ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百二十話 リザルト

イッセーSIDE

 

英雄派が撤退し、八坂さんも元に戻っところで、俺達は疑似フィールドから元の世界へ戻る事となった。途端、一気に襲いかかって来た疲労感に、俺はその場にへたり込んでしまった。

 

「あ、あれ・・・?」

 

見れば、木場やゼノヴィア達も同じ様に座りこんでいる。そんな俺の肩を、アザゼル先生が叩く。

 

「お疲れさん、イッセー。無理せず休んでろ。・・・フューリーやスコルの事で、ずっと気を張りっ放しだったんだ。自分でも気付かない内に疲労が相当溜まっているはずだ」

 

あー・・・確かにそうだわ。けど、最後にして最大のミッションをクリアしたんだ。疲れだけじゃなく、達成感もひとしおだ―――。

 

「姐さん! 姐さん!」

 

周囲でぐったりしている俺達とは対照的に、そんな元気溢れる声を出しながらアーシアに抱きついているスコル。アーシアの可愛らしい顔が、スコルの豊満な胸の中にすっぽり収まっていた。うん、羨ましい。羨ましいが・・・俺の場合、消し炭にされる未来しか浮かばねえ。

 

「ふみゅっ・・・! ス、スコルちゃん・・・?」

 

「なあなあ姐さん! どうだった? オレ、姐さんやぽかぽかおねーさんの役に立てたか?」

 

「も、もちろんだよ。あなたがいなかったら、山田先生がどんな酷い目に遭っていたかわからなかったもの」

 

「だろだろ! ならさ、ごほーびくれよごほーび!」

 

「ご、ご褒美?」

 

「良い事をしたヤツにはごほーびをあげないといけないんだぜ! ボスも怒ると滅茶苦茶怖えけど、良い事をした時は一杯褒めて撫でてくれるんだ! だから姐さんも、オレにごほーびをあげないと駄目なんだぞ!」

 

まるで子どもみたいに、ものっそい目をキラキラさせながらアーシアへ頭を突き出すスコル。何を求めているのかが一瞬でわかってしまった俺はおかしくないはず。

 

「え、ええっと・・・」

 

数秒だけ逡巡した後、アーシアはスコルの頭を優しく撫で始めた。スコルの顔が瞬く間に蕩け始め、見えないはずの尻尾が勢い良く左右に揺れていた。

 

「えへへ~・・・」

 

・・・おい、なんだこの萌える生き物は。さっきまでのワイルドな美女はどこへ消えちまったんだ? 見た目完全に年上の女性が、年下の女の子に撫でられてニコニコしてる場面の破壊力がここまでとは・・・!

 

「やっぱり、姐さんに撫でられると気持ち・・・」

 

「スコルちゃん?」

 

「・・・すぴー」

 

寝ちゃったよおい! アーシアが撫でて十秒くらいしか経ってねえぞ!

 

「そうだ、今の内に・・・!」

 

ロスヴァイセさんが背後からスコルの首にグレイプニルの首輪を巻いた。瞬間、スコルの体が光を発し、気付けば子犬の姿に戻っていた。

 

「ふう、これで一安心ですね」

 

「・・・本当にありがとうね、スコルちゃん」

 

「くるるる・・・」

 

可愛らしい寝息をあげるスコルを、アーシアは慈しむように抱き上げた。・・・なんでかな、アーシアからそこはかとなく母性を感じてしまう。

 

「アザゼルちゃん」

 

とそこへ、レヴィアタン様が姿を現した。流石に座ったままでいるのはマズイと思ったけど、レヴィアタン様に手で制された。

 

「無理しないで。楽な態勢でいていいよ」

 

「あ、すみません」

 

「ちょうどよかったぜセラフォルー。アイツの姿が見えねえんだが、どこにいるんだ?」

 

「・・・帰っちゃったよ」

 

「帰った? なんで?」

 

「わからないの。一人で敵の大群に突っ込んで行った後、もの凄く怖い顔で戻って来て、そのまま魔法陣を展開して帰っちゃった。いつもなら一枚撮っておく所だったんだけど、そんな雰囲気でも無かったから自重しちゃった」

 

(コイツ・・・撮影機材携帯してやがんのかよ。いや、それよりもフューリーだ。出張って来やがったくせに、最後までイッセー達に顔を見せずに帰ったって事は、俺の予想とは違って、イッセー達はヤツの眼鏡にかなう仕事をしたって結論でいいのか? ・・・セラフォルーのいう怖い顔っていうのが微妙に気になる所だが・・・おおかた、テロリストを殲滅出来なかった自分への苛立ちか何かの所為だろう)

 

「先生、誰の話をしてるんですか?」

 

「ん? ああ、お前等は気にしなくていいさ」

 

そういう言い方をされると逆に気になるんですけどね。他のスタッフ達に指示を出す為に別の場所へ移動を始める二人を見送り、俺は大の字になってその場に寝転んだ。

 

「よお、お疲れだな兵藤」

 

「匙か」

 

俺の横に腰を下ろす匙。そのまま二人で夜空を見上げながら、俺達は互いの健闘をたたえあった。

 

「にしても、お前がドラゴンになっちまった時はマジでビビったぜ。どういう仕組みなんだ?」

 

「アレはヴリトラの神器を統合する事で可能になった俺の新しい力だよ」

 

「統合?」

 

「ああ、ヴリトラの神器は元々四つあったんだ。で、ヴリトラの魂はそれぞれに封印されていた。俺の『黒い龍脈』に、『邪龍の黒炎』、そして『漆黒の領域』に『龍の牢獄』だ。アザゼル先生の所の組織が、俺の持つ物以外を全部保管していたらしくてな、それを全部俺にくっつけたんだ」

 

「くっつけたって・・・大丈夫なのか?」

 

「詳しい話は省くけど、俺だったからなんとかなったらしい。本当は前回のロキ戦に間に合わせたかったんだけど、ヴリトラとの意思疎通が難しくてな、結局間に合わなかったんだ」

 

へえ、コイツも知らない内に強くなってたんだなぁ。俺も負けていられないぜ!

 

「・・・匙、もしもまた勝負する事になったら、今度こそ俺が勝つからな」

 

「上等だ。返り討ちにしてやるよ」

 

「はは・・・!」

 

「へへ・・・!」

 

俺達はどちらともなく笑いあった。なんか、傍から見るといかにも青春! って感じのシーンだけど、うん・・・悪くないな。

 

「おうおう、若いモンの青臭いやりとりってのはいいねえ。こっちまで若返っちまいそうだぜぃ」

 

「え? あ、初代孫悟空さん!」

 

いつの間にか初代孫悟空さんが俺と匙の後ろにいた。慌てて起き上がり、二人で初代さんと向き合った。

 

「お前さん達には驚かされたぜぃ。正直、儂があの場に現れんでも、お前さん達だけでなんとかなっちまいそうだったな」

 

「いやいや、そんな事無いですって! なあ兵藤!」

 

「そ、そうですよ! 曹操が撤退を決めたのも、あなたが現れたのが決定打だったみたいですし!」

 

「あの小僧にも困ったものだぜぃ。あの調子じゃ、真の覇道の意味を解すなど夢のまた夢じゃろうて。・・・下手すれば聖槍にも愛相を尽かされるじゃろうなぁ」

 

「真の覇道? 何ですかそれ?」

 

「おっと、つい口が滑っちまったぜぃ。まあ、対極を歩むお前さん達が気にする事じゃない。次にあの小僧が現れても、お前さんはただヤツを殴ってやればええ。案外、それで目を覚ますかもしれんしの」

 

「は、はあ・・・」

 

はぐらかされてしまった。けどまあ、この人の言う通り、テロリストが何を考えていようが俺はただ殴ればいいだけだよな。

 

「ふーむ・・・」

 

初代さんが俺の顔をジロジロ見つめて来た。な、なんだ? 何か付いてるのか?

 

「なるほど・・・白の娘に続いて、お前さんも“覇”の力に目覚めかけておるようじゃな」

 

「え・・・!?」

 

ど、どうしてそれを・・・!? 覇龍の事は一言も説明してないのに!?

 

「お前さんの中で、力が渦巻いておるのを感じる。未だ形は成しておらんが、それも近い内に定まるじゃろう。実に楽しみじゃ」

 

初代さんが俺の胸に手を当てながら続ける。

 

「紅蓮の炎の如き熱い心・・・まさに赤龍帝に相応しい心じゃ。じゃが、お前さんには一つだけ足りないものがある。それを満たした時、お前さんの力は解き放たれるじゃろうて」

 

「そ、それって何ですか? 教えてください!」

 

思わず肩を掴んでしまった俺を咎めたりせず、二カッと笑みながら初代さんが答えを口にした。

 

「自分を信じろ。―――儂から教えられるのはそれだけじゃよ」

 

「自分を・・・信じる?」

 

「仲間を信じ、共に歩む。それはとても大切な事じゃ。けれど、最後の最後、本当の瀬戸際に立たされた時・・・信じられるのは自分自身なんじゃよ」

 

う、うーん。どういう意味だ? 仲間っていうのは、木場達の事で間違いないよな。けど、瀬戸際・・・つまり追い込まれた時に信じるのは自分?

 

「す、すみません。よくわかんないッス」

 

「よいよい。今のはあくまでも儂の感想じゃからな。それに囚われず、自ら辿り着く事が大事じゃよ。・・・では、儂はそろそろ九尾の大将の元へ行って来るぜぃ。精進するんじゃよ赤の坊や」

 

『ジジイ! さっさとお使い済ませて飯食いに行くぞ!』

 

「やれやれ、ジジイ扱いの酷いドラゴンじゃ・・・」

 

『ドラゴン扱いの悪いジジイが何言ってやがる!』

 

そんなやりとりをしながら、初代さんと玉龍は行ってしまった。うむむ、思いもよらない人にアドバイスをもらってしまった。

 

「お前・・・まだ強くなるつもりかよ」

 

匙が呆れの中に不敵さを混ぜた笑みを向けて来る。

 

「当然だろうが。俺の目標はあの人なんだからよ」

 

そんな感じで色々話してたわけだが・・・あー、やべ、そろそろマジで限界だ。早くホテルに戻って眠りたい。

 

「・・・そういえば、山田先生は?」

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「えへへ~・・・スコルちゃんモフモフれすぅ・・・」

 

俺が山田先生について触れている時、既に本人はメディカルチェックを受けた後に、ホテルのベッドに送られていたりするのだった・・・。

 

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

そして数時間後、疲れの取れ切っていない体で最終日のお土産屋巡りを何とかこなし、ついに京都を去る時を迎える事となった。ホームには九重と八坂さんが見送りに来てくれた。

 

「アザゼル殿や他の皆々にはなんとお礼を申せばよいか。これからレヴィアタン殿や闘戦勝仏殿と会談を行い、今後二度とあのような輩に京都を荒らさせないよう協力体制を築くつもりじゃ」

 

「皆、今度の恩、この九重、一生忘れぬ。また京都を訪れる時は連絡してくれ。最大限のもてなしをさせてもらうからの!」

 

「なんか、やけに上機嫌だな九重」

 

 

「ふふん! 会談が終わったら、魔王様の兄様コレクションを見せてもらう約束をしておるのじゃ! それに先程総督殿より、昨夜の戦闘に兄s―――」

 

「ああっと! そろそろ乗り込まねえとヤバいな! おら、さっさと乗れ乗れ!」

 

「ちょ、先生・・・!?」

 

アザゼル先生によって無理矢理新幹線に押し込まれてしまった。扉が閉まり、列車が静かに走り始める。

 

三泊四日か・・・。あっという間だったし、大変だったけど、来てよかったな。またいつか、今度は部長や先輩達も誘ってみんなで遊びに来たいな。

 

そんな事を思いつつ、俺は班のみんなが集まる席へ移動した。ええっと、桐生の隣か。

 

「アンタ、随分疲れた顔してるわね。ひょっとして寝てないの? それとも、寝る間も惜しんで変な事でもしてたの?」

 

ああ、やべえ、やっぱり眠いわ。どうせ最初から寝るつもりだったし、桐生が何か言ってるが、このまま眠っちまおう。

 

「なっ・・・!?」

 

んあ? なんか丁度いい位置に柔らかい物が・・・。まくら代わりにさせてもらおう。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

桐生SIDE

 

(ちょちょちょっ!? なんなの!?)

 

兵藤が私の肩に頭を乗せて来た。あまりに突然の事に固まる私だが、当の兵藤は寝息を立て始めた。

 

「ア、 アンタ、人の肩を何だと・・・!」

 

「ん・・・」

 

身じろぎし、さらに体重を預けて来る兵藤。チラッと見えた横顔は、とても幸せそうだった。

 

「・・・し、仕方ないわね。叩き起こすのもなんだし、とっても不本意だけど、我慢してあげるわよ」

 

後で使用料を請求「パシャッ!」・・・パシャ?

 

「いやいや、これは良い物が撮れましたぞ松田殿」

 

「そうですな。元浜殿。まさか兵藤と桐生がこんな関係だったとは」

 

「ア、 アンタ達!?」

 

「みなまで言うな桐生。俺達は祝福してやるぜ?」

 

「他の子なら絶対許さんが、桐生だからな」

 

「どういう意味よ松田!」

 

「おいおい、そんな大声出すと兵藤が起きちまうぞ」

 

「ッ・・・!」

 

コ、コイツ等・・・憶えてなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

ニヨニヨする二人へ、私はとびっきりの呪いを込める事にするのだった。

 

桐生SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

夕焼けが辺りを照らす頃、俺達の乗る新幹線はようやく東京駅へ戻って来た。最後の挨拶を終え、解散した俺達の元へ、部長達が勢ぞろいで迎えに来てくれていた。って、ちょっと待てよ。じゃああの人も・・・。

 

「お帰り、みんな」

 

「か、神崎先輩・・・」

 

「? どうかしたか?」

 

固まる俺達を見て首を傾げる神崎先輩。や、やべえ、まだ心の準備が・・・!

 

「覚悟を決めろイッセー」

 

「私達は精一杯やったよ」

 

「うん、ベストは尽くしたんだ。後はもう信じるだけだよ」

 

「お、おう」

 

アーシアと言葉を交わす先輩を黙って見つめる俺やゼノヴィア達。そして、ついに先輩が俺達の前に立った。

 

「兵藤君・・・」

 

「は、はい!」

 

「・・・ありがとう。やっぱりキミ達にアーシアをお願いしてよかったよ」

 

「「「「ッ・・・!」」」」

 

そ、それってつまり・・・ミッションクリアって事でいいんですか!?

 

「木場! ゼノヴィア! イリナ!」

 

「夢・・・じゃないよね?」

 

「ああ・・・私達は成し遂げたんだ!」

 

「やった・・・やりましたよミカエル様ぁ!」

 

人目も憚らず、肩を抱き合いながら歓喜の声を張り上げる俺達。

 

(やっぱり自分があの場に現れた事は言わなかったか。へっ、しょっぱなからキツイ指示を与えておいた癖に、変な所で甘い野郎だぜ)

 

こうして、俺達はついに最後のミッションを潜り抜け、ゴールへと辿り着いたのだった。今日という日を、仲間達と共に駆け抜けた日々を、俺はずっと忘れる事は無いだろう。

 

Last Mission『アーシアを無事に送り届ける』クリア。

 




これにて八章終了です。次回から暑苦しい新章が始まります。

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