ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第九十七話 ペットのヤンチャは飼い主が責任を取りましょう

いよいよロキとの戦いの時がやって来た。雲一つ無い夜空の下、俺達はオーディンさんが会談をするという高層ホテルの屋上にいた。

 

会談の仲介役を任されたアザゼル先生の代わりに、バラキエルさんが俺達の傍にいる。周囲のビルにも支取さん達が待機していて、さらに上空にはタンニーンさんの姿もある。月明かりの下を舞うドラゴンって画になるな・・・。

 

「時間ね。会談が始まるわ」

 

リアスが腕時計に目を落とした瞬間だった。空が歪み始め、巨大な穴が開いた。やがてその中からロキ、そしてフェンリルがゆっくりと姿を現した。

 

「時間だ。作戦を開始する」

 

バラキエルさんの指示と同時に、ホテル一帯に巨大な魔法陣が展開する。流石にここで戦うのはまずいので、これから俺達はロキやフェンリルごと戦場へ転移させられる事になっている。

 

「くくく、やはり戦場を移す気か。ならば、我も予定通りに動かせてもらおう!」

 

ロキがそう言った直後、展開する魔法陣の上にさらに別の魔法陣が覆いかぶさるように出現した。うわあ・・・見るからに危なそうな雰囲気なんですけど。

 

「これは・・・まさかヤツも転移魔法を!?」

 

「ふははは! 今度は前回の様にはいかんぞフューリー!」

 

眩い光が俺達を包み込む。そして次に目を開けた時、俺は見た事も無い荒れ果てた大地に上に立っていた。

 

「ここは・・・?」

 

周囲を見渡す。あれ、おかしいな。ロキどころかリアス達までいないじゃないか。どういう事だ―――。

 

「「「アオォォォォォォォォォォォン!!!」」」

 

三重に聞こえる狼の遠吠え。振り返れば、そこにはフェンリル、そしてフェンリルによく似た赤と白の狼の姿があった。

 

「・・・え?」

 

SIDE OUT

 

 

リアスSIDE

 

古い採石場の跡地。ここがロキとの決戦の場になる。転移直前にロキが発動させた術式がなんなのか気になるが、まずは眷属の数を確認しないと。

 

そうしてみんなの無事を確認しようとして、私は気付いた。イリナもいる、バラキエルもロスヴァイセもいる。ヴァーリ達だって健在だ。もちろん私の眷属も欠けていないし、アーシア、黒歌の姿もある。なのに彼が・・・リョーマの姿だけがどこにもなかった。

 

「部長! フェンリルのヤツがいません!」

 

イッセーが指差した方に目を向ければ、確かに先程までロキの傍にいたはずのフェンリルの姿が無かった。

 

「ロキ・・・あなたまさか・・・!」

 

「気付いたか。そう、この場所へ転移する直前、我は術式に干渉し、フューリーとフェンリルのみを別の場所へ転移させたのだ」

 

なるほど、あの魔法陣にはそんな意味があったのね。だけど・・・この男、前回の反省を全然活かせてないみたいね。リョーマとフェンリルの力関係はもうハッキリしてるでしょうに。

 

「お前馬鹿だろ。あんなに先輩相手にビビりまくっていたフェンリルが勝てると思ってんのか?」

 

「貴様等こそ、我の最高傑作の実力があの程度だと勘違いしていないか。フェンリルは未だかつて本気を出した事は無いのだ。それは何故か? 本気を出すまでも無く、あの牙で軽く噛んでやるだけで相手が死ぬからだ。あの鎧の防御力があれほどまでとは予想外だったが、果たしてフェンリルの全力の噛みつきに耐えられるかな?」

 

その言葉は私達を僅かに動揺させた。同時に悔しさが生まれる。その手加減した状態のフェンリル相手に、私達はあれほどまでに恐怖を感じていたなんて・・・。

 

「さらに、巨人族の女を狼に変え、フェンリルと交わらせた末に誕生したスコル、ハティも送ってやった。親であるフェンリルよりも若干スペックが落ちるが、神殺しの牙は健在だ。はっはっは。神殺しが三匹。今にヤツの死体を咥えこの空間へ戻って来るだろうさ」

 

「なんですって!? く、こんな事になるのなら、彼にグレイプニルを預けておくんだったわ・・・!」

 

フェンリルがいなければ、持っていても意味が無い。まさか、開始直後からこんなマネをしてくれるなんて!

 

「さあ、我等も始めようではないか! それとも、フェンリル達が戻って来るのを待つのかな? まあ、どちらにせよ、貴様らは死への旅路でフューリーと再会出来るだろうさ!」

 

「おあいにくさま! その道を歩むのはあなたよ! いくわよみんな!」

 

「いくぜロキ! 俺達の力、見せてやる! ドライグ!!」

 

―――ああ、やろうか相棒!

 

「一誠に続くわよアルビオン」

 

―――承知した。

 

イッセーが『禁手』を発動させる。続けてヴァーリも『禁手』発動させる。・・・今回は最初からあのギリギリな方なのね。

 

「・・・これはこれは。赤龍帝の方はいいとして白龍皇よ。それは最早鎧の意味が無いのではないかな?」

 

「あら、敵の心配なんて余裕ね。なら、その余裕を焦燥に変えてあげるわ!」

 

「イッセーとヴァーリを中心に攻撃を仕掛けるわ! 各人、準備を! 牽制なんてせこい事は言わないわ! それぞれの全力を叩き込んでやりなさい!」

 

リョーマを封じられたのは痛手だけれど、それはロキも同じ。結果的にフェンリルを私達に向けられないのだから。

 

「ならば、まずは私に任せてもらおうか」

 

魔力をチャージする私の横をゼノヴィアが進み出る。そして彼女はデュランダルを両手で持ちながらそれを天へと掲げた。

 

「ここには私を遮るものは何も無い。さあデュランダルよ! 私の力を! 私の思いを! この技で以ってロキに示してやろうではないか!」

 

ゼノヴィアの叫びに応えるかのように、デュランダルが激しい光を発し始める。その光は刀身へと集まり、そのまま天高く伸びて行く。

 

「聖剣か。しかもこのオーラ・・・。たかが悪魔の攻撃・・・とは笑い流せんな」

 

「おっとぉ! そうはさせないぜぃ!」

 

「聖剣の前に、聖王剣の一撃を受けて頂きましょうか!」

 

おそらく防御結界を発動させようとしたであろうロキの背後から美猴が如意棒、アーサーが聖王剣コールブランドを手に襲い掛かる。来るのがわかっていたのか、ロキは慌てる様子も無く、両手でそれぞれを受け止める。

 

「遅い遅い。それで神に一撃を入れられると思ったか?」

 

「へっ! こんなバレバレの奇襲が通じるとは思って無いぜぃ!」

 

「本命は別にありますからね」

 

「何?」

 

アーサーの言葉にロキが怪訝な表情を浮かべた次の瞬間、左右から黒歌と小猫が両手に気を纏わせながら肉薄する。

 

「白音! 合わせて!」

 

「はい!」

 

姉妹だから出来る完璧なタイミングで、黒歌と小猫は膨れ上がった青白い気の塊をロキの脇腹へと叩きつけた。

 

「「白虎咬!!」」

 

「ぬうっ!? 妙な技を・・・!」

 

ほんの少しだけ顔をゆがめるロキ。それがダメージによるものなのかはわからない。だけど、スキが出来るには十分だった。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ゼノヴィアの咆哮。それを合図にしたように、黒歌達が一斉にロキから離れる。その僅か数瞬後には、ロキはデュランダルの光の中へ消えていった。ゼノヴィアの全力が込められたその一撃は、ロキだけでなく、戦場すらも破壊し尽くさんとばかりにあらゆる物を飲み込んでいった。

 

「追撃の手を緩めないで! 相手は神! 今ので終わるはずが無いわ!」

 

「父様!」

 

「うむ! さあロキよ! 我等が親子の絆の一撃を受けよ!」

 

・・・なんだかノリノリねバラキエル。朱乃から直接和解出来たとは教えてもらったけど、まだ娘の気持ちには鈍いのね。あの子、恥ずかしいのか顔がちょっと赤いわよ。

 

朱乃とバラキエル・・・重ねたその手から放たれたかつてないほどの凄まじい雷光がロキの立つ場所へ落ちる。デュランダルの光と堕天使の光。二つの光をその身に受けたロキの姿が徐々に明らかになっていく。

 

「貴様等・・・あまり調子に乗―――」

 

「いいや! 乗らせてもらおうか!」

 

「ロキ様! 御覚悟願います!」

 

衣装はボロボロだけど、ロキ自体へのダメージは少なそうだった。流石は神ね。だけど、こっちだって止まらないわよ!

 

上空からタンニーンの火球。地上からロスヴァイセの北欧魔術が同時にロキを襲う。これ以上受けるのが得策でないと判断したのか、ロキが初めて回避行動に移ろうとする。・・・けれど、その動きが突然止まった。

 

「何だこの風は・・・!? それに足が動かん・・・!?」

 

「悪いけど、逃がさないよ」

 

「こ、この世界は既に僕の支配下なんですぅ!」

 

祐斗の魔剣から吹き荒れる風とギャスパーの魔眼がロキの動きを封じ込める。激しい風が私達の元へまで届いて来た。

 

「アーシアさん! 私の後ろに!」

 

「は、はい!」

 

貴重な回復役であるアーシアはイリナが守ってくれている。私達はただ攻めるだけ!

 

灼熱の炎がロキを包み、何本もの魔力の矢がロキの体を貫いて行く。さあ・・・出番よあなた達!

 

「ロキィィィィィィィィィィィ!!!」

 

「ッ!?」

 

勇ましい雄叫びと共に、イッセーが背中の魔力噴出口を全開にしてロキへ迫る。そして、豪快に振り上げた拳を、ただ全力でロキの顔面に向かって叩きつけた。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

間一髪で障壁を展開させたロキがイッセーの一撃を受け止める。神の障壁は伊達ではなく、イッセーの攻撃にビクともしていない。だけど、もう一人いる事は忘れているみたいね。

 

「あらあら、私を無視しないでちょうだいよ」

 

『Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide』

 

機械音声がなるごとに、ロキの障壁の大きさがみるみる内に小さくなっていく。そして、ついに阻むものの無くなったイッセーの拳が目標へ盛大に撃ち込まれた。同時に、私の魔力チャージも完了した。

 

「おまけよ! これも喰らいなさい!」

 

私の頭上に紫色の魔力球が百以上出現する。ガン・スレイブの練習中に偶然編み出したこの技・・・『滅殺の雨』とでも名付ければいいかしら。

 

「この全てが滅びの力を有しているわ。あなたに受け止められるかしら!」

 

ロキに向かって右手を突き出すと同時に、魔力球が一斉にロキへ殺到する。着弾と同時に魔力球同士が合体、膨張を繰り返し、ついにはロキを飲み込んだままドーム状になった。

 

「流石に今のは痛かったんじゃないかしら?」

 

魔力のドームが弾け飛ぶ。そこに先程と変わらずロキの姿がある。ただ一つ違うのは・・・右手の肘から先が無くなっていた事だった。

 

「まさか・・・と言いたい所だが、確かに今のは効いたよ。赤龍帝と白龍皇を中心にすると言っておきながら、まさか本命が自分だとは・・・大した詐欺師だ」

 

「あら、中心=本命とは限らないでしょ? というか、本命というならば、今の攻撃の全部が本命よ。神であるあなたに出し惜しみなんて出来ると思う?」

 

「くくく、確かに。・・・いいだろう。貴様等を甘く見ていた事は謝罪しよう。ここからは我も本気でいかせてもらおうか!」

 

瞬間、ロキからのプレッシャーがさらに激しさを増した。・・・本当なら、こちらを舐めている間に決定打を与えておきたかったのだけど、こうなったら仕方無いわね。

 

「我のお供はフェンリル達だけではないのでね。貴様等にはこいつらの相手をしてもらおう!」

 

何を・・・と言いかける私の前で、ロキの足下の影が広まって行き、そこから巨大な蛇・・・いや、あれは蛇じゃない。ドラゴンだわ!

 

「ミ、ミドガルズオルムじゃねえか!?」

 

イッセーが仰天の声を上げる。まさか、あんなものまで量産しているなんて・・・! 一匹、二匹、三匹・・・ああもう、数えきれないくらい増えてるじゃない!

 

「ぶ、部長! 流石にコイツ等全員相手にしたら・・・!」

 

「くっ・・・!」

 

「出すつもりは無かったのだがな。貴様等の頑張りへの褒美だ。存分に踊るがいい!」

 

「みんな! 一旦フォーメーションを立て直すわ! こっちに集まって・・・!」

 

私がそう指示を出そうとしたその時だった。私達とロキ、ミドガルズオルムの丁度真ん中の空間が突如歪み始めた。これは・・・何かが現れようとしている?

 

「ふむ、どうやらあちらの決着がついたようだな。さてさて、英雄殿を飲み込んだのはフェンリルか? スコルか? それともハティかな?」

 

私達の見守る中、歪みは穴へと変化した。・・・信じてるわ、リョーマ。あなたが負けるはずが無いって!

 

しかし次の瞬間、私・・・いや、私達全員は、そこから現れた存在を見て己が目を疑った。ロキすらも表情を凍りつかせていた。

 

そこから現れたのは・・・満足そうな微笑みを見せるリョーマ。そして・・・彼の後ろに従者のように・・・犬でいう“お座り”のポーズで並ぶ三頭の神喰狼達だった。

 

この時おそらく・・・いえ、絶対にこの場にいた者達はこう思ったでしょうね。

 

・・・いったい何をしでかした? と。




動物好きの方に朗報です。次回はきっと楽しい楽しい動物達とのふれあいタイムになりそうです。いやあ、私も書くのが楽しみです。

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