ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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初めてまともにレースを書いた気がする。


第18話 開戦!皐月賞

 例年と異なり1週間遅れで開催されることとなった皐月賞。ファンファーレの音が東京レース場に響き渡る。出走する優駿たちが続々と入場してくる。

 

 

 

 

《様々な事情により本来の予定より1週間遅れで開催されることとなりました、クラシック最初の冠皐月賞。最も速いウマ娘が勝つと言われるこのレースを制するのはどのウマ娘か?今ウマ娘たちが続々と東京レース場のターフへと姿を現します。まず出てきたのは1枠1番メジロサガミ》

 

 

《前走のスプリングステークスはテンポイントの2着ですからね。5番人気ではありますが期待が持てます》

 

 

 

 

 そのままウマ娘たちの紹介が続き、ターフにトウショウボーイの姿が現れた。その瞬間歓声が沸き上がる。

 

 

 

 

《続いて入場してきたのは3枠5番トウショウボーイ。ここまで3戦3勝、そのどれもが強い勝ち方をしており本レースの大本命と言っても差し支えないでしょう。評価は少し不満が残るか?2番人気であります》

 

 

《非常に落ち着いていますね。今日は一体どのようなレースを見せてくれるのか非常に楽しみです》

 

 

 

 

 そのままトウショウボーイは観客席に向けてアピールをする。

 

 

「よっしゃあ!今日もオレがぶっちぎってやるぜ!」

 

 

 着物の右肩だけ脱いだように出し、胸にはサラシを巻いた弓手を思わせる勝負服を身に纏い手を振ってアピールしながらゲートへと入っていった。

 

 

 

 

《6枠11番クライムカイザー。前走の弥生賞ではボールドシンボリに雪辱を晴らし見事優勝。本レースの3番人気。その脚で今日はどのようなレースを見せてくれるのか?》

 

 

 

 

 

 皇帝や軍人を思わせるような黒を基調とした勝負服。下はスカートであり一見ミスマッチのように見えるがそれが彼女の愛らしさをより際立たせているのかもしれない。観客席に向かって一礼しゲートへと向かう。

 

 

 

 

《そして!ついに姿を現しました、今回の皐月賞の大本命!7枠12番テンポイントの入場です!……が、なにやら落ち着かない様子ですね?顔には疲労の色が見えています》

 

 

《パドックでもあまり調子が良さそうではありませんでしたからね。果たして大丈夫なのでしょうか?》

 

 

 

 

 テンポイントの内心は穏やかではなかった。元々順延はしないだろうと踏んで先週キツめの調整をしたというのに結果として皐月賞は延期となってしまった。疲労が残るということから軽めの調整しか行うことができず、開催すら危ぶまれていた状況では慎重にならざるを得ない。結果として満足のいく調整ができなかったのである。心の中でテンポイントは愚痴る。

 

 

(当たり前やろ!こちとら予定通り行われると思うて調整してたんやぞ!?それが延期なんかしおって!大丈夫かやと?んなわけないやろ!シバいたろか!?)

 

 

 しかし、実況や解説に怒っても仕方がないと思ったのか一礼だけしてゲートへと入る。そして最後に入場してきたウマ娘もゲートへと入り、出走の準備が整う。

 

 

 

 

《さぁ各ウマ娘ゲートへと入りました。レースを制するのはどのウマ娘になるか?クラシックレースの出発点皐月賞が今……スタートです!》

 

 

 

 

 ゲートが開く。それと同時にすべてのウマ娘が一斉にスタートを切る。今皐月賞が幕を開けた。

 

 

 

 

《今スタートしました皐月賞!好スタートを切りました8番ボールドシンボリ。内にはトウショウボーイ、外にボールドシンボリがつく形となっております。外からはテンポイントが早々に3番手につけています。トウショウボーイは先頭争いには加わらない様子か?3番手集団で争う形。第2コーナーを曲がって向こう正面へといきます、先頭はボールドシンボリ。2番手はユザワジョウ。3番手の位置にテンポイント。その外にクリアロハ。内ラチ沿いにトウショウボーイがつけています》

 

 

 

 

 まず先頭を取ったのは逃げウマ娘ボールドシンボリ。テンポイントは3番手につくことができた。しかしここで彼女にとって計算外のことが起きていた。元々トレーナーと決めたのはトウショウボーイを徹底的にマークするということ。だが、あまりにもスタートダッシュがよすぎたためかトウショウボーイよりも前につけてしまったのである。このことにテンポイントは焦り、どうしようかと迷う。

 

 

(前につけたんはええけど、ボーイの奴は前におらん!どうする?どうするんが正解なんや?)

 

 

 このままのペースを維持すればいいかもしれないがそうなった場合トウショウボーイをマークする作戦は破綻する。どうするべきか、何をするのが正解なのか。テンポイントはその答えを必死に探す。

 悩んだ末にテンポイントが出した結論は下がること。トウショウボーイをマークする作戦を継続することを決めた。そのため少し抑え気味に走る。

 

 

 

 

《向こう正面へと入って第3コーナーの坂へと入っていきます。4バ身のリードを取る先頭のボールドシンボリ。2番手にユザワジョウ。その後ろ3番手はクリアロハ。4番手は外から上がってきましたエリモファーザー。5番手トウショウボーイ控えております。残り1200mを切りました!》

 

 

 

 

 現在テンポイントは9番手から10番手の位置につけている。少し下がりすぎたかもしれないがそのおかげかトウショウボーイの姿を確認するのは容易だった。トウショウボーイの姿を見続ける。

 

 

(確かに体調は万全やないかもしれん。でもやからって負ける気はさらさらないで、ボーイ!)

 

 

 その思いを胸に勝負は第3コーナーから第4コーナーへと移り変わる。トウショウボーイは依然として6番手の内を走る形。クライムカイザーはテンポイントの4つほど後ろにつけて機会を窺っている。

 

 

 

 

《3コーナーを下って残り1000mを切りました。先頭はボールドシンボリ5バ身のリード!2番手ユザワジョウ3番手と4番手の位置でエリモファーザーとクリアロハが並んでいます!その後ろ6番手の位置でトウショウボーイとカミノリュウオーが中団につけています!残り800を切りました!トウショウボーイの後方にはテンポイントの姿もあります!中団につけトウショウボーイをマークする形を取っております!》

 

 

 

 

 そろそろ大欅を超えそうということでテンポイントは先頭との差を詰めるためにペースを上げようとする。しかしその時、クライムカイザーがテンポイントに並ぶように上がってきたのだ。クライムカイザーが前に出た影響でコースを塞がれてしまい、大外を回る以外の選択肢が無くなってしまう。テンポイントは一人愚痴る。

 

 

(ホンマにやらしいコース取りしてくるわ!仕方あらへん、大外回る!)

 

 

 テンポイントがコース取りに苦戦しているところ、トウショウボーイはやや外目を余裕といった感じで回っていく。勝負は最後の直線へと入る。その瞬間テンポイントに悪寒が走った。原因は分からない。ただ何か嫌な予感がする。そういった感覚がテンポイントを襲った。

 

 

(なんや……?なんか嫌な予感がする……)

 

 

 その悪寒の正体は分からないまま、勝負は最後の直線へと持ち込まれた。

 

 

 

 

《第4コーナー回って最後の直線へと入りました!トウショウボーイとテンポイントは外を回っていきます、先頭は依然としてボールドシンボリ!中からトウカンタケシバが突っ込んできた!ボールドシンボリとトウカンタケシバ!そしてクリアロハの激しい争い!その外からトウショウボーイとテンポイントが迫ってきた!先頭は依然としてボールドシンボリしかしその差はわずかしかありません!内からはトウカンタケシバ外からはクリアロハが追い込んできた!しかしここでトウショウボーイだ、トウショウボーイが先頭に躍り出た!トウショウボーイが先頭を走りますテンポイントはまだ4番手の位置だ果たして間に合うのか!?》

 

 

 

 

 第4コーナーの大外を回ってテンポイントは先頭に立つためにペースを上げる。そして残り200mを切ったあたりだろうか?トウショウボーイが凄まじい加速を見せた。その瞬間テンポイントは自身を襲った悪寒の正体を理解する。

 

 

(なんやあの速さ……!トレーナーに見せてもろた映像よりも全然速いやんけ……!)

 

 

 速い、まるで別次元のような速さだ。追いつくどころかどんどん離されていく。そのスピードがのったままトウショウボーイは先頭に立ったかと思うと後続を置き去りにする速さで駆けていく。テンポイントも他のウマ娘と同じように必死になって追走するがいっこうに差が縮まる気配がない。その時テンポイントの脳裏にある2文字が浮かんだ。敗北、その2文字が。

 

 

(負ける……?ボクが……?嫌や!そんなこと……そんなこと……!)

 

 

「許されてたまるかぁぁぁぁぁ!」

 

 

 思わずテンポイントは絶叫した。しかし、トウショウボーイとの差は無情にも開いていく。2番手に躍り出たと思った時、すでにトウショウボーイはゴール板を駆け抜けていた。

 

 

 

 

《今トウショウボーイがゴールイン!2着との差は5バ身差!クラシック最初の冠を手にしたのはトウショウボーイです!これで4戦4勝!大楽勝で皐月賞を制しました!その走りはまさに天を翔けるがごとく!飛んでいるとすら錯覚するような走りを見せてくれましたトウショウボーイ!勝時計は2分1秒6!》

 

 

《すごい走りでしたね。次の走りが非常に楽しみなウマ娘です》

 

 

《2着はテンポイント、3着はトウカンタケシバとなりました。クラシック3冠、最初の冠を手にしたのはトウショウボーイ。次の冠日本ダービーを手にするのは一体どのウマ娘か?来月の日本ダービーが今から楽しみになってきました》

 

 

 

 

「ハァ……ッハァ……ッ!クソッ!」

 

 

 負けた。それも完膚なきまでに。テンポイントは1人そう思っていた。最後のコーナーで大外を回らされたこと、ゲートの枠が不利であったこと、そもそも調整に失敗したこと。色々な原因はあるが今回の皐月賞はとにかく運に恵まれなかった。そう考える外ない。そうテンポイントは結論づけた。

 向こうではトウショウボーイが観客席に向かって手を振り答えている。

 

 

「よっしゃー!皐月賞勝ったぞー!これからも応援よろしくなー!」

 

 

 眩しいくらいの笑顔で彼女は手を振っていた。その光景をテンポイントはただ見ている。

 ことごとく神様に嫌われたテンポイントの皐月賞。その結末は今まで順風満帆だったテンポイントのレースを初めて敗北するという形で幕を閉じることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして悔しい思いをしたのはテンポイントだけではない。トウショウボーイが笑顔で手を振っている光景をジッと見ているウマ娘がもう1人いた。

 

 

「……」

 

 

 皇帝を思わせる衣装を身に纏ったウマ娘、クライムカイザーだ。クライムカイザーは誰にも聞こえないような声で呟く。

 

 

「このままでは終わらせません……!日本ダービー、その舞台で必ずあなたにリベンジします……、ボーイさん……!」

 

 

 クライムカイザーは1人、リベンジするための牙を研ぐ。全ては友達でありライバルでもある天翔けるウマ娘、トウショウボーイを落とすために。




レース描写の難しさにただただ頭を抱えるばかりです。皐月を制したのはトウショウボーイ、当時のレース映像を見てもスーッと出てきたと思ったら圧倒的な速さで駆け抜けていったので度肝を抜かれました。
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