ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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菊花賞本編。急いで書いたので後々手直す予定です。


第34話 決戦!菊花賞

 昨日の夜急に降り始めた雨は上がったものの晴れることはなく曇りとなった京都レース場。今日ここでクラシック最後の冠であるレース菊花賞が行われる。今回のレースで注目されているのは皐月賞ウマ娘トウショウボーイとダービーウマ娘クライムカイザー、どちらかが菊の冠を手にするのか。それとも違う誰かが戴冠するのか。出走前から盛り上がりを見せていた。

 ウマ娘の入場とともに実況・解説の説明が入っていく。

 

 

 

 

《今年もこの日を迎えました。クラシックロードの終着点菊花賞。果たして菊の冠を手にするのはどのウマ娘になるか?天気は生憎の曇り模様、バ場の状態は重バ場と発表されています。まずは3番人気のウマ娘の紹介から入りましょう。3番人気は6枠13番テンポイント!私イチ押しのウマ娘です!》

 

 

《皐月賞はトウショウボーイに離されての2着、ダービーではクライムカイザーの7着に沈んでいます。トウショウボーイとクライムカイザーに負けられないという思いは誰よりも強いでしょう》

 

 

 

 

 実況の声とともにテンポイントが京都レース場のターフに姿を現す。観客の声援を受けながらもテンポイントは控室で自身のトレーナーから受けた指示を頭の中で繰り返していた。

 

 

(トレーナーが言うとったのはボーイと同じくらいグラスに気ぃつけろやったな……。トレーナーの見立てやったらグラスは生粋のステイヤー、この距離で一番厄介なる言うとった。で、グラスはラチ沿いに走る癖があるみたいやから内をついて走るやったな。まあ頭の片隅にでも入れとこか)

 

 

 そのままテンポイントはウォームアップを始める。その間も実況によるウマ娘の紹介は進んでいた。

 

 

 

 

《続いて2番人気の紹介に移りましょう。2番人気は4枠8番クライムカイザー!世代のダービーウマ娘、前走の京都新聞杯、前々走の神戸新聞杯はいずれも2着!ダービーのような走りを見せて見事菊の冠を手にすることができるか!》

 

 

《ただ疲れが残っているのかパドックでの調子はあまり良さそうではありませんでしたね。これがどう作用するのか?気になるところです》

 

 

 

 

 クライムカイザーの入場とともに湧き上がる歓声。しかしその表情は悲しそうだった。クライムカイザーは1人小さな声で愚痴る。

 

 

「重バ場……なんで前走の京都新聞杯と同じ重バ場なんですか……。鬱です……」

 

 

 クライムカイザーは重バ場に対していい思い出がないのか、そのままブツブツと独り言を呟いていた。

 そして今回の菊花賞の1番人気が入場する。

 

 

 

 

《では今回の1番人気のウマ娘を紹介しましょう!1番人気は勿論このウマ娘!前々走の神戸新聞杯では驚異の勝ち時計を記録して芝2000mの日本レコード記録を塗り替えました!3枠7番トウショウボーイ!》

 

 

《やはり菊花賞の大本命と言えば彼女という声が多かったですね。ただ日程を詰めてレースを組んでいたのかクライムカイザー同様やや疲れが見えています。大丈夫でしょうか?》

 

 

 

 

 トウショウボーイが入場してきたその瞬間、会場からはその日1番の歓声が響き渡る。その声に答えるようにトウショウボーイは手を振って返していた。しかし、普段の彼女ならば声も上げていたのだが今日に限っては上げていない。トウショウボーイは誰にも聞こえない声量で呟く。

 

 

「チクショウ、あんなに晴れるように祈願したのになんで前日の夜になって大雨なんて降るんだよ……。恨むぜ神様」

 

 

 どうやらトウショウボーイも重バ場が得意ではないらしい。そのまま恨み言を呟きながら出走の準備を整える。

 そして周りを見渡しながら内側のバ場の状態を確認しているウマ娘が1人いた。緑色のベレー帽を被りブレザーの制服をモデルにしたような勝負服は中のシャツは白に赤のラインが襷のように入っている。ブレザーの制服部分は彼女のイメージによく似合う緑色、両腕には赤にGのワンポイントがついた腕章をしている。グリーングラス、今回の菊花賞では12番人気。誰からも注目されていないであろう彼女は1人笑みを浮かべている。

 

 

「うんうん~。これならいけるね~」

 

 

 グリーングラスは満足そうに頷き何かの確認が終わった後、彼女はゲートへと向かっていった。そして出走前のウォーミングアップを終えたウマ娘が続々とゲートへと入っていき、開く瞬間をただ待っている。

 

 

 

 

《最も強いウマ娘が勝利すると言われる菊花賞。今年も選ばれし21人のウマ娘がこのレースに出走します。最後の冠である菊の大輪を掴むのはどのウマ娘か?驚異のレコードでトライアルレースを制したトウショウボーイか?ダービーウマ娘の逆襲なるかクライムカイザー?ここまで無冠のテンポイントはクラシックの冠を手にすることができるか?それともまだ見ぬウマ娘が戴冠するのか?今全員のゲートインが完了しました。さぁ今菊花賞が……スタートです!》

 

 

 

 

 実況のスタートという声とともにゲートが開き、21人のウマ娘が一斉にスタートする。クラシックロードの終着点、菊花賞の幕が今上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《まずは最初の第3コーナーの登りへと入ります。逃げウマ娘バンブーホマレが先頭に立ってペースを作ります。2番手の位置には外からセンターグッド3番手テンポイントは内を回ってこの位置につけている。4番手にはニッポーキング5番手の位置にトウショウボーイ。トウショウボーイはこの位置。クライムカイザーはいつも通り後方グループで様子を見る姿勢を取ります。各ウマ娘コーナーを回って正面スタンド前へと入ってきました。まずは1周目、先頭集団は依然変わらずですが3番手テンポイントの内からはグリーングラスが、外からはフェアスポートが早めに上がってきました。そして真ん中のバ群、中団グループの外にトウショウボーイがいます。しかし前から後ろまでほとんど差がない団子状態。ここからどういった展開を見せるのか?》

 

 

 

 

 いつも通り好調なスタートを切ることのできたテンポイントは3番手の位置で様子を窺っていた。目の前にトウショウボーイはいないがここでマークするために無理矢理下がったら皐月賞の二の舞になると考えていた。なので無理に下がることはせずに周りが上がってくるのを待つ。すると第2コーナーへと入る辺りでテンポイントの後ろにいた集団がペースを上げていった。そしてその集団の中にトウショウボーイの姿を確認する。隣にいたはずのグリーングラスはいつの間にか下がっていったのか姿が見えない。テンポイントはすかさず外へと回りトウショウボーイの後ろの位置をキープするようにつけた。

 

 

(我ながらええ位置につけることができたわ。後はこの位置をキープしとくだけやな)

 

 

 皐月賞、ダービーでは後れを取った。だが最も強いウマ娘が勝つこの菊花賞だけは譲らない。自分が世代で1番強いウマ娘であることを証明するために。テンポイントはそんなことを考えていた。そして正面スタンド前を抜けてすでに第2コーナーへと差し掛かろうとしていた。

 

 

 

 

《……クライムカイザーは後方から6番手の位置につけています。そして先頭はすでに第2コーナーのカーブへとかかりました。先頭は依然としてバンブーホマレ2番手の位置にはセンターグッド、フェアスポートが内から3番手から2番手へと上がっていこうとしています。第2コーナーを曲がって向こう正面に入ろうかというところで外からトウショウボーイが上がってきましたセンターグッドを交わして今2番手の位置へと上がっていこうかというところ。その後ろにつけるようにテンポイントも上がっていきます。クライムカイザーも後方からややペースを上げ外からきている。向こう正面に入って先頭はバンブーホマレ、2番手の位置にはトウショウボーイその後ろにつけてテンポイント。内側にはフェアスポートがいます》

 

 

 

 

 第2コーナーを回って向こう正面へと入り、テンポイントはいまだにトウショウボーイの後ろをキープしている。京都レース場には第3コーナーへと入る前に心臓破りの坂と呼ばれる坂がある。それまでにスタミナをできるだけ残しておこうという作戦だ。ただ、テンポイントには1つ気がかりなことがあった。グリーングラスの存在だ。トレーナーは注意しておけと言っていた。内を確認してみるがいまだに彼女は先頭集団には加わっていない。

 

 

(トレーナーの警戒しすぎやったな。これやったらボーイだけ注意しとったらええか)

 

 

 テンポイントはそう考えてグリーングラスの存在を遠くへと追いやる。第3コーナーの手前、心臓破りの坂が目の前に迫っていた。

 

 

 

 

《……そして後方からクライムカイザーが仕掛けてきた!10番手の位置に上がっていきます!そして3000mの2回目の坂へと入っていく!心臓破りの京都の坂を21人のウマ娘たちが果敢に登っていきます!差は広がることなく21人のウマ娘は団子状態!先頭はバンブーホマレ2番手にトウショウボーイ!その後ろをついてテンポイント内にはグリーングラスがいるぞ!心臓破りの坂も上り終わって後はゆっくりと下るだけだ!そしてこの下りでトウショウボーイが先頭に立った!テンポイントは内から切り込んでいく!テンポイントが2番手バンブーホマレは3番手!外から一気にクライムカイザーが上がってきた!先頭は早くも第4コーナーをカーブした!最後の直線へと入っていく!》

 

 

 

 

 坂を下り終えて第4コーナーへと入るタイミング。テンポイントはここしかない、というタイミングで内からトウショウボーイを抜きにかかった。そして見事テンポイントの目論見通り、トウショウボーイよりも前で最後の直線へと入ることに成功する。

 

 

(よし!ここまでは想定通りや!後は……!)

 

 

 後はスパートをかけていくだけ。そのタイミングでテンポイントは脚に痛みを感じる。この痛みには覚えがある。メイクデビューを走り終わった後に感じたあの痛み、それと一緒だった。

 

 

 

 

《最後の直線に入ってテンポイントが先頭に立った!内からグリーングラス!内からグリーングラスだ!さぁテンポイント先頭だ!それいけテンポイント!菊の大輪はもうすぐそこだ!しかし内からグリーングラスだ!グリーングラスが上がってきている!》

 

 

 

 

 

(脚を思うたより使いすぎた……!やけどあとちょっとや、後ちょっとだけ持ってくれ、ボクの脚!)

 

 

 テンポイントは痛みのせいか、直線半ばでまっすぐ走ることができずに外へ外へとヨレていく。だが何とか持ち直しつつもゴールへと向かっていく。

 しかし、この時テンポイントは内からものすごい勢いで上がってきているウマ娘に気づいた。その姿を確認する。それはトレーナーが1番警戒しておくべきと言った相手、自分が途中で警戒を止めた相手、グリーングラスだった。

 

 

(グラ、ス?嘘やろ、いつの間に……!)

 

 

 あっと思ったのもつかの間、グリーングラスはそのままの勢いでゴール板へと走っていく。テンポイントは必死にその後を追うがその差が縮まることはなくグリーングラスの身体がゴール板を通過していった。

 

 

 

 

《グリーングラス1着!テンポイント2着!菊の大輪を手にしたのはグリーングラスだ!ここまで9戦3勝、重賞未勝利のウマ娘が菊花賞を制しました!一体誰がこの展開を予想できたでしょうか!?天を駆けるウマ娘ではない!ダービーを登りつめた皇帝でもない!貴公子でもない!勝ったのは遅咲きの刺客グリーングラス!》

 

 

 

 

 クラシック最後のレース菊花賞、勝ったのはグリーングラスだった。




最近馬の本を買ったりしてます。新しい発見があったりして面白いです。もっと早くハマりたかった……。
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