ウマ娘プリティーダービー~流星が描く軌跡~   作:カニ漁船

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合宿はまだまだ続くよ回


第66話 着実に前に

 合宿が始まって数週間ほどが経った朝、ボクは合宿所として利用している旅館で目を覚ます。もう景色も見慣れたものだ。いつものように顔を洗い、日課である新聞を読んだ後、朝食をいただいて身支度を済ませる。身支度が済んだ後はロビーへと向かい、トレーナーと合流。お互いに挨拶を交わす。

 

 

「おはようテンポイント。じゃ、今日も早速やろうか」

 

 

「おはようさんトレーナー。せやな、今日も頑張るわ」

 

 

 挨拶を交わした後、トレーナーが運転する軽トラの助手席に乗って熱海峠へと向かう。

 熱海峠に着いたら軽トラの荷台に乗せてある自転車を降ろして、ヘルメットを装着し走らせる準備をする。全ての準備が終わってので、ボクは自転車を漕ぎ始める。

 このヒルクライムも、最初は熱海峠を越えることすらできなかったがすでに一番軽いギアでの走破は成し遂げており、今は6段階中4段階目のギアまで上げている。それでもすでに湯河原峠の入り口まで来ているので走破するのも時間の問題だ。

 

 

(それに、最初こそ、キツう思うてたけど、慣れると、そうでもないやんな!)

 

 

 そう思いながら、ボクは自転車で峠を快調に飛ばしていく。疲れもそこまでない。この分なら楽勝だろう。

 今日の朝のトレーニングが終わりそうな時間、ボクはギア4でのヒルクライムに成功した。ガッツポーズをして喜ぶ。

 

 

「ッしゃあ!今日でギア4走破や!これで後はギア5とギア6やな!」

 

 

「いいペースだなテンポイント。これなら次のレースまでには最大ギアでの走破は問題なさそうだな」

 

 

 軽トラを運転してボクを後ろから追跡していたトレーナーが合流してボクにそう告げながらタオルを渡してくる。ボクはタオルを受け取り、汗を拭きながらトレーナーに笑顔でピースサインを向ける。トレーナーはそれにサムズアップで答えた。

 軽トラに自転車を載せて旅館へと帰る道中、ボクはトレーナーに今日の午後のトレーニングについて確認する。

 

 

「トレーナー。今日の午後は何するんや?プールか?併走か?それともジムで筋トレか?」

 

 

「そうだな……。今日はジムでの筋トレの日だな。昼食取り終わったらトレーニングジムに向かうぞ」

 

 

「ん、了解や」

 

 

 どうやら今日はジムでのトレーニングらしい。ボクは了承する。

 この夏合宿、午前中はヒルクライムで固定されているが午後のトレーニングは日によって変わっていた。合宿初日は時間がなかったのでヒルクライムのみにとどまったが、2日目は併走トレーニングをしていた。その次の日はトレーニングジムで上半身を中心に鍛え、そのまた次の日はプールでのスタミナと筋肉のトレーニング、その次の日はまたジムでのトレーニング……といったように交互にトレーニングを行っていた。そこに1週間に1回ずつ、あの併走トレーニングと午後のトレーニングが丸々休みの日が入る形である。

 丸々休みの日といっても、その日は基本的に勉強の時間となっている。レースの座学、逃げのための勉強、学園の課題などを主に取り組んでいた。お陰様で、逃げに対する知識はかなり蓄えることができたと自負している。この合宿、かなり順調に進んでいることにボクは1人ほくそ笑んだ。

 だが、すぐに気合を入れなおす。順調にいっているからといって満足するわけにはいかない。少しの油断が敗北に繋がる。だからこそ最後まで気を抜かないように気をつけなければならない。

 そう考えていると、いつの間にか旅館に着いていた。ボクは助手席から降りてトレーナーとともに昼食を取りに向かう。ギア4での走破を達成した喜びからか、ボクの足取りは軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食を取り終わって今度は車でジムへと向かった。ジムに着いたら軽くストレッチをして早速トレーニングを始める。まずは手始めに器具を使わないトレーニングから。腕立て伏せの体勢を取って、トレーナーの合図とともに始める。

 

 

「いち……ッ!にぃ……ッ!っさん……ッ!」

 

 

「いいか?数をこなすことを考えるな。正しいフォームを意識して負荷をかけるイメージだ」

 

 

「りょう……、かい……!ごぉ……ッ!」

 

 

 基本的な腕立て・腹筋・プランクをしていく。それぞれ腕立てと腹筋は10回を3セット、プランクは20秒を3セットだ。本命はこの後控えているので、数自体はそこまででもない。ただ、最初の方は正しいフォームで時間をかけてやっていたのでかなりキツかったことを思い出す。しかし、ボクはすぐにトレーニングの方へと意識を向ける。

 そして、プランクが3セット終わったところで長めの休憩を取る。タオルで汗を拭いているとトレーナーが今日やる予定のメニューを説明する。

 

 

「……と、まあこんな感じだ。何か質問はあるか?」

 

 

「いや、大丈夫や。もうちょい休憩取ったらさっそく始めよか」

 

 

「分かった」

 

 

 トレーナーの組んだメニューに異論はなかったのでそのことをトレーナーに伝えてボクは休憩を取る。

 合宿の初日からトレーナーが組んだメニューをしていたのだが、これが驚くほどボクに合っていた。ボクの足りないもの、重点的に鍛える箇所をしっかりと分析したうえで最適な数のトレーニングをこなせるように組んである。あまりにも凄かったのでトレーナーにその喜びを伝えながらどうやってこのメニューを考えたのかを聞くと、トレーナーはこう答えた。

 

 

『ここのジムの人に教えてもらいながら……な。俺1人の力で組んだわけじゃないが、そんなに喜んでもらえたのなら本望だ』

 

 

 どうやらここのジムの人に教えてもらいながら作成したメニューらしい。それでも、ボクのために一生懸命考えてくれたのだと思うと嬉しくなる。

 そんなことを思い出したが、そろそろ時間なので休憩を切り上げてトレーニングへと移る。まずはベンチプレスから始める。それなりの重量はあるバーベルをボクは数を数えながら持ち上げる。横ではトレーナーがアドバイスをしながら応援していた。

 

 

「さ……んッ!しぃ……いッ!」

 

 

「腕だけで持ち上げようとするなよ!背中や胸、様々な部位を使って持ち上げることを意識しろ!」

 

 

「しぃ……ちッ!はっ……ちッ!」

 

 

「いいぞ!そのまま残り半分だ!」

 

 

 ベンチプレスは1セット15回、それを3セット。普段やっている練習だったら楽勝な量だが、今回は合宿ということでボクが持ち上げられる限界ギリギリの重さのバーベルを用意されている。なので持ち上げるのも一苦労だ。気合を入れて持ち上げている。全てはレースで勝つために、今やっているトレーニングも必ず力になる。その一心で続ける。

 ベンチプレスを3セット終えてしばらく休憩を取って次に向かう。次にボクはベンチに腰掛けて、両手にダンベルを持つ。このダンベルも持ち上げられる限界ギリギリの重さだ。そのダンベルを担ぐようにして持ち上げる。そのまま、腕を上に伸ばしてダンベルを持ち上げる。これが結構キツい。肘を伸ばしきるのではなく、伸ばしきる直前で止める必要がある。そうしなければ効果が薄れてしまうからだ。肘を伸ばしきらないように気をつけながらボクはダンベルを上に持ち上げてはまた担ぐような体勢に戻す。これをベンチプレスと同じ数繰り返す。

 その後も、主に上半身の筋肉を使うことを意識した筋トレを続けていった。やり過ぎないように、数をこなすよりも負荷をかけることを意識するようにしっかりとトレーニングを行う。最後のトレーニングを終えたところで、トレーナーがボクに告げる。

 

 

「よし!今日のトレーニングは終わりだ!クールダウンして旅館に戻るぞ、テンポイント」

 

 

「ハァ……、ハァ……ッ!りょう……かい……や!」

 

 

 ボクは肩で息をしながらトレーナーの言葉に返事をする。数が少ないとはいえ、正しいフォームを意識しつつ、負荷をかけてトレーニングをやっていると思いの外体力を消費する。それに13時から日が沈みかける時間までみっちりとやっているのだから余計に。そう考えながらボクはクールダウンをする。

 クールダウンが終わった後は、帰り支度を済ませてトレーナーの車で旅館に帰る。勿論、この後もやるべきことは残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旅館に帰ってまずやることは夕食を取ること。トレーナーが旅館の人に頼んでボク専用のメニューを組んでもらっている。合宿が始まって数日は疲れで食欲不振になり無理矢理押し込んでいたが、今は食欲不振になることはなくむしろ足りないと感じておかわりを頼むまでになっていた。我ながらトレーニングでも食事でも成長を実感している。

 食事を取り終わった後は旅館にある温泉に入る。温泉につかると、疲れが取れていくことを実感する。思わず声が出た。

 

 

「あぁ~……。初日からずぅっと入っとるけど、ホンマにええなぁ……ここの温泉……」

 

 

 今度グラスに教えてやろう。まあ向こうはもうこの場所を知っているかもしれないが。そんなことを思いながらボクは温泉でのんびり過ごす。時折サウナと水風呂を行き来しながらボクは今日の疲れを癒していた。

 温泉から上がったボクを待っているのはトレーナーからのマッサージである。2日目の後、毎日やってもらえないかとお願いしたところ、トレーナーは快諾してくれた。温泉に加えてマッサージもしているのだから寝る頃には1日の疲れは取れているといっても過言ではない。

 トレーナーからのマッサージを施された後、少しだけ勉強会をやる。とは言ってもこれは休みの日にやっている勉強の復習みたいなものだ。特に苦戦することなく黙々と課題を進めていく。

 そして21時を回った頃、トレーナーがボクに告げる。

 

 

「そろそろだな。部屋に戻ってゆっくり休んでくれ」

 

 

「ん?もうそんな時間か。ほなトレーナー、また明日やな」

 

 

「あぁテンポイント。また明日」

 

 

 お互いに別れの挨拶をしてボクは部屋から出て自分の部屋へと向かう。

 そして自分の部屋に戻った後、ボクは歯を磨いて軽めのストレッチをする。それが終わった後はメッセージが来ていないかの確認をする。あの宝塚記念以降、ボクは頻繁にメッセージを確認するようになった。理由は単純で、あの一件でボクは周りの人に多大な迷惑を掛けたからである。なので、練習中に確認ができない代わりに、1日の終わりである寝る前にしっかりと確認して返信を返すようにするようにしている。

 

 

「誰からも連絡なし……。やったら、もう寝るか」

 

 

 誰からも特に連絡が来ていないことを確認してボクは消灯して寝る。すぐに眠りについた。

 こうしてまた、ボクの合宿の1日が終わる。




衣装違いチケゾー……衣装違いチケゾーが欲しい……。でも石がなければ金もない……。
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