ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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50話突破。なお視点は主人公たちではない。


閑話4 年度代表ウマ娘

《本年度のURA賞もいよいよ最後となりました。年度代表ウマ娘の表彰へと移ります。見事年度代表ウマ娘へと輝いたのはトウショウボーイさんです!》

 

 

 司会の人からの発表があった瞬間、カメラのフラッシュがたかれる。オレは少しばかり眩しく感じたが今の喜びに比べたら気にならない程度だ。司会の人が言葉を続ける。

 

 

《トウショウボーイさんは最優秀クラシック級ウマ娘として選出され、見事年度代表ウマ娘にも選出されました!今のお気持ちをお聞かせください!》

 

 

『もっちろん!めっちゃくちゃ嬉しいです!ファンのみんなー!これからも応援よろしくなー!』

 

 

 そのままオレはピースサインをする。やっぱり嬉しい気持ちは簡潔に伝えた方がいいとオレは思っているので、純粋な今の気持ちを言葉に出す。無理に畏まった言い方をするよりも断然いいはずだ。

 司会の人が進行を続ける。

 

 

《ありがとうございます。元気いっぱいですね!では、今後の目標をお聞かせ願えますか?》

 

 

『今後の目標は、いっぱい走っていっぱい勝つこと!特に負けられないライバルたちがいるのでそいつらには絶対に負けない覚悟でいきます!』

 

 

 絶対に負けられないライバル、言うまでもないがグラス・カイザー、そしてテンさんだ。特にテンさんにだけは絶対に負けられない。

 司会の人はオレの宣誓を聞いて感嘆の言葉を漏らした後、締めの挨拶に入った。

 

 

《それでは、輝かしい成績を残しましたトウショウボーイさんには後日URAより新しい勝負服が授与されます。今後の彼女の活躍に期待して、皆様盛大な拍手をお願いします!》

 

 

 司会の人の言葉とともに会場からは拍手が巻き起こった。オレはつい嬉しくなって手を振ってそれに応える。本当に最高の1日だった。……そう、この時までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年度代表ウマ娘として表彰されてから数日が経ち、いつも通りならオレはチームで練習を行っている……はずだった。しかし年明けに脚の痛みを訴えたオレをおハナさんが病院へと連れて行き、医者の人に見てもらった。診断結果は両脚ともに骨膜炎ということで軽めなら大丈夫だができる限り走るのはダメだと言われた。

 だからと言ってずっと走っていなかったらストレスが溜まると思ったオレは授業での流し程度なら構わないだろうと思い、見学の予定だったところを走らせてもらった。すると運悪くマルのクラスとの合同だったらしく言いつけを破って走っていたオレをマルは当然怒る。そして事情を聞いたテンさんからもこってりと絞られた。それで終わりならどれだけよかっただろうか。

 2人に怒られた後、勝手に走っていたことをおハナさんにキッチリと報告され当然おハナさんからもお叱りが入る。そして今後は勝手に走ったりしないように、学園内では監視の目が入ることになった。その監視役はマルである。今も隣で絶賛オレの監視中だ。

 走るのを控えなければならないということでオレは主にダンベルでの筋力トレーニングを中心にしているのだがこれがまあ暇だ。ただ黙々とこなすだけなので本当につまらない。

 何か面白い話題はないだろうかと思い、ダンベルを動かしながら考えているとふと気になることが出てきた。

 

 

(そういやおハナさんから見て誠司さんの評価ってどんなもんなんだ?)

 

 

 思い立ったら即実行。オレは近くにいるおハナさんに聞いてみることにした。

 

 

「おハナさん、ちょっといいですか?」

 

 

「どうしたのかしら?トウショウボーイ。走らせる気ならないわよ」

 

 

「マルとテンさんとおハナさんにこってり絞られたから勝手に走ろうなんて気力はないです……、じゃなくて!誠司さんのことなんですけど」

 

 

「神藤?彼がどうかしたのかしら?」

 

 

「確か新人トレーナーじゃないですか。テンさんが初の担当だとか。おハナさんから見て誠司さんってどれくらいの実力だと思ってるんですか?」

 

 

「そうねぇ……」

 

 

 おハナさんは少し悩むようなそぶりを見せ少しの間沈黙した後、結論が出たのかオレに教える。

 

 

「凡ね。良くも悪くもない、100点満点中50点、トレーナーの中でも平均って感じよ」

 

 

 その言葉にオレは目を見開いて驚いた。評価高めだと思っていたら結構な辛口評価だったからだ。隣にいるマルもその評価に少し驚いているような表情を見せていた。オレは理由を尋ねる。

 

 

「結構な辛口ですね……。理由とかあるんですか?」

 

 

「理由ねぇ。1番は単純なことよ」

 

 

 おハナさんはそう前置きした後、言葉を続ける。

 

 

「彼がやっていることは教科書通りなんだもの。戦術やトレーニング等、どれも教本に書かれていることを忠実にしているわ。それ自体は悪いことじゃないんだけど……」

 

 

「悪いことじゃないけど?」

 

 

「教本通りのことしかしないから対策も立てやすいということよ。現に今までのレースがそうだったでしょう?王道ともいえる先行でレースを展開して実力勝負に持ち込む。基本的にはそれの繰り返し」

 

 

「へぇ~……」

 

 

「良く言えば堅実、悪く言えばマニュアル通りにしか動けない。だからこそ凡なのよ。今のスタイルを貫くのであれば数年、下手をしたら10数年単位で時間はかかるけど有名なトレーナーにはなれると思うわ。教本通りに動くっていうのは新人トレーナーにはありがちなことだけどね」

 

 

 と、おハナさんは誠司さんに対する評価を下した。なるほど、教本通りのことしかできないのなら確かに対策は立てやすいだろう。

 すると今まで黙っていたマルがおハナさんに質問を飛ばす。

 

 

「それじゃあ、もしも、もしもの話よ?神藤さんが教本通りに動くことを止めた場合東条トレーナー的にはどうなると思う?」

 

 

「難しい質問ね……」

 

 

 おハナさんは少しの間悩むように黙った後、やがて結論が出たのか口を開く。

 

 

「彼、トレーナーになってからは大人しくしているけどトレーナーになる前は結構突飛なことをやっていたのよ」

 

 

 しかし口から出たのは誠司さんの昔話だった。一体どういうことだろうか?ただ関係はあると思うのでオレたちは黙っておく。

 

 

「普通じゃ考えつかないような発想をしては周りによく危害を及ぼしていたわ。それで生徒会に通報されては正座で怒られていたものよ」

 

 

「いい大人が何してんだよ……」

 

 

 オレは思わずそう言ってしまった。いい歳した大人が年下の生徒に正座で怒られる光景を想像すると情けなさの方が際立つだろう。しかしおハナさんはその後フォローを入れる。

 

 

「でもその発想も誰かのためであることが多くてね、最終的にはお咎めなしってことが多かったわ。それに彼が学園内でも結構自由にさせてもらっているのは知っているでしょう?」

 

 

 マルは納得するように答える。

 

 

「そうねぇ、普通だったら解体するようなプレハブ小屋を個人所有させてもらえるなんてあり得ないわ」

 

 

「それは学園に対する貢献の大きさもあるのよ。カフェテリアの食料の流通ルートを確保したのも彼だし、学園で作業をしている工事の業者は全てが彼の知り合いよ。それと学園のトレーニング室にある機材は全て最新の物。それを卸してもらえるのは彼のおかげと言っても過言ではないって理事長は言っていたわ」

 

 

「なんというか、聞いてるとなんでトレセン学園で用務員やっているのか不思議になってくるな」

 

 

 本当に不思議でならない。それだけの人脈があるならもっと他の仕事に就くっていう選択肢もあっただろう。個人事業主をやった方が儲かるんじゃないだろうか?

 ただその辺の事情はおハナさんも知らないらしい。首を振る。

 

 

「さぁ?どうして彼がトレセン学園の用務員になったのかは学園の7不思議に数えられるぐらいには謎よ」

 

 

(おハナさん知っているのか。トレセン学園の7不思議)

 

 

 そう思ったのもつかの間。話が脱線したわね、と前置きした後先程の評価の話に戻る。

 

 

「とにかく彼の発想はかなり自由なものよ。それがレースに活かされるようになった場合、彼が育てたウマ娘は最重要で警戒しなければならないでしょうね。何をするか、何をしてくるか分からないもの」

 

 

「何をしてくるか分からないってのは怖いな……」

 

 

「そうなった場合、凡なんて評価は下せないわね」

 

 

 おハナさんはそう締めた。総括すると今のままなら凡、化けるようなら最重要で警戒しなきゃいけないほどヤバい、ってことだろう。化けた場合のテンさんと勝負をしてみたいが、誠司さんはテンさんを大事にしている。望みは薄いかもしれない。

 すると1人のウマ娘がこちらへと戻ってきた。そのままおハナさんに話しかける。

 

 

「……東条トレーナー、提示されたトレーニングが終わりました。次はどうすればいいでしょうか?」

 

 

「さすがね、ルドルフ。それならクールダウンした後このメニューをしなさい」

 

 

「分かりました」

 

 

 そのウマ娘の名はシンボリルドルフ。メイクデビューはまだだがおハナさんが期待を置いている子だ。オレも仲良くさせてもらっている。

 オレはルドルフに話しかける。

 

 

「ルドルフ~!頑張ってんな!このままいけば3冠ウマ娘だって夢じゃないんじゃねぇか?」

 

 

「トウショウボーイさん。フフッ、勇往邁進。私の夢、目標に向かってただ進み続けるだけですよ。トウショウボーイさんもしっかりと怪我を治してください」

 

 

「おうよ!治ったらまた一緒に走ろうぜ!」

 

 

 ルドルフは笑みを浮かべた後クールダウンのためにすぐにオレたちから離れていった。別に敬語はいらないと言っているのに律儀なやつだ。

 そう考えているとおハナさんがこちらに注意してくる。

 

 

「さて、無駄話はもうおしまいよ。トウショウボーイもマルゼンスキーもそれぞれの練習に戻りなさい」

 

 

「はーい」

 

 

「分かったわ」

 

 

 そう言われてオレたちはそれぞれのトレーニングに戻る。

 おハナさんは一応春の天皇賞を目標にメニューを組んでくれている。そして天皇賞ほどの大レースともなれば、あの3人は確実に出走してくるはずだ。オレは思わず笑みがこぼれる。

 

 

(見てろよみんな!しっかりと脚を治して、天皇賞の盾はオレが戴くぜ!)

 

 

 その頃には新しい勝負服も届くだろう。春天が初のお披露目になるはずだ。思わずテンションが上がって大声を上げる。

 

 

「春天もオレがぶっちぎるぜー!」

 

 

「トウショウボーイ!黙ってトレーニングしなさい!」

 

 

「すいません!」

 

 

 案の定おハナさんに怒られた。その後のオレは黙々とトレーニングをした。




マルゼンスキーがいるということはアプリでは同級生っぽいルドルフももう学園にいるということで登場。ただ出番はほぼないと思います。マルゼンスキーは年代が近いから絡みやすいけどルドルフは完全に年代が違うので……。
そろそろお盆が近いので纏まった時間が取れそうだからプロローグをはじめとした最初の方の話を大幅に改稿する予定です。ただ話の本筋を変えるような変更はしません。見返すと今と全然違うと思ったので……。改稿した時はまたその時の最新話の前書きでお知らせします。
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