ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百七話 やってやる! やってやるぞぉ!

イッセーSIDE

 

京都サーゼクスホテル・・・それが俺達のお世話になるホテルの名前だった。自分の名前をまんまホテルに使用するなんて、流石魔王様はスケールが違うなぁ。

 

「すげえホテルだな・・・。ウチの学校、こんな高そうな所に二年生全員泊まらせて大丈夫なのか?」

 

松田がもっともな意見を口にする。俺も悪魔側に来てグレモリー家の凄さを知らなければ同じ様に思っていただろう。てか、このホテルですら、冥界の部長の実家に比べればまだ大人しいぞ。あっちは完全に城だったからな。

 

ロビーから少し進んだ所の入口を潜ると、ホールにはすでに駒王学園の生徒達が大勢集まっていた。そうして、時間が来た所で点呼等を行い、続いて先生達から注意事項が伝えられた。ロスヴァイセさんから何故か百均について熱く語られた後、彼女から山田先生にバトンタッチした。

 

「では、これからみなさんそれぞれのお部屋に荷物を置いて自由行動に入ってください。時間は午後五時半までですから忘れない様に。あと、あまり遠くまでいって迷子になってはいけないので、範囲は京都駅までとします」

 

「真耶ちゃんが迎えに来てくれるなら俺迷子になる!」

 

「あ、俺も!」

 

「むしろ俺が迷子になって涙目の真耶ちゃんを迎えに行きたい!」

 

「え、ええ!?」

 

そこかしこから野郎どものそんな声があげられる。ちゃっかり松田と元浜も参加してやがる。んでもって山田先生がテンパっている。やっぱり可愛いなあの先生。年上なはずなのにたまに年下に見えちゃうんだよな。

 

「こらあなた達! 先生をからかってはいけませんよ!」

 

ロスヴァイセさんが注意する。うーん、まだ先生になって日が浅いのに、何だか貫禄があるな。真面目だけどちょっと抜けてる所があるせいか、生徒達からも人気があるんだよな。噂じゃ、山田先生とロスヴァイセさんでそれぞれ派閥が出来てるらしいし。

 

ともかく、長かった説明が終了し、俺達はそれぞれに部屋の鍵を受け取って自分の部屋に向かう事になった。このホテルは二人組の洋室らしいが、その関係で俺だけが一人余ってしまったらしく、一人部屋になった。少し寂しい気もするが、先輩達の所へ潜ったり、イメトレする分には一人の方が丁度いい。

 

「つーわけでイッセー。お前の部屋の鍵はこれだ」

 

アザゼル先生から鍵を受け取り、俺は松田と元浜と一緒にエレベーターに乗り込んだ。せっかくだし、こいつらの部屋でも覗いてみようかな。

 

松田が鍵を開け、中へ入る。それに続いて俺も入ると、まず目に飛び込んだのは大きくて立派なベッド。そして、京都駅周辺を一望できる窓からの風景だった。

 

それらに興奮する二人のはしゃぎっぷりを眺めた後、俺は自分の部屋へ向かう事にした。男子が泊まる階から二つ上に上がった階の隅・・・そこが俺の部屋だった。

 

「ここか・・・」

 

他の部屋とは異なる和風の引き戸を開けると、そこには八畳一間の空間が広がっていた。一応テレビやテーブルは揃っているが、どれも古臭いものばかりだった。

 

「おいおい、いくらなんでもこれは酷くねえか!」

 

「旅行資金のやりくりがこんな所に影響するとは。同情するぞイッセー」

 

「? 別にそこまで言うほどでもないと思うがな」

 

そりゃさっき見た部屋と比べれば数段劣っているとは思うが、そもそも、俺は以前もっと酷い環境で何日も過ごした事があるのだ。あの日々に比べれば、ここは天国さ!

 

「お、おい松田。イッセーの顔見ろよ・・・」

 

「諦め? いや・・・悟っているのか? ともかく、コイツは別に強がってるわけじゃない。本気でここを気に入ってるんだ」

 

「ひゃっほう! 見ろよ二人とも! トイレどころか風呂までついてるぞ!」

 

ここなら用を足している時も体を洗っている時も変な生き物やドラゴンに襲撃される事は無い。正に俺だけの城だぜぇ!

 

「わかった! わかったから落ち着けイッセー! そうだ! 今日の夜は俺が持って来たお宝DVDを一緒に見よう! そうすりゃお前だってきっといつものお前に・・・」

 

「お宝DVD?」

 

「え? ってドワォ!? ロスヴァイセ先生!?」

 

いつの間にかロスヴァイセさんが俺達の背後に立っていた。露骨に視線を逸らす松田達に首をかしげつつ、ロスヴァイセさんが耳打ちして来た。なんでも、この部屋はこちら側・・・つまり悪魔関係の話をする時に使う為に部長が用意してくれたのだとか。

 

「とはいえ、あなただけこんなお部屋にしてしまって申し訳無いと思ってます」

 

「ははは、何言ってるんですかロスヴァイセさん。むしろ、俺だけの為にこんな良い部屋を用意してもらって嬉しさしか感じてませんよ」

 

(なんという優しい笑顔。不満を一切出さず、この年でこれだけの気遣いは中々出来る事ではない。・・・兵藤君の評価を上げなくてはいけませんね)

 

「ロスヴァイセさん?」

 

「とにかく、そういう事です。私はこれから教師の会合があるので失礼しますね。あなた達は午後からの自由行動を楽しんでください。ただし・・・京都の方々に迷惑をかける事はしないように」

 

そう言って、ロスヴァイセさんは立ち去って行った。残された俺達は今彼女が口にした自由行動について話し合う事にした。

 

「自由行動か・・・どうする?」

 

「行先はお前等に任せる」

 

どこへ行こうが、俺がやるべき事は変わらないからな。

 

「それなら、俺から一つ提案がある」

 

京都の地図を取り出す元浜。俺はコイツの言う提案に耳を傾けるのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

アーシアSIDE

 

私は今心の底から実感していた。・・・隠し事は必ずバレてしまうものだと。

 

「なるほどねぇ・・・。これを隠してたわけか」

 

「がう!」

 

ベッドに正座する私の前で、桐生さんがチラリと床へ目線を落とす。そこには尻尾をフリフリさせながらお座りしているスコルちゃんの姿がある。あうう・・・まさか鞄の中に紛れ込んで着いて来ちゃうなんて。

 

新幹線の中で鞄を開けたら、私の着替えや下着に包まっているスコルちゃんと目が合った。見間違いだと、前日に一緒に寝たから幻を見ちゃったんだと自分を納得させようとしたけれど、結局もう一度確かめる勇気は私には無かった。

 

お部屋に入った所で、一緒のお部屋になった桐生さんに気付かれない様に鞄を開けるつもりだった。けど、桐生さんはお部屋に入った所で突然鞄を開けて欲しいと言って来た。

 

明らかに気付いてる感じの視線を向けられ、私は大人しく鞄を開けた。最後の手段としてぬいぐるみです! と誤魔化そうとした。けれど、私の最後の抵抗は、抱き上げると同時にスコルちゃんが鳴き声を上げた所で呆気無く終了した。

 

「アーシアがこんな可愛い犬を飼ってるなんて知らなかったな。ねえ、なんて名前なの?」

 

「ス、スコルちゃんです」

 

「ふーん、よろしくねスコル」

 

「くるるる」

 

桐生さんが声をかけるけど、スコルちゃんは大きなあくびをして床に丸まってしまった。あんな狭い所に長い時間いたから疲れちゃったのかな?

 

「あはは、マイペースなヤツだね」

 

「あ、あの桐生さん。この子の事・・・」

 

「みなまでいわなくていいよ。着いて来ちゃった以上仕方無いし。私も動物嫌いじゃないからね。帰るまで、何とかバレずに乗り切ろう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

やっぱり桐生さんは優しい人です。私の知らない知識を色々教えてくださったりするだけじゃなくて、こうやってご迷惑をおかけしても笑って許してくださるのだから。

 

「とはいえ、万が一先生にばれても面倒ね。・・・ここは一人くらい味方に引き込んどいた方が」

 

「味方・・・ですか?」

 

「うん、とりあえず私に任せといて。絶対に悪い様にはしないから」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

「さて、その子の事は一旦置いといて。私達はこれからの予定を・・・」

 

その時、桐生さんの携帯が鳴った。

 

「ああ、もしもし。・・・うん、はいはい了解。ゼノヴィアとイリナにも声かけるわ」

 

通話を終えた所で桐生さんに声をかける。

 

「もしかして、イッセーさんですか?」

 

「残念。元浜だよ。とりあえず、みんな下に降りて来いってさ」

 

「わかりました。それじゃあ行きましょう」

 

「スコルは? そのままでいいの? なんだったらまた鞄に入れて連れて行けば?」

 

「大丈夫です。スコルちゃんは一度眠るとこっちから声をかけない限り起きませんから」

 

「それはそれで問題あると思うけど・・・。まあいいわ。戸締りしっかりしとけば大丈夫でしょ」

 

という事で、私と桐生さんはスコルちゃんをお部屋に残し、ゼノヴィアさんとイリナさんと一緒にエレベーターで下へ向かうのだった。

 

アーシアSIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

京都駅から電車で一駅進んだ稲荷駅・・・そこから下車する事で伏見稲荷の参道へ入れる。俺達の自由行動の目的地はそこに決定した。

 

「・・・にしても、まさかスコルがアーシアに着いて来るとはな」

 

参道への道すがら、俺はゼノヴィアとイリナと並びながらそう零した。

 

「アーシアさんが言うには、いつの間にか鞄の中に忍びこんでいたらしいけど・・・」

 

「・・・本当にそうだろうか?」

 

「どういう意味、ゼノヴィア?」

 

「いくらなんでも、神喰狼がいなくなった事に神崎先輩が気付かないはずが無い。それなのにスコルはここにいる」

 

「まさか・・・気付いていて黙っていたっていうの? 何でそんな事・・・」

 

「そもそも、私は不思議だったんだ。先輩がアーシアを大切にしている事は私も十分理解している。だが、ここは冥界ではなく人間界だ。先輩からすれば未熟極まりない私達ではあるが、悪魔や天使である私達に人間相手の護衛をしてくれとわざわざ頼むだろうか? もしかしたら、私達が気付いていないだけで、真にアーシアに迫る危機は別にあるのではないだろうか?」

 

「別の危機? ゼノヴィア、あなたもしかして、この京都で何か起こると思ってるの?」

 

「その方が納得がいくんだ。だから保険としてスコルを送る事にした。イッセー。イリナ。これがどういう事かわかるか?」

 

「・・・神殺しの牙を護衛にしなければならないほどの相手が出て来るかもしれないって事だよな」

 

「そして・・・私達だけではアーシアを守りきれないと判断されたようだ」

 

ッ・・・! なんとなく察してたけど、言葉にするとキツイな。まさか、開始前から既に力不足の烙印を押されていたなんて。

 

「そんな顔をするなイッセー。私達はこの上なく頼りになる味方を得たのだぞ。守りに関してはスコルに任せて、私達は私達の役目を果たせばいい」

 

・・・そうだな。それに、考えようによっては、先輩は俺達を心配してスコルを送ってくれた事になる。うん、そう思う事にしよう。

 

「今話した事は全部私の想像に過ぎない。だが、神崎先輩が無駄な事をするはずが無い。それだけは頭に置いておいた方がいい」

 

「一応アザゼル先生達にも相談しておきましょうよ」

 

「賛成だ。帰ったら話してみよう」

 

そうやって今後の方針を話し合っている俺達の耳に、桐生のデカイ声が届いて来た。

 

「アンタ達! ぐずぐずしてると置いていくわよ!」

 

どうやら話している間に随分離されてしまったようだ。俺達は会話を中断し、駆け足で桐生達を追いかけるのだった。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

歩き始めて既に数十分が経過していた。もうすっかりバテバテの元浜を最後尾に、俺達の伏見山への挑戦は続いていた。

 

「うわあ! 素晴らしい景色ですね」

 

「アーシア、写真撮るからこっち向いて!」

 

風景に感動するアーシアと、そんな彼女を写真に収める桐生。そんな二人を一瞥し、俺は階段を駆け上がる足に力を込めた。

 

「みんな、俺ちょっと先にてっぺんまで行って来るわ!」

 

みんなに断りを入れ、俺はダッシュで階段を上り始めた。やっぱり、山に登ったら頂きを見ないといけない・・・という思いに駆られたわけではない。・・・山頂付近から感じられる妙な気配。その正体を知る為だ。

 

他の観光客のみなさんの邪魔にならない様に階段を上って行き、しばらくして頂上らしき場所へ着いた。そこには古ぼけたお社だけが存在していた。

 

周りには俺以外誰もいない。せっかくなので、俺はお社の前で手を合わせた。

 

「・・・どうか、この修学旅行が無事に終わります様に」

 

全身全霊で念じる。・・・だが、願うばかりで何もしなければ叶うものも叶わない。故に、俺は俺に出来る事を全力でやらなければならない。

 

「・・・出て来いよ。そこにいるのはわかってんだ」

 

この場所へ辿り着いてからずっと視線を感じていた。しかもそれに敵意が込められていれば、いくら俺でも気付かないわけが無い。

 

突風で木々が大きくざわめく中、そいつ等は姿を現した。山伏の格好で黒い翼を生やし、頭部が鳥の連中と、狐のお面をかぶった神主姿の連中、そして、二メートル以上の身長で、全身が真っ赤な怪物。

 

「イッセー!」

 

そこへ、絶妙のタイミングでゼノヴィア達が姿を現した。アーシアもゼノヴィアにおんぶされて一緒だ。

 

「悪魔に天使・・・。それに人間? そうか! その人間、おそらくヤツ等の仲間だな! ついに手掛かりを見つけたぞ! 貴様! 八坂様をウボァッ!?」

 

鳥頭の一人がアーシアへ近づこうとした瞬間、俺は迷い無く神器を発現させてそいつの顔面を思いっきりぶん殴った。殴り飛ばした鳥頭はそのまま木々の向こうへ消えて行った。

 

「・・・おうコラテメエ等。今アーシアに何しようとしやがった?」

 

「なっ!? あの距離を一瞬で!?」

 

思いっきりドスの利いた声を出しながら連中を睨みつける。そんな俺の脳裏に、出発前の部長の言葉が蘇る。

 

『い、いい、イッセー? 何があなたにそんな雰囲気を漂わさせているのかはわからないけど、京都を壊しては駄目よ? 他の勢力にも怒られるし、悪魔業界にも迷惑をかけてしまう恐れがあるから』

 

京都は各勢力にとっても重要な場所らしい。だからやり過ぎないようにと釘を刺されたわけだが・・・そんなの関係無い。

 

「・・・加勢するぞイッセー」

 

「アーシアさんの周囲は任せて」

 

アーシアの守りをイリナに任せ、俺はゼノヴィアにアスカロンを渡す。この日の為にデュランダルの強化を進めていたらしいが、結局間に合わなかったのだとか。なので、必要に応じてアスカロンを貸す事になった。

 

「よおゼノヴィアにイリナ。後で各勢力のお偉いさん方に説教されるのと、神崎先輩にOSHIOKIされるのとどっちがマシだと思う?」

 

「ふ、私がこの世に生を受けて今まで、そんなにも答える必要の無い質問は無かったぞ」

 

「ミカエル様からはある程度好きにやっていいとの許可は頂いているわ」

 

「上等ぉ。おいテメエ等ぁ。なんのつもりで襲撃かまして来たか知ったこっちゃねえがなぁ・・・」

 

俺は手の骨を鳴らしながら、ゼノヴィアは剣の切っ先を向けながら、そしてイリナはアーシアを背後に庇いながら同時に言葉を発した。

 

「「「テメエ(貴様)(あなた)等(達)は選択を間違えた・・・」」」

 

「「「「「ッ!?」」」」」




イッセー・ゼノヴィア・イリナ「「「ギッタギタにしてやんよ」」」ビキビキ



オリ主は既に京都で何が起こるのか勘づいている・・・と勘違いされているようです。首謀者の方々はそれを聞いてどう思うでしょうね。

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