ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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枠順を決める回


第134話 パーティと枠順

 年末の祭典、〈ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ〉に向けた練習の日々。時間が過ぎるのを早く感じた。ついこの前有マ記念があったと思えば、すぐに翌週のウィンタードリームトロフィーの開催日となる。

 クリスマス・イブの日に開催されたウィンタードリームトロフィー。ボーイとカイザー、そしてハイセイコー先輩とカブラヤオー先輩が中距離部門で出走した。ボクもグラスやみんなと一緒に応援に行ったのでよく覚えている。

 結果は、ボーイの4バ身差の圧勝劇。サマードリームトロフィーでカイザーに負けた雪辱を見事晴らす結果となった。

 

 

 

 

《やはり強い!これが天を駆けるとまで称されたウマ娘の本領だ!東京レース場ウィンタードリームトロフィー中距離部門2000m!トウショウボーイが後続を突き放す!これはもう決まった!完全に決まったトウショウボーイの一人旅!トウショウボーイが2着以下を4バ身差に突き放す圧勝劇だゴールイン!》

 

 

 

 

 中山レース場の歓声に応えるボーイの姿は今でも思い出せる。

 

 

『よっしゃー!みんなー!応援ありがとなー!』

 

 

 いつもの彼女らしい言葉。みんなで笑みを浮かべていたのを思い出す。その後ろで、カイザー達が悔しそうにしていたのは言うまでもないことだろう。

 そして迎えた今日。ウィンタードリームトロフィーが明けた次の日の夜。ボクはトレーナーとともにとドレスコードを着てあるパーティ会場へと足を運んでいた。今日この会場では〈ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ〉の開催を記念したパーティが催されており、出席は自由だということからボク達はこのパーティに参加していた。また、このパーティは出走メンバーが確定したから開催されているということもあり、レースに出走するであろう生徒もチラホラと見かける。全員がドレスコードを着ていた。テレビ局の関係者らしき人達もカメラを回していた。

 勿論、出席が自由だからこのパーティに来たわけじゃない。本当の理由は別にある。本当の目的は、ボク自身がレースに出走するからだ。ただ、ボクがレースに出走することは出走届を受け取った理事長とたづなさん、それを受け取ったURAの人達とボーイ達のようにボクの方から報せた一部を除いて知らない状況だ。ボクが出走すると知ったら、みんな驚くだろうか?ちょっとしたサプライズ気分にボクの気分は少し高揚していた。

 ボクはトレーナーと飲み物を飲みながら話す。

 

 

「うん?ホクトもおるやん。ホクトも出走するんやろうか?」

 

 

「まぁ、ここにいるってことは出走はほぼ確実だろうな。出席自由ではあるが、学園のほとんどの子は友達なんかとパーティをやっているか長期休みを利用して実家に帰っているかだ。それでもここにいるってことは……」

 

 

「出走する、って考えた方がええな」

 

 

 辺りを見渡すと、他にも学園の生徒とトレーナーが何人か見えた。おそらく、彼女達の中にも出走する子がいるのだろう。さすがに全員ではないだろうが、そう見た方が良さそうだ。

 

 

「色んな子がおるなぁ。あ、カネミノブもおるやん。っちゅうか、ホクトもカネミノブも有マの後やのにすごいなホンマ」

 

 

「出走するかはまだ分からないが、身体が頑丈なんだろうな」

 

 

 羨ましい限りである。ボクはそう考えながらも飲み物に手をつける。

 しばらくすると、ステージの方にテレビ局らしき人達に秋川理事長が登壇していた。それを受けてか、会場は静まり返る。しばらくすると、マイク越しに秋川理事長の挨拶が始まった。

 

 

《皆の者!パーティは楽しんでいるだろうか!》

 

 

 その言葉に周りの人達は無言で頷いたり拍手をしたりして反応していた。それを受けて秋川理事長は満足そうに頷いて続ける。

 

 

《満足ッ!皆が楽しんでいるようで私も嬉しいぞッ!さて、ここからは12月の31日、大晦日の日に開催を予定しているレース、〈ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ〉のことについて説明を交えながら出走するウマ娘達の紹介をしていこうと思う!まずはこのレースの説明からしていこう!》

 

 

 その言葉に続けて、理事長はレースの説明をしていく。おそらくはこの会場にいない、テレビでこのパーティの様子を見ている人達に向けて説明しているのだろう。トレーナー曰く、このパーティは生放送されているらしい。

 レースの説明が終わったのか、秋川理事長は降壇する。次に、テレビ局のアナウンサーらしき人物にマイクが代わった。

 

 

《それでは!ここからは〈ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ〉に出走するウマ娘達の紹介をしていこうと思います!まずは海外のウマ娘の紹介から入りましょう!まず最初に紹介しますのは……アメリカから来たウマ娘!デッドスペシメンさんです!》

 

 

「『ハーイ!みんなパーティ楽しんでるかなー?私は勿論楽しんでるよー!』」

 

 

 アナウンサーの紹介とともに、デッドがステージの上へと登壇した。拍手を受けながらデッドは会場の人達に手を振っている。

 そのまま、アナウンサーの人は続々と海外のウマ娘の紹介をしていった。

 

 

《……それでは次に紹介しますのはフランスから来日したウマ娘!オブリガシオンさんです!》

 

 

「『初めまして、日本の方々。今宵はこのような素敵な場を開いてくださったこと、感謝します』」

 

 

 オブリガシオンはそう言って深々とお辞儀をした。それを茶化すようにデッドが何か言っているが、オブリガシオンはデッドを見た瞬間苦々し気な表情をして無視をした。

 

 

《……最後の紹介となります6人目!イギリス期待の〈超新星〉バルニフィカスさんです!》

 

 

「『ハーイ日本の人達。僕がバルニフィカスだよ。会場のみんなも、テレビの前のみんなも僕の名前を覚えて帰ってね?』」

 

 

 バルニフィカスはそう言ってお辞儀をする。なんというか、ジョージの言っていたことは当たらずとも遠からずと言った感じの子だ。

 ただ、すごく自信に溢れているというのはここからでも分かる。現に今も、会場にいる多くの人から視線を向けられているにもかかわらず涼しい顔をしている。もっとも、それは現在登壇している海外のウマ娘全員に言えることだが。

 アナウンサーが続いて日本から出走するウマ娘の紹介に入った。

 

 

《それでは続きまして日本から出走するウマ娘の紹介に入ります!まずはトゥインクルシリーズを最前線で駆け抜けるTTG世代の1人!ホクトボーイさんです!》

 

 

 アナウンサーの紹介を受けて、ホクトはステージへと登壇する。そのまま一礼すると海外の子達と向かい合うような位置に立った。

 そのまま続々と紹介されていく。会場の人達の会話がボクに聞こえてきた。

 

 

「やっぱり、日本の総大将になるのはホクトボーイだな」

 

 

「有マ記念を勝ったカネミノブもいるが、総合的に見ればホクトボーイが上だろう」

 

 

「でも、心配だよな……。日本は海外に比べて遅れてるって言われてるし、いくらこっちのホームといえども……」

 

 

「勝てないにしても、一矢報いるぐらいはしてほしいよな」

 

 

 その会話を聞いて少し怒りを覚えたがすぐに鎮める。ここでボクが怒っても仕方がない。深呼吸を1つして心を落ち着かせた。

 今紹介されたウマ娘で9人目。今回は最大16人での出走となるので、次で最後だ。会場を緊張が支配している。最後に紹介される子は一体どんな子だろうか?そう思っているのだろう。そう考えたら、少しだけ笑みが零れそうになった。

 アナウンサーが最後のウマ娘を紹介しようとする。

 

 

《……それでは日本から出走する10人目!最後のウマ娘の紹介となります!10人目は……ッ!え!?ちょ、ちょっと!これは本当なんですか!?……え?嘘じゃないしドッキリでもない?こっちも驚いている!?》

 

 

 そのアナウンサーの反応に、隣にいるトレーナー共々噴き出しそうになった。ステージに登壇している子達もみんな不思議そうな表情を浮かべている。もっとも、デッドは10人目の察しがついているのか楽しそうな笑みを浮かべていた。

 ボクは噴き出しそうになるのをしっかりと我慢して表情を引き締める。今も驚きが隠せない様子でいるアナウンサーが少し上ずった声で10人目のウマ娘の紹介を始めた。

 

 

《し、失礼しました!それでは10人目のウマ娘の紹介に入ります!日本から出走する10人目のウマ娘は……テンポイントさんです!》

 

 

 その言葉が響いた瞬間、会場が一気にざわついた。どよめきが広がっている。ボクはそれを無視してステージへと歩を進めた。

 道中、様々な声が聞こえてくる。

 

 

「嘘だろ!?テンポイント!?」

 

 

「リハビリしてるって聞いてたけど……もう問題ないのか?」

 

 

「てか、復帰後初のレースがこれかよ!?いくら勝ち負けが関係ないレースとはいえどうなんだ!?」

 

 

 そんな声が聞こえてきた。ただ、ボクは気にせずにステージへと登壇する。

 ボクがステージに登壇した時、出走する子達の反応は様々だった。驚いている子もいれば、心配そうに見る子もいる。そんな中、海外側からデッドが拍手をしながらボクに近づいてきた。

 

 

「『ハハッ!やはり私の思った通り、君達は出走してくると思ったよ、テンポイント!』」

 

 

「『それはどうも。予想通りにいって満足かい?』」

 

 

 デッドの言葉に、ボクは英語で返す。

 

 

「『勿論さ!君と走るのが今から待ちきれないよ!』」

 

 

 それだけ告げて、デッドは元の位置に戻った。ボクも日本側の方へ立つ。隣にいるホクトがボクに話しかけてきた。

 

 

「……ハッ。お前もこのレースに出走するとはな」

 

 

「ボクも同じ気持ちやで。有マの疲れは大丈夫なんか?」

 

 

 ボクの言葉に、ホクトは鼻を鳴らして答える。

 

 

「お前に心配されるほどじゃねぇ。問題なく調整できる。そして……今度こそてめぇに勝ってやる。怪我明けだからって容赦はしねぇ」

 

 

「望むところや。受けて立ったる」

 

 

 お互いに宣戦布告をする。

 その後はアナウンサーから出走する子達の戦績が告げられて、そのまま枠順を決めるための抽選が始まった。この枠順を引く順番もランダムで決めるらしい。ボクは少し緊張しつつも呼ばれるのを待つ。

 

 

《それでは枠順を決める抽選を始めましょう!最初に引くのは……デッドスペシメンさんです!》

 

 

「『私が一番最初?これは幸運だね!』」

 

 

 そう言いながらデッドは楽しそうにくじを引く。書かれていた番号は……。

 

 

《3枠5番!デッドスペシメンさんは3枠5番となります!》

 

 

 狙い通りなのかは分からないが、デッドは上機嫌そうに戻っていった。そのまま続々と名前が呼ばれていく。

 丁度半分といったあたりで、ボクの名前が呼ばれた。

 

 

《それでは次は……テンポイントさん!どうぞ!》

 

 

 ボクはアナウンサーに言われるままくじを引く。ボクの枠順は……。1枠1番だった。

 

 

《テンポイントさんは1枠1番!1枠1番です!》

 

 

 ボクは軽くお辞儀をして元の位置に戻る。そのまま他の子達がくじを引いていく中、ボクはこの枠順のことを考えていた。

 

 

(日経新春杯の時とおんなじやな……)

 

 

 骨折をした日経新春杯も、今回と同じ1枠1番だった。だからといって何かあるわけではないのだが。

 枠順の抽選も終わり、ステージに上がっていた子達はみんな降壇する。ボクもそれに倣うように降壇した。

 トレーナーのところへと戻ろうとした際中、後ろから声を掛けられる。

 

 

「『ふ~ん。あなたがテンポイントなんだぁ』」

 

 

 日本語ではない。英語ではあるが、デッドとは少し違う発音。ボクは声の主の方へと振り向く。そこに立っていたのは、藍色の髪をアンダーツインテールにしたウマ娘、バルニフィカスだった。少し疑問に思いながらもボクはバルニフィカスに尋ねる。

 

 

「『確かにそうだけど……。ボクに何か?』」

 

 

「『べっつに~?でも、あなた日本では大人気なんだってね?』」

 

 

「『らしいね。ありがたい限りだよ』」

 

 

「『……なるほどぉ。確かに人気ありそう~』」

 

 

 一体何の用事があってボクに話しかけてきたのだろうか?そう思っていると、バルニフィカスがボクに向かって指を突きつけてきた。そのまま宣言する。

 

 

「『あなたのファンを、全部僕のものにしてあげるよ。レースで勝って……ね』」

 

 

 ……成程。宣戦布告というわけか。ならばと、こちらも答えるように宣言する。彼女、バルニフィカスを睨みながら。

 

 

「『やってみろ。ボクの影を踏ませてやるよ』」

 

 

「『……へ~?随分な自信だねぇ。ま、いいけど』」

 

 

 ボクの宣戦布告を、バルニフィカスは軽く受け流してどこかへと去っていった。ボクは溜息を吐いてトレーナーのもとへと戻る。

 開口一番、トレーナーは真面目な表情でボクに告げる。

 

 

「これで、デッドに続いて2人目だな。宣戦布告をされたの」

 

 

「ホクトにも宣戦布告されたで。モテモテやな、ボク」

 

 

「自分で言うことか?実際その通りだけどよ」

 

 

 トレーナーは苦笑いしながらそう言った。ボクは笑みを浮かべる。その後はパーティの終わりまでトレーナーと一緒に過ごしていた。

 年末の祭典、〈ジャパン・ユニバーサル・レーシング・カップ〉まで、残り僅か。




ぼっち・ざ・ろっくいい感じにアニオリが入ってて最高に面白い。
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