ショッピングモールで少し遊んだ後、ボクらは学園へと戻ってきていた。ボーイ曰く、トレーナーから指定された場所は学園の校門前だったらしい。しかしあの場所のどこにスペースがあるのだろうか?
同じ疑問が湧いたのかカイザーが疑問を投げてきた。
「ボーイさんが言うには校門前に集合らしいですけど……。会場はどこになるんでしょうか?一番可能性が高いのはプレハブ小屋なんですけど……。トレーナー室の隣はガレージだって前に言ってましたよね?他に開いている場所なんてありましたかね?」
その疑問にグラスが自身の推測で答えてきた。
「まあさすがに~あのプレハブ小屋じゃないんじゃないかな~?さすがに6人でパーティってなるとトレーナー室じゃ手狭だろうしね~。空き教室でも学園に借りてるんじゃない~?」
トレーナー室は広いことには広いが、6人でパーティをするにはさすがに狭いだろう。棚や全てのものを動かしてあるなら話は別だが。
クインもその言葉に同意するように会話に加わる。
「そうですね、神藤様なら学園側に多少の融通は利くでしょうし空いている教室などを使わせてもらえているのかもしれません」
「まあ、誠司さんならあり得そうだよな」
今更な話なのだが学園側に融通を利かせることのできる用務員兼トレーナーとは一体何なのだろうか?ボクのトレーナーながら本当に謎である。
ボクらは今回の会場がどこになるのかを話し合っていると学園に着いた。すると校門前に1人の人物が立っている。まさか教員だろうか?ボクらは身構える。
しかしグラスがいち早くその人物に気づいたのか話しかけにいった。
「あれ~?おきのんだ~。どうしたの~?」
「お、来たかお前ら」
どうやら校門前に立っていた人物はグラスのトレーナーである沖野さんだったらしい。ボクらは安堵する。
ボクらが安堵していると沖野さんがここにいる理由について話してくれた。
「俺はお前たちの案内係だ。今日のパーティの会場へのな」
「へ~そうなんだ~」
「相変わらず反応薄いなグラス……。まあいい、俺に着いてきてくれ」
そう言って先導するように沖野さんは歩き出した。ボクらはそれに続くように歩を進める。
そして歩くこと数分、着いたのはいつものプレハブ小屋だった。まさか本当にここが会場なのだろうか?ボクは沖野さんに質問する。
「すいません、ホンマにここで合っとるんですか?この人数でやるには手狭やと思うんですけど……」
「いや、聞いた話だと1階じゃなくて2階の方らしい。階段を上がるぞ」
沖野さんは言いながらプレハブ小屋の横に備え付けてある階段へと向かっていく。そしてトレーナーが居住スペースに使っている部屋……ではなく、その隣の部屋のドアの前へと着いた。
沖野さんはドアをノックする。すると中からトレーナーの声が聞こえた。そのままドアが開かれる。
「お、みんな来たようだな。どうぞ上がってくれ」
トレーナーの言葉に促されボクらは部屋の中へと入る。
部屋の中へと入ると、ボクらは思わず感嘆の声を漏らした。
「わぁ……!」
「これは……すごいですね、神藤様」
「俺も今初めて入ったんだが……こりゃスゲェな」
「いや~ハハハ、驚きすぎて一瞬声が出なかったよ~」
「スッッッゲェ!これホントに1人で用意したのか!?」
「いやホンマ、凝り過ぎやろコレ……」
部屋の内装を一言で表すならthe・クリスマスと言った内装になっていた。クリスマスの定番でもあるクリスマスツリーに加え、ツリーの下には空箱だろうがプレゼントボックスが置かれている。ツリーを彩るように電飾のイルミネーションが飾られており、ホログラムで火が点いているように見える暖炉、それに加えて豪華な料理が所狭しとテーブルの上に積まれており取り皿も置かれている。
まさかこれを本当に1人で用意したのだろうか?ボクはいまだに料理を用意しているトレーナーへと話しかける。
「な、なぁトレーナー?コレホンマに1人でやったんか?」
「そうだぞ。装飾は昨日の仕事を終わらせた後取り掛かって、今日の朝丁度終わったところだな」
その後この部屋の詳しい経緯を教えてくれた。どうやらトレーナーは昨日ボーイからクリスマスパーティの旨を伝えられた後にこの部屋を大改造することに決めたらしい。元々使っていなかった部屋なため後悔はなかったようだ。
しかしここまで凝る必要はあったのだろうか?そのことを尋ねると
「どうせやるなら思い出に残るようなものにしたいだろ?」
とだけ答えた。
少し気になった沖野さんを誘った人物なのだがどうやらトレーナーが誘ったらしい。確かにボーイと沖野さんに接点はなかったため、誘うとしたらトレーナーだけだろう。
そんなことを考えているとトレーナーが催促するように言葉を続ける。
「まあいつまでも立ち話してるのもなんだ。早く食べようじゃないか」
その言葉を皮切りにボーイが真っ先に飛びついた。まるで待てをされていた犬である。その姿に苦笑いを浮かべながらも皆思い思いに料理を取りに行く。
そして全員が料理を皿に取り終わった後、発起人ということでボーイが乾杯の音頭を取ることになる。しかし口元にはソースがついており、すでに何口か食べていたことが伺えた。
「早く飯が食べたいからごちゃごちゃ言わねぇぞ!みんなかんぱーい!」
その言葉にみんなの声が重なる。
「「「かんぱーい!」」」
「あ、沖野さん。さすがに酒は用意してないですよ」
「教え子たちの前で飲むわけねぇだろ!」
乾杯の音頭がとられたということでみな料理を食べ始める。たまに作ってもらっているので味は知っているのだが、相変わらず美味しい。
しかし他のみんなは知らなかったようで口々に賞賛の声を上げている。
「うッッッめぇ!なんだこの料理!?一体どこのお店のやつなんだ!?」
「本当に美味しいです!神藤さんどこのお店なんですか?」
「食堂の人たちに手伝って貰った。ただ味付けに関しては俺のオリジナルだからな。気に入ってもらえたようで何よりだ」
「……たまに思うのですが、神藤様にできないことってあるのでしょうか?」
クインはあまりの超人っぷりに驚きを隠せないようだ。しかしトレーナーはそんなことはないと言わんばかりに首を振り答える。
「俺にだってできないことぐらいあるぞ?例えば海とかはそんなに好きじゃないな」
「へ~?そりゃまたなんで~?」
疑問が浮かんだのだろう。グラスはそう質問した。その質問にトレーナーは特に問題ないとばかりに答える。
「俺泳げねぇから」
「そうなのですか?」
クインは驚いている。それはそうだろう。つい先程まで超人だと思っていた人物の意外な弱点が浮き彫りになったのだから。トレーナーは言葉を続ける。
「昔っから泳ぎだけはどうしてもダメでな。浮かぶとか歩くぐらいはできるが泳ぐなんて絶対に無理だ」
「それはなんというか、意外ですね」
カイザーはそう答える。カイザーの言葉を聞いてトレーナーは言葉を続けた。
「まあ誰にだってできないことの1つや2つあるさ。それが俺にとっては泳ぎだっただけだ。後は虫もそんなに好きじゃない」
「そっちはなんでだ?」
「昔虫取りをしていた時の話だ。子供の俺は罠を仕掛けて虫を捕まえに行ったんだが……。そこでとんでもない目にあったんだ」
そう言った瞬間トレーナーは身震いをした。一体何があったのだろうか?ボクは質問する。
「い、一体何が起こったんや?」
意を決したようにトレーナーは言葉を続ける。トレーナーの口から出てきた言葉はボクらの想像を絶していた。
「……俺の気配に気づいたのか、罠に掛かっていた虫が一斉に俺に向かって飛んできた。しかも餌用に持ってきていた蜂蜜のにおいにつられてか滅茶苦茶にたかられてな……。あの時のトラウマが今でも拭えない……」
トレーナーの言葉にクインとカイザーが悲鳴を上げる。ボクも我慢こそできたが下手をしたら2人の仲間入りをしていただろう。ボーイ・グラス・沖野さんの3人はその光景を想像したのか身体を震わせていた。
空気が微妙になったためかトレーナーは仕切りなおすように言葉を発する。
「まあ俺の過去の苦い経験は置いといて、みんなどんどん食べてくれ!料理は沢山あるからな!」
ボクらは先程の話を忘れるように料理を食べることにした。
それからは談笑などをして小一時間立った頃、ボーイがみんなに呼びかけるように声を出す。
「よっし、それじゃあそろそろお楽しみのプレゼント交換でもするか!」
その言葉とともに各々自分が買ってきたプレゼントを用意する。全員の用意が終わったのを確認してトレーナーが音楽を鳴らし始めた。ちなみにトレーナーと沖野さんは用意していないのか参加はしていなかった。まあ2人は保護者のようなものなので当たり前だろう。
ジングルベルの歌とともにプレゼントを隣の人物に回していく。それを少しの間続けていると音楽が止まったのでその時点で持っていたプレゼントが自分のものだ。ボクの手元にあったのは四角の箱である。早速中を空けて確認してみることにした。
中に入っていたのは湯呑だった。ボクのプレゼントが見えたのかグラスが反応する。
「あ~それ私のだ~。大事にしてね~」
「丁度つことったマグカップが壊れたところや。ありがたく使わせてもらうで」
中々渋いチョイスだが嬉しい。周りを見て見るとボクが買ってきたネックレスはどうやらカイザーに渡ったらしい。本人が喜んでいたので嬉しい限りだ。
クインはプレゼントを持って固まっている。一体どうしたのだろうか?そう思っているとボーイが声をかけた。
「大丈夫か?クイン。ってオレのプレゼントはクインに渡ったんだな!気に入ってくれると嬉しいんだけど……」
どうやらボーイのプレゼントだったらしい。クインが中身を取り出したので確認してみるとマフラーだった。この寒い季節にはぴったりだろう。
クインは感無量とばかりにプレゼントを抱きしめて答える。
「とんでもありませんトウショウボーイ様!私、一生大事にいたします!」
「お、おう。一生は言いすぎだと思うけど喜んでくれたなら嬉しいぜ」
クインのテンションの上りようにボーイは少し引き気味だった。余談だがボーイはカイザーの、グラスにはクインのプレゼントが渡ったようである。
プレゼント交換も終わりそろそろお開きというところでトレーナー陣から声を掛けられる。2人の手元には6人分の包みがあった。
「さて、プレゼント交換も終わったということで……」
「これは俺たちからのプレゼントだ!」
トレーナーはそう言って1人ひとりに包みを渡してくる。これにはみんな意外だったのか固まっている。
カイザーが遠慮がちに2人に聞く。
「ほ、本当にいいんですか?」
「気にすんな。俺たちだけなんも渡さないのもアレだからな。遠慮せず受け取ってくれ」
沖野さんはそう答えた。ならばとみんな包みを開ける。どうやら中に入っているものは写真立てだった。
沖野さんは言葉を続ける。
「あんま凝ったもんじゃなくてわりぃが、せめて楽しい思い出を残そうってことでな。誠司と話し合って決めたもんだ」
トレーナーは同意するように頷き、言葉を発する。
「せっかくだから、ここにいる6人の写真を撮って入れてみるのもいいんじゃないか?思い出ってことでな」
その言葉にボーイが真っ先に同意した。
「賛成賛成!みんな撮ろうぜ!」
特に反対意見が出ることなくボクら6人全員で写真を撮ることになった。シャッターを切るのはトレーナーである。
「じゃあ撮るぞ?せーのっ」
カメラのフラッシュがたかれる。トレーナーは
「現像してくる」
と言い残し、下のトレーナー室へと向かった。少しの間待っていると現像が終わったのかトレーナーが返ってきて6人分の写真を手渡してくる。写真を見て見るとみんな笑顔を浮かべて見ているだけでも楽しそうということが見てとれる写真だった。皆一様に感謝の言葉を述べる。
そして時間も迫ってきているということで、パーティはお開きとなった。この後はみんなそれぞれ帰宅する予定だったのだがボーイから
「みんなオレんちに来ねぇか?二次会だ二次会!」
と提案され、せっかくということでボーイの家にみんなでお泊りすることになった。ボクは外泊許可書を提出していたのでありがたい限りである。
トレーナーと沖野さんがそれぞれ車を出し、ボーイの家までボクらを送ってくれた。2人からは
「あんま遅くまで起きるなよ?」
と釘を刺されたが。
その後はボーイの家で夜遅くまで騒いでいた。学校の話、レースの話、それぞれのチームやトレーナーの話。話題は尽きることはなかった。やはり友達のみんなと過ごすのは楽しい。いつまでもこんな時間が続けばいいのに。そう思わずにはいられない大切な時間だった。
ウマ娘のイベントストーリーでゴルマク派が尊死しているらしいですね。まあ私もやられた1人ですが。