ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百十六話 シーリング・ブレイク

イッセーSIDE

 

アンチモンスターの妨害を突破し、俺は二条城前のホームから外へ出て城門前に到着した。木場からの連絡通り、すでに俺以外のみんなが揃っていた。

 

「来たな兵藤」

 

「悪いな匙。連中の妨害がしつこくてよ」

 

最初に俺に気付いた匙に片手を上げて応える。全員、外見からは特に怪我をしている様には見えない。安心したぜ。

 

「イッセー君だけ単独での行動だったから仕方ないさ。まあ、キミがやられるはずが無いって信じてたけどね」

 

「当たり前だろ木場。このラストミッション、俺は不退転の覚悟で挑んでるんだ。今さらアンチモンスターごときにやられるかよ」

 

俺が木場へそう返したと同時に、閉まっていた門が大きな音を立てながらゆっくりと開いて行った。

 

「どうやら誘っているようだな。大した演出だ」

 

「アホらしい。だからアザゼル先生に中二病集団って呼ばれるんだよ」

 

呟くゼノヴィアに続き、俺はワザと声に出してそう言った。こっちの動きが見られてるんなら、多分声も拾われてるはずだからな。挑発とまでは言わないが、これくらいは言わせてもらう。

 

「この中に母上が・・・」

 

誰よりも早く敷地内へ歩みを進める九重。俺達もそれに続き中へ足を踏み入れた。道中、木場から曹操の居場所の説明を受けた。ヤツは本丸御殿で俺達を待っているらしい。倒した刺客が最後にそう言ったのだとか。

 

そして、俺達が本丸御殿に続く櫓門を潜り、照明の当てられた日本家屋が立ち並ぶ場所へ辿り着き、連中の気配を探ろうとした正にその時、ヤツの声が近くの庭園の方から聞こえて来た。

 

「やあ、よく来てくれたね。俺達の招待に応じてくれて嬉しいよ」

 

「曹操ぉ・・・!」

 

ヤツの姿を捉えると同時に、至る所から英雄派の連中が姿を現した。当然と言うべきか、やっぱり待ち伏せしてやがったな。

 

「は、母上!」

 

「え?」

 

九重の叫び声に目を向けると、あの子の視線の先に着物姿の女性が佇んでいた。あ、あれが九重のお母さんで妖怪の総大将の八坂さんか。すげえ美人だ。

 

「母上! 九重です! 助けに参りました!」

 

九重の声を受けても、八坂さんは声をあげるどころか反応すらしなかった。・・・おかしい、目も虚ろだし、表情も死んでいる。

 

―――おそらく洗脳か何かの類だろう。

 

洗脳だと!? あんの野郎・・・そこまでやるのかよ!

 

「貴様等! 母上に何をした!?」

 

「おや、お忘れですかな? 我々の実験に付き合ってもらうんですよ。・・・こんな風にね」

 

曹操が槍の石突きで地面を叩いた刹那、八坂さんの姿が瞬く間に変容していった。

 

「マ、マジか・・・!?」

 

やがてその姿は巨大な金色の狐となり、天に向かって凄まじい咆哮をあげるのだった。・・・怖いって感想よりも綺麗だと思うのが先になる辺り、俺っておかしくなっちまったのかな。まあ、もっと恐ろしい存在を知ってるからな。

 

「母上ぇ!」

 

「駄目! 下がって九重ちゃん!」

 

アーシアが九重の手を引いて後ろに下がる。八坂さんは相変わらずの虚ろな目だったが、特に暴れたりせずに大人しい。それも曹操が合図をすればすぐに暴れ出すのだろうが・・・。

 

「そろそろ教えろよ曹操。こんな馬鹿でかいフィールドを用意して、八坂さんを操って、いったいテメエ等は何がしたいんだ?」

 

「ああ、やっぱり気になるかい? いいよ、教えてあげよう。この京都という土地、そして九尾の力を組み合わせ、俺達はアレを・・・グレートレッドを呼び寄せようと思っているのさ」

 

「グレートレッド? ・・・はあ!? グレートレッド!? 神崎先輩がシャルバとかいうヤツを倒した後に出て来たデッカイドラゴンの事か!?」

 

曹操の口から飛び出た存在の名に、俺達は揃って目を見開いた。

 

「この京都という土地は実に面白い。霊力や妖力、魔力といったものにとても富んでいる。それらの力と九尾の力があれば、あのドラゴンを呼び出す事も可能になる。そうやって呼び寄せた所を捕獲するのさ。捕獲した後は、色々調査してみるつもりだよ」

 

「・・・なるほどね」

 

「わかってくれたかい?」

 

「ああ、よくわかったぜ。・・・テメエ等が心底クソ野郎だって事がな!」

 

あれほど英雄だ、超常の存在を越えるだとかほざいてたくせに、結局は自分達の勝手な理由で動いてたって事かよ! やっぱりテロリスト様は言う事が違うぜ!

 

「英雄派などという大袈裟な名前を掲げる連中だからどんな目的かと思っていたら・・・なるほど、所詮は混乱しかもたらさないテロリストだったわけか」

 

ゼノヴィアが剣・・・ついさっき届いたばかりだという新しいデュランダルを曹操に向ける。決戦前に戦力増強出来て喜んでたなコイツ。

 

新しいデュランダルには鞘がついていた。次の瞬間、それが音を立ててスライドし、剣自体が変形していった。・・・なんか、神崎先輩の剣みたいだ。

 

「だったら、やる事は決まってる。その計画・・・僕達が止めさせてもらうよ」

 

「そうね。・・・でないと、地獄すら生温い結末を迎えてしまうもの」

 

木場が聖魔剣、イリナが光の剣を手に続く。

 

「・・・兵藤」

 

「匙・・・ッ!?」

 

ふいに声をかけて来た匙の顔を見て俺は驚愕した。ど、どうしたんだコイツ? なんか左目が蛇の目みたいになってるぞ!? しかも体には黒い蛇が何匹も纏わりついてるし!

 

「お前等やアザゼル先生がキレてた理由がわかったよ。俺も連中がムカついて来た。・・・八坂姫様は俺に任せろ。俺の力なら止められるはずだ」

 

「ほ、ホントか・・・!?」

 

「だから兵藤。お前達でヤツ等を絶対に倒せ。いいな?」

 

「お、おう・・・」

 

コイツ・・・本当に匙か? 俺の知ってる匙はこんなプレッシャーを放つイケメンじゃなかったはずだけど。

 

「見せてやるよ。これが俺の・・・『龍王変化』だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

夜の闇を切り裂く様に匙の雄叫びが響いた瞬間、その体を包んでいた蛇が黒い炎へと変わり、匙の全身を覆い尽くす。

 

そして俺はその光景を目に焼き付けた。匙が・・・漆黒の炎を身に纏った匙が、巨大な存在―――ドラゴンへと変貌したその光景を。

 

「さ、ささささささ匙ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」

 

「ははは! こいつは驚いた! まるで怪獣映画だな!」

 

なに面白そうに笑ってやがる曹操! 友人がドラゴンになっちゃった俺の気持ちを察しろや!

 

「けど、楽しんでもいられないな。あの黒い炎はヴリトラだろう。とりあえず実験をスタートさせておかないと面倒な事になりそうだ」

 

「なら始めよう」

 

曹操から引き継ぐ様にローブ姿の男が宙に手をかざす。それと同時に男の周囲にとんでもない数の魔法陣が一気に出現した。間違いねえ、アイツが『絶霧』の所有者だ。魔法使いだったのか。

 

「・・・北欧式だけじゃない。悪魔、堕天使、黒魔術・・・。まるで魔術のバーゲンセールですね」

 

どっかで聞いた様なセリフと共にロスヴァイセさんがそう分析する。・・・おい、なんか八坂さんの足下にヤバそうな魔法陣が出現したんですけど・・・。

 

「準備は完了した。後はグレートレッドがこちらの誘いに乗ってくれるかどうかだ。曹操、そっちは任せたぞ」

 

「ああ。・・・とはいえ、『魔獣創造』を持つレオナルドは外で頑張ってもらっているからアンチモンスターはあらかじめ呼び出した分だけしか使えない。それも全部使ってしまったからな。・・・やれやれ、あの二人はいつになったら合流するのやら」

 

「あら、丁度いいタイミングだったみたいね」

 

「待たせたな曹操!」

 

曹操が困った様な表情を浮かべたその時、ヤツの背後から新たな人物が二人現れた。一人は剣を持った金髪の女性。そしてもう一人は筋骨隆々な男だ。アイツ等も仲間か・・・。

 

「遅いぞジャンヌ、ヘラクレス。このままお前達抜きで始めようと思っていた所だ」

 

「悪いな。けど、寄り道したおかげでいいもんが拾えたからな」

 

「いいもん?」

 

「私は乗り気じゃなかったんだけどねぇ。まあ、今さら手放すのもなんだし、使うタイミングはこっちで決めさせてもらうわ」

 

「よくわからんが、まあ任せるさ。さて、紹介しよう。この二人は英雄であるジャンヌ・ダルク。そしてヘラクレスの魂を引き継ぎし者達だ。キミ達もきっと満足してくれるだろう」

 

ヘラクレスってのはよくわからないが、ジャンヌ・ダルクは知ってるぞ。確か最期は火炙りにされたんだっけ。

 

「では組み合わせだが。ジーク・・・はもう決まってるか」

 

「わかってるじゃないか曹操。僕の相手は当然キミだよ木場祐斗!」

 

「ああ、僕もそのつもりだったよ」

 

魔剣を抜くジークフリートの前に進み出る木場。やっぱりこうなったか。どうも互いにこだわりがあるみたいだし、必然といえば必然だな。

 

「私は・・・そっちの悪魔ちゃんね! さっきからその素敵な聖剣から目が離せないのよ!」

 

「なら、俺はそっちの銀髪の姉ちゃんだな」

 

「で、俺は赤龍帝ってわけか。うーん、中々に面白い組み合わせになったなぁ」

 

俺と曹操。木場とジークフリート。ゼノヴィアとジャンヌ。ロスヴァイセさんとヘラクレスがそれぞれ戦う事になった。

 

「イッセー君」

 

「イリナ。お前はこれまで通り、アーシアと九重を守ってくれ」

 

「うん、任せて!」

 

さて・・・いよいよ曹操との直接対決か。流石にコイツ相手に禁手無しで挑むつもりは無い。能力がわからない以上、俺に出来る事はただ一つ・・・!

 

(相手が能力を発揮する前にぶっ飛ばす!)

 

シンプルな戦法を立てながら、俺は禁手化のカウントをスタートさせるのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

ゼノヴィアSIDE

 

私とジャンヌは九尾と匙がいる場所から少し離れた所へ移動した。得物はレイピア・・・ならば、おそらくこの女は木場と同じスピードタイプなのだろう。

 

「あらあら、そんな情熱的に見つめられたら照れちゃうじゃない」

 

「何故私を選んだ?」

 

素朴な疑問を投げかけると、ジャンヌは微笑みを崩さず答えた。

 

「同じ聖剣使いとしてあなたに興味が湧いたのよ」

 

「お前が聖剣使いだと?」

 

「そうよ。私の持つ神器は『聖剣創造』っていってね、あっちでジーくんとやりあってる聖魔剣のイケメン君が持つ『魔剣創造』の聖剣バージョンよ」

 

「『聖剣創造』・・・」

 

「あなたの事は知ってるわよ。元教会の人間で、今は悪魔になっちゃったデュランダル使いのゼノヴィアちゃん」

 

「何だ? 調べたのか?」

 

「敵の情報を知るのって大事な事よ? ・・・ああ、そうだわ。確かレーティングゲームで随分素敵な二つ名を頂戴したみたいじゃない」

 

「ッ・・・!」

 

「“天嬢さん”。・・・うふふ、あの時のあなたのオロオロした顔は最高に可愛かったわよ」

 

・・・ああ、そうだな。確かにお前の言う通りだ。あの時、私は神崎先輩から教えてもらった技に固執するあまり、あの様な醜態をさらしてしまった。本来であれば、文字通り“二の太刀いらず”の必殺剣となるはずだった技を台無しにしてしまった私の罪は重い。

 

だから私は誓ったのだ。私はもう二度と同じ過ちは繰り返さない。私の前に立ちはだかるもの、私の行くてをじゃまするもの、そして・・・私の大切な人達を傷付けようとするものを、必ず断ち切ってみせると。

 

「その為の力がこの剣・・・デュランダルとエクスカリバーを融合させた私の新たな相棒、エクス・デュランダルだ」

 

まさか、教会が追放した私にエクスカリバーを託してくれるとは思わなかったがな。おそらく、私が神崎先輩と繋がりを持っている事を知って、擦り寄って来たのだろう。現に、同封されていた手紙にも神崎先輩の名前が書かれていた。・・・もっとも、アーシアの事情を知るあの人が教会と親交を結ぶなどあり得ないだろうがな。まあ、悪魔となった私にはどうでもいい事だが。

 

「あは、素敵よゼノヴィアちゃん。デュランダルとエクスカリバーなんて最高じゃない! よっし、なら私もとっておきを出してあげるわ」

 

来るか・・・禁手化!

 

ジャンヌの足下からおびただしい数の聖剣達が出現し始めた。その剣が規則的に重なり、いつしかそれはとある形・・・即ち、聖剣によって創り出された巨大なドラゴンとなってジャンヌの背後へ現れた。

 

「これが私の禁手である『断罪の聖龍』よ。あなたの戦い方は良くいえば豪快。悪くいえば力任せなのよね。デュランダルに聖なるオーラを纏わせ、刀身として伸ばし、それを敵に叩きつける。あなたにはそれが・・・いえ、それしか出来ないんでしょ?」

 

「・・・」

 

「でも、そういうのって嫌いじゃないわ。圧倒的な力で敵を蹂躙するのって気持ちがいいものね。だけど、本場に劣るとはいえ、同じ聖剣で出来た私の『断罪の聖龍』相手に通じるかしら。例え通じたとしても、私の魔法力が続く限り、新たな聖剣で修復出来るわ。一回で大量のオーラを消費するあなたと、失った分だけ修復すればいいだけの私。持久戦になればどちらが有利かしらね」

 

 

ジャンヌの言う事は最もだ。いつまでもあのやり方が通じるとは私も思っていない。だが・・・私の限界をお前が勝手に決め付けるな。

 

「言いたい事はそれだけか・・・?」

 

「え?」

 

「確かに、私はパワー馬鹿さ。同じ『騎士』である木場からは呆れられている。けれど、“騎士”であるあの人は私のそれを短所ではなく長所として見てくれたのだ。それを・・・その証を今からお前に見せてやる!」

 

私の叫びに応える様に、天に掲げたエクス・デュランダルから大質量のオーラが噴出する。それを見たジャンヌが嘲笑の声をあげる。

 

「あははは! もう、カッコいい事言っちゃって、結局いつものパターンじゃない!」

 

「・・・ここまではな」

 

重要なのはここからだ。ただ全力でオーラを解き放つのでは無く、逆に収束する。今は無駄に大きな刀身など必要無い。例え小さくとも・・・全てを斬り伏せる絶対の剣があればいい! 

 

刀身に纏わせるオーラを最小限にし、残りを全て刃へ回す! 研ぎ澄ませ! 鍛え上げろ! 全てを断ち切る刃を創造するんだ!

 

「ぐっ・・・! これはキツイな・・・!」

 

収束したオーラの反発が凄まじい。気を抜けば一気に弾け飛んでしまいそうだ。これを維持したまま戦うのは中々に大変そうだ。だが、これなら一度込めたオーラを失う事無くずっと保ち続けられる。例えるなら、使い捨て電池と充電池とでも言えばいいかな。放出すればそこで終わりの前者と、繰り返し使える後者。必要に応じて使い分ける事が出来れば、私は一段階上の強さを得る事が出来る。

 

(感謝するぞ木場。枷を外したお前の足を包むオーラを見て、私はこれに気付く事が出来たのだからな!)

 

「・・・何よ、ソレ」

 

ジャンヌの顔から始めて笑顔が消えた。私の握る刀身を二メートルほどに伸ばしたエクス・デュランダルを睨みつけている。

 

「何なのよ、その膨大という言葉すら生温いオーラの量は。明らかに剣の許容量をオーバーしてるじゃない。下手すれば自滅しかねないのに、そんなの抑え切れるはずが・・・」

 

「出来るさ。言っただろう? 私はパワー馬鹿なんだからな!」

 

言うと同時に、私は羽を羽ばたかせ、上空へ舞い上がった。エクス・デュランダルを両手で握り締め、上段へ構えつつドラゴンへ向かって落下速度を利用して一気に詰め寄り、そして・・・それをただ全力で振り下ろした。

 

「ちぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

縦一文字にエクス・デュランダルの刃がドラゴンの額、胸、足を断ち切る。数瞬後、ドラゴンは甲高い音と共に砕け散った。

 

「我がエクス・デュランダルに・・・断てぬものなし」

 

振り返れば、そこには狼狽するジャンヌがいた。

 

「う、嘘・・・!? 一撃で消滅・・・!? そんな、聖なるオーラを吸収して出力が上がる聖剣で作ったドラゴンよ!? どうして・・・!?」

 

「簡単さ。エクス・デュランダルに込めたオーラを喰らい切れなかったんだろう。相手がお前では無く木場であれば結果はわからなかったがな」

 

 

「くっ、舐めないで! 言ったはずよ! 私の魔法力が続く限り、『断罪の聖龍』は復活するって」

 

「ならば、復活しなくなるまで断ち切るだけだ。喜べ、お前が言う持久戦に付き合ってやる」

 

さて、本当に有利になったのはどちらだろうな・・・。

 

再びドラゴンを創造するジャンヌを前に、私はそう心の中で呟きつつエクス・デュランダルを構えるのだった。

 




という事で、今回からいよいよ決戦スタートです。初戦はゼノヴィアとジャンヌでした。次は誰にしようかな。

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