魔法英雄伝〜Fantasy Hero Story Episode3〜   作:Uさんの部屋

102 / 102
※本作はEpisode1〜Finalの後日談です。先にそれらを読んでおくことを推奨致します。















Episode Finale せめてもう一度

………世の中は所詮理不尽だ。時折、思うようには行かないし、突然環境が変わったりするし、友達と離れなきゃならなくなるし………私には………大事な友達がいたのに………その友達も、居なくなってしまったし………

 

 

 

バレンシュとの激闘から4年、とあるファミレスでは………

 

永美「ビーフステーキ、ポテト大盛り、それと大盛りパフェ持ってきて。」

 

中学二年生となった永美がファミレスでそのように注文していた。しかし、永美のかつての姿ではなかった。髪色は黒から金色になっていて、制服も改造したものになっている。

 

店員「かしこまりました………」

 

優「まだ食うのか………もう3回目だぞ………?」

 

店員「は、はあっ………というかお客様、なんというか………素行不良のお客様を大量にお連れするのは勘弁して頂けないでしょうか………?」

 

実は優と永美が座っている席の前後ろには、どう見ても不良が多くいた。

 

優「………何か問題起こしたら警察にでも引渡してください。向こうが勝手に着いてきてるだけなんで。あ、彼らの代金も僕がだすんで、請求はこっちに………」

 

店員「だ、大丈夫ですか………? 既に50000円を超えてますけど………」

 

店員はそう言って、お会計伝票を数枚渡してくる。少し怒り出したが………

 

優「大丈夫です〜金はあるんで〜」

 

と言って誤魔化した。店員は怯えた表情で席を離れた。

 

優「頼むからさ、話し合いの場に舎弟を連れてこないでくれよ。出費がかさむ。」

 

永美「別に、優さんにはお金があるんだからいいじゃないですか。」

 

優「開き直るなよ………まあいい。もう何度目か忘れたが………グレても夢乃ちゃんとエリアルは戻って来ない。その理由は過去に何度も話した通りだ。辛い現実かもしれないが、受け入れてほしいんだ………」

 

永美「それを赤の他人である優さんが命令する義務は無いでしょう? それに、今更普通の生活には戻れません。彼等が路頭に迷うから。」

 

優「あのなあ………」

 

永美「それに………その理由が分かったのなら尚更無理です。夢乃やエリアルが今どうなってるのかも分からないというのに………私だけ呑気に普通の生活には戻れない………」

 

優「………会う度に何度も謝ってきた事だが………君達にこんな使命を負わせてしまった事は謝罪する。でも、不良になる事だけは僕の望んだ道じゃない。僕は、君を歪ませる為にセレクトドライバーを渡したんじゃない。」

 

永美「………」

 

永美が俯いたまま口を閉じると………

 

不良「木葉永美はどこの席だ!」

 

別の学校の不良が数人でファミレスに殴り込んできた。

 

永美「またか………」

 

永美は呆れた様子で呟く。永美の舎弟が永美達を守ろうとするが、殴られたり蹴られたりで一蹴された。不良の元締らしき人物は、永美たちが座る席の前に立ち………

 

不良「今すぐ裏に来い。決闘だ!」

 

優「決闘は犯罪だぞ〜」

 

ゆうは呑気にドリンクの入ったコップを、ストローでカチャカチャ回す。

 

不良「黙れ、白頭!」

 

不良は殴りかかってきた。優はその拳を左手で受け止めた。

 

優「黙るのはお前だ、今マジの話し合いをしてるんだ。帰れ、お前みたいな奴が来られるとこっちの信用が落ちる。」

 

不良「なんだと!?」

 

不良はもう一度殴ってくるが、軽々と回避し、不良の腕を掴む。

 

優「………話が通じねぇな。耳を引きちぎられたいか? 鼓膜を再生出来ない程に破るだけでも勘弁してやるが?」

 

優はマジのトーンでそう言い放った。不良は恐怖に駆られ………

 

不良「う、うわあああああっ!?」

 

慌てて逃げだした。彼の舎弟もまた、大慌てで追いかけて行った。

 

優「はあっ………この声出すと喉が痛くなるんだよなぁ………」

 

永美「………優さん、脅しが怖すぎです。」

 

優「うるさいな、君達のせいで何個、店の出禁をくらったと思ってるんだ。」

 

優がやれやれと呟いていると、店員が現れ………

 

店員「お客様………注文した料理をお持ちしました………あと、これを食べたらもう二度と来ないでください。」

 

優「ええっ!? またか!?」

 

出禁宣言をくらった。

 

優「………お前らのせいで………!! 不良共の分も会計するのは無しだ!!」

 

不良達「ええっ!? 待ってください、優様仏様ー!」

 

優「仏を絡めてくるんじゃねぇー!!」

 

永美「………はあっ。」

 

優は頭を抱え、永美は呆れながらテーブルに並ぶ料理を食べていた………

 

 

 

優「はあっ、もう嫌だ………」

 

永美「だったら私と関わらければいいのに。」

 

優「仕方ないだろ、嫌でも関わんなきゃなんないだから。」

 

優が愚痴を呟きながら岐路を歩いていると、その道中で………

 

優「………あ、あれは………美恵ちゃんか。」

 

永美と同じく夢乃達を失ってから元気をなくしていた美恵をみかけた。

 

優「美恵ちゃん!」

 

優は美恵の方に歩き出す。永美は気まずいのか、しれっとその場を離れようとしたが、優に腕を掴まれて無理矢理美恵の方に連れて行かれてしまった。

 

美恵「あ………優さん、それに永美ちゃん………」

 

永美「………私、帰る。」

 

優「待て。逃げるなって。」

 

永美「逃げて何が悪いんですか!! 私は………夢乃やエリアルがいない………4人が揃わない生活なんてつまらないんです!!」

 

永美はそう言うと、その場から逃げた。

 

優「………やれやれ。」

 

優は呆れた表情を浮かべる。

 

美恵「あの………またあの調子ですか?」

 

優「うん。それどころか、隣の学校占領したって………永美ちゃんが活発なのは昔からだが………今はそれが悪化してるし………」

 

優は困った表情を浮べる。

 

美恵「………ごめんなさい、永美ちゃんと同じ学校なのに………今は話もしなくなって………」

 

優「………だろうな、僕も何回も説得してるが、全く話が進まない。」

 

美恵「………そういえば、夢乃ちゃんのお兄さんは………?」

 

優「光太郎くんか。彼は………」

 

優か光太郎の話をしようとするとそこへ………

 

光太郎「………あ。」

 

偶然光太郎がやってきた。

 

光太郎「お久しぶり………です。」

 

光太郎はそう言って立ち去ろうとしたが………

 

優「待ってくれ。君に渡したい物がある。」

 

優はそう言うと、服の中からとあるベルトを取り出す。それは………

 

光太郎「………! サウルス………ドライバー………!?」

 

優「そうだ、君を巻き込んでしまったベルトだ。最近、完成した安全版だ。」

 

優はそう言うと、それを光太郎に渡す。

 

優「君が持っているケツァルコアトルスフォシルも使えるはずだ。」

 

光太郎はベルトを受け取り、同時にケツァルコアトルスフォシルを取りだし、2つを眺める。

 

光太郎「………でも、こんなものを今手にしても遅い………俺は………何も出来なかったんです。己の弱さに負けて………間違った道を歩いてしまったから………」

 

優「光太郎くん………」

 

優は心配する様子を見せる。すると………

 

??「うわあああああ!!」

 

男の悲鳴が聞こえた。美恵達は声が聞こえた方に向かうと、そこには身構える永美と、先程優にビビって逃げ、今は倒れている不良、そして、謎のフードを被った男が立っていた。

 

優「(永美ちゃんとさっきの不良………それに………)………誰だ、お前?」

 

優は謎の男にそう問いかける。すると、男は謎の機械を取り出し、腰に当てる。その機械は、ベルトのようなものだった………

 

美恵「べ、ベルト………!?」

 

そして男はそのベルトに青い剣型のパーツをベルトにセットする。

 

『ソードセット!』

 

男はベルトにセットした剣パーツを押し込む。すると、剣パーツの刃を模した部分が伸びる。

 

?????「変身。」

 

ベルトから剣型の鎧セットが出現し分解。男の体を覆った。

 

光太郎「へ、変身した………!?」

 

?????「私はブレイダー。剣の達人にして………魔法使いを超越するものなり………!」

 

優「(………! 魔法使いを知っている………!?)」

 

ブレイダーを名乗る男が魔法使いを知っている。優がその事実に驚いていると………

 

永美「魔法使いを超越だって………笑わせんじゃねえ! 変身!!」

 

永美はそう言うとセレクトドライバーを取りだし、装着。ダイヤルを魔王サイドに回し、手前に倒す。

 

『デビルアップ………! 世界を滅ぼす最強の魔法使い! デビルマジカル!! ………Last of World………!』

 

永美はデビルマジカルに変身し、ダークデビルソードを手に斬撃を放つ。しかし、ブレイダーの鎧にはビクともしない。

 

永美「なっ!?」

 

ブレイダー「そんな攻撃が効くか。」

 

ブレイダーはそう言うと、反撃の為に剣を軽く一振りする。しかし、ブレイダーの一撃で永美は大きく吹き飛ばされた。

 

永美「うわあああああっ!?」

 

永美の体は地面に叩きつけられる。

 

永美「ううっ!」

 

美恵「永美ちゃん!!」

 

美恵は永美に駆け寄る。

 

ブレイダー「………雑魚が、お前らがバレンシュ様達を滅ぼした相手とは………これでは残りの2人も大したこと無さそうだ。」

 

ブレイダーは遠回しに夢乃とエリアルの事も侮辱していた。それを聞き永美達は怒りを覚える。

 

光太郎「お、お前如きが………夢乃達の強さを勝手に決めるなあぁぁ!!」

 

光太郎はサウルスドライバーを装着し、ケツァルコアトルスフォシルをベルトにセットする。

 

『ケツァルコアトルス!』

 

光太郎「変身!」

 

光太郎はベルト上部を押し込む。

 

『ネオサウルスアップ………! 大型翼竜………! 史上最大飛翔動物………! ケツァルコアトルス、アームド………!!』

 

光太郎は変身し、サウルスファングナックルが右腕に装着された。光太郎はパンチを放つが、これもブレイダーの鎧には全く通じなかった。

 

ブレイダー「ふん!」

 

ブレイダーは鼻を鳴らし、左手で光太郎にパンチを放つ。

 

光太郎「うわあああっ!」

 

光太郎は大きく吹き飛ばされ、地面に倒れる。

 

美恵「光太郎さん!!」

 

美恵はセレクトドライバーを取りだし、装着すると………

 

美恵「許さない………変身!!」

 

ダイヤルを永美とは逆に倒し、ダイヤルパーツを手前に倒す。

 

『グリムリーパーアップ! 命を刈りとる影の戦士! グリムリーパーパワフル!! You are Fate………?』

 

美恵は変身と同時にシャドウサイズで攻撃を仕掛ける。だが、その攻撃はブレイダーが直前に剣を召喚し、美恵の攻撃を防いだ。

 

ブレイダー「ギャーギャーうるさい………まとめて始末してやろう!」

 

ブレイダーはベルトにセットされた剣パーツを押し込む。

 

『ブレイダーストライク!!』

 

剣にエネルギーを纏わせた斬撃を永美達3人を吹き飛ばした。

 

永美達「うわあああああっ!!」

 

永美達3人は大きく吹き飛び、地面に叩きつけられる。その直後、永美達の変身が解除された。

 

永美「ぐっ………」

 

美恵「ううっ………」

 

光太郎「ち、ちくしょう………!」

 

ブレイダー「ふっ………トドメだ………」

 

ブレイダーが剣を手に3人の元に接近する。すると………

 

『ダークドラゴン! クリエイション!!』

 

突如機械音声が聞こえる。その機械音声の直後、ブレイダーは横から飛んできた黒い竜に吹き飛ばされた。

 

ブレイダー「ぐあっ!?」

 

ブレイダーは突然の奇襲に驚いていた。視線を前に向けると、そこにはクリエイションハンドガンを手にする優の姿が………

 

ブレイダー「貴様の仕業か………!!」

 

優「彼女達を殺させるわけにはいかない。引かせてもらう!!」

 

優達はその場にいる永美達と倒れていた不良を黒い竜ハーデスドラゴンの上に乗せ、その場を離れた。

 

ブレイダー「………おのれ。」

 

優の手引きによって逃げられてしまったことに、ブレイダーは思わずそう呟いた………

 

 

 

その後、永美達は優の秘密研究所に移動していた。助けた不良については救急車で病院へと運んでもらった。永美達は春香に手当てしてもらっていた………

 

永美「………私なんか手当てしなくていいですよ………」

 

春香「だーめ、怪我が悪化したらダメよ?」

 

美恵「そうだよ、永美ちゃん。それに、永美ちゃんは知らず知らずのうちに怪我してるじゃない。」

 

永美「………こんな痛みで苦しんでられないよ。私は………」

 

永美が俯きながらそんな事を話す。するとそこへ優がやってきた。

 

優「解析が出来た。奴の使っているベルトは4年前の戦いで魔法使い達が使っていたものと遜色ない技術と思われる………それはつまり………ゲンの作ったものだろうね。それなら奴の言動も当てはまる………奴の性格上、自分のモノを超えるスペックは作らないはずだからそれよりは劣っているだろうけど………相当な相手だろうねぇ。」

 

美恵「つまり………ユナイトギアを使うしかない………って事ですか。でも………」

 

永美「………今は合体できない………心がバラバラだから………」

 

永美と美恵は落ち込む様子を見せた。優は溜息をついて………

 

優「やれやれ、しょうがないな。」

 

そう呟く。しかし、その中で光太郎は………

 

光太郎「………俺はやります。それが、少しでも夢乃達への償いになるのなら………」

 

優に向けてそう語る。それを聞いた優は………

 

優「………死ぬかもしれないよ、覚悟はあるんだろうね?」

 

光太郎「はい!」

 

優「即答かよ………わかった、秘蔵兵器を出そう。」

 

優はそう言うと、自身の研究室へ入り、少ししてアタッシュケースを手に戻ってきた。優はアタッシュケースを開けると、光太郎に見せる。その中身はベルトとだった。

 

光太郎「これは………!?」

 

優「ガーディアンドライバーとケツァルコアトルスリアルストーン。僕が作ったドライバーだ。出力だけなら僕のベルトでも最強クラスさ。でも、デメリットが大き過ぎる代物でね。」

 

光太郎「デメリットとは………?」

 

優「………安全性を重視した結果、連続稼働時間が3分しかもたない。3分経ったら強制的に変身が解除される。」

 

光太郎「………3分で倒せば問題ないはずです。」

 

優「リスクを顧みずか………まあいい。どうせ君は止めても行くんだろう? なら、君の言葉に賭けよう。」

 

優はそう言って彼の言葉を受け入れる。光太郎はベルトとケツァルコアトルスリアルストーンを手にし………

 

光太郎「行ってきます。」

 

光太郎はそう言うと、秘密研究所を後にした。そして優は2人を目にし………

 

優「君達はどうするんだ? まあ、どっちでもいいけど。とにかく、光太郎くんを死なせる訳には行かない。彼のサポートに行ってくる。」

 

そう言い放って自身の研究室に向かう。

 

永美「どっちでもいい………か、見くびってんじゃないよ!! 夢乃の為って言うなら………私にもあるよ! それに、エリアルの為にも………! 美恵も同じなんでしょう………? 」

 

美恵「………勿論だよ。優さんには悪いけど………ちょっと見くびられてる………かな………!」

 

永美と美恵は互いに顔を見合わせると、何も言わずに秘密研究所の入口へと向かった。春香は2人の様子を黙って目にし………

 

春香「これも計算づくですか………優さん?」

 

そう呟くのだった………

 

 

 

そして、優の研究室では………

 

優「………はあっ、ひっさしぶりに嘘ついた。奴の解析なんか何十分もやってねぇよ………奴の特徴を教えたのも、あのベルトを作ったのも………君達の仕業だろう、夢乃ちゃん、エリアル………」

 

優は先程の会話で見せなかった本音を語っていた。優は直後、机の上に置かれたノートを目にする。ノートには魔法使いの世界で使われる言語で記された文章が刻まれていたのだった………

 

 

 

そうとは知らず、光太郎が1人ブレイダーの元へと向かっていた。

 

ブレイダー「貴様は………ほう、わざわざ死にに来たか。」

 

光太郎「違うな………俺がやるのは………贖罪だ。」

 

光太郎はそう言うと、先程受け取ったベルトを取りだし、装着する。

 

『ガーディアンドライバー!』

 

光太郎はベルト中心の盾を模したパーツを上にスライドさせる。それによって出現した穴にケツァルコアトルスフォシルをセットする。

 

『ケツァルコアトルス、セット!』

 

危険を示唆する待機音がベルトから鳴る。光太郎は身構えると………

 

光太郎「変身!!」

 

光太郎は盾を模したパーツを元に戻す。

 

『ガーディアンアップ! 最強の守備騎士! ガーディアンケツァルコアトルス!! ………立ちはだかる獲物を喰らえ………!』

 

光太郎の体にケツァルコアトルスの意匠が付いた、騎士のような鎧が装着される。そして、右腕にケツァルコアトルスの模型が付いた拳武器が出現する。

 

『ケツァルコアトルスナックル!』

 

光太郎「謝ってもらうぜ………夢乃を………いや、夢乃達を侮辱した事を!! はあっ!!」

 

光太郎は拳を突き出す。ブレイダーは剣を召喚し、防ごうとするが、光太郎の攻撃が直撃した勢いでブレイダーは吹き飛ばされた。

 

ブレイダー「ぐあああっ!?」

 

ブレイダーは地面に倒れる。

 

ブレイダー「バカな………何だこの力は………!?」

 

光太郎「決まってんだろ………俺の大事な妹と、その友達を侮辱した………俺の怒りだあああ!!」

 

光太郎は鋭いパンチを放つ。

 

ブレイダー「ぐあああっ!!」

 

ブレイダーは大きく吹き飛ぶ。

 

光太郎「まだ終わらせねぇよ………俺の怒りは………こんなもんじゃねえ!!」

 

だが、光太郎は追い討ちをかけるようにパンチを放つ。彼の中で夢乃達を侮辱された事が………それほど許せなかったのだろう。光太郎がひたすらブレイダーを殴り続ける中、永美達が駆けつける。

 

美恵「光太郎さんが………押してる!?」

 

勝負の流れは見た感じ光太郎優勢だった。

 

永美「押してるけど………でも、あれじゃ持たないよ………」

 

しかし、永美はそう呟いた。その理由は………

 

光太郎「うおおおおっ!! ………ぐっ!?」

 

直後、光太郎の体に異変が生じたからだ。

 

美恵「こ、光太郎さん!!」

 

美恵の声が響く。光太郎は体に走る電流を目にし………

 

光太郎「も、もうオーバーヒートかよ………早すぎるぜ………でもな………まだ倒れられねぇんだよ!!」

 

自らの状態に気付く………気づいたが動きを止めない。理由は1つだ。夢乃達の為………そのような純粋な思いだけが彼の中に渦巻いていた。

 

光太郎「喰らえ………クソ野郎がああ!!」

 

光太郎はガーディアンドライバーの盾を模したパーツを上にスライドする。

 

『ガーディアンチャージ!!』

 

光太郎はベルトパーツを再度下に操作する。

 

『ガーディアンフィニッシャー!!』

 

光太郎の右手に光が纏われ、光太郎は光のパンチを放つ。

 

ブレイダー「ぐあああっ!!」

 

ブレイダーは大きく吹き飛ばされた。

 

光太郎「はあっ、はあっ………ぐあっ!」

 

しかし、同時に光太郎の変身が解除されてしまった。光太郎はボロボロの姿で倒れる。

 

永美「っ………! 夢乃の兄貴!!」

 

永美達が光太郎の元に駆け寄る。光太郎は生きてこそいたが、立ち上がれそうになかった。

 

光太郎「はあっ、はあっ………ちきしょうが………」

 

光太郎が苦しんでいると………

 

ブレイダー「はあっ、はあっ………グズ共が………この私を追い詰めるだと………? ふ、ふざけるな!!」

 

ブレイダーは途端に叫び出した。そして、怒りに身を任せたまま、永美達の方へ走ってくる。

 

永美「美恵!!」

 

美恵「分かってる!!」

 

2人はセレクトドライバーを同タイミングでセット。そして、ベルトのダイヤルパーツを外し、ユナイトギアをセットする。

 

『パーツセット!』

 

2人は一瞬アイコンタクトをとり………

 

永美達「………変身!」

 

同タイミングでユナイトギアを一回転させた。すると、2人のセレクトドライバーの真ん中のパーツが展開。

 

『ユナイトアップ! デビル&グリムリーパー、ツインパワーズユナイト! デビルグリムリーパー!!』

 

永美達は合体。デビルグリムリーパーへと変身した。2人は両手にユナイトウェポンを1パーツずつ装着する。

 

永美達「はあああっ!!」

 

永美達はスペックを上げたパンチを放つ。しかし、2人のパンチはブレイダーの両手に止められる。

 

ブレイダー「雑魚どもが………私に勝てると………思うなあああ!!」

 

ブレイダーはそう言うとキックを放ち、2人を吹き飛ばす。

 

永美達「うわあああああ!!」

 

ブレイダーは猛スピードで永美達の落下地点に先回りし、回し蹴りを放ち、更に永美達を打ち上げる。

 

永美達「うわあああああ!!」

 

ブレイダー「貴様達には死あるのみだ………くらえ!」

 

ブレイダーはベルトにセットされた剣パーツを押し込む。

 

『ブレイダーストライク!!』

 

ブレイダーは大きく飛び上がると、空中に吹き飛ばされた永美達に向けてキックをぶつける。

 

永美達「うわあああああっ!!」

 

永美達は大きく吹き飛ばされ、地面に体を叩きつけられ、変身解除に追い込まれてしまった。

 

永美「ううっ………!」

 

美恵「ああっ………!」

 

2人は立ち上がろうとするが、2度の変身解除時に負った大ダメージで立ち上がれない。ブレイダーは地面に降り立つと、剣を永美に突き立て………

 

ブレイダー「まずはお前だ………死んで後悔しろ!!」

 

ブレイダーは剣を地面に向けて下ろす。

 

美恵「永美ちゃん!!」

 

光太郎「くそっ………!」

 

永美「(やっぱり理不尽だよ………夢乃達がいないだけでこのザマなんだから………)………うああああああああああああっ!!」

 

永美の叫びが虚しく響く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「大丈夫だよ、永美ちゃん………!」

 

突如、永美の頭の中に声が響く。永美が真上に視線を向けると、ブレイダーの剣が止まっていた。

 

ブレイダー「な、なんだ………? 」

 

永美「………! お、お前は………ゆめ………の………!?」

 

そこには白く豪華な魔導服を身に纏う夢乃がいた。

 

美恵「えっ………!?」

 

光太郎「夢乃………なんだよな………?」

 

夢乃「うん。久しぶりだね、皆。」

 

ブレイダー「ユメノ………そうか、お前が我等が主、バレンシュ様を倒した………面白い、お手並み拝見と行こうか。」

 

ブレイダーは余裕を見せた様子でパンチを放つ。しかし、夢乃はパンチに対し瞬間移動をしてかわす。

 

ブレイダー「何っ!?」

 

ブレイダーは驚いた様子を見せる。直後、ブレイダーの後ろから夢乃とは異なる金髪の少女が現れる。

 

????「………貴方如きじゃ………勝てない。」

 

永美「エリ………アル………!?」

 

その少女は夢乃と共に消えたエリアルだった。エリアルは剣を振るい、ブレイダーに斬撃を放つ。

 

ブレイダー「何っ!? ぐあああああああああああ!!」

 

ブレイダーは大きく吹き飛ぶ。同時にブレイダーのベルトにヒビが入った。

 

エリアル「………大した事ないね。」

 

エリアルがそう呟くと、夢乃が再び姿を見せる。しかし、かつて消滅した時のように、2人の体に光の粒子が無数に現れる。

 

夢乃「………もうタイムリミットなんだ。まあ無理も無いよね、お兄ちゃんのベルトとか、優さんの助言で力を使い過ぎたからね………まあいいか。」

 

夢乃はそう言うと、エリアルと共に永美の元に近付く。

 

夢乃「もう一度会えてよかった。ありがとう。」

 

夢乃はそう言うと、エリアルと共に永美のベルトにあるユナイトギアに触れる。すると、ギアの形状が円から星に変わる。その後、夢乃とエリアルは美恵の元に駆け寄り………同じようにギアを星型に変化させる。

 

美恵「夢乃ちゃん………エリアルちゃん………」

 

美恵は泣きそうだった。エリアルが美恵に駆け寄る中、夢乃は光太郎の元に近づくと………

 

夢乃「お兄ちゃん、ごめんね。」

 

光太郎「夢乃………謝るのは俺の方だ………ごめん。」

 

夢乃「………気にしてないよ。」

 

夢乃は光太郎の頭を撫でる。

 

永美「夢乃………エリアル………折角会えたのに………またお別れなの………?」

 

永美は涙を流していた………自分の不良キャラを忘れる程に。

 

永美「そんなの………理不尽だよ………」

 

夢乃「………確かに理不尽かもね。でも、その理不尽を乗り越えた先に、幸せがあるんじゃないかな。」

 

エリアル「………私達は必ずまたこの世界に来る。時間はかかるけど、また逢える日は来るから。」

 

永美「ううっ………」

 

永美は涙を零す。夢乃は近づくと、彼女の頭を撫でる。その時に彼女の髪の毛は元の黒に戻った。

 

夢乃「………やっぱり永美ちゃんの髪はこっちの方がいいよ。」

 

夢乃はそう言うと、エリアルと共に永美達の元から離れ………

 

エリアル「皆………」

 

夢乃「またね………!」

 

光の粒子となってこの世界から消えた。

 

永美「………バカ………2人のバカ………まあでも………良かったかもしれない………私が求め続けていたせめてもう一度………それが叶ったから。」

 

永美は涙を零しながらも、微かに笑顔を見せた。夢乃達と少しだけとはいえ会えた。その喜びを零す。

 

美恵「そうだね………」

 

光太郎「ああ………」

 

3人は、夢乃達とのつかの間の再会を喜んでいた。しかし、その中でブレイダーは………

 

ブレイダー「ふっ………確かに強い相手だったが………こんなすぐに消えるとはな………拍子抜けしたわ。」

 

彼女達の想いを鼻で笑った。しかし、それが永美達の怒りを買う事となった。

 

永美「………お前に何がわかる………私達の友達をバカにするな!! ………それと、エリアルに貴方如きとか言われてたね………つまりアンタ、それほど強く無いって事だよね?」

 

ブレイダー「ぐっ………! やはり生意気なガキが………ぶっ潰してやる!!」

 

ブレイダーはそう言うと、剣を構える。それに対し、永美と美恵は立ち上がると………

 

永美「私達は負けない………!」

 

美恵「夢乃ちゃんとエリアルちゃんの………想いがある限り!!」

 

永美と美恵はギアを回転させる。

 

『マジシャンズアップ! ゴッドプロテクション! ツインソウルヒーロー&マジシャン! ツインソウルマジシャン!!』

 

永美と美恵はデビルグリムリーパーの時と同じように合体。しかし、身に纏っているのはこれまでの鎧ではなく白い魔導服だった。

 

永美達「2人の加護を胸に………私たちは戦う!!」

 

永美達はそう言うと、召喚されたユナイトウェポンを合体させ、右手に装備すると、永美達は鋭いパンチを放つ。ブレイダーは剣で防ごうとしたが、永美達のパンチはブレイダーの剣ごと粉々にした。

 

ブレイダー「なんだと!? ぐあっ!?」

 

そして、パンチはそのままブレイダーの顔に直撃した。

 

ブレイダー「ぐあああっ!!」

 

ブレイダーは大きく吹き飛ぶ。しかし、永美達は攻撃の手を緩めずに、鋭いパンチを更に放つ。

 

ブレイダー「ぐあっ!! バカな………私が追い詰められるだと………!?」

 

ブレイダーはそう言って立ち上がり、ヤケクソ気味にパンチを放つ。しかし、永美達はそれを軽く受け止める。

 

永美達「そんなパンチが聞いてたまるもんか!!」

 

永美達はそう言うと、鋭いパンチを放つ。ブレイダーは防ごうとするが、ベルトへのダメージによる電流で体の動きを止めてしまい、ブレイダーは膝を着いた。

 

ブレイダー「ぐっ………バカな………」

 

美恵「トドメ、行くよ!」

 

永美「分かってらい!」

 

永美と美恵はユナイトウェポンを右足にセット後、ベルトのギアを回転させる。

 

『メニースピン! マジシャンズフィニッシュ!!』

 

永美達は大きく飛び上がると、ブレイダーに向けてキックを放つ。ブレイダーはかわそうとするが、永美達の鋭いキックがブレイダーの体を貫通する。

 

ブレイダー「ぐわああああああああああああああああ!!」

 

ブレイダーは体の内部から爆散した………直後、永美と美恵の変身が解除され、2人は座り込む。

 

永美「はあっ………勝った。」

 

美恵「そ、そうだね………」

 

2人は疲れきった様子で地面に倒れる。2人は空を目にすると………

 

美恵「………夢乃ちゃん達、喜んでるかな………?」

 

永美「絶対喜んでるよ………私も嬉しい………また会える………そんな希望が見えたから………!」

 

美恵「………そうだね。」

 

2人は手を伸ばし重ね合わせる。その様子を少し離れた所から見ていた光太郎は………

 

光太郎「………恵まれてるよな、夢乃………いや、それは俺も同じ………か。」

 

嬉しそうにそう語るのだった………

 

 

 

その後、永美は不良をやめた。不良仲間は永美の更生について何も文句は言わなかった。寧ろ、それ以上に永美の事を支持するようになった。また、美恵との関係も修復されたようで、2人揃って過ごす日が増えたようだ。光太郎も元気を取り戻したようで物事について前向きになったようだ。

 

 

 

優「夢乃ちゃん、エリアル………2人にはまた助けられたな………ありがとう、そして………何時でも遊びに来てね。」

 

秘密研究所の自室にある日記に書かれた文字を見返す優。そんな彼の後ろにて、人には見えない状態の夢乃とエリアルが笑顔を浮かべていたのだった………

 

 

Fantasy Hero Story Fin




後書き
どうも中の人です。あけましておめでとうございます。出来れば年末にあげたかったのですが、諸々の事情で年明け投稿になりました。短編なのでかなり駆け足気味な話でしたが、本編よりも少しだけ明るくなり、1年以上続いた幻想英雄録シリーズはようやく完結しました。話は変わりますが、今年1月4日から投稿再開する小説は2つとも去年の続きからという3年以上小説を書いてきた僕としても結構異例なスタートとなりましたが、頑張っていきたいかなと思います。では、今年もどうかこんな中の人をよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。