ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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今回、イッセーがある技(原作登場)を強制的に習得させられます。


第百十二話 英雄の資格

イッセーSIDE

 

「A・G計画? ふむ、どうやらキミ達にも何か思惑があるみたいだな。ならば、それについても話してもらおうか」

 

「誰が話すかよ。いいから黙って俺等にブッ飛ばされろやぁ!」

 

「ははは、今代の赤龍帝は血の気が多い事だ。では、そろそろ始めようか」

 

(誰の所為でこうなったと思ってやがる!)

 

曹操が槍の切っ先をこちらへ向けると同時に、消滅を免れたアンチモンスター達が俺達に向かって押し寄せて来る。・・・が、それがどうした。今の俺達をそんな雑魚共で止められると思うなよ!

 

「ゼノヴィアがぶっ放してくれたおかげで数は減った。残りもさっさと片付けるぞ!」

 

「了解だ。木場、私が前に出る。お前は援護とあの剣の盾を維持する事に専念してくれ」

 

「わかった。ならこれを使ってくれ」

 

木場が創り出した聖剣をゼノヴィアへ放る。それを掴んだゼノヴィアが突っ込むと同時にアンチモンスターが一気に五体以上消滅した。

 

「イッセー。木場達への指示はお前に任せる。中々どうして様になってるぜ」

 

「先生は?」

 

「俺の相手はヤツだ」

 

アザゼル先生が曹操へ顔を向ける。正直言えば、俺も直接あいつをぶん殴りに行きたいけれど、俺達の後ろには何が何なんでも守りきらなければならない存在が二人いる。この戦いの勝利条件は曹操をぶちのめす事じゃない。俺の、木場達の、いや・・・京都という文化財溢れる素敵な場所を失わない為、アーシア達を守りきったその時こそが俺達の勝利だ。

 

「断言してやる。あの合宿を・・・そして、フューリーのアホみたいな特訓に付き合わされたお前達が、英雄の意味を履き違えたテロリストごときに負けるわけがねえ。見せてやれ、お前達の力をな」

 

「言ってくれますね総督殿。俺達が英雄の意味を履き違えている? 何をどう履き違えているか教えて頂けますかな」

 

「・・・ならまずは一つ。英雄ってのは自称するもんじゃねえ。ましてや、ガキにあんな顔をさせる様な連中が英雄であってたまるかよ!」

 

先生・・・あなたも九重の見えない涙に我慢の限界だったんですね。ずりいよな。こういう時、びっくりするくらい熱血するんだよなこの人。

 

先生が懐から見た事の無い宝玉を取り出す。その宝玉から溢れだした光が先生を包み込み、次の瞬間、先生の体は黄金色の鎧に包まれて・・・って、ええ!? な、何じゃそりゃ!?

 

「せ、先生! その鎧何ですか!?」

 

「へ、駒王協定の頃から準備していた物をようやく披露出来たぜ。ともかく、説明はこの戦いを終えてからゆっくりしてやる。今はただ成すべき事を成せ。さあ曹操! いっちょ付き合ってもらうぜ!」

 

「望む所! 聖書に記された存在と刃を交わせる日が来ようとはな!」

 

先生の光の槍と曹操の聖槍がぶつかり合う。あの人が負けるわけがねえ。先生の言う通り、俺達は俺達の成すべき事をやればいい!

 

「いっくぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

気合いの雄叫びと共に俺はアンチモンスターへ突撃した。モンスターの一体が口を開け、光を収束させていく。すかさず、俺はその隙だらけなどてっぱらを思いっきりぶん殴った! 

 

「が・・・ぎぃ・・・」

 

拳は呆気なく腹をつき破り、モンスターは短い断末魔と共に霧散した。『やられる前にやる』。これ鉄則ね。・・・これが先輩相手だと『やられるしかない』。もしくは『諦めるしかない』になる。って、これじゃどっちも同じか。

 

―――単純に腕力で倒すとは、やるな相棒。

 

そりゃ俺だって成長してますからね。あと、なんか想像してたよりもずっと脆いんだよな、コイツ等。

 

―――それも相棒の実力が増したからだ。さあ、この調子で一気に攻めてやれ。アンチモンスターを創り出すのにも限界がある。あの少年が限界を迎えるまで、とにかく倒し続けるんだ。

 

おう! やってやるぜぇ!

 

「赤龍帝! お前の相手は私達がする!」

 

そうやって手当たり次第にアンチモンスター達を倒していると、後方で待機していたはずの英雄派のメンバーが俺の前に立ちはだかった。全員女の子で、曹操が着ている物にデザインが似ている制服を纏っている。

 

まずいぜドライグ。敵とはいえ、流石に女の子の顔や腹を殴るのは俺には無理だ。何とか他の方法で無力化しないと・・・。

 

『おっと、悩んでいるようだね』

 

手をこまねいていた俺の頭に、そんな声が届いた。ええっと、この声は・・・誰だっけ? 歴代の先輩の誰かって事はわかるんだけど

 

『ひどいなぁ。けどまあ、今は悠長に話しているヒマも無さそうだし、同じフェミニストとして、僕が手を貸してあげるよ』

 

おお、マジですか!? ・・・いや、待てよ。あのオッサンの『赤き覇の超剛拳』みたいなヤバいもの貸してもらっても扱いに困るんですけど。

 

『大丈夫。僕の力は彼みたいに危険じゃないよ。あくまでも女性を無力化させる為の力だからね』

 

ほほう、なら安心ってわけか。よし、お願いしますぜ先輩!

 

『うんうん、素直でよろしい。それじゃあまずは籠手に魔力を溜めてくれ』

 

言われるままに籠手へ魔力を溜める。正直、魔力の扱いは得意ではないが、これくらいなら俺でも余裕だ。

 

『よし、じゃあその魔力を保ったまま、相手の衣服のどこでもいいから触れるんだ』

 

触れる? それだけでいいんすか?

 

『後は見てのお楽しみってね』

 

よくわからんが、かつて赤龍帝として戦った先輩のお言葉だ。信じてやってやろう!

 

「かかれ!」

 

女の子達が正面と左右から一斉に剣や槍を持って襲い来る。中々の速さだが・・・先輩や木場に比べれば止まってる様に見えるぜ! 先輩に関しては速さがどうとかじゃなく瞬間移動だろ! というツッコミは無しな!

 

一瞬の交差の間に、俺は彼女達の攻撃を全て避け、逆に衣服に触れる事に成功した。

 

「ば、馬鹿な!? かすりもしなかっただと・・・!?」

 

驚く女の子達。今がチャンスだ。先輩、次はどうすればいいんですか?

 

『籠手を通じてキミの魔力へ細工をさせてもらった。ブレイク・・・キミがこの言葉を口にした瞬間、彼女達は戦えなくなるだろう』

 

了解! さあ、いくぜ女の子達!

 

―――ッ、思い出したぞ! 待て相棒、その技は・・・!

 

「ブレイク! ・・・え?」

 

ドライグの制止の声を聞きながら、俺はその言葉を口にした。そして俺の眼前でそれが・・・女の子達の衣服が弾け飛ぶという衝撃的な出来事が起こった。

 

「ふえ? あ、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「そ、そんな!? 魔術処理が施されたこの服が破れるはずが!? み、見ないでぇ!」

 

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!? な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!? 俺か!? 俺がやったのかこれぇ!?

 

『あはは! どうやら上手くいったみたいだね』

 

先輩ぃ! こりゃどういう事ですか!?

 

『どうもなにも、生前の僕もこうやって向かって来る相手の衣服を剥いで無力化させたもんさ。あ、もちろん女性限定でね。男の裸なんて見たら目が腐っちゃうからね』

 

なん・・・だと・・・!? って待てよ、おいドライグ! お前知ってたんじゃねえのか!?

 

―――だから止めただろう! くそぅ、もう二度と見なくて済むと思っていたのに。この技の所為で俺がどれほど苦しんだ事か・・・!

 

『いい技でしょ? キミにあげるから好きに使いなよ』

 

―――絶対に使うなよ相棒! 次に使ったら・・・泣いてやる。恥も外聞も無く、お前がドン引きするくらい盛大に泣いてやるからな!

 

お、おう、もちろんだぜドライグ。こんな素晴らし・・・けしからん技を俺が使うと思っているのか?

 

―――少し前の相棒なら迷わず使っていただろう。だから不安なんだよ・・・。

 

「・・・なるほど、まさかそんな方法で無力化するとは。女性の心を利用しての戦略、中々に面白いな。ひょっとして、常日頃から女性の扱いに長けているのかな?」

 

「あ゛あ゛!?」

 

―――落ちつけ相棒。出したらいけない声になってるぞ。

 

知るか! この優男、いきなり出て来てふざけた事を・・・誰が女性の扱いに長けてやがるだと! 嫌味か! 皮肉か! こちとら一部以外の女子にはとことん嫌われてますけど何かぁ!?

 

「テメエ・・・死にてえようだな」

 

渦巻く感情全てを込めて優男を睨みつける。すると、ヤツは僅かに目を見開いて周りの連中に向かってしゃべりだした。

 

「ふむ、データというのは案外頼りにならないものだな。一部では、歴代で最弱とまで呼ばれているが、この覇気・・・警戒レベルを二段・・・いや、三段くらいは上げた方がよさそうだ」

 

「そいつは嬉しいね。お礼に今からテメエを全力でボコってやる」

 

コイツは禁句を口にした。生まれてこの方、女の子にモテた事の無い俺に向かって。そりゃ自業自得だってわかってるさ。だがな、たった今初めて会って、しかも敵であるヤツに馬鹿にされるのは我慢ならねえんだよ!

 

「僕は英雄シグルドの末裔のジーク。仲間はジークフリートと呼ぶが、どちらでも呼びやすい方で呼んでくれて構わない」

 

お前なんざ優男で十分じゃい!

 

心の中で呪詛の念を送っていると、アンチモンスターを切り捨てたゼノヴィアがヤツの顔を見て口を開いた。

 

「ジーク・・・。それにその腰に帯刀した魔剣達・・・。間違い無く『魔帝ジーク』だな。悪魔祓いが何故テロ組織の下へいる?」

 

「知っているのかゼノヴィア!?」

 

思わず魁ってしまった俺の前で、二人はやりとりを続けた。

 

「こっちにいる方が色々都合がいいからね。僕の事なんかより、今は勝負を楽しもうよ。木場祐斗、ゼノヴィア、紫藤イリナ・・・は取り込み中みたいだね」

 

三人の名を呼びつつ、優男・・・ええい、めんどくさいからジークフリートでいいや。とにかくジークフリートは手に持った剣へオーラを纏わせた。さっきゼノヴィアが魔帝とか言ってたから、アレは魔剣なのだろうか。

 

「・・・僕が行こう」

 

聖魔剣を持った木場が前に躍り出る。見つめ合う両者。張り詰めた闘気に思わず喉を鳴らしてしまう。

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

それを合図にしたかのように、二人は同時に剣を振るう。甲高い金属音は剣と剣がぶつかり合った事を表した。

 

「それが聖魔剣か。だが、この剣・・・魔剣最強のこの魔帝剣グラムならば余裕で受け止められる」

 

「・・・」

 

鍔迫り合いからの飛び退き、そこから間髪入れずに激しい剣戟が繰り広げられるが・・・。

 

「木場が押されてる・・・!?」

 

あの野郎、木場のスピードに追い付くどころか上回ってるのか!? その証拠に、木場の攻撃はヤツに全て受け止められていた。フェイントをしかけても通じない、カウンターも出来ない。あの木場が一方的に追い詰められていた。

 

「『魔帝剣のジークフリート』の名は伊達では無い。『聖王剣のアーサー』と並び称される剣豪相手に、木場祐斗では相手にならない」

 

英雄派の一人がそんな事を言って来た。アイツ、そんなヤバいヤツだったのか!? このままじゃいくら木場でも・・・!

 

「木場、援護を・・・!」

 

援護に入ろうとするゼノヴィアを、木場は手で制した。

 

「待ってくれゼノヴィア。一つだけ試したい事がある。それが駄目だったら援護をお願いするよ」

 

この状況で試すって・・・。でも、木場の顔に焦りや気負いは無い。アレは・・・笑っているのか?

 

「いいのかい。二対一でも僕は全然構わないよ」

 

「その言葉、そのまま返すよ」

 

「なに?」

 

「あなたは強い。おそらく全力の風刃閃でもあなたには通じないだろう。だから・・・先輩から教えてもらったもう一つの奥の手を使わせてもらうよ」

 

もう一つの技!? 初耳だぜそんなの! 俺はてっきり風刃閃だけかと・・・!

 

驚く俺達が見守る中、木場は聖魔剣を持った手とは反対の手を顔の位置まで上げる。すると、その掌から一本の短剣が生える様に出現した。何だあの剣? オーラとかは特に感じないけど・・・。

 

「・・・リミットブレイカー」

 

低い声で呟く木場。次の瞬間、木場はその短剣を逆手に持つと、なんとそれを自分の胸に突き刺した! っておい! 何やってんだよ木場!

 

「何のつもりだい?」

 

「枷を外すのさ。師匠から、この技はここぞという時にしか使ってはいけないと言われているからね」

 

剣が突き刺さっているというのに、木場の顔は涼し気だ。そして次の瞬間、俺は木場の言った枷を外すという意味を理解する事となった。

 

「ッ!? き、木場・・・!?」

 

木場の体・・・正確には木場の両足をとてつもないオーラが包み込む。左足に光。右足に闇色のオーラを纏わせ、木場が剣を構える。

 

「覚悟してくれ。制御がまだ完璧じゃなくてね、手加減する余裕が無いんだ」

 

「何を言って―――」

 

ズン! という爆発音が俺の耳をつんざく。その数瞬の後、ジークフリートの脇腹から鮮血が迸った。

 

「・・・え?」

 

俺は何が起きたのか理解出来なかった。ただ一つ、俺にわかったのは、さっきの爆発音は木場が地面を踏みしめた際に発生したものだという事だけだった。現に、たった今まで木場が立っていたはずの場所の地面が大きく抉れていた。木場の脚力に地面が耐え切れなかったのだ。

 

「・・・何をした? そんな技はデータに無かったが」

 

血が流れているにも関わらず、ジークフリートは背後に立つ木場へ疑問を投げかける。それに対し木場は事もなげに答えた。

 

「今のは技でも何でも無い。ただ斬っただけさ。ただ速く、ひたすら速くね」

 

技じゃない!? 俺はてっきり超高速で動けるようになる技かなんかを使ったのかとばかり・・・。

 

「僕が師匠につけられた枷は三つ。“あの技”を使うにはその全てを解かないといけないのだけれど・・・どうやら一つだけで十分のようだね」

 

わかったぞ。その技ってのが木場の奥の手なんだな! つーか、今のままでもうすげえけど、これ以上速くなるってのか!?

 

「は、はは、はははははは!」

 

突然ジークフリートが笑い始めた。腹を抱え、涙を流し、それはもう嬉しそうに。この状況で大笑いするとか・・・まさか今のでおかしくなったのか?

 

「いいよ! いいよ木場祐斗! さっきの仲間の言葉は謝罪しよう! キミは強い! そんなキミを倒せば、僕はまた英雄として一歩強くなれる!」

 

何じゃそりゃ? コイツ所謂バトルジャンキーってヤツか? あーやだやだ、やっぱりテロリストになるヤツにロクな人間はいな―――。

 

「・・・あなたごときが“英雄”という言葉を口にするな」

 

その言葉に、俺の血は一気に冷え切った。それには明確な憎悪や怒りが込められていた。まるで、聖剣を巡る事件の時の木場に戻ってしまったと錯覚してしまうほど、今のアイツの雰囲気は恐ろしかった。

 

「僕は本物の英雄を知っている。だから許せない。そうやって軽々しく英雄なんて口にするあなた達が。英雄の子孫? それがどうした。あなた自身が英雄と呼ばれるに相応しい偉業を成し遂げたとでも言うのか? 絶望の中にありながら、それでも誰かを守る為に歩み続ける事があなた達に出来るとでも言うのか!」

 

「木場・・・」

 

誰の事を言っているのかわからないはずが無い。そうだ、俺達は知っている。コイツ等みたいな似非野郎なんかじゃない、本物の英雄を。

 

「英雄を名乗りたいのならば、あの人の何万分の一でもいいから同じ事をやってみろ。それが出来ないのならば、今すぐ英雄を名乗るのを止めるんだな」

 

「ふっ、別にキミに認めてもらおうとは思っていないよ。僕は人間の英雄だ。悪魔に英雄扱いされるなど虫唾が走る。・・・キミの言う英雄も僕からすればただの狂人だよ。悪魔にもてはやされる立場になるなんて僕なら死んでもゴメンだ」

 

こんの野郎・・・! 俺達を馬鹿にするだけじゃ飽き足らず、先輩まで・・・!

 

「・・・そうか。よかったよ」

 

「よかった?」

 

「これでもう、あなたを斬るのに微塵も躊躇いは無くなった。さあ・・・続けようか」

 

挑発するように手招きする木場。それを見たジークフリートは喜色満面に木場へ斬りかかるのだった。




何だかんだで木場君にも憧れられていたオリ主。そして、オリ主によって知らず知らずに魔改造されるイッセー達でしたとさ。

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