ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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やっと納得のいくあらすじの文が浮かびましたので変更しました。これ以降はあらすじを変えることはありません。


第37話 ファン投票の結果

 菊花賞が終わってから早いものでもう12月に入ろうかという頃。ボクは自分のクラスに入って自分の席に着く。その後今朝買ってきた新聞を袋から出して広げる。いつもは面白い記事はないかと探しているが今日は違う。目的の記事が掲載されているはずなのだ。ボクはその記事を探す。

 

 

「……お、あったあった!有マ記念のファン投票の記事!どれどれ~?結果はどうなったんや~?」

 

 

 そう、ボクが探していたのは有マ記念のファン投票の結果の記事だ。今日が丁度最終結果発表の記事が掲載される日であり、その結果を確認するために該当の記事を探していた。

 見つけることができたのでボクは早速結果を確認する。確認した後ボクは喜びと苦々しさが半分の気持ちになりつつも記事から目を離す。喜ぶべきはこのファン投票の結果によってボクは有マ記念への出走が叶ったということ。では苦々しさは何かというと、

 

 

「5位……また何とも言えん順位やな……」

 

 

人気投票の順位が5位だったということだ。そもそもファン投票の上位10名のウマ娘に入るだけでもすごいことだ。それだけファンの人から愛されているということなのだから。ではなぜ素直に喜べないかというと自分より上にある名前が関係している。

 

 

「1位トウショウボーイ……4位クライムカイザー……。分かっとったことやけど、いざ現実として見ると凹むわやっぱ……」

 

 

 1位と4位に自分の友達である2人の名前が入っているのだ。友達の活躍が評価されているのは喜ばしいことなのだが心のどこかで素直に喜べない自分がいる。

 そんなことを考えていると教室の扉を開けて聞き覚えのある元気な声が聞こえてくる。

 

 

「おっはよー!みんな、今日も1日頑張ろうぜー!」

 

 

 ボーイの奴だった。みんなはボーイの言葉に微笑まし気な視線を向けながら挨拶を返している。相変わらず見ているこっちまで元気になるような挨拶をする奴だ。

 ボーイはそのままこちらへと向かってきて、ボクの隣の席へと座る。鞄を置いてこちらへと話しかけてきた。

 

 

「よぉテンさん!朝から何見てんの?」

 

 

 ボクは挨拶を返しながら自分が何をやっていたのかを教える。

 

 

「おはようさんボーイ。今日は有マ記念のファン投票の最終結果発表が載る日やからな。それを見とったんや」

 

 

「あ、そういえばそうじゃん!オレにも見せてくれよ!」

 

 

「ええで、ほい」

 

 

 目を輝かせながらボーイにボクは持っていた新聞を手渡す。開いているページが目的のページだと教えそのページをボーイは凝視する。

 結果を見終わったのかボーイは嬉しそうな声でこちらへと話しかけてきた。

 

 

「見ろよテンさん!オレファン投票1位だって!」

 

 

「ハイハイおめでとさん。っちゅうかさっきまで見とったから知っとるわ」

 

 

「それは分かってるけどさ。でもさー、やっぱこうやって目に見える形で支持されてるって思うと嬉しいよなーやっぱ!」

 

 

 ボーイの気持ちは分からないでもない。実際ボクも結果を見て嬉しくなったのは事実なのだから。

 するとボーイは残りのメンバーを見て興奮が抑えきれないといった様子で話を続ける。

 

 

「っにしても、やっぱ年末に行われる総決算のようなレースだけあって有名な人たちばっかだなー。負けてられないぜ!特に……」

 

 

 そう前置きをしたと思ったらこちらへと指を突きつけてきた。

 

 

「テンさんにはぜってぇ負けねぇからな!有マ記念、オレが勝たせてもらうぜ!」

 

 

 こちらへの宣戦布告。面白い、ならばこっちも受けて立ってやろうじゃないか。

 

 

「随分なこと言うてくれるやんけ。こっちも負けへんぞ!」

 

 

 ボクたちは不敵に笑いあう。傍から見ればライバル同士のやり取りだ。ただボクたちは忘れていた。ここが教室だということを。

 微笑ましそうなものを見る目で教室中から注目されていた。会話の内容も聞こえてくる。

 

 

「相変わらず仲いいねあの2人」

 

 

「あのやり取りも何回目だろうね」

 

 

「いいライバル関係だよね」

 

 

「うんうん」

 

 

 ボクたちは向けられる視線に恥ずかしくなって2人そろって咳払いをする。毎度のことだがボーイが絡むと変に熱くなってしまう。それだけボクにとって絶対に負けたくない相手だということなのだが。

 咳払いをして席に着いたタイミングでまた教室の扉が開かれる。姿を確認してみるとグラスとカイザーだった。

 2人とも自分の席に座るためにこちらへと向かってくる。ボクらは挨拶を交わす。

 

 

「はよー。グラス、カイザー」

 

 

「おはようさん2人とも」

 

 

「おはようございますボーイさん、テンポイントさん。お2人とも朝からいつも通りですね」

 

 

「おはよ~2人とも~。そうだね~クラスから聞こえてくる声で大体何があったのか分かっちゃった~」

 

 

「やめーや、毎度のことやけど恥ずかしいんやで」

 

 

 そう言ってボクらは笑いあう。これがボクたちの朝の日常だった。

 カイザーとグラスは広げられている新聞が目についたのか話題を切り出す。

 

 

「そういえば、今日でしたね。ファン投票の最終結果発表の日って」

 

 

「そうだな。カイザーは出るのか?」

 

 

 ボーイの言葉にカイザーは難色を示す。

 

 

「う~ん、今回は出走を見送ろうかと思います。ファンの皆さんには申し訳ないですけど、もっと自分を鍛えないと。そう思ったので」

 

 

 どうやらカイザーは出走しないらしい。残念だ。

 

 

「そっか。カイザーは出走しないのか。残念だけど個人の事情があるから仕方ねぇよな。でもグラスはなんで名前すら載ってないんだ?仮にも菊花賞を勝ったのに」

 

 

「ん~?」

 

 

 グラスは自分に振られた質問に答える。

 

 

「あ~、有マ記念の予備登録してなかったんだよね~。それに仮にファン投票で入っても多分出走はしなかったかな~」

 

 

 どうやらグラスも出走する気はないらしい。ということはいつものメンバーで有マ記念に出るのはボクとボーイだけである。

 その後は別の話題へと飛んでいき、ボーイのリギルの後輩であるマルゼンスキーの話になる。カイザーから話を切り出す。

 

 

「そういえばボーイさん。マルゼンスキーさんの活躍をよく耳にしますけど……、すごいですね」

 

 

 その言葉にボーイは同意を示すように驚きを隠せない様子でいた。

 

 

「そうだな……強い強いとは思ってたけどまさかあそこまでとは思ってなかったぜ」

 

 

 ボーイですら驚いている。それも仕方ないだろう。

 マルがメイクデビューに出走したのは10月の初め。ボクは直接会場で見たわけではないのであくまで映像で見ただけなのだが、衝撃の一言だった。

 大差勝ち。マルは2着のウマ娘に2秒もの差をつけて勝利したのだ。それだけでも驚きなのだが次の条件戦を2着に9バ身差、スポーツ杯ジュニアステークスはハナ差の接戦を制して3戦3勝である。しかもスポーツ杯はあまり調子が良くなかった状態だというので驚きだ。

 次走は朝日杯らしいが負ける姿が想像つかない。それだけの実力をマルは持っている。

 ボクは自分の思ったことを話す。

 

 

「前にボーイが積んでるエンジンが違う言うとったけど……。あの走りを見てるとホンマにそうとしか思えんわ。他ン子とは次元が違う」

 

 

 その言葉にみんなが頷く。ボクの言葉にグラスが補足する。

 

 

「それに~これは私の主観になるけど~実況の人たちは逃げって言ってるけどさ~。あれ多分速すぎて逃げに見えるだけだよね~?」

 

 

 グラスの言葉にカイザーが同意する。

 

 

「やっぱりグラスさんもそう思いましたか……。私も同じ考えです。マルゼンスキーさんは早すぎて逃げに見えるだけだと」

 

 

「しかもあれでジュニア級だからな……。これからが楽しみだぜ……!」

 

 

 ボーイは今から闘うのが楽しみとばかりに震えている。そしてそれはボクも同じだ。ぜひ一緒に走ってみたい。どちらが上なのか、証明してみたい。その衝動に駆られる。

 ただマルはまだジュニア級なので闘えるとしても来年の秋以降になってしまうのが少し残念だ。それにボーイに至ってはもう1つ問題がある。その問題をボクは指摘する。

 

 

「でもボーイは同じチームやから闘うんは無理やないか?リギルのトレーナーはレースの日程被らんようにするって噂があるで?」

 

 

 だが、ボーイはボクの言葉を否定した。

 

 

「別にそんなことはないぜ?おハナさんはなんだかんだいって部員の要望とかはちゃんと聞いてくれるからレースの日程が被ることだってあるぜ」

 

 

「ふーん、そうなんか。やったら心配することないか」

 

 

「そうだ!おハナさんで思い出した!」

 

 

 そう言ってボーイは鞄の中身を漁ったかと思うと1冊の雑誌を取り出した。

 

 

「これさ、誠司さんから借りてたんだよ。今日返しに行こうと思ってたんだけどさ、放課後ちょっと返せそうになくてさ……。だから代わりにテンさん返してくれないか?」

 

 

「まあ別にええけど。いつの間に借りてたんや?」

 

 

 少なくともボクがいる時にボーイが来たことなど一度もない。するとボーイは楽しげに答える。

 

 

「いやー、誠司さんのとこって色んな資料がたくさんあってさ、結構入り浸ってんだよ。たまに入り浸りすぎて怒られることもあるけど。でもテンさんと鉢合わせたことは一度もないな」

 

 

 偶然もあるもんだな、とボーイは締めくくる。入り浸っているのに会わないっていうのはすごい偶然もあったもんだ。

 するとカイザーは呆れたようにボーイに話しかける。

 

 

「会わないのも当然ですよ。ボーイさんが神藤さんのところに行く時って大体チームの練習後とかじゃないですか。それで資料だけ借りていって自分の家に帰るんですから。練習が終わってすでに帰っているテンポイントさんと会うわけないんですよ」

 

 

「それもそうだな。たまにカイザーとグラスも巻き込んで行くし」

 

 

「いや~レア物の資料もあって面白いんだよね~。ホントにレースに興味なかったのか疑問が浮かぶぐらいには~」

 

 

 ちなみにレア物の資料がある理由は、知り合いからトレーナーになった時にもらったらしい。本人がそう言っていた。

 ボクは溜息をついて言葉を告げる。

 

 

「あんま迷惑かけるんやないで?トレーナーかて忙しいんやから」

 

 

「分かってるって!」

 

 

 ボーイはそう元気よく答えるが本当に分かっているのだろうか?というか、

 

 

「いつの間にか名前呼びやん」

 

 

ボーイがトレーナーを下の名前で呼んでいるのだ。まあ自分のトレーナーを下の名前で呼んでいるどころかあだ名のようなもので呼んでいるボーイなら何ら不思議なことではないが。

 ボーイは答える。

 

 

「本人が許可してくれたからな!それに名前呼びの方が親しみがあるだろ?」

 

 

「まあ本人が許可してるならええと思うけど」

 

 

 何とも言えない気持ちになるが、トレーナーは年下に名前で呼ばれたところで気にするような性格でもないだろう。考えるだけ無駄なのかもしれない。

 とりあえず返却予定の雑誌を預かる。そのタイミングで朝のHRの開始を告げるチャイムが鳴った。会話を切り上げて先生が来るのを待つ。

 ボクの頭の中には1つの考えが浮かんだ。

 

 

(今度急に名前呼んでみて反応見るのもええかもしれんな)

 

 

 ちょっとした悪戯心が芽生えた。今日もトレセン学園での1日が始まる。




史実のマルゼンスキーの戦績をみてなんだこの化け物……ってなったのは自分だけじゃないはず。


※有馬記念を有マ記念に修正 7/30
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