ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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とうとう推薦までして頂きました。本当にありがたいです。

しかし・・・いつの間にマニア向け作品と認識されたのだろう。不思議だなー(棒)


第百二十二話 そうですわたすが鋼の救世主(泣)です

その話を持ち掛けられたのは、アーシア達が修学旅行から帰って来てちょうど一週間経った日だった。

 

「ミリキャス君がテレビに出る? しかも、俺にも一緒に出演してくれと言ってる?」

 

風呂上がり、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注いでいる俺に、リアスがそう切り出した。“例の物”を発表するから是非とも来てくれるようお願いして欲しいと言われたらしい。

 

“例の物”、“発表”と聞いて、俺はすぐにミリキャス君の書いた『鋼の救世主』を思い浮かべた。おー、ついに出版するんだなミリキャス君。あれかな? 原作者みたいな感じで俺を紹介してくれるつもりなのかな? でも、俺はただゲームのストーリーをそのまま話しただけだから畏れ多い気がするけどなぁ。

 

「肝心の理由は教えてくれなかったんだけどね。当日まで知らない方がきっと私もビックリするからって。・・・いったい、あなた達は何を隠してるの?」

 

ああ、確かに驚くだろうな。あんな幼い子があれほどまでの冊数の物語を書ききったんだから。しかも、プロの作家に迫るほどの見事な書き方で。

 

「ミリキャス君がそう言ったなら、俺から言うわけにはいかないな」

 

きっとミリキャス君はちょっとしたサプライズを狙っているのだろう。それを台無しにするわけにはいかない。・・・グレイフィアさんにグーパンされたくないし。

 

「・・・まあいいわ。そういう事なら精々当日を楽しみにさせてもらうわよ。それで、あなたはどうするの?」

 

「もちろん、応じるさ」

 

ふふふ、ちょっとだけだがフューリーである事を受け入れた俺ならば、テレビ出演にだって耐えられるはずだからな。

 

「わかったわ。ならミリキャスにはそう連絡しておくから。予定日はこっちの日付で表して三日後だからそのつもりでいてちょうだい」

 

了解。三日後ね。どうせメインはミリキャス君、俺はおまけみたいな感じで座っとけばいいだけだろうし、なんとかなるさ。

 

この時の俺にはそんなお気楽な考えしかなかった。・・・本当はもう何もかもが手遅れ。既に取り返しのつかない所まで来てしまっているとも知らずに。

 

そして三日後・・・俺は地獄に突き落とされる事になるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

 

イッセーSIDE

 

オカルト部の部室、俺達は全員テレビの前に集まっていた。また先輩がテレビに出るらしい。けど、最近何かイベントみたいなのってあったっけ?

 

冥界のチャンネルが映るテレビの画面には、冥界のCMが流れている。あ、今のって先輩の特撮ドラマのCMだよな。もうDVDの一巻が絶賛発売中みたいだ。

 

「そういえば、イッセー君を主役にしたアニメも作られているみたいだよ」

 

「なぬっ!?」

 

は、初耳だぞそんなの!? どんな内容なんだ!? もちろん、燃えと萌えが合わさったヤツなんだろうな!?

 

「ええっと、確か『それいけ! せきりゅーてー』っていう名前だったっけ。子どもをターゲットにしたアニメで、結構人気があるらしいよ」

 

子ども向けか・・・。まあ、自分が主役で、しかも人気があるっていうなら文句は無いけど・・・。

 

「私も聞いてますわ。それと本編終了後のミニコーナーも好評なんだとか」

 

「ミニコーナー? ジャンケンとかするんですか?」

 

「『やったれ天嬢さん』っていうタイトルで、内容は天嬢さんが様々な天井に挑んでいくチャレンジ物と聞いていますわ。最も、必ず失敗して刺さってしまうのがお約束みたいですけど」

 

「そ、それって・・・」

 

俺が恐る恐る天j・・・ゼノヴィアの方へ視線を向けると、そこには無表情で渇いた笑い声を上げるゼノヴィアがいた。

 

「は、ははは・・・いいだろう。いいかげんその名とは決別したいと思っていた。今度のレーティングゲーム。観客の前で証明してやろう。私はもう天井には負けないと!」

 

「あ、うん。頑張れ・・・」

 

もうそれしか言えなかった。てか他になんて言えばいい?

 

「あ、始まったわよ」

 

画面が切り替わり、たくさんの取材陣の前にミリキャス(呼び捨ての許可はもらっている)と神崎先輩が並んで座っている所が映された。右の方でグレイフィアさんがマイクスタンドを前に佇んでいる。そして、そんな三人の背後には、デカデカとした文字で『ミリキャス・グレモリー著、鋼の救世主出版記念会見』と書かれた紙が張られていた。

 

『皆さま、本日はご多忙な所お越し頂き、誠にありがとうございます。進行は私、グレイフィアが務めさせて頂きます』

 

グレイフィアさんの声が会見場に静かに広がって行った。

 

『まずは、ミリキャス・グレモリーより、皆さまへご挨拶をさせて頂きます』

 

『ただいまご紹介に預かりました、ミリキャス・グレモリーです。本日は僕・・・私の書いた『鋼の救世主』の出版をご報告させて頂く為、このような場を設けさせていただきました』

 

お、おお、流石魔王様の子ども。なんつー堂々とした態度だ。俺もこれくらいスラスラ言えるようになりたいぜ。

 

『どうして、私の様な子どもが本を出版するのに、わざわざ会見などを開くのか・・・。皆さまはそう思われているかもしれません。ましてや、私は魔王の息子でグレモリーです。その立場を利用したのではと思われる方もいるかもしれません。・・・ですが、私は一人の悪魔・・・ミリキャスとしてこの本に書かれた内容を多くの方々に知って頂きたかったのです。魔王様もグレモリー家も関係ありません。それが私の使命だと、その一心で書き記した物なのです』

 

真剣に語るミリキャスの顔は、何かを成し遂げた“達成感”。そして、“誇り”で彩られていた。はは、こういう所は部長にそっくりだな。

 

『あ、あの、お聞きしてもよろしいでしょうか?』

 

『どうぞ。社名と名前をお願いします』

 

『週刊サタンのコステロです。ミリキャス氏、その内容というのは、あなたの横に座っていらっしゃる方に関係のあるものなのですか?』

 

記者の視線が神崎先輩に移る。先輩、さっきから微動だにしてないけど、緊張してんのかな? ・・・なんて、前回のインタビューであれだけハキハキしてたんだからそんなわけないよな。

 

『その通りです。以前、フューリー様が冥界にいらっしゃった際、私に語ってくれたのです。それがこの『鋼の救世主』・・・かつて、フューリー様が別の世界で経験した戦いの歴史を書き記した本なのです!』

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

戦いの歴史って・・・まさか、先輩の過去!? この世界に来る前に経験した、先輩ですら絶望して、それでも希望を繋ぎ続けたっていう戦いが、全部記されてるっていうのか!?

 

衝撃的な内容に愕然とする俺達。それは取材陣も同じだったようで、次々に質問の許可を求め始めた。てか、ミリキャス、今普通に別の世界ってバラしたけど大丈夫なのか? あ、でも、先輩だって言っていいか駄目かくらいちゃんと教えてるだろ・・・。

 

『なん・・・だと・・・!?』

 

なんかめっちゃ動揺してるぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?!?!? ど、どうしたんですか先輩!? いつものクールさが全く無いですよ!? 汗も凄いし、目がまん丸だし、こんな表情の先輩初めて見るぞ!? え、ひょっとしてバラしちゃ駄目って言ってなかったんですか!?

 

『この本が世に出れば、自分の秘密が明るみになる。それでもフューリー様はこの本を認めてくれたのです。だから、私は胸を張ってこの『鋼の救世主』を皆さまに披露しようと思ったのです』

 

え、じゃあバラしてよかったって事? なら、何で先輩はあんな事に・・・。

 

『・・・初めてでした。ここまで何かに没頭してしまったのは。フューリー様にお話を聞かせて頂いてから、私はずっと机に向き合っていました。それこそ、寝食を忘れてしまうほどに。お父様やお母様にも随分と心配をかけてしまいました。でも、筆を置こうとは微塵も思いませんでした。これが、この物語を後世に残す事が、私の・・・ミリキャスという悪魔に与えられた使命だと思ったからです!』

 

「ミリキャス・・・。私の知らない間に立派になったのね・・・」

 

部長が涙ぐんでいる。あ、今グレイフィアさんも目元を拭ったぞ。

 

『この本が、ずっと冥界に残り続けて欲しい。・・・それが、私の夢です』

 

そう締めくくったミリキャスの顔はとても晴れ晴れとしていて、俺達はその表情に目を奪われた。

 

『冥スポのブロントです! フューリー氏! 今ミリキャス氏が語られたのは真実なのですか!?』

 

会場中、俺達、そして、この放送を見ているであろうたくさんの悪魔の視線が先輩へ注がれる。無言の時間が一分、二分と続いて行く。

 

『・・・は・・・い・・・』

 

先輩の口から小さく肯定の言葉が出た瞬間、会場内がとてつもない騒ぎに包まれた。記者達が一斉に立ち上がり、会場の出入口へ駆けだす。きっと、大々的に報じるつもりなのだろう。もう会見って空気じゃなくなっちまったな。

 

「こうしちゃいられないわ!」

 

「ぶ、部長!? どこへ行くんですか!?」

 

「決まってるでしょ! あの本を買いに行くのよ!」

 

「僕も行きます!」

 

「私も!」

 

「あ、じゃ、じゃあ俺も!」

 

こうして、俺達は急いで冥界へ向かうのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

その後、『鋼の救世主』は冥界の書店に並べられる事となり、多くの悪魔達がそれを求めて殺到するのだった。その人気は悪魔だけに収まらず、堕天使、さらには天使までもがそれに描かれた鋼の救世主達、さらに、その救世主達を導き続けた一人の男の戦いを深々と胸に刻み込むのだった。

 

そして、この物語に影響を受け、本来辿るべきものとは異なる道を歩き始める者達がいた。

 

「やはり、今以上の強さを得る為には、神崎殿へ師事するのが一番か」

 

ある者は、さらなる力を得る決意を固める。

 

「これよ! これこそが私達が求めていた経典だわ!」

 

またある者は、待ち望んでいた物を得た悦びに歓喜の涙を流す。

 

「・・・これがキミの戦い。キミの歩んで来た王道か。・・・総督殿の言う通りだな。俺は、キミと同じ土俵にすら立てていなかったのか・・・」

 

そしてある者は、自らが歩む道に僅かながらの疑問を抱き始めつつあった。

 

それぞれにもたらされた変化が良い方向へ進むのか、それはまだ誰にもわからない。ただ、一つだけハッキリしているのは・・・。

 

(オカン! オカン! タイムマシン的な物無いですか!? あるなら今すぐ貸してください! それに乗ってあの時の俺に真覇剛掌閃叩き込んでやる!!!)

 

その変化をもたらした張本人が、心の底から自らの過去を後悔しているという事だった。




ミリキャス「僕の夢が詰まった本です!」

オリ主「ユメハダイジニ・・・」

というわけで、無自覚にオリ主を追い込んだミリキャス君でした。

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