ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

100 / 187
百話か・・・。思えば遠い所まで来たものだ。七章でこれだと仮に原作全部追いかけたら何話になるんだろうか・・・。


第九十六話 男女間の友情は成立する

イッセーSIDE

 

ミドガルズオルムに会いに行った翌日、俺達は再び先輩の家の地下室へ集まっていた。平日ではあるが、オカルト部とシトリー眷属は全員学園を休んでいる。代わりに俺達を模した使い魔達が学園へ行っている。

 

ただ、神崎先輩とアーシアは普通に学園へ行っている。この休みは、ロキとの決戦に備えてのものなんだけど、アザゼル先生が「お前は必要無いから行って来ていいぞ」と先輩を送りだしたのだ。その言葉に俺達全員納得してしまった。

 

「オーディンの爺さんからすんばらしいプレゼントを頂いたぞ。ミョルニルのレプリカだ。・・・あのクソジジイ、マジでこんな物隠してやがって・・・」

 

「ミドガルズオルムが言ってたヤツですよね。それをロキに撃ち込めとかなんとかなるとか」

 

「ああ、オリジナルは雷神トールが持っているが、貸してもらえるとは思えんからな。代わりにこれで行く。にしても、ミドガルズオルムが物知りで助かったぜ。アイツに教えてもらえなければ、あのジジイがこれを持っていた事すら気付かなかっただろう」

 

「オーディン様はこのミョルニルのレプリカを赤龍帝さんにならばお貸しするそうです」

 

「俺ですか? 神崎先輩じゃなくて?」

 

「アイツにゃあれ以上の攻撃力なんざ必要ねえだろ」

 

た、確かに先生の言う通りかも・・・。でも、こんな普通のハンマーで本当にロキと戦えるんだろうか。装飾とか紋様は立派だけど、それ以外は日曜大工で使うハンマーみたいだった。

 

「オーラを流してみてください」

 

ロスヴァイセさんにそう言われたので、俺はハンマーを握った手に魔力を込めた。すると、一瞬の閃光の後に、小さかったハンマーがみるみる内に大きくなって―――って、お、重っ!?

 

「うおぉぉぉぉぉ!?」

 

既に俺の背丈を余裕で越える大きさになったハンマーが大広間の床に落ち、そのまま埋まってしまった。

 

「くぅぅぅぅぅぅ!? も、持ちあがらん・・・!」

 

「オーラを纏わせ過ぎだ。抑えてみろ」

 

嘆息する先生の言う通りに魔力を抑えてみたら、縮小して両手で振り回すのにちょうどいい大きさになった。ただ、重さは変わって無かったので持てないんだけど。

 

「『禁手』になれば持てるだろう。いったん止めろ」

 

手を離すとハンマーが元のサイズに戻った。

 

「レプリカとはいえ、本物に近い力を持っている。無暗に振るえばこの辺一帯が高エネルギーの雷で消え去るぞ」

 

「マジですか!? うわ、怖い!」

 

「な、なあ、兵藤・・・」

 

そこへ匙が声をかけて来た。心なしか顔が青白い様に見える。

 

「何だよ匙?」

 

「ミョルニルの落ちた場所が思いっきり抉れてるんだけど・・・これってマズくね? 先輩が自分のいない間に家に傷付けられたって知ったら・・・」

 

「―――ファッ!?」

 

「大丈夫よ。これくらいならすぐに直せるから。リョーマだって、こんな事で一々怒ったりしないわよ」

 

そ、そうか。部長が言うんならそうなんだろうな。ちょっと安心した。

 

「まあ、いざという時は土下座でもすれば何とかなるだろう」

 

「先にこうなるって言わなかったアンタにも責任はあるでしょうが!」

 

俺の恨みを込めた視線を受け流し、アザゼル先生はさっきから黙って様子を見ていたヴァーリちゃんへ声をかけた。

 

「ヴァーリ。お前もオーディンの爺さんにねだってみたらどうだ? 『禁手』してちょっと甘えればなんでも寄越してくれると思うぜ」

 

それは間違いないな(迫真)。あのドスケベ爺さんならヴァーリちゃんの『禁手』に絶対反応するだろうし。

 

「まあ、それも一つの手でしょうけど、色々手を出して器用貧乏にはなりたくないの。まずは天龍の力を完全に自分の物にする。・・・全てはそれからね」

 

・・・カッコいいな、ヴァーリちゃん。いや、女の子相手にカッコいいとか失礼かもしれないけど、それでも彼女の真っ直ぐな目を見て俺は純粋にカッコいいと思った。・・・ヴァーリちゃんはああいう“覚悟”を持っているからこそ、『覇龍』を使えるようになったんだろうか。

 

―――相棒、これもいい機会だ。あの女に『覇龍』について聞いてみるがいい。

 

ドライグ? ・・・ああ、そうだな。『覇龍』に関したらヴァーリちゃんが先輩なんだ。なんかアドバイスとかもらえるかもしれない。

 

「ヴァーリちゃん・・・ちょっといいかな」

 

「あら、何かしら一誠?」

 

「実は、『覇龍』の事なんだけど・・・」

 

「・・・詳しく聞きましょうか」

 

ヴァーリちゃんの目の色が変わった。な、なんか緊張するな。ともかく、『覇龍』についてこの子に色々聞いてみよう。とりあえず、最初は歴代の所有者について聞いてみるか。

 

「そう・・・ついにあなたもその段階へ辿り着いたのね。喜ばしい事だわ」

 

「あはは、まだ道は長そうなんだけどね。ヴァーリちゃんもやっぱり『覇龍』習得までには時間がかかったの?」

 

「そうね・・・。私の場合、『禁手』に目覚めて『覇龍』を使えるようになるまでは割とすぐだった記憶があるわ」

 

むう、流石だなヴァーリちゃん。やっぱり才能のある子は違うぜ。

 

「はは、羨ましいよ。それだけ早く先輩達に認められるなんて。俺なんてまだたった二人だからな」

 

「・・・その代わり屈辱を味わったけどね。何で『覇龍』発動の度にあんな格好しないといけないのよ・・・」

 

「あんな格好?」

 

「いい、一誠? 歴代の連中が何を条件につけて来ても、安易に頷いたりしない方がいいわよ。でないと・・・絶対後悔するから」

 

「わ、わかった」

 

ヴァーリちゃんの声色が、これ以上この件に触れるなと警告している気がした。

 

「それよりも、その認めてくれた先輩達は何か言ってたの?」

 

「あ、うん。その人が言うには、俺がもっと強い“覚悟”を抱けば残りの所有者達も認めてくれるだろうって」

 

「なるほど、“覚悟”ね・・・。戦いへの覚悟、死の覚悟、敵を殺す覚悟、何を以ってその“覚悟”になるかわからないけど、それなら今回のロキ戦、あなた一人でやってみる?」

 

「いやいやいやいや! 死ぬから! 死んじゃいますから!」

 

全力で首と手を横に振ると、ヴァーリちゃんは楽しそうに口元に手を当てながら笑った。

 

「ふふ、冗談よ。神との戦いを一人占めなんてさせないわ。亮真との再戦までに、私はもっともっと強くならないといけないもの」

 

本当に戦うのが好きなんだなこの子。目が凄いキラキラしてるぞ。

 

「やっぱり、まだ先輩に勝つ事を諦めて無いの?」

 

「もちろん。私、目指す頂きが高ければ高いほど燃えるの。・・・最近思うのよ、強い者と戦えると思って『禍の団』に入ったけれど、そんな事しなくても普通に亮真の傍にいればその機会はいくらでも巡って来るんじゃないかって」

 

「ならそうしなよ。あんな連中の所なんか抜けてさ。なんだったらここに住んじゃえばいいよ。先輩、キミの事気にかけてるみたいだし、きっと歓迎してくれるって」

 

「それがわからないのよ。どうして亮真はあれほどまでに私の事を心配するのかしら」

 

「そりゃ友達がテロリストになったんだから心配するのは当然でしょ」

 

「・・・理解出来ないわ。友達だから私を心配するの? そもそも友達って何? わからない、私・・・ずっと一人で生きて来たから、他人との関係なんて考えた事無かったもの」

 

淡々と話すヴァーリちゃん。だけど、その顔はどこか寂しそうで、悲しそうだった。一人・・・か。この子もアーシアと同じ様に生きて来たのかもしれない。それにこの子は悪魔だからかなり長い年月を孤独に過ごしていたんだろう。

 

「私は・・・亮真の友達でいていいの?」

 

「んー・・・ならさ、ちょっと思い出してみなよ。友達になろうって言ったのは神崎先輩の方からなんだろ?」

 

「え、ええ。というか、気付いたら既に彼に友達認定されていたわ」

 

「その時、ヴァーリちゃんはどう思った? 迷惑だった? 面倒臭いと思った?」

 

「・・・あまり憶えて無いわ。でも、少なくとも嫌な感情では無かったと思う」

 

「それが答えだよ」

 

「え?」

 

ポカンとするヴァーリちゃんへ、俺は笑顔で答えた。

 

「嫌じゃなかったって事は、ヴァーリちゃんが気付いていなかっただけで、キミは先輩と友達になれて嬉しいと思ってるんだ。・・・そう思える時点で友達の資格は十分だと俺は思うよ」

 

「・・・わからないわ」

 

「うん、今のはあくまでも俺の感想だから、キミが本当はどう思ってるかはわからない。だからさ・・・俺とも友達になろうよ!」

 

「あなたと・・・?」

 

「ヴァーリちゃんの戸惑いは、今までずっと友達と呼べる相手がいなかった事が原因だと思うんだ。ならさ、友達を増やして、そんな戸惑い無くしちゃえばいいんだ。だから俺とも友達になろうよ。というかなってください! キミみたいな綺麗な子と友達とか自慢になるし!」

 

バっと右手を差し出すと、ヴァーリちゃんはその手と俺の顔を交互に見て、そして微笑んだ。

 

「・・・ふふ、赤龍帝と白龍皇が友達なんて、歴代でもそうなかったんじゃないかしら」

 

「ど、どうなんだろう。聞いた話じゃいいライバルではあったみたいだけど」

 

「でも・・・。こういう関係も面白いのかもしれないわね」

 

「じゃあ・・・!」

 

「ええ、こちらこそ、よろしくお願いね一誠」

 

ガッチリ握手する俺とヴァーリちゃん。よっしゃ! 美人の友達ゲットだぜ! っと、イカンイカン。ヴァーリちゃんに友達とは何かを教えてあげないといけないのにこんな不真面目な態度じゃ駄目だ。・・・でも、後で松田と元浜に写真だけ送りつけてやろっと。

 

「よし、それじゃ・・・って、アレ? ど、どうしたのみんな?」

 

ふと気付くと、大広間にいた全員が俺達に視線を送っていた。あの美猴やアーサーまでもが一緒にだ。な、なんだ? 何でこんな注目を浴びてんだ?

 

「兵藤が・・・あの兵藤がまともな事を・・・!?」

 

「変態三人組の一員であるはずの兵藤君が・・・!?」

 

「あんなにも真剣に立派な言葉を・・・!?」

 

「に、偽物よ! あの兵藤は偽物だわ・・・!」

 

おいこらシトリー眷属! 何いきなりdisってくれてんだ! というか本人の前でそういう事言うなよ! 思い出したら恥ずかしくなって来たわ!

 

「ねえ、祐斗。なんだかイッセーがリョーマ化してる気がするんだけど」

 

「その兆候はちょっと前からありましたよ。ね、ギャスパー君?」

 

「えへへ、そうですね」

 

ぬおおおお! 部長達までなんか優しい表情を向けて来てる! 俺の精神がゴリゴリ削られて行くのがわかるぞ。誰か・・・誰か助けてください!

 

「おいおいヴァーリィ。なら俺っち達は友達じゃなかったって事かよぉ。悲しいねぇ。一緒にラーメン食いに行った仲じゃねえか」

 

「あなた達は友達じゃなくて仲間じゃない」

 

「その二つはある意味同じですよヴァーリ。ですが、赤龍帝殿が話をしてくれなければ、私達もあなたの気持ちに気付けなかった。その点に関しては感謝しなければなりませんね」

 

「べ、別にそんなつもりで言ったんじゃねえよ」

 

「んだよぉ。照れるなよ赤龍帝。でもお前いいヤツだなぁ。なあ、俺っちとも友達になってくれよ。そんでもって金貸してくれよ。昨日ラーメン食い過ぎて財布がピンチなんだよぉ」

 

「たかるな!」

 

「・・・ふふ」

 

俺と美猴のやり取りに大広間が笑い声に包まれた。ヴァーリちゃんも楽しそうだ。

 

―――白龍皇と親交を結ぶ赤龍帝か。面白い。お前に少し興味が湧いたぞ。

 

(え?)

 

頭に響く渋い男性の声。なんだ? 誰の声だ?

 

「ったく、お前、コイツ等が『禍の団』の一員だとわかってんのか。・・・はは、ホントにしょうがねえ奴だ」

 

アザゼル先生が呆れたように、だけどちょっとだけ嬉しそうにそう言うのだった。

 

「よし、話を戻すぞ。今から作戦の確認をする。全員心して聞けよ」

 

そして、俺達はロキとの決戦に向けての作戦会議を始めるのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

放課後、俺とアーシアはのんびりとした歩みで家路を進んでいた。リアス・・・というか、彼女達に化けた使い魔達はさっさと家に帰ってしまった。

 

「こうしてリョーマさんと二人きりで帰るなんて久しぶりな気がします。・・・嬉しいな」

 

(なんだ、天使か)

 

「あ・・・」

 

無自覚にこちらを殺しに来るアーシアに耐えつつ、家まであと少しという所で、レイナーレさんと遭遇した。

 

「レイナーレ様。こんにちは」

 

「え、ええ、こんにちは」

 

「買い物帰りですか?」

 

手に持った買い物袋を差すと、レイナーレさんは何故か気まずそうな顔で答えた。

 

「そ、そうです。お二人は学園からの帰りですか?」

 

「はい」

 

「そ、そうですか・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

そのまま数秒両者沈黙のまま時間だけが過ぎた。これは・・・こっちから何か話を振るべきか。そう思っていたら、レイナーレさんの方が先に口を開いた。

 

「あの、アザゼル様からロキの事は聞いています。私達はいざという時のバックアップ要員として待機しておくようにとの指示も頂きました」

 

「よろしくお願いします」

 

「こ、こちらこそ。・・・それでなのですが、神崎様。この一件が片付いた後でよろしいので、一度私達の家に来て頂けないでしょうか。本来であればこちらが訪ねるべきなのでしょうが、逃げ道を無くさないと私達の決心が鈍りそうで」

 

「それはもちろん構いませんけど・・・何かあったんですか?」

 

「・・・お預かりしている『悪魔の駒』の事で、聞いて頂きたい事があるのです」

 

「わかりました。必ず訪ねさせてもらいます」

 

「お願いします。では、私はこの辺で失礼します。アーシアもまたね」

 

「は、はい」

 

レイナーレさんと別れ、俺達は再び家路を歩き始める。なんとも気になる言い方だったが、その前にやらないといけない事をしっかりやらないとな。

 

(レイナーレ様、ひょっとして・・・)

 

アーシアが何だか難しい顔をしている。考え事でもしてるのだろうか。なら、邪魔しない様に俺も話しかけたりせずに黙って歩こう。

 

そうして、俺達は無言のまま自宅へと辿り着くのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。