ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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夏休みが明けた回


第121話 開催告知

 長いようで短い夏休みも終わって、トレセン学園の新学期が幕を開けた。ボクは寮で朝食を食べながら今後のことを考えていた。今後のことと言っても、今日の予定はなんだろうか?理事長の話はどんなものになるかぐらいのことしか考えていないが。

 朝食を食べ終わって、学園へ登校する準備をする。同室のジョージもボクと同じく朝食を食べ終わって登校する準備をしていた。

 お互いに準備が終わったので、ボクはジョージに声を掛ける。

 

 

「ほな、学園に向かおか、ジョージ」

 

 

「らじゃー」

 

 

 言葉を交わしてボク達は寮を出てトレセン学園へと向かう。道中、ボク達と同じように登校している生徒や、職員の方達と挨拶を交わしながら学園へと登校した。

 靴箱のところでジョージと別れてボクは購買で新聞を買った後、自分の教室へと向かう。教室の扉を開けて中に入るとすでに何人かは登校していた。挨拶をしながらボクは自分の席へと歩を進める。

 

 

「おはようさんみんな。今日からまたよろしゅうな」

 

 

「あ!テンポイントさんおはよう!今日からまたよろしくね~!」

 

 

「おっはよーテンポイントさん!こっちこそよろしく~!」

 

 

 そんな挨拶を交わしてボクは自分の席へ荷物を置いて座る。そして新聞を広げて今日のニュースを確認する、いつも通りの朝だ。

 

 

「……う~ん、今日は特におもろいニュースはないか」

 

 

 特に目を惹くニュースがなかったことを確認すると、ボクは新聞を鞄の中に片付ける。丁度そのタイミングで誰かが教室の扉を開けて入ってきた。そちらへと視線を向ける。

 

 

「皆さん、おはようございます。今日からまたよろしくお願いしますね」

 

 

 入ってきたのはカイザーだった。クラスメイト達と挨拶を交わしていく。

 

 

「おはようカイザー!またよろしくね!」

 

 

「おっはよー!そうそう、サマードリームトロフィー見てたよカイザー!凄かったね!……色々と」

 

 

「おはよう。私も見てたよ。本当に凄かった!……色々と」

 

 

「やめてください!私ももう思い出したくないんです!」

 

 

 まぁ案の定サマードリームトロフィーのことを弄られていた。カイザーはそのまま自分の席に荷物を置いてボクの方へと歩いてきた。

 

 

「おはようございますテンポイントさん。今日から新学期ですね」

 

 

「おはようさんカイザー。やな。心機一転、お互い頑張ろか」

 

 

「そうですね。テンポイントさんは復帰に向けて、私はひとまずウィンタードリームトロフィーですかね?」

 

 

 そこからこの後ある全校集会での理事長での話はなんになるか、午前中終わったらどうするか、そんな他愛もない話をする。

 カイザーと話をしていると、また扉を開けて誰かが入ってくる。ボクとカイザーはそちらへと視線を向ける。

 

 

「おっはよーみんな!新学期、またよろしくなー!」

 

 

「おはよ~みんな~」

 

 

 ボーイとグラスだった。2人もクラスメイトと挨拶を交わしながら自分の席、ボーイはボクの隣へと歩を進めてくる。

 自分の席に着くと、ボーイがこちらに挨拶をしてきた。

 

 

「おはようテンさん!カイザー!新学期、またよろしくな!」

 

 

「私も~。よろしくね~テンちゃ~ん、カイザーちゃ~ん」

 

 

「おはようさんボーイ、グラス。こちらこそよろしゅうな」

 

 

「おはようございますボーイさん、グラスさん。こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 そこからは、始業式の時間までみんなとの会話に華を咲かせる。

 

 

「せや。ボーイは次はどうするん?やっぱウィンタードリームトロフィーか?」

 

 

「うーん。そうだなぁ……。多分また中距離部門で出ると思う」

 

 

「私もまた中距離でしょうか?短距離は論外として、マイルも長距離もちょっと分が悪いので」

 

 

「ってことは、またカイザーと一緒に走れるのか!今度は負けねぇぜ?」

 

 

 ボーイはそう言って不敵に笑う。カイザーもそれに応えるように笑みを浮かべていた。

 

 

「はい。サマードリームトロフィーは展開のおかげで勝ちを拾えましたが、ウィンタードリームトロフィーは正真正銘私の実力で勝ってみせます!」

 

 

「へへ!俄然楽しみになって来たぜ!」

 

 

「お熱いことで。ボクも早いとこ復帰したいわ」

 

 

「まあまあ~テンちゃんは~焦らずじっくりと~だからね~?」

 

 

「分かっとるよ。無茶してまた怪我するんは勘弁やからな。グラスはどうするん?どのレースを目標にしとるんや?」

 

 

 ボクがそう尋ねると、グラスは困ったような笑みを浮かべて答えた。

 

 

「私は~有マ記念に直行かな~」

 

 

「ステップレースは使わねぇんだな?どうしてだ?」

 

 

「脚の調子~そんなに良くなくてね~。合宿でも満足な調整できなかったんだ~」

 

 

「グラスも大変やな……」

 

 

「テンちゃん程じゃないけどね~。まあ~テンちゃんに言ったように~焦らずじっくりと。その精神でいくつもりだよ~」

 

 

「頑張ってください、グラスさん!応援してます!」

 

 

「あ!オレもオレも!またドリームトロフィーで走る日を楽しみに待ってるぜ!」

 

 

「ボクも早いとこ復帰して、みんなとまた走れるようにならんとな!グラスも頑張りや!」

 

 

「みんなありがと~。でも~ドリームトロフィーに行っても~私は長距離部門にしか出なさそうだけどね~」

 

 

「えぇ!?オレ達と一緒に中距離で走ろうぜ!?」

 

 

「ボクも中距離で走ること確定なんかい」

 

 

「実際のとこ、テンポイントさんはどう考えてるんですか?ドリームトロフィーに移籍したら」

 

 

「ボクか?う~ん……」

 

 

 少し考えた後答える。

 

 

「中距離と長距離を行ったり来たりしてそうやな。ボクはどっちでも走れるし」

 

 

「クッソー!だったらオレもスタミナつけて長距離走れるようになるしかねぇ!一緒に頑張るぞ、カイザー!」

 

 

「あ、私も長距離で走らせること確定なんですね。まぁ元からそのつもりでしたけど」

 

 

「そうなん?」

 

 

「はい。挑戦する分にはタダなので。それに」

 

 

 カイザーは無邪気な笑みを浮かべて答える。

 

 

「私はグラスさんに菊花賞と春天で負けてましたし。ぶっ潰すためには長距離を走るのもいいかなって」

 

 

「お、おう。そうか。うん、何にせよカイザーも乗り気でオレとしては嬉しいぜ」

 

 

「カイザー。漏れとる漏れとる。闇の部分が漏れとるで」

 

 

「おっと、いけませんね。しっかりと抑えとかないと」

 

 

「……カイザーちゃん、サマードリームトロフィー以降変な方向に向かってな~い?」

 

 

「何言ってるんですかグラスさん。いつも通りですよいつも通り」

 

 

「いや、多分ヤバい方向に向かってると思うぞ。オレもグラスと同意見だ」

 

 

「そうですかねぇ?」

 

 

 カイザーはそう言って首を傾げる。ボクも口にこそ出さないがボーイ達と同意見だった。

 そんな話をしていると、チャイムが鳴る。ボク達はそれぞれの席に戻って先生が来るのを待った。しばらく待っていると、扉を開けて先生が入ってくる。号令の子の合図でクラスにいる全員が席を立って先生に向かって挨拶をした後、着席する。

 

 

「みなさんおはようございます。夏休み中、特に問題行動を起こした生徒がいなくて私もホッとしました。この後は体育館の方で始業式が行われますので、ホームルームの後みなさん体育館の方へと移動してくださいね。朝の連絡はこれで以上です」

 

 

 そう言って先生は退出する。クラスメイト達は各々体育館へと向かっていった。ボクも体育館へと向かう。

 始業式では理事長の話や先生方からの連絡事項などの話があった。途中、あくびをかみ殺していたボーイを肘で小突いて注意しながらも、ボクは話を聞いている。ただ、頭の中では別のことを考えていた。

 

 

(フォームの修正も大方終わっとる……。フィジカル的にも、これやったら年内には完全に戻るやろ。やから問題は、第4コーナーをいかにして曲がるか、やな)

 

 

 日経新春杯の光景がフラッシュバックして、思うように曲がることができず失速してしまう。それを改善するためにはどうしたらいいか。

 やはり一番単純な方法はトラウマを乗り越えることだろう。また折れるかもしれない、また同じように骨折したら今度こそ走れなくなるかもしれない。そんな不安があるからこそ第4コーナーで失速してしまう。なので、その元である恐怖を克服すればボクは完全に復活することができる。

 

 

(ま、そう易々といかんからこそ今こうして悩んでるんやけどな)

 

 

 そんな楽に克服できたらこんなに苦労はしていない。頭の中では分かっていても、身体は骨折する恐怖を覚えているのだ。だからこそ、克服することは簡単ではない。心の中で溜息を吐く。

 だが、そこまで不安視はしていない。いつかきっと乗り越えられる。ボクはそう信じているから。

 そんなことを考えていると、もう少しで始業式が終わるというところだった。ようやく解放される。そう思っているとたづなさんからのアナウンスが入る。

 

 

《それでは最後に、秋川理事長から大切なお知らせがございます。生徒のみなさんはそのままお待ちください》

 

 

 大切なお知らせ?一体なんだろうか?そう思っていると、秋川理事長が登壇して一礼をする。そのまま話始めた。

 

 

《清聴ッ!長話を聞かされて疲れているだろうが、もう少しの辛抱だ!私から大切なお知らせがある!》

 

 

 秋川理事長の言葉に、生徒のみんなは苦笑いを浮かべていた。確かにそうかもしれないが、そんなにハッキリ言うことはないだろう。多分みんな、同じことを思っているかもしれない。ただ、こういうところが秋川理事長が好かれている理由なのだとボクは思った。

 秋川理事長はそのまま続ける。

 

 

《実は年末に、とあるレースを開催することとなった!出走登録はまだまだ先の話だが、生徒諸君には出走することをじっくりと検討してもらうために今この場で発表することとなった!その名も……》

 

 

 秋川理事長の言葉とともに、プロジェクターを使用して画像が表示される。レース名が大々的に表示されていた。

 

 

《開催ッ!ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ!年末の大晦日の日に、このレースを開催することとなった!》

 

 

 生徒達の間にどよめきが起こった。戸惑っているのかもしれない。ボクとボーイは事前にトレーナー経由で知っていたためそこまで驚かなかったが。

 秋川理事長が説明を続ける。

 

 

《このレースの出走条件はトゥインクルシリーズに籍を置いているウマ娘のみ!逆にそれ以外の条件は不問だ!候補者が多かった場合はURAの厳正なる審査の下出走するウマ娘が選抜される!そして、このレースがどのようなものなのか?生徒諸君は疑問に思っているだろう》

 

 

 生徒の心を見透かしているように秋川理事長はそう告げる。そして、レース概要の説明を始めた。

 

 

《単純ッ!このレースの説明は非常に簡単だ!世界中のウマ娘を日本に招待して走るレース!それがジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップだ!開催は東京レース場、条件は芝2400mを予定している!そして!すでにアメリカ・イギリス・フランスの3ヶ国が参加することを表明している!無論ッ!出走に意欲的な国はまだある!》

 

 

 これはボクも初耳だ。思わず驚きの声が漏れる。隣のボーイはワクワクした表情を一瞬浮かべたが、すぐに自分には出走資格がないことを思い出して、落ち込んでいた。

 そのまま理事長は締めの挨拶に入った。

 

 

《このレースはお祭りのようなものだと思って気軽に参加してくれ!特に、海外のウマ娘達と鎬を削る良い機会だ!みんなの参加表明を待っているぞ!》

 

 

 それだけ告げて、秋川理事長は降壇した。その後たづなさんのアナウンスで解散となる。

 クラスで帰りのホームルームが終わった後、少し時間があったのでボーイ達と話す。ボーイはかなり悔しそうにしていた。

 

 

「秋川理事長の言ってたレーススゲェ面白そうだけどさぁ、オレ出走できねぇんだよ!あ~あ、オレもでたかったぜ~」

 

 

「仕方ありませんよ。私とボーイさんはドリームトロフィーリーグに移籍しちゃいましたし。一度ドリームトロフィーリーグに移籍したらもうトゥインクルシリーズには戻れませんからね」

 

 

「そうなんだよな~。この場で出走資格があるのはグラスとテンさんだけかぁ。2人はどうするんだ?」

 

 

 ボーイの言葉に、まずはグラスが反応した。

 

 

「私は~出ないかな~。有マから連戦は~私にはちょっとキツいからね~」

 

 

「ボクはまだ分からへんわ。もしかしたら、出走できるかもしれへんけど。そこはトレーナーと要相談、っちゅうとこやな」

 

 

「でもさ!やっぱ楽しそうだよな!海外のウマ娘ってどんな人達なんだろうな~。野良で走ったりしてくんねぇかな~」

 

 

 ボーイの言葉に、カイザーが答える。

 

 

「向こうの人達もこっちの芝に慣れなきゃですし、もしかしたら併走やってくれたりするんじゃないですか?海外の人達だけでやるかもしれませんけど」

 

 

「その可能性もあったか!あ、でもおハナさんが許してくれそうにねぇや……」

 

 

「どの道だったね~ボーイちゃ~ん」

 

 

「まあいいや。切り替えていくぜ!」

 

 

 そんな会話をしてボク達は別れる。ボクは練習へと向かった。




サポカ回したいけど我慢。
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