ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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新連載ですが、今回は削除した作品をほぼ引用しました。


プロローグ 異世界転生のイミテーションナイト
第一話 オカンな神


(あれ、俺どうしたんだっけ…)

 

 寝起き直後のように頭がぼんやりする。視界が真っ暗で何も見えない。って、ただ目を瞑っているだけか。

 

「朝やで! はよ起きんさい!」

 

 突然の声に意識が急速に覚醒する。それと同時に湧きあがる疑問。今の声の主は何者なんだろう。自分にそんな言葉をかけてくれる人は、もう何年も前に亡くなっているというのに。

 

 そんな事を考えながら目を開ける。そこにはどこまでも真っ白な空間が広がっていた。前も右も左も上も下も、その全てが白かった。ここはどこだろう。俺は確かコンビニに向かったはずなんだが。

 

「はあ、やっと起きたんかいな。このまま目を覚まさんかと思っておばちゃんめっちゃ心配したで」

 

 唯一確認していなかった後ろからまたあの声が聞こえた。少しだけ緊張しながら後ろに振り返る。そこにいたのは、パンチパーマをあて、エプロンを纏い、買い物袋をひじにひっかけ、ニコニコした顔で自分を見つめている中年女性が立っていた。

 

「…オカン」

 

 それが自分がこの人に抱いた第一印象だった。うん、我ながら、第一印象がオカンとはどういう事かと思うが、それしか思いつかなかった。この人はオカンだ。誰が何と言おうとオカンだ。

 

 そんな事を考えている俺の前で、オカンは笑顔を崩す事無く再び口を開いた。

 

「ああ、ゴメンなぁ。けど、心配せんといて。おばちゃん、怪しい者やないで。おばちゃんな、こう見えても神様なんよ」

 

「…はい?」

 

「せやから、おばちゃん神様なんよ。見た目はこんなんやけど、結構凄いんよ。神様にも順位みたいなモンがあってな。おばちゃんはその第三位なんやで」

 

「はあ…。その神様が俺に何の用なんですか?」

 

 そう尋ねると、オカンは若干の戸惑いが籠った表情を浮かべた。

 

「…アンタ、おかしいとか思わんの? 正直、いきなり神様だとか名乗ったら引かれるかと思うたんやけど」

 

 まあ、普通は関わろうとは思わないわな。変な壺とか買わされそうだし。だけど、自分は疑う事が好きではない。だから、この人が自分を神だというなら、この人は神なのだろう。それに、放っているオーラとでも言おうか、とにかくそれもどこか人間離れしている。

 

 そう答えると、自称神のオカンは懐からハンカチを取り出すといきなり泣き始めた。なんか、「アンタ、ほんまにええ子やなあ」とか言われてしまった。

 

「ええっと、とりあえず聞きたいんですけど。ここはどこで、俺はどうしてここにいるんですか?」

 

 すると、オカンは神妙な面持ちになり、衝撃的な答えを口にした。

 

「アンタは死んだんよ。トラックに轢かれそうになった子どもをかばってな」

 

 オカンの言葉に急速に記憶が蘇って来た。そう、始まりは部屋の押し入れの整理をしていた時だ。俺こと神崎亮真は奥の方から懐かしい物を発見した。それは、ゲームボーイアドバンスと、それに差さっていたスーパーロボット大戦Jだった。懐かしさに駆られた俺は、久しぶりにプレイしようと、電池を買いにコンビニに向かっている所で道に飛び出した子どもとそれに迫るトラックを目撃し、そして子どもを突き飛ばした瞬間、かつてない衝撃を受けて―――。

 

 自分は死んでしまった…。だがどうしてだろう。それほどショックでは無かった。それよりもあの子の事が心配だ。自分はちゃんと助ける事が出来たのだろうか。

 

「それは心配せんでもええで。アンタのおかげであの子は助かった。まあ、突き飛ばした時に膝をすりむいたみたいやけど、それだけや。ちゃんと五体満足やで」

 

「そうですか。はは、死んだ甲斐がありましたね。それで俺は神様の所に来たってわけですね?」

 

「その通り。そしてここはおばちゃんが作った“転生の間”。選ばれた人間に第二の人生を歩ませる為の場所や」

 

「…という事は、ここにこうして立っている俺はあなたに選ばれたと?」

 

「そうや。ここはおばちゃんに認められた人間にしか来る事が出来へん神聖な場所なんよ」

 

 その神聖な場所にどうして自分がいるのかがわからないのだが。首を傾げる俺の前で、オカンはまたハンカチ片手に語り出した。

 

「おばちゃんな、アンタの最後に感動したんよ。最後だけやない。アンタの歩んで来た人生全てに感動したんよ。アンタの人生は“人を助ける”為に使われた。私欲の為やない。ただ一心に相手の為を思っての行動におばちゃんはハンカチが手放せんかった」

 

 人助け…。まあ、確かに自分は知人、他人問わず多くの人の力になった。それこそ、お節介、お人よしと呼ばれるくらい。だけど、それは自分にとっては当然の事だ。

 

 自分がこんな性格になったのは、両親の影響によるものだ。父も母も自分以上に他人の為に生きる人間だった。そして…最後は他人の為に死んだ。

 

 二人を喪った直後は、あらゆるものを憎んだ。けど、すぐにそれは間違いだと気付いた。それは、父と母の生き方を否定するものだったから。

 

 父はよく言っていた。「困っている人がいたら、よほどの事が無い限り助けてあげなさい。それがお前自身の幸せに繋がるはずだ」と。

 

 そして決めた。自分も他人の為に生きようと。どんな小さな事でも困っていたら力になろうと。それが、あのどうしようもないくらいお人よしだった二人の息子である自分の役目だと。

 

 ふと気がつくと、先程よりオカンの泣き声が大きくなっていた。涙は滝のように流れている。凄い。マンガみたいだ。

 

「アンタ…アンタどこまでええ子なんや! おばちゃんアンタの事大好きになってしもうたわ!」

 

 それは光栄だが、今のは胸の内の言葉で実際に口にはしていない。なのにどうしてこんな反応を…。

 

「グスッ…。あ、この空間では何を考えとるか全部おばちゃんに伝わるようになっとるんよ」

 

 という事は、さっきまでの考えが全て筒抜けになっていたのか。いや、決して不快ではないが、なんというか恥ずかしい。

 

「何も恥ずかしがることなんかない! おばちゃんもアンタみたいな息子が欲しかったわ」

 

 神様にも子どもっているのだろうか。…と、話がだいぶ逸れてしまった。とにかく、自分はこのオカンに認められたらしい。だが、第二の人生とはどういう意味だろう。

 

「そのまんまの意味やで。死んでしまった人間に再び生を与えるんや」

 

 では、自分は生き返る事が出来ると?

 

「ただ、一つだけ制限があるんよ。同じ世界には戻れない。必ず別の世界で生き返ってもらうっていうな。せやけど、それを差し引いてもおつりが来るくらいのビッグな特典が付くんや!」

 

 特典?

 

「その特典というのは…“あらゆる望みを叶えての転生”が出来る権利や! 力が欲しければ力を、金が欲しければ金を、異性が欲しければ異性を、とにかく望むもの全てを手に入れての転生を約束するで!」

 

 なるほど…ならば、自分の答えはノーだ。

 

「…え?」

 

 ポカンとするオカン。…ポカンとオカンて似てるな。まあ、響きだけだが。

 

 などとどうでもいい事を思い浮かべていると、オカンが戸惑った様な表情を見せた。

 

「の、ノーってどういう事やの? …あ、もしかして脳? わかった! 天才的な頭脳が欲しいって言うわけやな!」

 

「違います。何もいりません。普通でいいです」

 

 またしてもポカンとするオカン。やっぱりポカンとオカンって(以下略)。

 

「な、何で!? ホンマに何でも手に入るんやで!?」

 

 望めば何でも手に入る。それは確かに魅力的だが、それは平凡な自分にとっては分不相応な権利だ。平凡な自分には平凡が一番似合うというものだ。

 

「それより、俺が死んだ事をあの子が負い目に感じないようにしてあげてください」

 

 そう伝えると、オカンはまた泣きそうな顔になった。涙もろいんだな。

 

「アンタ、こんな時くらい自分の願い言ってもバチ当たらんのやで! それも叶えたるから、アンタ自身の願いを言い! 三つや。三つまで叶えたるから!」

 

だから、それが俺の願いなんですけど。なんかもう、言わないと梃子でも動かんぞ! って感じになってるな。

 

三つの願いか…うーん、とりあえず無難なところでいってみるか。

 

「わかりました。では願いを言います。次は長生きしたいので、健康な体にしてもらえるとありがたいです。それと、どんな世界に送ってもらえるか知りませんが、出来れば平和な世界でお願いします。最後は、その…ちょっとでいいんで、カッコよくしてもらえたら嬉しいです」

 

最後の願いだけ情けない気がするが、オカンは任せろとばかりに胸を叩いた。

 

「わかった。なら、今からアンタを転生させるからそこに横になり」

 

 指示通り体を横たわらせるとオカンが何やら祈り始めた。同時に自分の体が少しずつ光り始めた。…なんだろう。眠くなって来た。

 

 と、いきなりオカンが叫んだ。何を我慢していたのだろう…などとぼんやりして来た頭で考えてみたりする。

 

「アンタは人の為に生きて来た! なら今度こそ自分の幸せの為に生きるべきや! というわけで、おばちゃんからアンタにプレゼントや! 楽しみにしとき!」

 

(プレ…ゼン…ト? 何だ…ろ…う)

 

 その言葉を聞きながら、俺は意識を手放したのだった。

 

SIDE OUT

 

 

オカンSIDE

 

「さてと、どんな世界に転生させてあげようかねぇ」

 

 悩むウチの頭に、ふと妙案が浮かんだ。ウチ以外の神も気に入った人間を転生させとるけど、最近は“あにめ”とか“げーむ”の世界に転生させて欲しいというのが多いらしい。ほんなら、ウチもそのぶーむに乗っかってみるのもええかもな。

 

 

「とはいえ、たくさんのあにめやげーむからあの子が喜びそうな世界を見つけるんは大変そうやな」

 

 あの子、あの性格やから、あまり青春も謳歌出来へんかったみたいやし、そこら辺の事を考慮してあげんとな。

 

「…ん? これなんかええんやないの」

 

 『ハイスクールD×D』…わざわざタイトルにハイスクールなんて付けとるんやから、きっと楽しい学園生活が送れるはずや。

 

「よし、決定や!」

 

こうして、ウチはろくに内容も確認せんと、あの子を転生させた。




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