ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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ウマ娘の新イベントどうなんでしょうねコレ?


第32話 京都大賞典・妹再び

 すでに残暑の暑さもなくなり紅葉が見られるようになってきたこの頃、俺とテンポイントは京都大賞典へと出走するために阪神レース場がある関西へと遠征に来ていた。作戦の打ち合わせも終わりテンポイントと別れた後俺は観客席へと足を運ぶ。

 最前列でレースが始まるのを待っているとどこかで聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「ふぅ、何とか間に合ったし。寝坊した時はどうなるかと思ったけど急いできたかいがあったし」

 

 

 聖蹄祭で出会ったキングスポイントだ。おそらく姉であるテンポイントのレースを見に来たのだろう。ただ俺は彼女に敵視されている節があるので知らないふりをする。願わくば彼女が気づかないことを祈る。

 しかし、その祈りが通じることはなくキングスポイントは俺に気づいて声を上げる。

 

 

「あー!お前お姉のトレーナー!」

 

 

「……やあ、聖蹄祭ぶりだね」

 

 

 会ったのはあの日の1回きり。タメ口で話すのは良くないと思った俺は敬語を継続する。できる限り敵愾心を抱かれないように柔らかい雰囲気を出しながら。

 しかし彼女はそんなことはお構いなしにこちらへ敵意を露わにしている。

 

 

「さっさとどっかいけし!」

 

 

「……しょうがないじゃないか、ここだとレースの展開とかよく見えるし。トレーナーとしてテンポイントの姿をしっかりと見ておかないと」

 

 

「そんなの知らないし!どっかいけし!」

 

 

「そこを何とか頼むよ。君の邪魔はしないからさ。それに……」

 

 

 そこで俺は秘密兵器を出す。正直これを出すのはどうかと思ったが姉のことが大好きな彼女ならこれには絶対釣られるだろう。鞄の中から例のものを取り出す。

 俺が急に鞄を漁りだしたことに一瞬不審げな目を向けてきたが、鞄の中から出した物に彼女は目を輝かした。

 

 

「そ、それは!お姉のぬいぐるみ!なんで持ってるし!?」

 

 

 そう、これはURAが監修しているグッズの1つ、テンポイントのぬいぐるみだ。最近発売された商品でありまだそこまで流通しているものではない。ではなぜそれを俺が持っているのかというと、それにはちゃんと理由がある。

 

 

「私は彼女のトレーナーでなおかつちょっとしたコネがあってね。1つ譲ってもらったんだ」

 

 

 実際にはこのぬいぐるみの制作には俺も関わっており、完成した暁に1個譲り受けたのだ。なのでちゃんとした製品と何ら変わらないものである。

 彼女は依然として目を輝かしたままだ。姉であるテンポイントのことが大好きな彼女ならこのグッズは喉から手が出るほど欲しいはずだ。だからこそ俺は交渉する。

 

 

「私がここでレースを見ることを許してくれるなら、このぬいぐるみは君に譲ろう」

 

 

 別にこの阪神レース場は彼女のものというわけではないので許しも何もないのだが、ずっと不機嫌なままいられるのも嫌だ。ご機嫌取り、かもしれないがそもそも譲ってもらった時に信頼できる人物ならば他の人に渡してもいいという許可も得ているので問題はない。

 キングスポイントはかなり悩んでいる様子だ。相当悩んでいるのか呟いている言葉がこちらまで聞こえている。

 

 

「う~、最近お小遣いも使っちゃってお金ないから欲しいけど……でもアイツが隣にいるのは……」

 

 

 ……余程嫌われているのかずっと悩んでいる。しょうがない、ここでダメ押しの品を出すとしよう。

 俺はもう一度鞄の中を漁る。そして1枚の封筒を取り出し、キングスポイントへと手渡す。彼女は戸惑いながらもそれを受け取って中身を確認する。すると驚きの声を上げた。

 

 

「こ、これ!お姉が最優秀ジュニアウマ娘になった時の雑誌!しかもサイン付きだし!」

 

 

「君に渡したいと言ったらテンポイントは快く許可してくれたよ」

 

 

 雑誌自体は大分前に発売されたものだが、サイン付きはどこも売り切れが続出していたものだ。テンポイントがキングスポイントと連絡を取り合っていた時にキングスがこの雑誌を買えなかったという相談を受けており、だったら俺が持っているものを1つ渡すと言ったところ、彼女は嬉しそうに是非渡してくれとお願いしてきた。

 

 

「このサイン付き雑誌、どこ探しても置いてなかったら諦めてたし……!こんなところでもらえるとは思わなかったし!」

 

 

「それで、どうだろうか?私がここで見るのを許してもらえるだろうか?」

 

 

「全然いいし!お前いいやつだし!」

 

 

「そ、そうですか」

 

 

「敬語もいらないし!あたしのことはキングスでいいし!」

 

 

 気分を良くしたのか、かなりフレンドリーになった。余程姉のことが大好きなのだろう。テンポイントのトレーナーとして喜ばしい限りだ。

 キングスは嬉しそうに雑誌とぬいぐるみを提げていた鞄にしまうとこちらへと話しかけてくる。

 

 

「お姉のトレーナーはあんなに強いお姉を負けさせるようないけ好かないやつってイメージだったけど、いいやつだったし!ありがとうだし!」

 

 

 彼女から敬語はいらないと言われたので俺はいつも通りの口調で答える。

 

 

「いけ好かないって……。まあ確かに俺の至らなさが原因ではあるが」

 

 

 というか本当にお姉さんであるテンポイントが好きなんだな。

 

 

「あっ、そうだ。あの時は脛蹴ってごめんだし……。あたしお姉のことになると暴走気味になるってよく注意されるし。あの日の夜お姉にめちゃくちゃに怒られたし……。それにあんたあたしが思っているよりもいいやつだったから……。本当にごめんだし」

 

 

 そう言ってキングスは落ち込んでしまった。俺自身もう気にしていないことなので気にしないでくれと伝える。

 

 

「いいよ、テンポイントのことを思ってやったんだろ?確かにいきなり蹴るのは良くないが大怪我には繋がらなかったからもう気にしてないよ」

 

 

「ありがとうだし!あんた心も広いし!」

 

 

 現金な奴だな、と思いながらもそろそろウマ娘の入場も終わってレースが始まろうかという雰囲気になったので会話を中断する。

 今回出走する14人のウマ娘が全員ゲートに入り開くのを待つ。そしてゲートが開いた瞬間一斉にスタートを切った。

 

 

「いっけーお姉!頑張れしー!」

 

 

 隣で大きな声を上げながらテンポイントを応援するキングスを尻目に俺はレースの展開を見ている。立てた作戦はいつも通り前でレースを展開するというもの。

 

 

(しっかりと前につけているな。後はこの位置をキープし続けて最後の直線勝負を競り勝つだけだ)

 

 

 そしてテンポイントはまたも3コーナーと4コーナーの中間で息を抜くように下がった。これは彼女の走りがそう見せているだけと結論づけたのであまり気にしてはいない。

 しかしレースの結果は外から来た1人のウマ娘に交わされての3着。隣のキングスから残念そうな声が聞こえてきた。だがシニア級に交じっての3着なので善戦したと思ってもいいだろう。ただ彼女の実力なら勝つこともできたかもしれない。それに1つ収穫もあった。

 

 

(交わされたと思ったらもう一度息を吹き返してさらに伸びてきたな。やはり前での勝負根性はどの子よりも強い)

 

 

 その時実況の声が聞こえてくる。

 

 

 

 

《テンポイントは3着、クラシック級ウマ娘テンポイントは3着です。ですが今日のところはこれで充分でしょう。菊花賞に向けて弾みをつけてくれテンポイント!》

 

 

 

 

 ……阪神ジュベナイルフィリーズの時も思っていたが、阪神レース場の実況者は少々テンポイント贔屓が過ぎるのではないだろうか?どう実況しようが問題とするのは実況者側の問題で処分を下すのもそちらの問題だ。俺が言うことではないかもしれないがそう思わずにはいられない。

 隣のキングスに目を向けるととても悔しそうにしていた。地団駄を踏んでいる。

 

 

「悔しい悔しい、悔しいし!」

 

 

「落ち着けキングス、周りの奴が見てるぞ」

 

 

 しかしキングスの地団駄は一向に収まらない。余程悔しいのだろう。

 数分ほどした後ようやく落ち着いたのか俺に向かって話始める。

 

 

「……トレーナーのあんたから見て、敗因はなんだし?」

 

 

「そうだな……。やはり怪我明けってのが響いたな。それに調整不足だったのもある」

 

 

 その言葉を聞いてキングスはまたも感情を爆発させた。

 

 

「つまるところあんたのせいだし!お姉のトレーナーなんだからしっかりしろし!」

 

 

「返す言葉もない……」

 

 

「……まああんたに当たっても仕方ないし。それにお姉の怪我はあんたは関係ないからしょうがないし」

 

 

 彼女は言葉を続ける。

 

 

「そういえばあんた、お姉が負けてもあんまり悔しそうじゃないし。なんでだし?」

 

 

「いや、滅茶苦茶悔しいぞ。表には出さないだけだ。彼女を勝たせてあげられない自分にもイライラする」

 

 

「そ、そうなの?」

 

 

「そうだ。ただ今回の走りを見て確信した。菊花賞を勝てる可能性は充分にある」

 

 

 怪我明けでありながらシニア級ウマ娘とあそこまで渡り合えたのだ。手ごたえは充分に掴めた。後は俺がしっかりと調整をするだけだろう。

 俺の言葉を聞いてキングスはこちらへと激励の言葉を贈ってくれた。

 

 

「ま、頑張れし!お姉をまた負けさせたら承知しないし!」

 

 

「あぁ、分かってる。頑張るさ」

 

 

 そう言って彼女はウイニングライブの会場へと向かったので分かれる。俺はテンポイントが待つ控室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 控室に着くとテンポイントはただ静かに座っているだけだった。しかし耳が絞っているのが目に入ったので相当気が立っているのだろう。

 俺が入ったことに気づいたのかテンポイントはこちらへと視線を向ける。そして申し訳なさそうに謝ってきた。

 

 

「スマントレーナー……。また負けてもうた……」

 

 

 その言葉に俺は言葉を返す。

 

 

「今回は怪我明けでなおかつ調整の時間も取れなかった。だから今日の敗戦はあまり気にするな……と言いたいが、お前は気にするよな?」

 

 

 俺の言葉にテンポイントは頷く。

 

 

「当たり前やろ……!怪我明けやろうと何やろうと関係ない……!レースに出る以上勝つ、それだけや……!」

 

 

 ……この闘争心の高さがテンポイントのいいところだろう。しかし一歩間違えれば彼女が破滅しかねない。うまくコントロールしていかなければならないだろう。

 俺は彼女に労いの言葉を贈る。

 

 

「ひとまず今日のレースお疲れ様だ。まだウイニングライブがあるが、終わった後はしっかりと身体を休めるぞ」

 

 

「……了解や」

 

 

 菊花賞のステップレースに選んだ京都大賞典は3着という結果に終わったが、それでも良くやった方だろう。テンポイントを刺激しかねないのでその言葉は飲み込む。

 菊花賞まで後1ヶ月へと迫っていた。




私自身ちょくちょく見返しては手を加えています。今日はプロローグから第3話までの4話、そして他の話も何ヵ所か修正しています。
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