ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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いつものメンバーwithシービークイン


第15話 シービークイン

「オヨヨ~、メイクデビュー負けちゃったよ~。テンちゃんカイザーちゃん慰めて~」

 

 

「おぉよしよし、残念やったなぁグラス」

 

 

「大丈夫です!私も最初のデビュー戦は負けたので!次勝てばいいんですよ!あっやばい自分で言っててちょっと悲しくなってきました……」

 

 

 昼のカフェテリア、いつものメンバーでご飯を食べようとしていた時グラスがこちらにわざとらしい口調で慰めてくれとボクとカイザーの二人に言ってきた。聞くところによると先日行われたメイクデビューで負けたかららしい。ちなみに1着はボーイの奴だ。別に落ち込んでいるような雰囲気は感じられなかったがボクは言われるままにグラスを慰める。

 今現在この場にボーイはいない。まあいたらグラスは慰めてくれなど言わないだろう。ボーイがいない理由は1人誘いたい人物がいるからとボクらとは別行動をとったからだ。ボクらはその人物は知らないがどうやらメイクデビューの後で仲良くなったらしい。一体どのような人物なのだろうか?カイザーに聞いてみる。

 

 

「なぁカイザー。ボーイが連れてくる子ってどんな子やと思う?」

 

 

「う~ん、ボーイさんって誰とでも仲良くなりますからちょっと想像つかないですね。少なくとも悪い人ではないと思いますけど」

 

 

 まあ確かにそうだろう。次はメイクデビューを一緒に走っていたということで心当たりはないかとグラスに聞いてみた。しかしこちらはからかうような笑みを浮かべて

 

 

「フッフッフ~、さぁ誰だろうね~?」

 

 

と答えるだけであった。多分グラスは誰が来るのか想像ついているのだろう。しかしボクらが知らないままにしておきたいのか話してはくれないようだ。

 そうしてカフェテリアの席を取り少し待っているとボーイがその人物を連れてやってきた。黒い髪をストレートに腰まで伸ばしており、つり目で少し気の強そうな印象を受ける。身長はボクと同じかやや低いくらいだ。だが少なくともボクは今まで一度も見たいことがない人物だ。カイザーと顔を見合わせるとどうやら彼女も知らない人物らしくお互いに首をかしげる。

 見たことない人物にボクら2人が戸惑っているとボーイが口を開く。

 

 

「待たせたなみんな!紹介するぜ、この子はシービークイン!この前のメイクデビューで仲良くなったんだけどさ、ご飯まだだからって言うからせっかくだしみんなと食おうぜ!って思って誘ったんだ!」

 

 

 トウショウボーイのその言葉にシービークインと呼ばれた子が遠慮がちに前に出てきてボクらに自己紹介をする。

 

 

「は、初めまして、シービークインと申します。きょ、今日はこのような場に招待していただき、真にありがとうございます」

 

 

 なんというかガチガチに緊張している。ただでさえ知らない人たちがいる場所なのにその場にいる自分以外は知り合いかつ友達なのだ。アウェーなんてものじゃない。同じ立場なら耐えられない。

 すると緊張をほぐすようにボーイがボクたちの説明をする。

 

 

「大丈夫だってクイン!ここに来る前に説明したけどみんないい奴だからさ!きっとクインもすぐに仲良くなれるって!」

 

 

「ちなみにですけどなんて説明したんですか?」

 

 

 気になったのかカイザーが質問する。するとボーイは元気よく答える。

 

 

「背が高くてのんびりした奴がグラス!人のことよく見ているいい奴!黒いボブカットがカイザー!こっちが落ち込んでいる時はアドバイスをくれるいい奴!金髪タレ目で気品があるのがテンさん!慰め上手ないい奴!」

 

 

 まあ内容が薄い気がするけど一気に詰め込んでも混乱するだけだからこれだけ端的な方がいいのかもしれない。全ていい奴で締めているのは正直どうかと思うが。

 ボーイからの説明があったところで、シービークインを安心させるために軽く自己紹介をする。まずはボクからだ。

 

 

「さて、今ボーイから言われた金髪タレ目のいい奴テンポイントや。よろしゅうな。好きに呼んでもろうて構わんで」

 

 

「は、はい。テンポイント様」

 

 

 次にグラスが自己紹介をする。

 

 

「はいは~い、背が高くてのんびりしたいい奴グリーングラスだよ~。メイクデビューでちょこ~っと話したから覚えてるかな~?よろしくね~」

 

 

「お、覚えております。その節はとんだご迷惑をおかけしましたグリーングラス様」

 

 

 一体メイクデビューで何があったのか。とても気になるが質問する前に最後、カイザーが自己紹介をする。

 

 

「え~と、黒いボブカットのいい奴らしいクライムカイザーです。これからよろしくお願いしますね、クインさん」

 

 

「よ、よろしくお願いしますクライムカイザー様」

 

 

 一通り自己紹介が終わったところで、ボクらは昼食を取るために料理が置かれているテーブルへと向かう。全員が料理を取り終わり席に着いたタイミングで親睦を深めるためにまずはクインと会話をすることにした。

 まあ無難なことを尋ねてみる。

 

 

「クインってボーイとはどこで知り合ったん?メイクデビュー以前から知り合ってたりするんか?」

 

 

「い、いえトウショウボーイ様とは正真正銘メイクデビューが初対面です。それまで面識はありませんでした」

 

 

 どうやらグラスが知り合ったらしいメイクデビューの時がボーイ・クインの2人の初顔合わせらしい。そんなに日数経っていないのにボクらのとこに連れてくるとはボーイはよほどクインが気に入っているらしい。結構珍しい気がする。

 そこから好きなものの話、趣味の話、所属しているチームの話などを話しているとクインの緊張も解けてきたのかぎこちない笑顔がなくなってきた。ちなみにクインは女性の個人トレーナーと契約しているらしい。

 場が盛り上がってきたところでグラスがクインにからかうような口調で話し始めた。

 

 

「いや~でもあの時は面白かったね~。クインちゃんまさかあんなに慌てるなんて~」

 

 

「あの時?」「あの時って何ですか?」

 

 

 ボクとカイザーは首をかしげる。しかしクインには心当たりがあるのか顔を真っ赤にして慌て始めた。

 

 

「あ、あの時のことはもうおやめください!本当に恥ずかしかったんですから!」

 

 

 あの時、というのはもしかして先程クインが言っていたメイクデビューでの話だろうか?先程質問しそびれていたので非常に気になっていたことだ。

 ボクとカイザーはボーイに同じような質問をする。

 

 

「メイクデビューで何があったんや?」

 

 

「先程クインさんが言っていた迷惑って何のことなんですか?ボーイさん」

 

 

「んあ?あ~多分あのことかな?レース後のことなんだけどよ」

 

 

 必死に止めようとしているクインには少し悪いが、こちらも気になるので当時のことをボーイが語り始めるのを止めなかった。

 

 

「いやぁ、オレも驚いたぜ。レースが終わった後急に話しかけてきたんだよ。確か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レースが終わってクールダウンしているとオレのもとに見知らぬ子がやってきた。一体誰だろうか?と思っているとすごく興奮気味に話しかけてきたのを覚えている。

 

 

『あ、あの!あなたの走りに私感動いたしました!是非、お名前を教えてはいただけないでしょうか!?』

 

 

『オレの名前か?オレはトウショウボーイ!チーム・リギルの次期エース、トウショウボーイだ!』

 

 

 オレは声高にそう言った。しかしグラスが寄ってきて余計な一言を言う。

 

 

『まあ次期エースの後ろに予定が付くけどね~』

 

 

『グラス!余計なことは言わんでいい!』

 

 

 オレはそう言ったが、どうやら彼女には聞こえていなかったらしい。彼女は恍惚とした表情で

 

 

『トウショウボーイ様……』

 

 

と言っていた。一体どうしたのだろうか?というか彼女は誰だ?と思っていると我に返ったのかオレにまた興奮気味に近づいて自己紹介をしてきた。

 

 

『私、シービークインと申します!よ、よろしければこれから仲良くしてくださると……!』

 

 

 しかし、自己紹介をしている途中彼女は突如としてバランスを崩した。おそらくレースの疲れが今出たのだろう。オレはとっさに彼女を抱きかかえた。そして声を掛ける。

 

 

『っとと!?大丈夫か、クイン?』

 

 

 グラスも心配そうな声を掛ける。

 

 

『レースの疲れが出たのかな~?ひとまずどこか休憩できるとこ行こうか~?』

 

 

 しかし、シービークインにオレたちの声は聞こえていないのか完全に固まっている。どうしたのだろうか?そう思った瞬間、彼女は一気に顔を赤くさせて慌て始めた。

 

 

『あ、ああああの!私大変なご無礼を!』

 

 

 ひとまずオレは落ち着かせるために抱きかかえる態勢を維持したまま話しかける。

 

 

『落ち着けって!別に大丈夫だから!それよか顔も赤いぞ?大丈夫か?』

 

 

『わわわ、私はだだだ、大丈夫ですので!なので離していただけると……』

 

 

 彼女はこう言っているが、オレは心配だった。なので彼女に提案した。

 

 

『う~んでも今にも倒れそうだったし顔も赤いから何かあるかもしれないし、このまま医務室行くか?』

 

 

 オレの言葉にグラスは同意する。

 

 

『そうだね~。そのまま医務室連れていこうか~』

 

 

と言った瞬間、クインはすぐにオレの手の中から離れる。そしてすごい慌てた口調で話し始める。

 

 

『本当に大丈夫ですので!ありがとうございました!それでは失礼しましたぁぁぁぁぁ!』

 

 

……っと言って走り去っていった。その場にはオレとグラスが取り残される。オレはグラスに質問する。

 

 

『……なぁ、何があったんだアレ?さっぱり意味が分からねぇんだけど』

 

 

 しかしグラスはこちらを見て困ったような笑顔を浮かべて

 

 

『う~ん、なんだろうね~』

 

 

と、言うだけである。本当に何だったんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ってなことがあったんだよ」

 

 

 ボーイはその当時のことを覚えている限りで説明してくれた。クインはとても恥ずかしそうにしている。

 ボクは口を開く。

 

 

「そんなことあったんか。現場で見てみたかったわソレ」

 

 

 その時は自主練をしていたのでレースを見に行くことはできなかった。まあ敵情視察でトレーナーが観戦に行ったらしく、ビデオも撮ってあると言っていたので後で見る予定なのだが。

 クインは顔を真っ赤にしてボーイに向かって抗議の声を上げる。

 

 

「なんで言ってしまうんですか!?あの時のことはもう忘れてしまいたいのに!」

 

 

「いや、だって本当に何のことか分からなかったからさ。みんなに聞けばなんでクインが逃げたのか分かるかな~って思って」

 

 

 ボーイの弁明を聞いてもなおクインは抗議の声を上げ続ける。それをボーイが必死に宥めている。ボクらはその光景を見つめている。

 グラスが小さな声でこちらに話しかけてきた。

 

 

「コレってあれに見えるよね~。初々しい恋人みたいな会話だよね~」

 

 

「まあそれにしか見えんな。見てて微笑ましいわ」

 

 

「でも、ボーイさんは気づいていないっぽいですよねコレ」

 

 

「そうやな」「そうだね~」

 

 

 おそらくだがボーイは本当になんでクインが逃げたのか分からないのだろう。ボクらは今の話を聞いて大体察しがついた。単純に恥ずかしさからだろう。仲良くしたいと思って話しかけに言ったら抱きかかえられた挙句優しい言葉をかけてくれたのだ。普通だったら恥ずかしくてその場から離れたくもなるだろう。ボーイはその辺は普通にお礼を言って終わるだけなので分からないのかもしれないが。

 とりあえずボーイにやんわりとこれ以上の追及はやめた方がいいことを告げる。

 

 

「まあ落ち着けやボーイ。クインにもなんか事情があったかもしれへんやろ?あまり深く突っ込むのは野暮ってもんや。その辺にしとき」

 

 

 ボーイはその言葉にあまり納得はしていない様子だったが、これ以上クインを怒らせたくないと思ったのか

 

 

「う~んまあ分かった……。ごめんな?クイン」

 

 

クインに謝った。するとクインはオロオロした後、ボーイに謝る。

 

 

「い、いえ。私こそ少し言いすぎてしまいました……。でもどうか嫌いにならないでいただけると……」

 

 

 クインの心配そうな声にボーイは笑顔で答える。

 

 

「大丈夫だ!こんくらいで嫌いになったりしねーって!元々オレが悪いんだし、誰だって言いたくないことはあるもんな!オレも謝ってクインも謝った!だからこの話はこれで終わりだ!これからもよろしくな、クイン!」

 

 

「トウショウボーイ様……!」

 

 

 ボーイの言葉にクインは崇めるようにボーイを見ている。おそらく彼女の言葉に感動しているのだろう。自分でも言っている通り大元の原因はボーイ自身なのだが。まあそこを突っ込むのはそれこそ野暮なので言わないが。

 グラスが口を開く。

 

 

「まあ~これで一件落着、なのかな~?」

 

 

「まあ本人たちがよさそうやし、ええんちゃう?」

 

 

「アハハ、そうですね。仲がいいのが一番ですから」

 

 

 その後も話は弾み、ボクたちはご飯を食べ終わって次の授業へと向かっていった。




困った時はカフェテリアに頼りがち。
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