ポケモンと 剣の世界へ   作:りてらしー

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あかいろに そまった ひ

『しろいろは はじまりの いろ。ここは はじまりの まち』

 これは、始まりの街の転移門の石碑に書かれていた。 

 

 

 

 

 ソードアート・オンラインとは、ソードアートの名の通り、片手剣やメイスなど、近接武器で戦うゲームなのだが、所謂ファンタジーの世界観のゲームにしては珍しい、魔法に関係するスキルが一切用意されていないゲームなのである。

 その代わり、ソードスキルという必殺技のようなものが用意されている。

 ソードスキルの発動条件は各スキルに設定されている開始モーションを取ることであり、その後はシステムによるアシストで自動的に発動させてくれる。

 しかし、うまい話には裏があるという言葉の通りソードスキル使用後にはアバターが硬直してしまう。また、ソードスキル使用中はシステムアシストにより自分の動きを変えることは難しいため、敵の攻撃をもろにくらってしまうこともあり、使いどころには気を付けなければならない。

 つまりソードスキルの使いどころには気を付けるべきだという話である。

 

 なぜ急にそんな話をしているかと言えば、ソードスキルは武器種ごとに設定されていて、片手直剣であればどんな状況にも対応できるスキルが用意されている。

 短剣は連撃に重きを置いていたり、両手剣であれば一撃に全てをかけたようなスキルが用意されている。

 ここまで言えば理解していただけると思うが、僕は今使用する武器を選んでいる。悩んでいる理由は武器種がプレイスタイルに直結するからだ。

 

 うーんうーんと悩んでいたが、結局片手剣に決めた。

 そして、初期武器売り場へと走り短剣を一本購入。本来盾を装備するべき場所に短剣をセットする。

 腰に短剣の重みが加えられる。

 

 右手に片手剣、左手に短剣という、辺りのプレイヤーを見ても誰もしていない装備方法だが、これはゲームが発表された段階で決めていたのだ。今になって悩んでいたのはいざとなると選り取り見取りで迷ったからだが。

 武器を手に入れたところで、いざフィールドへ赴こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フレンジーボアという名前のイノシシ型エネミーと対面している俺は、右手に片手剣を構え、左手に短剣を構えている、というより添えている。

 イノシシのイメージ通り、まっすぐに突っ込んできたところを、横に体を反らし躱し、右斜め上に片手剣を置き、力を籠めるイメージ。

 力が溜まったと感じた瞬間に剣を振り下ろす(スラント)

 水色のエフェクトをまとった刀身が、システムアシストに後押しされ、フレンジーボアの身体を真っ二つにし、ポリゴンへと変える。

 

 前から来ていたフレンジーボアを倒すと、後ろからドタドタと、また別のフレンジーボアの足音がやってくる。

 振り向き左手に構えていた短剣を向け、体の重心をフレンジーボアと目が合うまでに大きく下に下げ、クラウチングスタートのように前方へ踏み出す。

 短剣に力を籠めるイメージで、オレンジ色のエフェクトを纏わせる。

 力が溜まれば、短剣の先端を走ってきたフレンジーボアに向かって振り抜く(ケイナイン)

 短剣は容易くそれを貫きポリゴンへと変える。

 

 今のフレンジーボアを倒したところでレベルアップのファンファーレが鳴り響き、レベル6へとレベルアップする。

 わざわざ他プレイヤーがいないところを探して狩っているので、レベリング効率も申し分ない気がする。

 かれこれ何時間か、サービス開始したのが13時で日が暮れてきているから大体4、5時間狩りをしているだろうか。

 

 それだけの時間フィールドに出ているのだが、キャラクリエイトの段階で出てきていたワードの『ポケモン』というものには一切の心当たりがない。

 もしかするとクエストや全体の進行とかで分かってくるのだろうか。

 情報を集めるためにログアウトしてもいいのだが、どうせ今日は予定が何もないのだし、もう少しやってからでもいいかと思い直す。

 

 再びフレンジーボアを狩るため、鞘に収めた剣に手をかけると、ゴーン、ゴーンという音が辺り一帯に鳴り響く。

 これは、鐘の音だろうか。音の方向からして始まりの街の。

 なんだろうかと考えていると、視界が青い光に包まれる。

 

 視界が開けると、始まりの街の初期スポーン地点へと飛ばされる。

 これは、テレポートしたのだろうか。

 事前情報なしでダイブしたのだが、ファストトラベル機能もあったんだな。他のプレイヤーが広場に次々とテレポートしてくる。

 一体何なんだ。どうにも胸騒ぎがしてくる。

 

 人が増えて来るにつれてざわめきが大きくなっていく。

 

 テレポートが落ち着いてしばらくすると、空に赤い物が見える。

 そしてそれが広がっていく。

 六角形のそれがシステムアラートであることに気づくのにそう時間はかからなかった。

 

 システムアラートが始まりの街の空を埋め、辺りは赤色に染まった。

 空を埋め尽くすそれらの隙間から液体が零れ落ちて来る。

 次第にそれは巨大な人間を形作った。

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

 

「プレイヤー諸君は……」

 

 それは溜息を一つつくと、再び口を開く。

 

「要点だけを掻い摘んで話そう」

 

「まずは自己紹介をしよう。私はゲームマスターの……茅場明彦だ」

 

「気づいているプレイヤーも多いと思うがこのSAOにログアウトボタン及びログアウト方法がないのは仕様である。現実世界に帰還する方法は後に説明する一つを除いて一切存在しないと断言する」

 

「そして、他にも何点かSAOの仕様を説明させていただこう」

 

 それは一呼吸置いて再び話し出す。

 

「このゲームで死亡すると、諸君の使用しているナーブギアが君たちの脳を焼き切り、死に至らしめる。これはナーブギアが諸君の頭を離れても同じことが起きる」

 

 そう言うと、空中にスクリーンが多数展開される。

 そのどれもが、ナーブギアを使用中の死亡事故に関するネット記事やテレビニュースだった。

 中にはソードアート・オンラインに関連性を疑っているメディアも存在していた。

 

「この仕様については既に各報道機関にリークしているので、現実世界からの介入はほぼ心配しないでくれていい」

 

 ラノベで使い古されたような設定を簡単に口にされた。

 ゲームで死んだら本当に死ぬ。そんな設定を。

 

「諸君がこの世界から脱出する方法は1つだけだ」

 

「各階層に存在するフロアボスを倒し上層へと登り、第百層に存在する最終ボスを倒せばゲームクリア。つまり、この世界からの脱出だ」

 

 本当にラノベの設定のようだと笑おうとした顔は動かなかった。ひきつり、口を開いては閉じ、微かな息が溢れるのみであった。

 

「次に、諸君はアバターのキャラクタークリエイト時にオーキド博士、というNPCにポケモンという存在についてチュートリアルを受けたと思う」

 

 優しげな白髪の老人を思い出す。

 

「ポケットモンスター、縮めてポケモン。彼らはモンスターボールというボールに入り、君たちと生活を共にする存在だ」

 

「彼らは今までフィールドに出現しないように設定されていたが、このチュートリアルを終了後、ポケモンもフィールドに出現するよう設定が変えられ、NPCのショップにモンスターボールが売られるようになる」

 

「ポケモンは捕まえたトレーナーの指示を聞き、共に戦い、共に食事し、共に生活することができる」

 

「ポケモンに関する仕様は様々なものがあるが、プレイしていく中で楽しんでいただきたいのでここでは割愛する」

 

 さも、新要素の過剰なネタバレを避けるための運営の配慮のような言動でそれを宣う殺人鬼。

 

 

「最後に、私からはプレイヤー諸君に2つほど餞別の品を贈ろうと思う」

 

「現在、諸君のインベントリの中に手鏡。メインメニューにポケモンのタブを追加した」

 

 メインメニューのインベントリを開くと手鏡というアイテムがあった。Pokémonとアルファベットで書かれたタブも確かに存在する。

 手鏡を実体化させ、鏡を見ると、転移の時のような光に包まれる。

 光が収まったのち、再び手鏡を見ると、そこには、16年付き合ってきた自分の顔があった。

 

 周りのプレイヤーを見ると、ネカマをしていたのだろう女性用アバターの服装を太ったおじさんのような人が着ていたりする。

 これはつまり、現実世界の顔へと強制変更が行われたのだろうか。いや、よく見ると身長もだ。

 

「ポケモンのタブを開いてもらうとそこに『モンスターボール』というアイテムが入っているはずだ」

 

 タブを開くと確かにある。こちらも実体化する。

 実体化してみせると、オーキド博士が持っていたような赤白のボールが出てくる。

 

「モンスターボールの中央のボタンを押してもらうと、その中から諸君の最初のポケモンが出てくる」

 

 ボタンを押すと、中からは全身が水色の、首に綿のようなものがついていて、カエルのようなポケモンが出てくる。

 メニューに目を向けると、『モンスターボール』というアイテム名は『ケロマツ』という名前に変わっており、横にドット絵のアイコンとHPが表示されている。

 辺りをキョロキョロと見渡しているケロマツに視線を向けるとこちらを睨んでくる。

 なんか、嫌われてるか?

 周りのプレイヤーもポケモンを出していて、それぞれ違うポケモンが出てきている。稀に被っている人もいるが。

 

「その中から出てきたポケモンが、このSAOでの諸君のトモダチだ」

 

「さて、なぜ私がこのようなことをしたのか、疑問に思っているだろう」

 

「私の目的は既に達成されている。欲求に従いこの世界を創造し、俺もこの世界に存在することを証明できた」

 

 それは赤いシステムアラートを見上げて鑑賞に浸っているように見えた。

 

「話が長くなったが、これで、SAO正式サービス開始のチュートリアルは終了する」

 

「改めて、このソードアート・オンラインの 世界へ ようこそ。剣士諸君」

 

 言い終わると、それは姿を消し、システムアラートも次々と消えていき、赤く染まった街が再び夕焼けのオレンジに染められ直す。

 一拍置いて広場はざわめき出す。

 ふざけるな。早く出せ。絶対に死にたくない。誰か助けてくれ。無意味な叫びが響き渡る。

 

 ケロマツをボールに戻し広場から離れる。

 プレイヤーが全くいない路地裏まで行き、壁にもたれかかってへたり込む。

 

 茅場明彦が言っていたことを思い出す。

 このゲームはデスゲームと化していること。このゲームから脱出するためにはゲームクリアが必須事項。

 HPが0になると二度と挑戦できないこのゲームで本当にクリアできるのか?

 死にたくない。

 好きな歌手の歌が聞きたい。帰るときに買うたいやきをもう一度買いたい。

 死ねない。

 まだやりたいことはたくさんある。

 地面に手をついて立ち上がる。

 

 手に持っていたままだったモンスターボールからケロマツを出し、空のモンスターボールを腰に取り付ける。

 目線を合わせるためにしゃがみ込む。

 

「ケロマツ。僕はこの世界から出るために戦う。急に力を貸せとは言わない。僕が君のトレーナーとしてふさわしいと感じてくれたらでいい。しばらく一緒に旅をしてくれ」

 

 ケロマツはこちらを一瞥したあと、一つ頷く。

 

「ありがとう。じゃあ、行こう」

 

 モンスターボールにケロマツを戻し、ボールを一撫でして、フィールドへと走る。




ケロマツ Lv5 ♂
わざ はたく なきごえ あわ
とくせい げきりゅう
せいかく いじっぱり
こせい きがつよい

SAOのポケモンには性格によるステータス補正が存在しない
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