ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

131 / 187
FEの新作買いました。とりあえず、支援会話で砂糖吐きそうになりました。



第百二十六話 足りない物は他の部分で補えばいいんですよ

サイラオーグさんの来訪から数日、駒王学園に転入生がやって来た。その転入生の名はレイヴェル・フェニックス。そう・・・あのレイヴェルさんだった。休憩時間にリアスが様子を見に行った所(俺も行こうとしたらパニックになるから駄目だと言われた)、クラスの子達に囲まれ、色々質問されてて大変そうだったらしい。けど、彼女の入ったクラスには小猫とヴラディ君もいるからきっと大丈夫だ。

 

それにしたって、アザゼル先生も事前に教えておいてくれればよかったのに。同じく転入を経験した俺ならば事前に色々アドバイス出来たんだが。・・・いやまあ、彼女と俺とじゃ意味合いが違うのだろうが。

 

「ああ、悪い悪い。前に説明しそびれてそのままだったわ」

 

放課後、レイヴェルさんを加えて勢ぞろいした俺達に、アザゼル先生は軽いノリの謝罪をした。続いて、レイヴェルさんがまさしくお嬢様と言える様な優雅な所作と共に挨拶をした。

 

「本日より、この学園で皆様と一緒に学ばせて頂く事となりましたレイヴェル・フェニックスです。先生、そして先輩方、未熟な私への厳しいご指導ご鞭撻のほど、是非ともよろしくお願い致します。また、そちらのお二人には同じ学年、同じクラスの身として、仲良くさせて頂きたく存じますわ」

 

「お、おお。こちらこそ、よろしくお願い致しますです」

 

「イッセー君、無理に言葉遣いを変えなくていいから」

 

レイヴェルさんの雰囲気にちょっとテンパリ気味の兵藤君。でも気持ちはわかる。ご指導ご鞭撻なんて言葉を知ってる事だけでも驚きだよな。

 

「クスクス・・・」

 

んん? 何やら小猫の様子がおかしい。口元に手を当てながら笑い声を抑えているようだ。

 

「な、何かおかしな所がありましたかしら?」

 

「・・・別におかしくない。ただ、教室であれだけヘタレてた人と同一人物だと思えなかっただけ」

 

「なあっ・・・!?」

 

「ヘタレ?」

 

「聞きたいですか、先輩? 実はですね・・・」

 

「お、お待ちなさい! よりにもよってフューリー様の前で何を言い出すのですか猫又娘!」

 

「ヘタレ焼き鳥姫は黙ってて」

 

「なぁっ・・・!? こ、このぉ・・・!」

 

ギリギリと歯ぎしりしながら今にも小猫に飛び掛かりそうなレイヴェルさん。対照的に澄ました顔でその視線を受け止める小猫。ひょっとしなくとも、この二人、相性が悪いのか?

 

「ヴラディ君、教室でもあの二人はあんな感じだったのか?」

 

「い、いえ、そもそも、他の人達が周りにいたから近付けなかったんです。だから、まともに話すのは今のが初めてだったはずなんですけどぉ」

 

ふむふむ・・・余計わからなくなったぞ。

 

「うふふ、二人とも、良い友達になりそうですわね」

 

「そうね。今まで小猫には同学年でああやって正面からぶつかれる相手がいなかったから」

 

「うう、ゴメンなさいぃ。僕がもう少ししっかりしてれば」

 

「謝る必要は無いわ、ギャスパー。あなたを弄る時の小猫って良い表情してるのよ」

 

「素直に喜べませんよぉ!」

 

「ぐぬぬぬ・・・!」

 

「ふん・・・」

 

ぶつかり合って友情を育む。少年漫画じゃお約束だよね! ・・・二人とも女の子だけど。

 

その後、レイヴェルさんはそのままオカルト部に入部する事が決まり、新たな仲間と共に俺達が始める事となったのは、目前に迫る学園祭に向けての準備だった。オカルト部は旧校舎全体を使っての様々な催し物を企画している。正式に所属していないが、もうほぼ部員となっている俺とアーシアもその手伝いをする事になった。クラスの催し物と合わせると中々大変だが、最後の学園祭だし、悔いの残らない様精一杯頑張ってみよう。

 

そんなわけで、準備を進めていく日々の中、どうにも様子がおかしい子がいた。それは兵藤君なのだが、どうも作業中に考え事に浸る回数が目に見えて多いのだ。

 

「イッセー君、そっちを持ってくれるかい」

 

「・・・」

 

「イッセー君?」

 

「え? あ、お、おう、悪い!」

 

今も木場君に声をかけられるまで上の空状態だった。木材相手に格闘する二人を見つめる俺に後ろからリアスがやって来て呟く。

 

「・・・イッセー、何か悩んでいるみたいね」

 

「悩んでいる?」

 

「あの子は自分の心にいつも正直だわ。だからすぐに顔や態度に出ちゃうのよね。本人は隠しているつもりなんでしょうけど、ハッキリ言ってバレバレなのよ。全く、他人の事には敏感なのに、自分の事は溜めこんでしまうのはあの子の悪い癖ね」

 

そう兵藤君を評するリアスの顔は、若干の呆れと、それ以上の優しさが浮かんでいた。悩みか・・・。言われてみれば、今の兵藤君は以前の合宿の時に相談して来た時の彼とどことなく雰囲気が似ていた。

 

「兵藤君の事、よく見ているんだな」

 

「当然よ。あの子は私の大切な眷属だもの。あなたもちゃんと自分の眷属を気にかけてあげないと駄目よ?」

 

「ああ、気をつけるよ。それはそうとリアス、兵藤君の様子を見にわざわざ来たのか?」

 

「いえ、用があるのはあなたよリョーマ。正確には、あなたに用がある人物から私に連絡が来たのだけれど」

 

「?」

 

「サイラオーグ・・・彼の執事からあなたにお願いがあるんですって」

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

二日後、俺はリアスと共に冥界に来ていた。しかも、今回はグレモリー領ではなく、シトリー領という所へお邪魔していた。

 

移動中の車内で、リアスから説明を受けた。なんでも、今回の相談者である執事さんからリアスのお母さんへ話が来て、そこからリアスへ伝わり、さらにリアスから俺へという流れだったらしい。

 

「このシトリー領は自然保護区が多くて、美しい景観の場所がたくさんあるの。・・・そして同時に、医療機関が充実している領土の一つでもあるわ」

 

医療機関と口にしたリアスの表情が変わる。ひょっとして、今回の話に関係があるのだろうか。確認すると、案の定これから向かう先が病院だと返された。

 

しばらくして車が停まり、下車した俺達を一人の男性が迎えた。

 

「お待ちしておりました」

 

「リアス、この人が」

 

「ええ、今回の依頼人よ。それじゃあ案内お願いね」

 

「はい、こちらでございます」

 

執事さんの後に続いて病院内へ足を踏み入れる。そのままエレベーターの前まで移動した所で、リアスからさらなる説明が入った。

 

「リョーマ、これから会うのはサイラオーグのお母様よ。元七十二柱にして上級悪魔の一族、獅子を司る偉大な名家、ヴァプラ家の出の方なの」

 

あのサイラオーグさんのお母さんか・・・。きっともの凄い美人か・・・もしくは逞しい体をお持ちなのか、どっちなんだろう。出来れば前者の方がありがたい。

 

エレベーターで上階に移動し、廊下を進む事数分、俺達はある病室の前に辿りついた。

 

「お入りくださいませ」

 

執事さんに促され中に入ると、そこには一人の女性がベッドの上で眠っていた。

 

「この方の名はミスラ・バアル様。サイラオーグ様の母君でございます」

 

「・・・」

 

「リョーマ?」

 

「・・・すまない、何でも無い」

 

ただ、あの時の事を・・・母さんが死ぬ前の事を思い出しただけだから。

 

「それで、どうして俺達をここへ?」

 

暗くなる気持ちを追い出す様に執事さんに尋ねると、彼はその場で深々と頭を下げながら告げた。

 

「フューリー殿。どうかこの方を・・・ミスラ様を目覚めさせるため、ご助力をお願いいたしたいのです」

 

「どういう事ですか?」

 

面食らう俺だったが、そこへリアスが口を開いた。

 

「・・・少し、話をしましょうか」

 

そして彼女の口から語られたのは、ミスラさんとサイラオーグさんの歩んで来た辛い日々の話だった。それを最後まで聞いた俺の感想はただ一つだった。

 

「・・・反吐が出るな」

 

サイラオーグさんを見て、バアル家の人達はみなさん立派なんだろうな、などと思っていたが、実態は彼とミスラさん以外はくだらない面子で他人を簡単に傷付けられる下衆な連中しかいなかったってわけか。

 

「でも、サイラオーグは決して絶望しなかった。諦めなければいつか必ず勝てる・・・おば様から教わったこの言葉を胸に、今までずっと自分を鍛え続けて来たの」

 

けれど、ミスラさんは裏でサイラオーグさんに何度も謝り続けていたらしい。滅びの魔力を持たさずに産んだ事をひたすら。眠りについたサイラオーグさんに泣きながら何度も何度も。すると、ある日を境にサイラオーグさんは今の様に何事にも真正面から立ち向かう様になったのだとか。

 

―――俺は魔王になって証明する。滅びの魔力が無かろうとも、俺はバアル家のサイラオーグだと。母上には何一つ非は無かったのだと。この拳で、この体で、この意志で、凝り固まった頭の連中に思い知らせてやる。必ずな。

 

あの言葉に込められたサイラオーグさんの決意、想い。それは俺なんかでは想像もつかないほどに大きなものだったのだ。

 

「その経験がサイラオーグ様に夢を持たせたのです。ご自分が魔王となって、この冥界を変えるのだと。実力さえあれば、出身など関係無く夢を叶えられる冥界を作るという夢を」

 

「・・・素晴らしい夢ですね」

 

本当に、ただ純粋に、心からそう思える夢だった。これはもう、リアスや支取さんの時と同じく全力で応援サポーターになるしかない。

 

だけど、その夢の為に力をつけていた頃に、ミスラさんが原因不明の病に倒れてしまった。それからずっと、ミスラさんは眠り続けているのだとか。

 

「サイラオーグはバアル家に帰還し、父と後妻の間に生まれた弟を実力でくだして次期当主の座を得たの。だけど、バアル家の周辺にはサイラオーグを疎む者も多い。そんな者達からおば様を守る為に、サイラオーグはおば様をシトリー領に移した。おば様がこの病院にいるのはそれが理由よ」

 

そして、そのミスラさんを目覚めさせるために俺が呼ばれた・・・。けど、何で俺なんだ?

 

「聞けば、フューリー殿は強力な癒しの力をお持ちだとか。それを受けた者は絶命一歩手前の状態であろうともたちどころに元に戻ってしまうとかなんとか。そのお力で、ミスラ様をお助け頂けないかと思いました次第でございます」

 

いつの間にか精神コマンドの事が広まってる!? けど『友情』とか『愛』ってダメージの回復に使えるけど、病気にも効くのか? 試した事ないからわからん。けど、ここまで来てしまったし、何より俺自身、何とかしてあげたいって思うし、やるだけやってみよう。

 

「わかりました。やってみます」

 

「おお! 感謝いたします! では早速・・・」

 

と、そこで病室の扉が開かれ、俺達がそちらへ目を向けると、そこにはサイラオーグさんの姿があった。

 

「む、リアス、それに神崎殿? なぜ二人がここに?」

 

「サ、サイラオーグ様! 実は・・・」

 

執事さんから説明を受け、サイラオーグさんは俺達に頭を下げた。

 

「わざわざ母の為に感謝する」

 

「いえ、まだ役に立てるかわかりませんし、頭を上げてください」

 

サイラオーグさんを加えた三人の視線を背に、俺はミスラさんの横に立った。早速精神コマンドをかけようと思ったが、そこでふと思いついた。

 

「サイラオーグさん、俺の横に」

 

「? わかった」

 

横に立つサイラオーグさんが疑問符を浮かべる。

 

「神崎殿、俺も何かするのか?」

 

「俺の手にサイラオーグさんの手を重ねてください」

 

『愛』を使うなら俺だけじゃなく、サイラオーグさんにも協力してもらった方が効果が強まりそうな気がする。あくまでも気分的な問題だが、“精神”コマンドなのだから、こういう事でも意味があるかもしれない。

 

「これで大丈夫だろうか?」

 

ミスラさんに向けてかざす俺の手にサイラオーグさんが手を重ねる。その状態で俺は『友情』、『愛』、さらには『復活』や『奇跡』など、とにかく効果がありそうなものを片っ端から発動させた。様々な色の光が俺の手からミスラさんの体へ移っていく。

 

「ど、どうなの?」

 

光が治まる。だけど、ミスラさんは目を閉じたままだった。五分待っても十分待っても、その目が開く事は無かった。

 

「・・・すみません。俺ではお力になれませんでした」

 

結果は失敗に終わった。けど、サイラオーグさんはそんな俺を責めもせず、明るい表情で労わってくれた。

 

「母の為に尽力してくれた・・・。それだけで俺は嬉しいぞ神崎殿。さあ、ひとまずここを出よう」

 

俺達は病室を出た。だがこの時、俺達の誰一人気付く事は無かった。

 

「・・・グ」

 

病室を出る直前、ミスラさんの指、そしてその口が僅かに動いていた事に。




原作では最後の最後に目を覚ますミスラさんですが、この小説では少しばかり早めに目覚めてもらいます。じゃないとサイラオーグさんの覚醒シーンが書けないんで。

それと、今後、小説について質問や意見がありましたら、活動報告に専用の所を作りましたので、これからはそちらにお願いします。感想は感想、その他は活動報告・・・という形にさせていただきますので、面倒かもしれませんがよろしくお願い致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。