ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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前回の反響がもの凄かった・・・。何だかんだでみなさん英雄派の事が好きなんですね。さて、(葬式)会場の手配をしなければ。喪主は誰に頼もうかな・・・。

感想返し出来なかったらごめんなさい。


第百十五話 ドラゴン怒りの鉄拳

イッセーSIDE

 

英雄派め、いきなり仕掛けて来やがったな。まさかバスを待っている最中に跳ばされるとは思わなかったぜ。またあの『絶霧』とかいう神器の仕業だな。

 

『京都』と表示されたプレートを見上げながら、俺は自分の身に起きた事を分析した。周囲には誰もいない。どうやらバラバラに散らばされてしまったようだ。

 

「・・・っておい! やべえじゃねえかよ!」

 

アーシア! アーシアはどこだ!? 早く見つけないと! ぅおのれい英雄派ぁ! アーシアに指一本触れてみやがれ! 首根っこ引っ掴んで先輩の前に突き出してやるからな!

 

アーシアを探す為、全力疾走しようとした直前、俺の携帯の着信音が鳴った。ええい、こんな大変な時に誰じゃい! つーか通じるのかよ!

 

「木場・・・!?」

 

画面には木場の名が表示されていた。俺はすぐに通話ボタンを押した。

 

「木場! アーシアは! アーシアはそっちにいるか!?」

 

「お、落ちついてイッセー君。アーシアさんは無事だよ。たった今ゼノヴィアから連絡を受けたけど、イリナさんと九重姫の四人で一緒だってさ」

 

「そ、そうか。・・・って九重? なんであの子が・・・?」

 

「どうやら僕達と一緒に二条城へ向かうつもりだったみたいだよ。それで転移に巻き込まれてしまったらしいんだ」

 

「なるほどな。とにかく、アーシアも九重も無事ならよかった。ならロスヴァイセさんと匙は・・・」

 

「二人は僕と一緒にいるよ。ともかく、互いの無事も確認出来たし、次は合流を目指して移動しよう。・・・どうやらこのフィールド、思った以上に広いみたいだ。おそらく二条城を中心にした街をそのまま再現しているんだと思う。ちょうどアザゼル先生からもらった地図くらいの範囲くらいはありそうだよ」

 

「・・・そりゃ相当にデケえな。わかった。なら合流は二条城でって事でいいな?」

 

「そう言うと思ってゼノヴィアにも合流地点を伝えてあるよ。今頃彼女達も二条城に向けて移動しているはずだ」

 

「相変わらず手際がいいなお前は。よし、それじゃあそろそろ切るぞ。そっちも気をつけろよ」

 

「イッセー君もね」

 

携帯を切り、俺は籠手を発現させて線路に下りた。こっちの方をずっと歩いていけば、二条城前の地下鉄駅まで行ける。昼の帰り道の逆を辿ればいいってわけだな。

 

―――相棒、わかっているとは思うが、何が出て来るかわからん以上、警戒だけはしておくんだぞ。

 

「だな。・・・さっそくお一人様がいらっしゃったみたいだぜ」

 

前方から英雄派の制服を着た男が歩を進めて来た。

 

「やあ、赤龍帝殿。空を見たかい? 雲が一切無いから星がとても綺麗だよ」

 

「さあな。どこかの誰かさんがいきなりこんな地下へ放りこんでくれたんで見たくても見れねえよ。つーか邪魔だから退いてくれ。俺のラストミッションの邪魔するんなら容赦しねえぞ」

 

「そのラストミッションとやらは初耳だが、俺もただ顔を見せるだけの為にここまで来たんじゃない。悪いが少しばかり付き合ってもらうぞ」

 

男がそう言った直後、男の影が意思を持ったかのように動き始めた。

 

―――来るぞ相棒。

 

「これが俺の禁手化だ」

 

影が男の体を包み込んでいく。不定形だったそれはいつしか鎧の様なものへと形成された。

 

「アンタの恐ろしさはなんと言ってもその馬鹿みたいな攻撃力だ。だが、この『闇夜の獣皮』を纏った俺を殴れるかな?」

 

「なら試してやるよ!」

 

味方はいない。負けは即“死”に繋がる。けど、それがどうした。こちとら京都に来てからずっと命かけてんだよぉ!

 

籠手を振りかぶり、避ける素振りさえ見せない男の顔面へ叩きつける様に拳を放つが、俺の一撃は男の顔面をすり抜けてしまった。感触がまるで無い。これじゃまるで煙を殴ったみたいだぜ。

 

「わかったか? この鎧の前にはどんな攻撃も無駄だ。アンタのパワーも、当たらなければ意味が無いんだよ」

 

「・・・」

 

「ふ、今になって状況を理解出来たのかな? なんだったらアンタも『禁手化』すればいい。もっとも、それでも俺には拳は届かないだろうがな」

 

・・・は? 禁手化? たかだが攻撃が通じないくらいで禁手化しろってか? ・・・舐めんなよ。

 

「そりゃ出来ねえな。俺の『赤龍帝の鎧』はとっておきなんでね。お前程度の相手になんざ使う価値もねえよ」

 

「・・・何だと?」

 

俺の言葉を受け、男の額に青筋が浮かびあがる。

 

「確かにお前のその鎧がある限り、俺の攻撃は通らねえ。なら、通るようにしてやればいいだけだろうが」

 

「ほざけ! やれるものならやってみるがいい! その手段があるのならなぁ!」

 

憤怒の表情で襲い掛かって来る男を前に、俺は倍加を始めると共に籠手に魔力を集中させた。かなり特殊ではあるが、あれは“鎧”なんだ。だったら、この技なら通じるはずだ!

 

(イメージしろ! 疑うな! 必ずやれる! 破壊してみせる!)

 

影の刃が迫り来る刹那、俺はありったけのイメージと共に男の鎧へ手を伸ばした。当然掴めはしなかったが、今、確かに俺はヤツの鎧に“触れた”。矛盾しているかもしれないが、俺の認識では確かに触れたんだ。その認識さえあれば実際に触れようが触れまいが関係無い!

 

「消し飛べぇ! 『鎧崩壊(アーマー・ブレイク)』ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

「なっ!?」

 

瞬間、解き放った魔力の波動が、男の鎧を消滅させた。っしゃあ! 見たかこの野郎! これが先輩から教えてもらった俺の新技だ!

 

「んでもってコイツを喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

無敵だと思っていた鎧を消され、呆然自失といった様子で棒立ちとなった男の顔面に、今度こそ俺は拳を叩き込んだ! 

 

「がぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

線路上を激しくバウンドしまくった後、男はベシャリと地面に叩きつけられた。

 

(オロロロロロロ・・・!)

 

ッ!? な、何だこの頭の中に響く気持ち悪い声は!? いや、声っつーか、なんか吐いてる様な・・・。

 

―――相棒、今お前にあの技を教えた男が嘔吐しているぞ。

 

やっぱりかぁ! うわ、俺の頭の中に吐かれてるみたいでこっちまで気持ち悪いんですけど!

 

―――どうやら男相手に使った所為で拒否反応を起こしたらしい。だが、俺は嬉しいぞ相棒。・・・アイツもこんな風にまともな使い方をしてくれていれば、俺もあんな目に遭う事も無かったはずなのに・・・。

 

な、なんか知らんが、お前も苦労して来たんだなドライグ。でも、おかげでこうして勝てたんだし、よしとしようぜ。

 

声を震わせるドライグをなだめつつ、俺は倒れ伏した男の横を通り過ぎようとした。その時、男の弱々しい声が俺の耳に届いた。

 

「・・・ようやく得た『禁手』でも天龍には届かないか。やはり曹操達と違って、英雄の子孫でも何でも無いただの人間だった俺には悪魔に勝つなんて無理だったんだな」

 

その言葉がどうしてかムカついてしまった。俺は男の胸倉を掴んで無理矢理立たせた。

 

「んな事は関係ねえ。九重を・・・あんな小さい女の子のお母さんを利用しようとするテロリストなんかに負けるわけにはいかねえんだよ」

 

「ふ、ふふ、悪魔の癖に正義の味方を気取るつもりか? 悪魔も妖怪も人間にとっては脅威でしかない。そんな連中がどうなろうが知った事では無い。だから俺はアンタと戦ったのさ。それが曹操の為になると思ってな。神器を持って生まれた所為で、このクソみたいな世の中で、クソみたいな人生を送っていた俺を、あの人が救ってくれたんだ。俺なら英雄になれるって・・・そう言ってくれたんだよ!」

 

男の目に涙が浮かぶ。神器を持って生まれた事による悲劇。・・・アーシアもそうだったな。それに俺も神器を持っていた所為でドーナシークに殺されかけたんだ。

 

「迫害されていただけだった俺の力が悪魔や天使、果ては神々を倒す術に繋がるんだ! この俺がだ! そうなったらもう、誰にも俺を否定させねえ! そうさ、間違っているのは俺じゃねえ! この世界の方だ―――」

 

「テメエの弱さを誰かの所為にしてんじゃねえよ!」

 

「ごふっ!?」

 

俺はもう一度男の顔面を思いっきり殴った。ただし、籠手では無く素手でだ。

 

「お前を追い込んだのは確かに周りが悪いさ。恨みを抱くのも仕方ねえかもしれねえ。だからって、自分の力で誰かを不幸にしていいわけがねえだろうが! それじゃあお前を追い込んだ連中と同じってなんでわからねえんだよ!」

 

「黙れぇ! 俺が・・・俺があんなヤツ等と一緒なわけが・・・!」

 

「一緒なんだよ! お前のやった事で誰かが涙を流す! 誰かが傷つく! 誰かが不幸になる! そうやって第二、第三のお前が生まれ続けるんだ! だから俺はお前をぶん殴る!」

 

鼻血やらアザやらで滅茶苦茶の男の顔面へ、俺は止めの一発となる拳を振り上げた。

 

「・・・お前、さっき俺が正義の味方を気取っているとか言ってたよな?」

 

「はあっ・・・はあっ・・・。そ、それがどうしたって言うんだ・・・」

 

「正義の味方ってのは、全ての人を守ってくれる存在だ。そんなの、あの人にしか出来やしねえよ。俺に出来るのは、精々こうやってお前を・・・目の前の相手をぶん殴る事だけさ」

 

荒い呼吸を繰り返していた男が肩を振るわせる。その顔は笑っていた。

 

「・・・何だよそれ。カッコつけ過ぎだろ」

 

「へっ! 男の子はカッコつけるのが仕事だろうが」

 

「でも・・・何でだろうな。妙に気分がスッキリしてるよ。思えば、憎しみや恐れじゃ無く、純粋に怒りを向けて来たのはアンタが初めてかもしれない。俺を“神器を持った人間”としてじゃなく、“俺”として真っ直ぐに見つめて来たのもな。それは曹操でもしなかった事だ。あの人は神器を持った特別な人間として俺を見ていたから」

 

うげ、初めてとか見つめるとか、誤解される様な言い方すんなや!

 

「なあ、最後に教えてくれよ。アンタが唯一正義の味方だと認めるヤツの名前をさ」

 

「・・・神崎亮真。伝説の騎士で、滅茶苦茶強くて滅茶苦茶優しい俺の先輩だよ」

 

「ッ・・・! は、はは、そうか。そういやアンタ達の傍には本物の英雄が―――」

 

俺は拳を振り降ろした。今度こそ男は動かなくなった。・・・これでいい。コイツは敵なんだからな。目が覚めた時には全てが終わってるだろうが、それからどうするかはコイツ次第だ。

 

しばし男の腫れあがった顔を見つめ続けた後、俺は改めて線路の上を歩き始めた。そこへ、再び木場から電話がかかって来た。

 

「イッセー君。こっちは合流地点に到着したよ。案の定、妨害があったけど、そっちはどうだい?」

 

「こっちも今一人片付けた。悪いがもう少し待っててくれ」

 

「わかった。待ってるよ」

 

俺は携帯を切った。うぬぬ、思ったより時間がかかってしまったか。急がねえと。

 

―――相棒。

 

何だよドライグ?

 

―――今代の宿主がお前でよかったよ。

 

な、何だよ急に。

 

―――ふ、言ってみただけだ。それよりのんびりしていていいのか?

 

へいへい。わかってるっての。

 

突然のドライグの言葉に妙なむず痒さを感じつつ、俺は走り始めるのだった。

 

『・・・甘いな。だが・・・心地良い甘さだ。その甘さ、どこまで貫けるか見物だな』




Q:これは誰ですか?

A:イッセー=サンです。

たぶん、混乱された方がいらっしゃると思いましたので、先にちゃんと答えを書いておきます。

それと、前書きでも触れましたが、前回の更新でのたくさんの感想ありがとうございます。一度の更新であれだけの数は今まで一、二回あるかないかくらいでした。

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