ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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珍しい組み合わせ回


第130話 友の為

 午前中の授業が終わってお昼休み。ボクは考え事をしながら1人でカフェテリアへと向かっていた。考え事とは、カイザー達のことである。

 今日もいつも通り、みんなで食事を取ろうとした時カイザーが申し訳なさそうに謝ってきたのを思い出す。

 

 

『すいません、実は用事がありまして。お昼をご一緒するのは難しそうです』

 

 

 これがカイザー1人だけだったらそんなこともあるだろうぐらいで済ませられるのだが、カイザー曰くボーイとグラスも連れてくるように言われていたらしい。一体誰からの用事かは分からないが、3人も必要だということはよほどの用事なのかもしれない。そう思った。

 そんなことがあってか、ボクは1人で食事を取ろうと思いカフェテリアへと足を運んでいる。お弁当があるので外で食べるのもいいかと考えたが、さすがに寒いので止めた。

 もう少しで目的地に着こうとした時、後ろから声を掛けられる。

 

 

「テンポイント様?珍しいですね。トウショウボーイ様達とは別行動でしょうか?」

 

 

「あれ?テンポイントさんじゃん。やっほー」

 

 

 声のした方に振り向くと、クインともう1人、シービーが立っていた。ボクも挨拶を交わす。

 

 

「よ、クインにシービー。ボーイ達はなんか用事があるんやと。やからボク1人で悲しく食事や」

 

 

「アハハ……。それは残念でしたね」

 

 

「ま、いつも一緒に食うとるしたまにはええと思うてるけどな」

 

 

「ねぇねぇ。だったらアタシたちと一緒に食べない?」

 

 

「シービー達と?ボクはかまへんけど」

 

 

「私も構いませんよ。でしたら、一緒にお食事を取りましょうか」

 

 

 偶然とはいえ、クイン達と一緒に食事を取ることになった。早速席を取りに行く。3人分の席を確保すると、ボクは2人に食事を取ってくるように促す。

 

 

「ボクはお弁当あるし、2人とも席の心配はせんでええで。ボクがここで見張っとくわ」

 

 

「それでしたら、お言葉に甘えさせていただきます。テンポイント様」

 

 

「よろしくね~テンポイントさ~ん」

 

 

 2人が取りに行っている間、ボクは席で帰ってくるのを待つ。程なくして2人は帰ってきたのを確認し、ボクはお弁当を取り出して机の上に置いた。お弁当を見たシービーは少し驚いたような表情をしている。

 

 

「へー。すごいお弁当だね。テンポイントさんが作ったの?」

 

 

「うん?ちゃうで。これはトレーナーが作ったもんや」

 

 

「ミスター神藤が?あの人料理できるんだね」

 

 

「えぇ。神藤様は手先が大変器用ですので」

 

 

「へー。中はどんな感じなの?」

 

 

 シービーは待ちきれないといった様子でボクのお弁当を見ている。ボクはすぐさま包みを解いてお弁当を広げる。相も変わらず、すごいお弁当だ。思わずお腹が鳴りそうになる。クインとシービーも、感嘆の声を漏らしていた。

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

 手を合わせて、食事を取り始める。どのおかずから手をつけようか迷っていた時、横から箸が伸びてきておかずを持っていかれる。箸が伸びてきた方を見ると、シービーが笑みを浮かべていた。

 

 

「テンポイントさん、一個貰うね」

 

 

「こら!シービー!はしたないでしょう!それに、取ってから言うのではなく取る前に言いなさい!」

 

 

「ええよクイン。そんなに怒らんでも。おかずの1つや2つぐらい」

 

 

「そういう問題ではありません!これは行儀として……ッ!」

 

 

「ゴメン、もう食べちゃった」

 

 

「シービー!」

 

 

 ボクのおかずを勝手に取っていったシービーをクインは叱っていた。その様子はまるで、親が子供を叱りつけるような、そんな姿に見えた。怒っているクインに対して、シービーは平謝りをしている。その姿に、ボクは思わず笑い声が漏れてしまった。

 

 

「……フフッ」

 

 

「?どうかされましたか?テンポイント様。何か面白いことでもあったのですか?」

 

 

「いや、何でもないで。怒られとるシービーがおもろかっただけ」

 

 

「えー?何それ。ちょっと趣味悪いんじゃない?」

 

 

 シービーはおかしそうにそう言った。ただ、それをクインが呆れた表情をしながらも叱る。

 

 

「元はといえば、怒られるようなことをしたあなたが悪いんでしょう」

 

 

「でもでも、テンポイントさんは気にしなくていいって言ってるよ?」

 

 

「ハァ……。全くあなたは……」

 

 

 そう言いながらも、クインは微笑まし気な視線をシービーに送っている。これが2人なりの距離感なのだろう。ボクも思わず笑みが零れる。

 食事を取っていると、ふと思い出したようにシービーがボクに尋ねてきた。

 

 

「そうだ。テンポイントさんはミスター神藤の唯一の担当ウマ娘なんだよね?」

 

 

「うん?そうやな。今んとこボク以外にはおらんで」

 

 

「あの人チームとかは持たないのかな?」

 

 

「う~ん……まだ難しいんじゃないでしょうか?時折忘れそうになりますが、神藤様はテンポイント様が初めての担当ですので」

 

 

「でもさ、そろそろチームを持ってもおかしくないんじゃないかな?トレーナーって万年人手不足って聞いてるし。勤務態度や評判もミスターなら問題ないだろうしね」

 

 

「それに、用務員の問題も改善しとるらしいからな。近々、チーム持つことになったりしてな!」

 

 

 そんな会話をしていると、クインがシービーに尋ねる。

 

 

「先程から尋ねようとは思っていたのですが……。その、ミスター神藤とは何でしょうか?シービー。神藤様のことを指しているのは分かるのですが。他のトレーナーにはつけておりませんでしたよね?」

 

 

「あ、それはボクも気になっとった」

 

 

 クインの言葉通りなら他のトレーナーにはつけずに、ボクのトレーナーだけにつけているらしい。純粋に気になる疑問だった。

 その質問にシービーはあっけらかんと答える。

 

 

「別に深い意味はないよ。ミスター神藤はミスター神藤さ。ただ、強いていうなら……ちょっと気になる相手、かな?」

 

 

 シービーの言葉に、クインは花が咲いたような笑顔を見せる。

 

 

「まぁ!それは良いことですね!あなたはトレーナーからのスカウトを断り続けてここまで来ましたが……ついに見つけたのですね!シービー!」

 

 

「……ま、トレーナーはチーム持ってへんけどな」

 

 

「うっ、そうでしたね……」

 

 

 ボクがそう言うと、クインはあからさまにしょげた。別に意地悪で言ったわけではないが、感じていたことがつい漏れてしまった。ボクは慌ててフォローを入れる。

 

 

「で、でも!これまでのこと考えたらトレーナーもチーム持つかもしれへんからな!まだ分からへんで!」

 

 

「そ、そうですよね!神藤様でしたら……ッ!」

 

 

「ま、あくまで気になるだけでトレーナーになってもらうかはまた別問題だけど」

 

 

「シービー!おまっ!」

 

 

 シービーの言葉にクインはまた落ち込んでしまった。当のシービーは舌を出していたずらっ子のような笑みを浮かべている。ただ、シービーはボソッと呟く。

 

 

「……ま、もう決めてるんだけどね」

 

 

 何を、と聞く前にシービーはクインに対して申し訳なさそうに謝る。

 

 

「ゴメンゴメン。でも、どうするかはちゃんと考えてるからさ。クインさんは心配しなくても大丈夫だよ」

 

 

「……ハァ、あなたはそういう子ですものね。それでも、1つだけ言わせてもらいます。……後悔はしないようにね?シービー」

 

 

「それこそ大丈夫だよクインさん。アタシは後悔しないように生きてるから」

 

 

 そこでこの話題は終わった。なんだかんだ、いい感じに終わった……気がする。その後は他愛もない話をして時間が過ぎていった。こうして、この2人とは話す機会があまりなかったので新鮮な気分だった。2人のことを深く知ることができて、少し嬉しくなった昼食だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はトレーナー室で時計を確認する。もう少しでお昼休みが終わりそうだという時間だった。俺は1つ伸びをして、休憩を取ることにする。

 たまには凝ったものでも飲もうと思い、コーヒー豆の準備を始めようとしたその時、インターフォンが鳴った。

 

 

「この時間に誰だ……?お昼休みも終わりだし、生徒ではなさそうだが」

 

 

 そう思いながらも、俺は鳴らした人物に対して入ってくるように促す。扉を開けて入ってきたのは、なんとクライムカイザーだった。驚いている俺をよそに、クライムカイザーは一礼をして部屋へと入ってくる。

 

 

「失礼します、神藤さん。今日はお願いがあってここに来ました」

 

 

「いや……それはいいんだが、もうすぐお昼休み終わるぞ?大丈夫か?」

 

 

「大丈夫です。手短に済ませますので」

 

 

 そう言うクライムカイザーから少し圧を感じた。余程重要な案件なのかもしれない。俺は手を止めてクライムカイザーの方を見る。

 俺は彼女に尋ねる。

 

 

「……それで?用件ってのはなんだ?クライムカイザー。只事じゃなさそうだが」

 

 

 しばしの無言。クライムカイザーは意を決したように俺の質問に答える。

 

 

「……テンポイントさんと、模擬レースをさせていただけないでしょうか?実戦形式で」

 

 

 返ってきたのは、身構えていたにしては普通の答えだった。思わず肩透かしを食らった気分になる。だが、雰囲気的にそれだけじゃないのだろう。俺は続けて彼女に質問する。

 

 

「……それは、お前とだけか?それとも、他の子も巻き込んでか?」

 

 

「勿論、私だけじゃありません。私の他に、ボーイさんとグラスさんは確定です。彼女達の許可も取ってあります。今後も、増えていくと思います」

 

 

 ……俺はこめかみを押さえながら、気になっていることを聞く。

 

 

「このこと、ハダルのトレーナーは知っているのか?」

 

 

「先程許可を貰いました。スピカは言うまでもなく、リギルも許可はもらえます。後は神藤さんの声でこの模擬レースは成立します」

 

 

「……リギルの許可が貰える根拠は?」

 

 

「ボーイさんが何としても許可を取ると言っていましたので。根拠はそれだけで十分です」

 

 

 クライムカイザーは強い意志を持った目で答えた。その様子を見ながら、俺は考える。

 ……この模擬レース、俺達側からすればかなりありがたい話だ。実戦に近い形で練習ができるのは勿論のこと、1人で走るよりも効率は格段に上がるだろう。二つ返事で了承したい提案だ。

 ここで疑問となるのは、何故クライムカイザーがこの話を持ち掛けてきたかだ。この模擬レース、俺達側にメリットはあるがクライムカイザー達にはほとんどメリットがない。テンポイントが第4コーナーを曲がれなくなっている現状、実戦形式で走ったところで彼女達には利はないだろう。

 トウショウボーイとグリーングラスはテンポイントの現状を知らないだろうが、クライムカイザーは知っているはずだ。それを承知の上で、クライムカイザーは何故この話を持ち掛けてきた?

 ……いや、考えなくても分かる。答えなんて、1つだ。

 

 

「……テンポイントのためか?」

 

 

 俺の言葉に、クライムカイザーは深く頷いた。合っているとばかりに。俺は嘆息する。

 ありがたい話であるのは確かだ。ただ、彼女達に利益がないのにここで頷いてしまってもいいのだろうか?そう考えると、素直に首を縦に振るわけにはいかなかった。

 そんな俺の考えを見透かすように、クライムカイザーは告げる。

 

 

「正直言って、私達にとって利益はないに等しいでしょう。第4コーナーで必ず失速するって分かっているのに、実戦形式で走ったところで意味はありませんから」

 

 

「……」

 

 

 俺はクライムカイザーの言葉を黙って聞く。

 

 

「利益がないのにそんな提案をするなんてバカバカしい。この話を聞いたら、普通の人だったらそう言うかもしれません。ですが」

 

 

 クライムカイザーは、宣言するように俺に告げる。

 

 

「バカで上等。親友が困っているんです。それを助けなきゃ、親友なんて名乗れません」

 

 

 その言葉を聞いて、俺は心が震えるのを感じる。そして、内心彼女達に感謝しながらテンポイントのことを思う。

 

 

(テンポイント……。お前の親友達は最高のウマ娘だよ……)

 

 

 俺は決意を固めてクライムカイザーを見る。

 

 

「さっきお前自身で言ったように、お前達に利益はないに等しい。それは、トウショウボーイ達も承知の上か?」

 

 

「はい。私から事情を話して、それでもテンポイントさんのためにと」

 

 

「そうか……」

 

 

 俺は天井を見上げる。少し逡巡した後、頭を下げてクライムカイザーにお願いする。

 

 

「頼む。テンポイントのために、力を貸してくれ。クライムカイザー」

 

 

 その言葉に、クライムカイザーは肯定の言葉を返した。

 

 

「勿論です。テンポイントさん復活のために、私達にも手助けさせてください」

 

 

 俺は顔を上げて彼女の顔を見る。笑みを浮かべていた。俺もつられて、笑みを浮かべる。

 そこから細かい打ち合わせは後日にしようと思ったのだが、クライムカイザーはそれを拒否した。なんでも、すでに午後の授業は休む旨を伝えてあるらしい。そのことに少し呆れたが、伝えてしまったものは仕方がないのであまり同じことはしないようにとだけ告げる。

 

 

「ひとまずいつからやるかだが……」

 

 

「神藤さんさえ差し支えなければ今日からでもやりましょう。少しでも早く復活するためです」

 

 

「本当に大丈夫か?練習場の予約とか」

 

 

「問題ありません。今日はハダルで予約を取ってある日ですから。ハダルのトレーナーに関しては脅す……お願いすれば問題ありません」

 

 

「お前今脅すって言わなかったか?」

 

 

「気のせいですよ。そうだ、この話はテンポイントさんには練習開始まで内緒にしておいてくださいね?」

 

 

「それはどうしてだ?」

 

 

 俺の言葉に、クライムカイザーはいたずらっ子のような笑みを浮かべて答える。

 

 

「私達を頼らなかった罰ですよ。それと、ビックリした表情を見たいじゃないですか」

 

 

「……なるほどな。まぁ分かったよ。そうしとく」

 

 

 その後も打ち合わせをして模擬レースのことを詰めていく。途中でトウショウボーイとグリーングラスも合流した。2人の話によると、無事に許可を取ることができたらしい。リギルの方は少し難航したらしいが、トウショウボーイが折れないと分かったから、加えてハイセイコーの口添えもあって許可を取ることができたらしい。今度ハイセイコーには何らかの形でお礼をしないといけないだろう。

 テンポイントのためにと、協力してくれる子達がいる。自分に利益がないと分かっていても。そのことに喜びと感謝を感じながら俺はクライムカイザー達と模擬レースのことを詰めていった。




チャンミはBグループの2位でした。あんまり育成してなかったから残当ですね。
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