練習のことについて考える。

 

 

(朝は前回のようにヒルクライム、午後からは走り込み言うとったな)

 

 

 フォームチェックが主になるらしい。シニアの時の走りにはまだまだ程遠い。調整しながら練習すると昨日言っていた。

 顔を洗った後は朝食を取り、朝食を食べ終わった後は少し休憩を取った後着替えて旅館のロビーへと向かう。ロビーにはすでにトレーナーがいた。

 ボクとトレーナーは互いに挨拶を交わす。

 

 

「おはようテンポイント。今日も一日頑張っていくぞ!」

 

 

「おはようさんトレーナー。今日も頑張ろか!」

 

 

 そう言葉を交わして早速旅館を出発して峠へと向かった。

 スタート地点に着いたら早速自転車で走るための準備をする。ヘルメットを着けて、アンクルウェイトを着けて、サポーターをつけて準備万端だ。

 

 

「それじゃ。よーい……スタート!」

 

 

「楽に制覇したるわー!」

 

 

 ボクはそう気合を入れて峠道を上り始める。トレーナーはボクの後ろから乗ってきた軽トラで追走していた。

 風を身体に感じながらボクは自転車で飛ばしていく。合宿用にカスタマイズされた通常よりも踏む力が倍くらいは必要なペダル、重りを着けた状態で走ることで普通に自転車を漕ぐよりもさらにキツく感じている。辛い、というよりは懐かしさの方が強かった。それに、半年前のことを考えればこうやって自転車を漕いでるだけでも嬉しい。

 でも、それだけで終わるわけにはいかない。あくまでボクの目標はもう一度レースの舞台に立つこと。1日でも早く復帰するために、止まってはいられない。ボクはペダルを踏んで自転車を一生懸命漕いでいく。

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ!……フッ!」

 

 

 小気味よいリズムを刻んで呼吸をする。まだまだ余裕だ。快調に飛ばしていく。

 だが、半分を超えた辺りで限界を迎えた。疲れが来たので足をついて休憩を取る。少し息を切らしながらもトレーナーに確認する。

 

 

「ハァ……ハァ……。トレー、ナー。いま……どの、辺、や?」

 

 

 ボクの言葉を聞いてトレーナーは現在位置を確認する。そして、嬉しそうにボクに告げた。

 

 

「半分を過ぎた辺り、ってとこだな。昨日に比べて大分進んだじゃないか」

 

 

「ま、まぁ……前回の、けい、けんも、あるから、やな」

 

 

 ボクは少し息を整えてから続ける。

 

 

「息の、入れ方、無駄なく漕ぐために最適な力の入れ方、それら諸々は身体が覚えとったみたいや。昨日は全然活かせんかったし、筋力も完全には戻ってへんからここまでしか来れんかったけど」

 

 

「2日目でここまで来れただけでも大したもんだ。これなら近いうちに最初のギアで走破はできそうだな」

 

 

「やな。早いとこ最大ギアで走破したいところやし、気張っていこか!」

 

 

 その後走破することはできなかったものの、初日よりは進んだことをボクは喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒルクライムが終わった後は旅館に戻ってきて昼食の時間となる。部屋に戻って少し経つとすぐに料理が運ばれてきた。

 

 

「いただきます」

 

 

 ちゃんと手を合わせてからいただく。全部食べ終わった後の挨拶も忘れずに。

 昼食を食べ終わった後は再度トレーナーと合流して近くにあるグラウンドへと向かう。今回もここで走り込みを行うらしい。

 また怪我などしたら洒落にならないので入念にストレッチをして走るための準備をする。ストレッチが終わった後、トレーナーが練習内容の細かい説明を始める。

 

 

「さて、昨日のミーティングでも言った通りだが今日はフォームをチェックしながらハロン走……つまりは200mを走ってもらう。復帰明けから何度かチェックしているから知っていると思うが、まだまだ全盛期の走りには程遠いからな」

 

 

 トレーナーの言葉にボクは頷く。

 

 

「やな。動画で見たら分かりやすかったわ。どことなくぎこちないっちゅうか、見比べたら一目瞭然やったし」

 

 

「そうだな。だからフォームを逐一チェックしながらハロン走を行うぞ。早速始めようか」

 

 

「了解や」

 

 

 言われてボクはスタート位置に着く。まずは最初の走り。深呼吸して気持ちを落ち着けた後スタートの態勢をとって発走の瞬間を待つ。

 

 

「……スタート!」

 

 

 トレーナーの合図とともにボクは走り出す。特に意識せず、いつも通りに走り抜けた。タイムはまだまだ物足りなかったが。

 200mを走り終わった後、トレーナーが撮った映像を一緒に確認していく。そこに映っていたのは、やはりというかどことなく感じる違和感だった。

 

 

「う~ん……いつも通り走っとったはずなんやけど、やっぱなんかちゃうよなぁ」

 

 

 タイムの時点で察しはついていたが、前のフォームよりも崩れているのが分かった。トレーナーは冷静に分析した結果をボクに告げる。

 

 

「前までの走りと比べて、今のお前の走りは完歩が小さいんだ。そこに注目して見比べてみろ」

 

 

 そう言ってトレーナーは再び映像を再生する。言われた通りに、足元に注意して映像を見てみた。

 

 

「……ホンマやな。前の走りよりも歩幅が小さくなっとる」

 

 

 トレーナーの言う通り、今のボクの走りは前のボクの走りと比べて歩幅が小さくなっていた。おそらくフォームが崩れているように感じたのはこれが原因だったんだろう。

 しかし、どうして歩幅が小さくなったのだろうか?そう疑問に感じたがすぐにその理由に思い当たる。ボクが言葉に出す前に、トレーナーから告げられる。

 

 

「おそらくだが、骨折の影響だろう。無意識にだが抑えるように走っているのかもしれない」

 

 

「……こればっかりは、走って治すしかないっちゅうことか」

 

 

「そうだな。次は歩幅を意識して走ってみてくれ」

 

 

「分かった」

 

 

 会話を切り上げて、ボクはスタート位置に着く。トレーナーのスタートの合図で2回目の計測が始まった。さっきよりも歩幅を大きくするイメージで走る。

 ……意識しすぎてさっきよりもタイムが落ちてしまった。トレーナーも微妙な表情をしている。さっきのハロン走の映像をボクに見せてきた。映像に注目する。

 

 

「……ひっどいなこれ。意識しすぎてさらに変になっとるやん」

 

 

「俺が悪いってのもあるが、さすがに意識しすぎだ。もう少し楽に走ってくれ」

 

 

「分かったわ」

 

 

 この映像は使えないということでトレーナーは消去した。ボクは3回目の計測に移る。さっきよりも楽に、けれど歩幅は大きくするイメージで……!

 そこから微調整を繰り返していきながらハロン走を続けていく。だが、さすがに一日程度でどうにかなるくらいだったら苦労はしない。思わず愚痴を零しそうになる。

 

 

(……まぁ、最初っから分かっとったことや。気を取り直して頑張るか!)

 

 

 気合を入れ直し、練習に熱を入れる。

 そこから時間が経つのも忘れて練習をしていると、いつの間にか空が夕焼け色になっていた。何なら日も沈みそうである。トレーナーの声が飛ぶ。

 

 

「よし!今日はここまでにするぞ!しっかりとクールダウンをしておけ!」

 

 

「お、お~……」

 

 

 ボクは疲れを感じながらもクールダウンのストレッチへと移る。クールダウンをしているボクにトレーナーが近づいてきた。

 

 

「合宿2日目お疲れさんテンポイント。この後は旅館に帰って夕飯、お風呂の後はマッサージとミーティングだ」

 

 

「了解。お疲れ様やトレーナー」

 

 

 ストレッチが終わったらまた車に乗って旅館へと戻る。合宿2日目の練習が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 晩御飯を食べ終わった後はお風呂に入ってトレーナーのマッサージを受ける。疲れが取れていくことを実感しながらトレーナーと会話をしていた。

 

 

「そうだ。今回のサマードリームトロフィーだが、せっかくトウショウボーイとクライムカイザーが出ることだし見に行くか?」

 

 

「う~ん、大丈夫なんか?練習もあるやろうし」

 

 

「そこについては問題はない。うまく調整して休みを入れるからな。それに無理をし過ぎるのも身体に毒だ」

 

 

「……ま、ボクもどうなるか気になっとるし、調整頼むわ。トレーナー」

 

 

「任せとけ」

 

 

 実際サマードリームトロフィーがどういう結末を迎えるのかは気になるところだったので嬉しい提案だった。

 マッサージが終わった後は課題を黙々と終わらせる。とは言っても、難しい課題があるわけでもないし、話しながらする余裕があった。なので課題をしながらトレーナーとお話をする。

 

 

「今頃キングスはどうしてるやろうなぁ」

 

 

「寮で友達と遊んでるんじゃないか?そして夏休みが終わりに近づくにつれて課題が終わってないことに焦る」

 

 

「……去年がそうやったな。今のうちに課題は早めに終わらせとけ言うとくか」

 

 

「そうした方がいいぞ。お前の言葉なら素直に聞くだろうし」

 

 

「お母様に怒られるっちゅうことを添えとかんとな。怒らせたらホンマに怖いし」

 

 

「そうなのか?いや、確かに怒らせたら怖そうだな」

 

 

「間違ってへんで?怒ったらホンマに怖いからなお母様。お父様も頭が上がらんし」

 

 

「いつの世も母親が一番強いってことか……」

 

 

「トレーナーのとこもそうなんか?」

 

 

「一度親父が本気で怒らせたことがあったらしい。詳しいことは聞いていないが、それ以来二度と逆らわないことを心に誓ったそうだぞ」

 

 

「何があったか無茶苦茶気になるんやけどソレ」

 

 

「俺もそう思って聞いたんだが、身体を震わせるだけで何も答えてくれないんだ。余程恐怖を抱いたらしい」

 

 

「何をしたのかも気になるし、何をされたのかも気になるけど迷宮入りっちゅうことか」

 

 

「いや、多分兄貴なら覚えてるから今度聞いてみるか。久しぶりに思い出したことだし」

 

 

 そんな他愛もない会話を繰り広げていた。

 話題はボーイ達のことになる。

 

 

「カイザーもタケホープ先輩にしごかれとるらしいし、ボーイも調整はバッチリらしいし、ホンマにどう転ぶんやろうな?サマードリームトロフィー」

 

 

「カブラヤオーがいるから展開は超ハイペースになることは間違いないが、それに他の子達がどこまでついていけるかだな。何も対策できなければそのままカブラヤオーの逃げ切り勝ちで終わるだろうよ」

 

 

「やけど、ボーイもほぼ全力に近いペースで有マを走り切るぐらいの体力あるしカブラヤオー先輩の逃げにもついていけるんやないか?やっぱ本命はカブラヤオー先輩とボーイになるな」

 

 

「だな。後はお前が不気味だと言っていたカイザーだな」

 

 

「ホンマにカイザーはなにがあったんやろうな……。恨みつらみでも溜まっとるんやろうか?」

 

 

「タケホープに対する恨みは溜まってるんじゃないか?練習の元凶だし」

 

 

「カイザーも無事でおるとええんやけど……」

 

 

 トレーナーはふと思い出したようにボクに尋寝てきた。

 

 

「そういえば、シービークインはどうするんだ?あまり話を聞かないが」

 

 

「ん~……確か、ドリームトロフィーリーグには進まん言うとったな。トゥインクルシリーズで走り続けるかもまだ未定やって」

 

 

「そうなのか」

 

 

「本人は元気そうにしとるし、あんま心配はしとらんけどな。ドリームトロフィーで走らん言うてもボクらで走ることはできるし」

 

 

「それもそうだな。後はカシュウチカラとか、ホクトボーイはまだまだトゥインクルシリーズで走るんだったか?」

 

 

 トレーナーの言葉にボクは思い出しながら答える。

 

 

「やな。グラス・カシュウ・ホクトはまだトゥインクルシリーズで走るみたいや。ボクも一応トゥインクルシリーズに籍を置いとるし、また戦うかもしれんな」

 

 

「だな」

 

 

 その後もトレーナーと他愛もない会話を続けながらボクは課題を進めていく。心地よい時間だった。

 ふと、トレーナーが時計を確認してボクに告げる。

 

 

「もうこんな時間か。今日はこの辺で解散しとくか」

 

 

 言われてボクは時計を確認する。トレーナーの言った通り、もう寝るにはいい時間だった。名残惜しいが、トレーナーの言葉に同意する。

 

 

「明日もよろしゅうなトレーナー。トレーナーも疲れを残さんように早う寝るんやで?」

 

 

「分かってるよ。お前に言ってるのに俺が体調を崩したら目も当てられないからな」

 

 

 トレーナーは苦笑いをしながら答える。ボクは笑みを浮かべながらトレーナーの部屋を後にした。

 自分の部屋に戻ってから歯を磨き、布団に潜って寝る準備をする。こうして、合宿2日目が終わった。




ぼっち・ざ・ろっくED変わっててテンション上がりました。
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